『エクスペンダブルズ2』:2012、アメリカ

ネパール。傭兵部隊“エクスペンダブルズ”のバーニー・ロス、リー・クリスマス、イン・ヤン、ガンナー・ヤンセン、ヘイル・シーザー、トール・ロードは拉致された中国人富豪チョウを救出するため、テロ組織の要塞に乗り込んだ。チョウが監禁されている部屋に入ると、民間軍事会社の経営者トレンチの姿もあった。彼もチョウの救出を依頼されたが、組織に捕まっていたのだ。バーニーたちはトレンチにも銃を渡し、要塞から脱出する。外で待機していたエクスペンダブルズの新人隊員ビリーが、追って来る敵を狙撃して逃走を手助けした。輸送機で離陸したバーニーたちは中国に到達し、インはチョウと共に降下した。
インを除くエクスペンダブルズの面々は、酒場で盛り上がった。そんな中、ビリーはバーニーに「話がしたい」と切り出し、外へ連れ出す。ビリーから「今月で傭兵の仕事は終わりにして、フランス人の彼女と結婚したい」と打ち明けられ、バーニーは最後の仕事を立派に遂行するよう声を掛けた。アジトに戻ったバーニーの前に、CIAのチャーチが現れた。エクスペンダブルズに貸しがある彼は、ある仕事をバーニーに依頼した。アルバニアのガサク山中で撃墜された中国の航空機から、 金庫の中身を回収しろというのだ。
チャーチはバーニーに、「ハイテクで守られた金庫のアクセスコードは120秒ごとに変更され、コードを間違えると爆発する仕掛けだ」と説明した。チャーチから「マギーという専門家を同行させる」と言われたバーニーは難色を示すが、断ることは出来なかった。輸送機で山中へ向かった一行は、ビリーを見張り役に立てて墜落機に入った。金庫の起爆スイッチが作動する中、マギーは金庫に入っていたケースを間一髪で回収した。
バーニーたちが墜落機を出て輸送機へ戻ろうとすると、武装組織がビリーを捕まえて待ち受けていた。ボスのヴィランは、ビリーとケースの交換を要求した。マギーが仕方なくケースを渡すと、ヴィランはヘリコプターの出発準備をさせる。バーニーたちが身を伏せていると、ヴィランはビリーにナイフを突き刺し、ヘリコプターで逃走した。ビリーは恋人への手紙をバーニーに託し、息を引き取った。バーニーからケースの中身を問われたマギーは、旧ソ連が5トン近いプロトニウムを蓄えていた鉱山の見取り図だと打ち明けた。
バーニーはヴィラン一味への怒りを燃やし、仇討ちを宣言する。チャーチからの連絡に、彼は「アンタは自分が手を汚す度胸は無いのさ。俺たちは手を引く」と告げる。ヴィランは鉱山の近くにある村から男たちを拉致し、採掘作業を強要していた。動けなくなった者は役に立たないので、容赦なく抹殺された。人手不足を腹心のヘクターから聞かされたヴィランは、女子供も集めろと命じた。見取り図を確認したヴィランは、3日でプルトニウムを取り出せとヘクターに命じた。
バーニーたちは追跡していた信号が途絶えたため、飛行機を着陸させる。一行は車で近くの村に入り、バーニーとクリスマスだけが酒場へ赴いた。屈強な男たちが襲って来るが、2人は軽く叩きのめす。マギーの拷問により、ビリーを殺した一味がサングという武装犯罪組織であり、山の東側を支配していることを男たちは白状した。バーニーはクリスマスに、トラックで機内から武器を取って来るよう指示する。残りの面々は移動し、旧ソ連の陸軍が演習に使っていた街で宿泊した。
翌朝、バーニーたちサングがいる地域を目指して出発しようとする。だが、宿泊した建物を組織の一部が襲撃してくる。バーニーたちは弾切れで窮地に陥るが、どこからか激しい銃撃があり、敵は全滅した。警戒しているバーニーたちの前に、銃撃を行った男が姿を現した。それは死んだという噂のあった伝説の傭兵、デッカーだった。ブッカーと知り合いのバーニーは、仲間たちを彼に紹介する。バーニーが助けを求めると、ブッカーは「悪いが、俺は一匹狼なんだ」と断った。しかし「近くに村がある。みんなヴィランを憎んでる。手を貸してくれるかも」と彼は教えてくれた。
バーニーたちはクリスマスと合流し、ブッカーに教えてもらった村へ行く。村に入った途端に銃撃を浴びるが、下手なので全く命中しない。バーニーたちが助けに来たことを訴えると、物陰から出て来たのは女性ばかりだった。リーダー格のパイラーはバーニーを建物の中に案内し、地下に隠れさせている幼い男児たちの姿を見せた。ヴィラン一味が拉致に来たのだと思い、銃撃したのだという。パイラーはバーニーたちに、ヴィラン一味が男たちを連れて行って鉱山で働かせ、もう残っているのは幼い男の子だけだと説明する。
バーニーはパイラーから「村に残って手を貸してほしい」と頼まれるが、「俺たちには、やることがあるんだ。すまない」と口にした。しばらくして、組織の連中を乗せたトラックが来る。しかし隠れて待ち伏せていたバーニーたちが、一味を全て始末した。ヴィラン一味はプルトニウムを発見し、全て取り出した。するとヴィランは、働かせていた村人たちを生き埋めにするよう指示し、自らは退散した。バーニーたちは鉱山の様子を観察し、輸送機で突撃する…。

