『アーネスト モンスターと戦う!』:1991、アメリカ
その昔、ミズーリ州ブライアーヴィル。ヨーロッパから新大陸にやって来たトロールのトランターが、村の子供たちを次々に餌食としていた。牧師のフィニス・ウォレルと村人たちはトランターを捕まえて穴に埋め、樫の木を植えて封じ込めることにした。トランターは「いずれ、お前の祖先が俺を解き放つ。その時こそ勝利は俺のものだ」と強気に言い放った。そんな伝説を、現在の小学生エリザベスが授業で発表した。マードック市長の息子であるマットや弟のマイクたちは「デタラメだ」と馬鹿にするが、エリザベスに好意を寄せるケニーだけは「いい発表だよ」と彼女を擁護した。
エリザベスは担任教師の質問を受け、フィニスの祖先がトランターの呪いにより、バカでドジでマヌケになっていくことを話す。フィニスの祖先であるアーネストは、ブライアーヴィルで清掃員として働いていた。改造清掃車で作業をしていた彼は、機械のトラブルで荷箱に閉じ込められてしまった。通り掛かったケニーとエリザベスは、アーネストの飼い犬リムショットの鳴き声で異変に気付いた。2人はアーネストをコンテナから救い出した。
ケニーの父である保安官のクリフは、市長から老女ハックモアの家を掃除するよう要請される。クリフが「アーネストが志願したので、行かせました」と言うと、市長は「今度しくじったらクビにしろ」と言う。クリフはアーネストがハックモア家とは反対方向へ向かっているのを発見し、早く仕事に行くよう注意した。アーネストがハックモア家に行くと、庭一面がゴミだらけだった。しかしハックモアは、それをゴミではなく芸術品と考えていた。彼女はアーネストがウォレル家の人間と知り、「お前は全ての者に災いをもたらす。すぐに立ち去れ、ここに近付くな」火炎放射器で追い払う。
エリザベスは空き地にお化け屋敷を作っており、ケニーと仲間のジョーイにプランを説明する。そこへマットとマイクが来て、お化け屋敷を破壊した。悔しくなったケニーは、アーネストに相談する。アーネストは「歴史が攻略法を教えてくれる。小国ボツワナはオスマン帝国を打ち負かした」と言い、詳しく説明する。それを聞いたケニーは、必要なのはツリーハウスだと理解する。アーネストはケニーたちを引き連れて森へ行き、樫の木に目を付けた。それが封印の木とは知らず、アーネストはそこにツリーハウスを作ることにした。彼が釘を打ち込んだことにより、封印は破られてしまった。
樫の木がある場所は、ハックモアの所有する敷地だった。異変を感じて森にやって来たハックモアは封印が解かれたのを知り、「恐るべき悪夢が蘇る。ここから逃げろ」と怯えながら立ち去る。アーネストが後を追った後、マット&マイクが現れてツリーハウスを攻撃する。だが、ケニーたちは準備していた装置を使い、兄弟を撃退した。日が暮れてから戻って来たアーネストは、ハックモアから「トロールが復活できるのはハロウィンの前夜で、ウォレル家の者が呼ぶ時だけだ」と聞かされたことを語る。それは今夜のことだ。しかしアーネストは全く信じておらず、トランターを呼び出す行動を取った。
怖くなった子供たちは、慌ててツリーハウスから逃げ出した。アーネストは復活したトランターを目撃し、腰を抜かした。ケニーたちと別れて帰宅しようとしたジョーイは、トランターに襲われて木彫りの人形に変えられた。アーネストはクリフと妻アマンダの元へ行き、「トロールを見た」と報告する。帰宅したケニーも「森で変なことが起きた」と言うが、クリフたちは全く相手にしなかった。トランターは人形を木の祠に飾り、魔族の芽を生み出した。
アーネストがハックモアの元へ行くと、彼女はトロールに関する書物を開いた。それを読んだハックモアは、明日の夜までにトランターが5人の子供を襲撃し、その力で魔の軍団を復活させようと目論んでいることを確信する。彼女はアーネストに、トロールを倒して子供たちを守れと促す。「そんなの無理だよ」とうろたえるアーネストだが、「トロールと戦えるのはウォレル家であるお前だけだ。お前は久々に現れた救世主だ」と言われ、やる気になった。
翌朝、アーネストは拡声器を持って町中を走り回り、トロールに注意するよう人々に触れ回る。だが、もちろん誰も相手にしなかった。安売り王のトムと兄のボビーがCMを撮影しているところヘ、アーネストが飛び込んだ。危機を訴えるアーネストに、トムはトロールの撃退グッズを売り付けた。ケニーとエリザベスがツリーハウスへ行くと、ジョーイそっくりの人形が祠に置いてあった。トランターの気配を感じた2人は、慌てて森から逃げ出した。
