『エンダーのゲーム』:2013、アメリカ

50年前、異星生命体“フォーミック”が地球を襲った。数千万人が死亡したが、偉大な指揮官の犠牲によって全滅は免れた。それ以来、再襲撃に備えて国際艦隊(IF)は世界中から天才児を集め、希望を託した。エンダー・ウィッギンがコンピュータの戦闘ゲームを行っている様子を、IFの訓練長官であるハイラム・グラッフ大佐とグウェン・アンダースン少佐がスクリーン越しに観察していた。グラッフが「間違いない、あの子だ」と言うと、グウェンは「彼の兄の時にも同じことを」と指摘する。グラッフは「兄の失敗には理由があった。戦術的な能力とは関係ない」と説明した。
エンダーが勝利を収めると、対戦相手であるスティルソンは「ズルをした」と非難する。エンダーが落ち着き払って受け流すと、彼は再戦を要求した。エンダーは「また明日」と告げ、その場を後にした。診療所へ来るよう植われたエンダーが出向くと、女医は首の後ろに装着されているモニターを外すのだと話す。エンダーが「僕は失格?」と尋ねると、女医は「モニターを外して次へ進むのよ」と述べた。彼女はエンダーを診察台に固定し、モニターを切除した。
診療所を出たエンダーは、スティルソンと取り巻き2人に待ち伏せされる。スティルソンから喧嘩を吹っ掛けられたエンダーは、隙を見て殴り倒した。エンダーはスティルソンの腹を何度も蹴り付け、取り巻き2人組を威嚇した。そんな彼の様子も、グラッフは観察していた。帰宅したエンダーは、姉のヴァレンタインに喧嘩のことを話す。「ピーターに似て来た」と彼が泣きながら吐露していると、兄のピーターが現れた。彼は「大金を使ったサードまで落第とはね」と馬鹿にした態度を取り、「俺こそ優秀だ」とエンダーの首を絞めた。
エンダーの父であるジョンは、テレビでキャスターが「深宇宙の探査によれば敵艦隊の規模は第一次侵略の十倍であり、増強された艦隊は制圧せねば死あるのみ」と話す様子を熱心に見ている。彼は妻のテレサから「テレビを消して」と言われると、「情勢を知るべきだ」と口にする。エンダーは落第について、「家族に恥をかかせた」と責任感を吐露する。テレサは彼を励まし、ジョンにも何か声を掛けるよう促した。しばらく黙っていたジョンだが、最終的にはエンダーを擁護した。
グラッフはグウェンを伴ってウィッギン家を訪れ、エンダーにスティルソンを蹴り続けた理由を質問した。エンダーが「圧勝なら、もう襲われない」と答えると、グラッフは「プログラムに参加しろ」と言う。「モニターは?」とエンダーが訊くと、グウェンは「外した後の行動を見るのが最終評価よ」と説明した。グラッフはエンダーに、「先の戦いでは、メイザー・ラッカム指揮官が人類の滅亡を防いだ。君のような頭脳が必要だ。君は卒業だ。バトル・スクールへ来てほしい」と語った。
エンダーはシャトルへ乗り込み、同期の新入生であるビーンやアーライたちと共に宇宙へ飛び立った。バトル・スクールへ向かう途中、無重力の中で浮いているグラッフを見たエンダーは笑った。その理由を問われたエンダーは、「無重力では上下が無く、僕らが水平かも」と言う。グラッフから「面白いか」と問われた他の新入生たちは、真面目な顔で「いいえ」と否定した。するとグラッフは、「今の所、頭がいいのはエンダーだけだ」と述べた。他の生徒たちの視線を感じたエンダーは、すっかり嫌われたと確信した。
バトル・スクールに到着すると、新入生は居住区へ行くよう指示された。エンダーが遅れて兵舎に入ると、新入生のバーナードは他の生徒を束ねていた。彼はエンダーを敵視し、最も不便な場所のベッドを彼に残していた。教官のダップ軍曹が兵舎に来て、そこでの規則を厳格な態度で説明した。グラッフは無重力空間であるバトル・ルームに、新入生たちを入れた。ダップは「他のチームと戦うための訓練を行う。手足を撃てば1点。胴体なら6点。士官候補生が無傷で敵のゲートを通れば、そのチームの勝利だ」と述べた。
エンダーたちはフォーミックの攻撃パターンで映像で学んだり、格闘術の稽古を積んだりする。彼はグラッフから皆を率いるよう言われ、困惑を隠せなかった。グラッフは新入生に「上級生の数名が基準に達せず、地上に戻される。君らの何名かをコマンド・スクールに昇格させるかもしれない」と告げ、互いをライバル視するよう求めた。エンダーは彼に、姉へのメールが届かなくなっていることについて質問した。グラッフは通信を一時的に遮断していることを明かし、反発するエンダーに従うことを強要した。
エンダーが夜中にベッドで携帯端末の心理ゲームを始めると、その様子をスクリーンで観察していたグウェンがグラッフに報告した。彼女が「ゲームで心が分かる。感情を面接で調べる代わりです」と言うと、グラッフは「感情に興味は無い。強い指揮官になれば」と告げる。グウェンは「不満にどう対処するか見ましょう」と述べ、エンダーの様子を観察する。そのゲームはネズミが主人公で、エンダーは巨人に二択を迫られる場所へ辿り着いた。どちらを選んでもネズミが死ぬことを知ったエンダーは、巨人を攻撃して始末した。彼は隣で見ていたビーンに、「規則に従えば死。暴力なら勝利」と軽く告げる。それを見たグラッフは、「彼は完璧だ」と満足そうに言う。
グラッフはエンダーに、サラマンダー隊への昇格を通達した。サラマンダー隊のペトラやディンクはエンダーを歓迎するが、指揮官であるボンソーは「オライリーの代わりが、役立たずのガキかよ。すぐにトレードだ」と嫌悪感を露わにする。彼は「戦う時は、お前が最後にゲートを通れ。その付近から動くな。ゲームが終わるまで武器は抜くな」と要求する。ペトラはボンソーに内緒で、自由時間にエンダーの個人レッスンをしてくれた。それを知ったボンソーが激昂すると、エンダーは彼を呼び出して脅しを掛けた。
バトル・ルームのゲームに突入すると、エンダーはボンソーの命令を無視してペトラの救助に向かった。彼は見事な活躍を見せてチームを勝利に導くが、そのことでボンソーの恨みを買った。グラッフはエンダーに、「自ら隊を指揮してみろ」と持ち掛けた。彼は一度も勝利が無いまま4年前に廃止したドラゴン隊を復活させ、その指揮官にエンダーを指名した。はみ出し者ばかりが隊員として選ばれ、その中にはビーンやアーライ、バーナードも含まれていた。
グラッフはグウェンに、「結論を出せと言われている。時間が無い」と打ち明けた。彼はドラゴン隊の初戦として、サラマンダー隊とレパード隊の2チームを相手にしたゲームを用意した。直前になって隊員のフライが捻挫で離脱すると、グラッフは代役としてペトラを指名した。エンダーは隊員たちに策を授け、見事な勝利を収めた。ますます憎しみを抱いたボンソーは、シャワー室でエンダーを襲撃した。エンダーは返り討ちに遭わせるが、ボンソーは頭を強く打ち付けて意識不明の状態に陥ってしまう。
エンダーが責任を感じていると、グラッフは「ボンソーが死ぬことは無い。治療のために、地球へ送り返す」と述べた。エンダーが「僕も行く。姉と話したい」と訴えると、グラッフは「それは無理だ」と却下する。しかしエンダーが「ダメなら辞める」と強い意志を示したため、仕方なくグラッフは承諾した。地球へ一時的に帰還したエンダーは、ヴァレンタインと再会した。説得を受けたエンダーは、メールを遮断しない確約をグラッフから取り付けた上で宇宙へ帰還した。エンダーは最終テストのため、IFがフォーミックから奪った惑星の基地へ向かった。そこで待ち受けていた教官は、死んだはずのラッカムだった…。