監督はサイモン・ウェスト、キャラクター創作はデヴィッド・キャラハム、原案はケン・カウフマン&デヴィッ・アゴスト&リチャード ・ウェンク、脚本はリチャード・ウェンク&シルヴェスター・スタローン、製作はアヴィ・ラーナー&ケヴィン・キング=テンプルトン&ダニー・ラーナー&レス・ウェルドン、共同製作はロバート・アール&ジブ・ポヒマス&マット・オトゥール&ガイ・アヴシャロム&ジギー・カマサ、製作総指揮はジョン・フェルトハイマー&ジェイソン・コンスタンティン&イーダ・コーワン&ベイジル・イヴァニク&ガイモン・キャサディー&ダニー・ディムボート&トレヴァー・ショート&ボアズ・デヴィッドソン、撮影はシェリー・ジョンソン、編集はトッド・E・ミラー、美術はポール・クロス、衣装はリズ・ウォルフ、音楽はブライアン・タイラー。
出演はシルヴェスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、アーノルド・シュワルツェネッガー、ブルース・ウィリス、ジャン=クロード・ヴァン・ダム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン、チャック・ノリス、テリー・クルーズ、ランディー・クートゥア、リアム・ヘムズワース、スコット・アドキンス、ユー・ナン、アマンダ・オームス、カリスマ・カーペンター、ニコレット・ノエル、ジョージ・ズラタレフ、アレクサンダー・モスコフ、デニス・ヴァジリフ、ニコラ・ドドフ、ウェンディー・リー、ボリスラフ・ザハリエフ、ペンカ・コドワ、アルカナイ・ブーンソン、ディモ・アレキエフ他。


2010年の映画『エクスペンダブルズ』の続編。
前作が公開される前から、シルヴェスター・スタローンの中では既に続編の構想があったらしい。前作では彼が出演だけでなく脚本と監督も兼ねていたが、今回は監督を『ストレンジャー・コール』『メカニック』のサイモン・ウェストに任せている。
バーニー役のスタローン、クリスマス役のジェイソン・ステイサム、イン役のジェット・リー、ヘイル役のテリー・クルーズ、ガンナー役のドルフ・ラングレン、トール役のランディー・クートゥア、レイシー役のカリスマ・カーペンターは、前作から引き続いての出演となる。
前作ではアンクレジットで1シーンのみの登場だったトレンチ役のアーノルド・シュワルツェネッガーのチャーチ役のブルース・ウィリスは、今回は正式な形で出演している。他に、ヴィランをジャン=クロード・ヴァン・ダム、ブッカーをチャック・ノリス、ビリーをリアム・ヘムズワース、ヘイルをスコット・アドキンス、マギーをユー・ナン、パイラーをアマンダ・オームスが演じている。
前作でツールを演じていたミッキー・ロークも続投予定だったが、他の映画を優先して降板したらしい。

