『エクスタミネーター2』:1984、アメリカ

老夫婦が経営する深夜の酒店に強盗4人組が押し込み、金を要求した。彼らは無抵抗の老夫婦を銃殺して笑い飛ばし、店を出た。そこにジョン・イーストランドが立ち塞がり、火炎放射器で2人を始末した。マスコミはエクスターミネーターの復活を報じた。逃げ延びた強盗2人は、アジトでテレビのニュースを見た。彼らはXという男がリーダーを務める犯罪組織のメンバーだった。ジョンはクラブダンサーのキャロラインと店で会い、彼女の家に行って関係を持った。
Xは組織の連中に対し、「50万ドルの現金を強奪して麻薬を買い、新しい秩序を作って街を征服するのだ」と訴えた。組織は現金輸送車を襲撃し、駆け付けた警察のヘリコプターを撃ち落とした。一味が現金を強奪する様子を、ゴミ収集業者のビージーが見ていた。彼は義憤にかられ、トラックを車に体当たりさせた。Xの一味は、警備員を連れて逃走した。Xは警備員を線路突き落とし、列車にひかせた。ジョンは鋼鉄マスクを被り、見張りの男を火炎放射器で殺害した。
無一文で街を歩いていたジョンは、黒人男に小銭をせがまれる。金が無いことをジョンが言うと、男は彼が持っていた腕時計を売らないかと持ち掛けた。ジョンは男と交渉し、200ドルで時計を売却した。その様子を見ていたビージーは、戦友であるジョンに声を掛けた。Xは麻薬を購入するため、マフィアのボスと側近たちをアジトに招待した。Xが現金を見せると、マフィアのボスは麻薬を用意することを約束した。Xは彼に、弟を殺したエクスターミネーターの情報提供を要請した。
麻薬のサンプルを受け取ったXは、テストのためのモルモットを用意しろと手下に要求した。手下は女を拉致してアジトに連れ帰り、Xは麻薬を注射した。ジョンはビージーに誘われ、ゴミ収集の仕事を始めることにした。ジョンはビージーに誘われてクラブへ行き、仕事が決まったことをキャロラインに報告した。ビージーは気を利かせ、2人にトラックを貸した。ジョンはトラックを運転し、キャロラインが目指すブロードウェイの前を走った。
トラックを目撃したXの手下たちは、車で後を追った。ジョンとキャロラインはトラックを降り、アパートに入った。一味はアパートの部屋を確認するが、巡回のパトカーが来たので退却した。翌朝、ジョンとキャロラインが屋外で語り合う様子を、Xの一味が観察していた。一味はキャロラインが1人になったところを襲撃し、激しい暴行を加えた。騎馬警官が来たので、一味は逃走した。キャロラインは脚に大怪我を負わされ、車椅子生活を余儀なくされた。
ジョンとビージーが元気付けようとしても、キャロラインは塞ぎ込んだままだった。ジョンはキャロラインのリハビリに付き合うが、彼女は自暴自棄になって荒れる。そんな様子を見たジョンは報復を決意し、ビージーに打ち明けた。2人は改造トラックに乗り込み、夜の街へ出た。ジョンとビージーはチンピラたちを見つけ、トラックを停めた。ジョンは銃を突き付けて1人を捕まえ、仲間の居場所を吐かせた。ジョンとビージーはトラックを走らせ、麻薬取引が行われているブルックリンの第3桟橋へ向かう…。

監督はマーク・バンツマン、脚本はマーク・バンツマン&ウィリアム・サックス、製作はマーク・バンツマン&ウィリアム・サックス、製作総指揮はメナハム・ゴーラン&ヨーラン・グローバス、撮影はボブ・ボールドウィン&ジョセフ・マンジーン、編集はジョージ・ノリス&マーカス・マントン、美術はヴァージニア・フィールド&ミーシャ・ペトロフ、衣装はクリスティン・マクニフ、音楽はデヴィッド・スピア。
主演はロバート・ギンティー、共演はマリオ・ヴァン・ピーブルズ、デボラ・ジェフナー、フランキー・フェイソン、スコット・ランドルフ、レジー・ロック・バイスウッド、ブルース・スモラノフ、デヴィッド・バンツマン、ケニー・マリノ、デレク・エヴァンス、アーウィン・キース、ロバート・ルイス・キング、アリー・グロス、ジャネット・ロトブラット、ステファン・ザカリアス、ジェニファー・ブランドン、ディーナ・クロウ、トーマス・キャラブロ、ジェシー・アラゴン他。