ケニーとエリザベスはアーネストの車を見つけ、ハックモアの家に駆けこんだ。追い掛けて来たトランターは、通り掛かった別の子供を襲って人形に変えた。ハックモアは「既に一人が犠牲になった。あの樫の木には今頃、芽がたくさん出来ている。それが地面に落ちれば、この世は終わりだ。あと4つの魂で魔族は蘇り、世界中の子供たちが狙われるようになる」と語る。彼女はトロールの詩の最後の部分にある「我を倒さんと欲せば持ち来たれ、幼子のハートと母の胸を」という言葉を引用し、「つまり子供の心臓が必要なのだ」と言ってケニーとエリザベスを震え上がらせた。
アーネストはコンテナを使った罠を仕掛け、ケニーとエリザベスに説明した。ケニーが帰宅すると、トロールのマスクを被ったマットとマイクが現れて脅かした。アマンダが車で戻って来たので、兄弟は走り去った。ケニーはクリフを捜してツリーハウスへ連れていくため、自転車で外出する。部屋にいたエリザベスは、侵入してきたトランターに襲われた。アーネストがスーパーで買い物をしている最中、店員のジミーはトランターの姿を目撃する。ジミーがショットガンを構えると、驚いたアーネストは手に持っていたコーヒー飲料のパックを後ろに投げる。こぼれたコーヒー飲料が床に広がる中、トランターは店から立ち去った。
ケニーは友人のグレッグと遭遇し、学校で開かれるハロウィン・パーティーのことを聞かされる。その時、エリザベスの声が聞こえてきた。それはトランターが声色を真似たものだった。トランターはグレッグを人形に変え、逃げ出すケニーを追う。しかし牛乳配達の車が通り掛かると、トランターは姿を消した。アーネストは警報システムが鳴り響いたので、「トロールを捕まえた」と興奮する。彼はコンテナを保安官事務所に運ぶが、中にいたのはマットとマイクだった。市長は「お前はクビだ。町から出て行け」と宣告した。
アーネストは車で森へ行き、樫の木に幾つもの芽が出来ているのを発見する。ハックモアの元へ行こうとした彼は、トランターに襲撃される。ドラム缶に尻から突っ込んだアーネストは、トランターに車から突き落とされ、通り掛かったトムの車に踏み潰された。ドラム缶から抜けなくなったアーネストは、そのままハックモア家を訪れた。アーネストが文献を調べると、トロールを倒す方法について記された箇所があった。だが、使う道具は「MI*K」とあり、*の部分が消えて読めなくなっていた。
また子供たちが狙われると確信したハックモアは、急いで小学校へ向かう。小学校では仮装コンテストが開かれようとしていた。学校の前で母子の様子を目にしたハックモアは、「無条件の愛情。まさに幼子のハートだ」と呟いた。コンテスト会場に飛び込んだアーネストは、「トロールが来る。早く逃げろ」と叫ぶが、誰も相手にしなかった。しかし壇上にトランターが現れ、マットを人形に変えた。
人々がパニック状態で逃げ出す中、アーネストは「MIAK」という薬品を使おうとする。しかしトランターは全く臆せず、アーネストを吹き飛ばした。アーネストは食品スタンドに激突し、ソフトクリームまみれになった。トランターは飛び掛かって来たリムショットを一蹴し、アーネストに襲い掛かろうとする。しかしアーネストが怖がっていると、トランターは何もせずに逃亡した。アーネストはケニーから、変わり果てたリムショットの姿を見せられる。彼は怒りに燃え、トランター退治に向かう。一方、ケニーはトロールの弱点がミルクだと悟り、クラスメイトたちと共に行動を開始する。森に戻ったトランターは最後の人形を飾り、魔族を復活させる…。監督はジョン・チェリー、原案はジョン・チェリー&コーク・サムズ、脚本はチャーリー・ゲイル&コーク・サムズ、製作はステイシー・ウィリアムズ、共同製作はコーク・サムズ、製作協力はフィル・ウォルデン、製作総指揮はマーティン・アーリックマン、撮影はハナニア・ベア、編集はクレイグ・バセット&クリス・エリス、美術はクリス・オーガスト、衣装はショーン・バリー、音楽はブルース・アーンストン&カービー・シェルスタッド。
主演はジム・ヴァーニー、共演はアーサ・キット、ビル・バージ、ジョン・ケイデンヘッド、オースティン・ネイグラー、シェイ・アスター、ジョナス・モスカートロ、ダニエル・バトラー、ラリー・ブラック、アレック・クラッパー、リチャード・ウールフ、ニック・ヴィクトリー、スティーヴン・モリヨン、エスター・ハストン、デニース・ヒックス、メラニー・ウィーラー、ジャッキー・ウェルチ、マーク・デラバル、マイク・モンゴメリー、メアリー・ジェーン・ハーヴィル、ローレン・フランケンバック、ロバータ・マディソン他。
ジム・ヴァーニー演じるオツムの弱いオッサン、アーネストが活躍するシリーズの第4作。
ハックモアを演じたのは、歌手としても数々のヒット曲を持つアーサ・キット。