前作を見た時に、私はまずキャスティングに不満を抱いた。
傭兵部隊は全てアクション俳優で固めるべきだったと思ったのだ。
だから、その中にテリー・クルーズやランディー・クートゥアが混じっていることには、違和感を覚えた。
今回も彼らは登場しているが、前作で傭兵部隊のメンバーとして登場してしまっているので、今さら外せとは言わない。
それよりも新たに加わる仲間のキャスティングがどうなっているかってのが重要な問題になる。

で、今回の作品で新たに加わったメンバーについては、大歓迎できるキャストもいれば、そうでない人もいる。
まずチャック・ノリスについては、ものすごく嬉しい。そもそも「なぜ1作目でオファーを出さなかったのか」と思っていたぐらいだ。
ヴァン・ダムに関しては、1作目でオファーを断っておきながら、大ヒットした途端に「続編には俺も出してくれ」と言って来る辺り、かなりセコい。でもヴァン・ダムって、そういう奴だ。むしろ「それでこそヴァン・ダム」と言いたい。
ちょっと脱線した感じだけど、彼の出演も嬉しい。
この2人に関しては、「かつてのアクションスター」なので、もちろん大歓迎である。

リアム・ヘムズワースは、アクション映画のイメージが全く無いし、まだ『マイティ・ソー』に出ていた兄貴のクリス・ヘムズワースならともかく、そのキャスティングは違うんじゃないかと観賞する前は思っていた。
しかし実際に映画を見てみると、ビリーというキャラはいわゆる「やられ役」なので、「それなら、まあいいか」と納得した。
前半で簡単に殺されちゃう役をアクションスターにやらせるのは、ちょっと失礼だもんね。
スコット・アドキンスに関しては、地味なキャスティングだけど、悪くないと思う。
そもそも演じるのが「敵組織のボスの右腕」というボジションであり、「マジな格闘アクションをやるけど、最後は倒される」という役回りだ。
前作ではゲイリー・ダニエルズが担当していた役回りだが、だから「アクションスターじゃないけど、ちゃんとアクションの出来る俳優」を起用しているのは正解だ。

で、問題はユー・ナンである。
『スピード・レーサー』でピ(レイン)が演じていたテジョ・トゴカーンの妹役だった女優だけど、それは調べた結果として分かったことであり、最初に名前を聞いた時点では「誰だよ」と言いたくなった。
中国での配給に絡んで、中国人の俳優を出演させなきゃいけないという制約があったらしいんだけど、それにしても、もっと他に誰かいなかったのか。
っていうか、そもそも女性キャラなんか要らんし。よりによって役名がマギー・チャンってのも、ますます印象が悪いぞ。
で、そこまで違和感を抱かせて登場しているマギーというキャラクターだが、その必要性の薄さたるや、ハンパないんだよな。お色気要員ってわけでもないし、アクションでの活躍も少ないし。

これは基本的に、アクション俳優たちのオールスター映画なのである(だからこそ前述したように、配役には前作から不満があったのだ)。
そんなわけだから、「どんなメンツを揃えるのか」「集めたアクション俳優たちに対して、どのような役柄を与え、どのような見せ場を用意するのか」という2点が、ものすごく大きなウエイトを占めている。
1つ目のポイントについては既に説明した通りで、チャック・ノリスとヴァン・ダムに関しては充分に満足できる。