1980年の映画『エクスタミネーター』の続編。
メナハム・ゴーラン&ヨーラン・グローバスのキャノン・グループが制作しており、前作の監督&脚本を手掛けたジェームズ・グリッケンハウスは参加していない。
前作のプロデューサーだったマーク・バンツマンが、初めて監督と脚本を担当している。彼と共同で脚本を手掛けたのは、『溶解人間』『バン・バニング・バン』のウィリアム・サックス。
出演者で続投しているのは、主演のロバート・ギンティーのみ。Xをマリオ・ヴァン・ピーブルズ、キャロラインをデボラ・ジェフナー、ビージーをフランキー・フェイソンが演じている。
無名時代のジョン・タートゥーロがチョイ役で出演しているのだが、どこにいたのかはサッパリ分からなかった。

前作のポスターには、フルフェイスで顔を隠した男が火炎放射器を使っている写真が使われた。
だが、そんなシーンは本編に存在しない。製作会社が宣伝のために、劇中には登場しないシーンを作ったのだ(つまり火炎放射器の男はロバート・ギンティーじゃないってことね)。
だからポスターを見て「主人公は火炎放射器で悪人たちを退治するのか。これは楽しみだ」とワクワクして映画館へ足を運んだ人々は、ガッカリする羽目になったわけだ。
実際は、チンピラを脅す時に火炎放射器を使うだけなんだから。

そんなガッカリ体験をした前作の観客に喜んでもらおうという考えだったのか、マーク・バンツマンは今回、冒頭からジョンに火炎放射器を使わせている。しかも、フルフェイスのヘルメットではないが、鋼鉄の仮面で顔も隠している。
4年の歳月を経て、前作のポスターに描かれていたシーンが映像化されたわけだ。
ただし、それがホントに良かったかどうかは疑問だ。
何しろ、ちっともカッコ良くないのだ。
むしろカッコ悪いし、少なくともダーク・ヒーローっぽさは皆無。

もう1つの問題として、「その気になれば、ジョンは老夫婦を助けられたはずだろ」と言いたくなるんだよな。
コンビニの前で待ち伏せているってことは、強盗グループが店に入るのも、老夫婦を脅して金を奪おうとしているのも分かっていたはずだろ。だったら老夫婦が殺害される前に行動しろよ。
老夫婦が射殺されてから強盗を攻撃しても、それは役立たずの警察と大して変わらんわ。
そりゃあコンビニの店内で火炎放射器を使うのはマズいだろうけど、別に火炎放射器に固執する必要は無いんだし。
しかも、そこで全員を始末するわけじゃなくて、2人には軽々と逃げられているんだぜ。それはヌルいだろ。ちゃんと全員を始末しないとダメだろ。

ジョンとキャロラインは以前から交際中なのか、序盤が初対面なのか、その辺りはボンヤリしている。
ジョンの「キャロラインって子は今日、踊るのか」というバーテンに対する問い掛けは、その日に初めて店へ行ったような台詞だ。しかし、初対面なのにキャロラインが彼を家に招いてセックスするってのは、ちょっと奇妙だ。ジョンが口説くシーンも無いしね。
だから以前から交際していたんだろうけど、「まずは職探しだ」とジョンは言ってるわけで、まだ無職であり、エクスターミネーターとして復活を遂げたばかりという状態なんだよね。
それなのに、もう恋人は作ってんのかよ。そっちは手が早いなあ。

そもそも、エクスターミネーターとして行動するってことは、常に危険が付きまとうわけで。素性がバレたら命を狙われることは確実だし、周囲の人間にも迷惑が掛かる。
それは前作で分かっているはずだ。
そして、それが分かっていたら、そう安易に恋人を作ることなんて出来ないはずだろ。その恋人にも迷惑が掛かるんだからさ。
だから、ジョンがノホホンと恋人を作って幸せに暮らしているのは、「お前は前作の経験から何も学習してないのか。学習能力がミジンコ以下なのか」と言いたくなってしまう。