監督はギャヴィン・フッド、原作はオースン・スコット・カード、脚本はギャヴィン・フッド、製作はジジ・プリッツカー&リンダ・マクドナフ&アレックス・カーツマン&ロベルト・オーチー&ロバート・チャートフ&リン・ヘンディー&オースン・スコット・カード&エド・ウルブリッヒ、製作総指揮はビル・リシャック&デヴィッド・コートスワース&アイヴィー・チョン&ヴェンカテッシュ・ロッダム&テッド・ラヴィネット&デボラ・デル・プレト&マンディ・サファヴィー、製作協力はアーロン・ジョンストン、撮影はドナルド・M・マカルパイン、美術はショーン・ハワース&ベン・プロクター、編集はザック・ステーンバーグ&リー・スミス、衣装はクリスティーン・ビーズリン・クラーク、視覚効果監修はマシュー・E・バトラー、音楽はスティーヴ・ジャブロンスキー。
出演はハリソン・フォード、エイサ・バターフィールド、ベン・キングズレー、アビゲイル・ブレスリン、ヘイリー・スタインフェルド、ヴィオラ・デイヴィス、モイセス・アリアス、アラミス・ナイト、スラージ・パータサラシー、カイリン・ランボ、ジミー・ジャックス・ピンカク、コナー・キャロル、ノンソー・アノジー、トニー・マーカンダニ、カレブ・サガード、キャメロン・ガスキンズ、スティーヴィー・レイ・ダリモア、アンドレア・パウエル、ブランドン・ソー・ホー、カイル・クレメンツ他。


オースン・スコット・カードによる同名SF小説を基にした作品。
監督&脚本は『ツォツィ』『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』のギャヴィン・フッド。
グラッフをハリソン・フォード、エンダーをエイサ・バターフィールド、ラッカムをベン・キングズレー、ヴァレンタインをアビゲイル・ブレスリン、ペトラをヘイリー・スタインフェルド、グウェンをヴィオラ・デイヴィス、ボンソーをモイセス・アリアス、ビーンをアラミス・ナイトが演じている。