で、2つ目のポイントに移ろう。
まずチャック・ノリスの扱いに関しては、何の文句も無い。何しろ、彼だけは登場曲(なぜか本人は出演していない『続・夕陽のガンマン』のテーマだが)を用意されているという特別扱い。
デッカーというキャラクターだけでなく、チャック・ノリスという俳優を「伝説の存在」として丁重に扱っているわけだ。
そもそも役名も彼の主演作『暗黒殺人指令』から取っているぐらいで、リスペクトを感じさせる。
あと、「猛毒を持つコブラがチャック・ノリスに噛み付いた。5日間も苦しんだ後、コブラが死んだ」というチャック・ノリス・ファクトを本人に言わせる遊びには、ニヤニヤしてしまう。

チャック・ノリスの次に扱いが良いのは、わずか5日で出演シーンの撮影を終えたシュワルツェネッガーだろうか。扱いが良いっていうか、イジられキャラになっている印象だけど。
トレンチが「I'll be back」と言ったり、ヘイルから「俺の銃を壊したら溶鉱炉で溶かすぞ」と言われたり、バーニーたちの元に掘削機を使って現れたりと、かつての彼の出演作を連想させるネタが仕込まれている(セリフ2つは『ターミネーター』シリーズ、掘削機は『トータル・リコール』に引っ掛けたネタ)。
セリフを使ったネタとしては、ブルース・ウィリスが「I'll be back」を使いすぎるシュワルツェネッガーに「戻り過ぎだ」とツッコミを入れ、それに対してシュワルツェネッガーが「イピカイエー(yippee yi yea)!」と『ダイ・ハード』のセリフを口にするというシーンもある。
シュワルツェネッガーだけでなく、スタローン関連でも、リーが顔を腫らしたバーニーに「ボクシングを習った方がいいぞ」と声を掛けるシーンがある(もちろん『ロッキー』に引っ掛けたネタだ)。

ジェイソン・ステイサムはスコット・アドキンスとのタイマン勝負が用意されているなど、配役序列も2番目だから当たり前っちゃあ当たり前だが、前作に続いて、いい扱いをされている。
ヴァンダボー先生も、得意の回し蹴りを見せるし、スライとのタイマン対決がクライマックスだし、「悪党のボス」として、ちゃんと扱われている。
ドルフ・ラングレンは、何となくコミカルな役回りになっているけど、それなりに存在感は示している。
テリー・クルーズとランディー・クートゥアに関しては、単なる数合わせに過ぎないことが前作で露呈しているので、もはやどうでもいい。

予想外だったのはジェット・リーの扱いで、なんと中国人富豪と一緒に降下して、そのまま退場してしまう。
つまり最初のシーンしか出演していないのである。
これには裏事情があって、彼は他の作品(たぶん『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』かな)の撮影が入っていたので、ほとんどスケジュールが取れなかったらしい。
それにしたって、せめて最後ぐらいはバーニーたちと同席すべきでしょ。
序盤で姿を消して、彼が戻らないままでエンディングって、んなアホな。

「ドラマなんて二の次、三の次。っていうか、いっそのこと無くてもいい」という企画なので、ストーリーが浅く薄くても、それは大した問題ではない。
しかし前作の場合、さすがにシナリオが雑すぎて、何度も引っ掛かりを感じ、ものすごくストレスを感じた。
それに比べると、今回はストーリー部分でのストレスが遥かに少ない。
酒場のシーン、宿泊するシーン、鉱山に閉じ込められて脱出するまでのシーンで間延びしてダラダラしちゃうのはマイナスだが、あまり引っ掛からずに観賞することが出来る。

前作は大いに不満があったが、今回はアクション俳優のオールスター映画として、かなり満足できる仕上がりになっている。
「基本的にはポンコツだけど、すげえ面白い」と思わせる典型的な映画だと言ってもいい。
ただし、あくまでもチャック・ノリスが登場したら喜べるような人だけが楽しめる映画であり、観客を選ぶマニアックな作品であることは確かだけどね。
時代の移り変わりを考えると、もはや「アクション映画は好きだけど、チャック・ノリスなんて知らない」という人も多いだろうしなあ。

(観賞日:2013年3月17日)

 

*ポンコツ映画愛護協会