Xは仲間たちに、「スティッチたちは犬死した、貧民街に生まれただけで動物扱いだ。俺たちは動物かもしれん。最低の暮らしだ。今に見てろ。貧民街から抜け出してやる。俺たちの物を奪い返してやる。新しい時代だ。かっ払いや盗みはやめだ。50万ドルの現金強奪だ。力だ。力でねじ伏せろ。そして麻薬を買い、白い粉の吹雪を。力の吹雪だ。新しい秩序を作り、街を征服しよう。宣戦布告だ。当然の権利を戦い取ろう。死を恐れずに」と語る。
さらに彼は、「俺は救世主、お前らは戦士だ。共に勝ち取ろう。倒そう。エクスターミネーターも。街の血が俺たちの体内を駆け巡る。汚物と共に俺たちを見捨てた街を、この手で征服しよう。街に火を放とう。全てを灰に。俺たちが再建し、征服する。感じ取れ。共に戦う時の力を。ほとばしり出る力を。偉大だ。力を合わせ、街を征服しよう。俺が支配する」と演説する。
後半部分はともかく、「貧民街に生まれただけで動物扱いだから、今に抜け出してやる。街を征服してやる」という「差別に対する怒りがモチベーション」というのは、悪党ではあるのだが、それなりに共感を誘うモノになっている。

で、そういう動機があるのなら、Xは根っからの悪党とか、卑劣で残忍なことが対する大好きな鬼畜というわけではないってことになる。
しかし、それは明らかに失敗だ。
エクスターミネーターが始末する相手は、やはり町のダニやクズであるべきなのだ。
そんな「迫害された被害者の復讐」という動機を持たせちゃったら、「私刑執行人が悪い奴らを殺していく」という単純明快な話にならないし、そこに爽快感を抱くことも難しくなるでしょ。

ただし、そんな演説をぶっていたXだけど、やってることは単なるクズなんだよね。警備員を拉致して電車にひかせて始末するとか、ただの残忍な奴になっちゃってるし。
これが「自分たちを迫害した連中」とか「金持ちや権力者」を始末していくならともかく、ただの警備員だからね。
麻薬を試すために女を拉致するってのも、弱者を犠牲にしているわけで。
だから、「ジョンが始末する街のダニに合わない」という問題は回避できているけど、それなら最初の演説は邪魔なだけでしょ。誰かが「偉そうなこと言ってるけど、やってることは単なるクズだぜ」と看破するわけでもないんだし。

そもそも、弟と仲間をジョンに殺されたXが「50万ドルの現金を強奪して麻薬を買い、新しい秩序を作って街を征服するのだ」と訴えて、その流れで「共に勝ち取ろう。倒そう。エクスターミネーターも」と言うのは、上手く繋がっていないんだよな。
弟を殺された流れからすると、「エクスターミネーターを始末してやる」という復讐心を訴えるべきだろう。
でも、なぜか「スティッチたちは犬死した、貧民街に生まれただけで動物扱いだ」と、弟が殺されたことを差別に結び付けている。
だけど弟は強盗してジョンに始末されただけだから、そこに差別は全く関係してないでしょ。講釈の論理がメチャクチャだわ。

Xの掲げる「50万ドルの現金を強奪して麻薬を買い、街を征服する」という目標と、「エクスターミネーターを倒す」ってのも、全くの別問題でしょ。
その両方を「当然の権利を戦い取ろう。共に勝ち取ろう。倒そう。エクスターミネーターも」と、同じ計画の一環として訴えるのは無理があり過ぎるわ。
そこを組み合わせたいのなら、「Xが町を征服するために大金の強奪を計画した」→「それをジョンに邪魔されて計画が狂ったから怒りを燃やす」という流れにすべきじゃないかと。

Xの一味が現金を強奪し、警備員を連行して始末している間、ジョンは何もやっていない。そして後から木の上の見張りの奴を殺すだけ。
そいつに気付き、そこへ行っているってことは、もうアジトも分かっているはずだろ。なんなら警備員が連行されたのも分かっていたんじゃないのか。
それなのに、また今回も犠牲が出るのを放置したのかよ。
女が拉致されて麻薬を注射された時も、ジョンは全く知らず、ビージーと楽しくお喋りしている。もちろん知らなきゃ動くことも出来ないのだが、でも見張りを殺しているってことは、その気になれば一味がいる場所は簡単に突き止められるはずだ。
つまり、彼はそこまで本気で一味の撲滅に乗り出していないってことなのだ。

ジョンが処刑人から足を洗い、静かに暮らそうとしていたのなら、キャロラインが襲われるまで本気で戦わないってのも分かるのよ。でも、序盤からエクスターミネーターとしての活動を復活させているわけで。
それなのに「たまにチンピラを始末するだけで、基本的には友人や女と仲良くやってるだけ」ってのは処刑人失格でしょ。
Xの組織が犯罪を繰り返していることは分かっているはずなんだから、一刻も早く撲滅するために全力を注げよ。
エクスターミネーターとしての復活したのなら、それがテメエの取り組むべき仕事だろ。友人や女とチンタラやってる場合じゃねえだろ。