ボビーをビル・バージ、トムをジョン・ケイデンヘッド、ケニーをオースティン・ネイグラー、エリザベスをシェイ・アスター、トランターをジョナス・モスカートロ、クリフをダニエル・バトラー、市長をラリー・ブラック、ジョーイをアレック・クラッパー、マットをリチャード・ウールフ、マイクをニック・ヴィクトリーが演じている。アーネストというのは元々、ジム・ヴァーニーがジョン・チェリーと共に考え出し、多くのテレビCMで使用されていたキャラクターだ。
その後、この映画シリーズだけでなく、1985年の映画『ドクター・オットー/謎の超時空要塞』、ビデオ作品、TVシリーズなどでもジム・ヴァーニーはアーネストを演じている。
日本に入って来た「アーネスト」の映画は本作品が最後だが、本国のアメリカでは1988年の『Ernest in the Army』まで続いた。アーネスト・P・ウォレルはノータリンで騒がしく、子供じみたところの多いオッサンだ。
「中身が子供の大人」と言えば、ロビン・ウィリアムズが得意とするキャラクターだが、その知能レベルをもっと下げて、もっとウザくした感じとでも言えばいいだろうか。
同じ目線で接してくれるからなのか、子供たちとは仲良しだ。ただし、いじめっ子タイプの子供からはバカにされる。
当然、大人たちもバカにしている。
語弊があるかもしれんが、ようするに知的障害者のおっちゃんみたいなキャラクターだな。アーネストは、罪悪感や責任感、正義感によって行動しているわけではない。
トロールの危機を人々に訴え掛けるのも、「トランターの封印を自分が解いたせいで子供たちが狙われているから、何とかしないと」という意識による行動ではない。「町の平和を守るために全力で戦おう」ということでもない。
「救世主だ」と言われて嬉しくなり、みんなからヒーローとしてチヤホヤされたい一心で行動するのだ。
後半、リムショットが人形にされたところでは、さすがに「怒りに燃えて戦う」という別の動機が生じているが、ようするに彼にとって「誰かのために」というのがモチベーションになるのは、飼い犬だけってことだね。アーネストというキャラクターは、とにかく良く喋る。言葉数が多い。
だが、全盛期のエディー・マーフィーのようなマシンガン・トークというわけではないし、毒舌を吐くわけでもない。
タランティーノ的にマニアックなネタを挟んでくるわけでもない。
特に面白くもないようなことを、ただ騒がしく話すだけだ。
だから、「やたらと喋る」というのが、喜劇キャラとしての魅力には繋がっていない。幼稚園児や小学校低学年を主なターゲットとした低年齢層向けのコメディーなので、過激なことはやらないし、エッチなネタも使わない。
毒やトゲは全て排除した、とても健全なコメディー映画だ。
上品なテイストだとか、エスプリが効いているいるとか、もちろん、そういう類の喜劇ではない。
おバカなドタバタが突き抜けているわけでもない。
簡単に表現するならば、とてもヌルくて薄味のコメディーだ。アーネスト、っていうかジム・ヴァーニーの得意技の1つは顔芸。
でもジム・キャリーほどクレイジーってわけではなく、これもやはりヌルいレベルに留まっている。
例えば、アーネストがコンテナの罠を仕掛けるシーン。立ち去ろうとしたアーネストは、蓋に手を挟まれる。
「んっ?」という表情で振り向き、またカメラの方に向き直り、もう一度振り向く。
で、正面を向いてから、「ギャー!」と絶叫して痛がる。
そういうノリが全編に渡って繰り広げられると思えばいい。アーネストの、もう1つの得意技が七変化。 ケニーにボツワナとオスマン帝国の戦いを語るシーンでは、兵士や婦人、農夫や木こりなど様々な人々に変身し、その人に成り切って芝居をする。
それを見ているケニーは楽しそうだが、こっちは何一つ楽しくない。
アーネストが七変化しても、ただ色んな人を演じているだけであり、特に面白いことを喋るわけではないので、そこに笑いが見つからない。
終盤、トロール軍団と戦う時にも再び七変化があるが、同じことの繰り返しなので、もちろん笑いは無い。ようするに、たぶんアーネストのキャラクターをアピールしているであろう箇所が、何の笑いも発信しておらず、魅力を発揮することにも繋がっていないのだ。
でも、幼い子供たちは、この程度でも喜んだんだろうなあ。だからこそ、シリーズが長く続いたんだよな、たぶん。
まあねえ、幼い子供って、ものすごく単純なことでキャッキャ言って喜んだりするしね。
幼児の笑いのツボを刺激する映画に関して、オッサンの感覚で批評すること自体が間違っているんだろうな、きっと。(観賞日:2013年6月15日)