キャロラインが襲われるのは、ジョンがエクスターミネーターだとバレて、その恋人だから標的にされるわけではない。ジョンが輸送車を襲った時に体当たりしてきた男だと誤解され、その恋人だからキャロラインが襲われるのだ。
もちろん襲ったXの一味が悪いのは当たり前なんだけど、ビージーが体当たりし、ジョンにトラックを貸していなかったら、キャロラインが襲われることは無かったはずだ。
つまり、ある意味では、ビージーのせいってことになるわけで。
そう考えると、どうにもモヤモヤしたモノが残る。

なぜ単純に、「ジョンが標的になって、その恋人だからキャロラインが襲われる」という形にしておかなかったんだろうか。
っていうか、それはそれで「ジョンが何も考えずにキャロラインと付き合っていたのが悪い」ということになっちゃうので、それよりも「ジョンやビージーとの繋がりは関係なしに、ランダムな標的としてキャロラインが襲われる」という形にでもしておけばいいのよ。
何だったら、拉致されて麻薬を注射される女をキャロラインにしておけばいい。
そうすれば、「麻薬を打たれた女の存在をジョンが全く知らず、ずっと放置されたままになってしまう」という問題も解消されるわけだし。

っていうかさ、「キャロラインが半身不随にされたから怒りに燃える」とか「ビージーが殺されたから怒りに燃える」というのを動機にしちゃうと、「街のダニを退治する」という目的が「復讐する」という目的に摩り替ってしまうんだよね。それはエクスターミネーターの存在意義に関わることだから、ものすごく大きな問題なのよ。
前作でジョンが最初に殺人を遂行したのは「親友が襲われたから」ってのが動機だったけど、エクスターミネーターを名乗ってからは復讐と無関係に「悪党を退治する」ってのを目的に掲げていたはずでしょ。
だったら今回は、そこを貫くべきじゃないのか。
なんで最初は悪党退治の処刑人として復活しておきながら、途中から復讐者になるという先祖返りをしちゃってるんだよ。

あと、そもそも一味がジョンじゃなくてキャロラインの方を襲っている意味が良く分からないんだけどね。
その気になればジョンを襲うことも出来たはずなので。キャロラインを襲って満足しているけど、本当の狙いはトラックを運転していたジョン(実際はビージーだけど)のはずでしょ。アパートは突き止めてあるんだから、なぜ彼を攻撃しようとしないのかサッパリ分からんよ。
そんで、Xは体当たりの恨みで行動する一方、序盤から「弟を殺したエクスへの恨み」を口にしているのに、そこに関する話は全く進展が無いんだよな。
麻薬組織に情報提供を求めて軽く受け流され、そのまま何の情報も貰えていないし。

ジョンとビージーが麻薬取引の行われているブルックリンの第3桟橋へトラックで乗り込むのは、本来ならクライマックスに配置すべきだと思うような展開だ。
ところが、そこでジョンたちはXの一味を全滅させることが出来ず、それどころかビージーが殺されて撤退している。
いやいや、ジョンが怒りに燃えて復讐を決意したのなら、ちゃんと結果を出そうぜ。
麻薬取引は妨害しているけど、ほぼ失敗と言ってもいいぞ。

その後に「キャロラインも殺される」という展開があって、「ジョンが怒りに燃えて行動する」という流れに繋げているけど、そもそもキャロラインが再起不能にされて怒りに燃えたはずでしょうに。
その後に、また「怒りに燃えて云々」という展開を用意しちゃったら、キャロラインが大怪我を負わされた出来事が無意味になっちゃうよ。
そして、キャロラインが殺されると、ビージーの死も無意味になってしまう。
「ビージーの弔い合戦」という動機が無くなるのでね。

さすがは悪名高きキャノン・グループの作品と言うべきか、撮影に入る前の準備期間は10日程度しか無かったらしい。
しかも、充分な準備期間を与えず撮影に突入させた上、ゴーラン&グローバスは完成したフィルムが気に入らず、映画監督でもある脚本担当のウィリアム・サックスに追加撮影を指示して勝手に内容を編集している。バッサリとカットされてしまったシーンもあり、ロバート・ギンティーは公開されたバージョンに不満を抱いていたようだ。
なお、映画が公開された4年後の1988年には、製作の舞台裏に迫ったビデオ『メイキング・オブ・エクスタミネーター2』が発売となった。
どこに需要があると思ったんだろうか。

(観賞日:2015年5月28日)

 

*ポンコツ映画愛護協会