冒頭、エンダーのモノローグによって「50年前、異星生命体“フォーミック”が地球を襲った。数千万人が死亡したが、偉大な指揮官の犠牲によって全滅は免れた。それ以来、再襲撃に備えて国際艦隊(IF)は世界中から天才児を集め、希望を託した」ってことが語られる。
でも、なぜ子供限定で戦士を育てるのか、それが良く分からない。
「こういう理由で」という説明が用意されていないので、そんなことよりもフォーミックに対抗できる武器の開発に力を入れた方がいいんじゃないかと思ってしまう。
そして武器を扱う人間については、大人を訓練すればいいんじゃないかと思ってしまう。

映画を見ていても、「ガキンチョ限定じゃなきゃダメな理由」が全く分からない。
途中で格闘訓練のシーンが登場するが、そういう能力もフォーミックと戦うための備えとして必要であるならば、ますますガキンチョに限定するのが愚かしいと感じてしまう。
少なくとも格闘能力においては、大人の方が絶対にいいでしょ。そこに子供の優位性は何も無いぞ。
っていうか、バトル・ゲームにしても、やっぱり子供限定にしている意味が無い。グラッフは「若者は複雑なデータを易々と統合する」と語るが、何の説得力にも繋がっていない。

冒頭、エンダーはスティルソンとコンピュータ・ゲームで対戦している。
しかし、ルールなどの詳細は教えてもらえないので、エンダーが何をどうやって勝利したのか、スティルソンの「ズルをした」ってのは何を指しているのか、その辺りがサッパリ分からない。
当然のことながら、いかにエンダーの能力が優れているのかも全く伝わらない。
グラッフが「間違いない」と言ったり、満足そうな表情を浮かべたりしても、それだけでは説得力が無い。

エンダーがスティルソンを容赦なく蹴り付けるのは、「向こうから喧嘩を吹っ掛けられた上、取り巻きもいたから」という事情がある。家に帰ってから姉の前で泣いているし、だから単純に「野蛮な奴」ってことではないんだろう。
ただ、「オドオドしながら人殺しをやりそうなヤバい奴」「ある程度の繊細さはあるけど暴力的な衝動のある危険な奴」という印象を受ける。少なくとも好感は持てないし、主人公としての魅力を感じない。
そういう第一印象を与えておいて、ストーリーが進む中で魅力的な主人公に変化していくのかと思っていたが、まるで変わらなかった。
いや、厳密に言うと、変化はある。
ただし、ますます悪い方向への変化だ。

しかも、グラッフがエンダーだけを露骨にえこひいきするので、ますます応援できなくなる。
無重力状態で浮いた時に「僕らが水平かも」とエンダーが説明した程度で、「頭がいいのはエンダーだけ」とか他の新入生の前で言っちゃうのよ。
何しろグラッフは最初から「間違いない」とエンダーを指導者にすることは決めているので、その計画に従ってスピード出世させているだけなのよね。
エンダーが努力して成り上がっているわけではないのよ。

地球がフォーミックの襲撃を受けた時の様子は冒頭で短く描かれるし、エンダーたちがバトル・スクールに入学した時にもスクリーンに映し出される。
ただ、それは戦闘機部隊が上空に展開する様子だけであり、フォーミックという生命体の姿は全く登場しない。どういう生物なのか分からないまま、終盤まで話が進む。その正体に「実は」という意外性があるわけではない。
いっそのこと最後まで生物の正体を見せないまま進めるやり方もあるが、最後になって登場し、エンダーと絡む。
しかも「エンダーが同乗して云々」という展開で話を着地させるんだけど、だったらフォーミックがラストまで登場しないのは大きなマイナスだ。

エンダーには「サード」という設定があるのだが、説明不足なので何のことやらサッパり分からない。
「サードなんかに産まれたから」「許可は必要だったけど」と軽く台詞で触れる程度なので、エンダーが特別な子供であることは全く伝わらない。
本来なら「上に兄と姉がいる」ってのも重要な設定のはずだが(何しろ「サード」なんだから)、「姉は優しすぎて落第した。兄は乱暴すぎて落第した」という短い説明がある程度で、存在意義が乏しい。
だったら「サード」という設定も含めて、兄と姉を排除しちゃえばいいんじゃないかと。
それだと原作とは内容が大幅に異なるだろうけど、エンダーがサードである意味が見えないのよ。

新入生がバトル・スクールに入学した後、しばらくすると「深宇宙航海テストで合格者はアーライ、ビーン、エンダーの3名だけ」と女性教官が話すシーンがある。
だけど、いつの間に深宇宙航海テストが実施されていたのかサッパリ分からない。
どういうテストなのか、その3人がいかに優れていたのかも、当然のことながら全く伝わらない。
アーライとビーンはともかく、エンダーが優秀なのは早い段階で色々とアピールしていった方がいいはずなのに、そこが欠如している。

深宇宙航海テストの合格者が発表される授業では、バーナードが端末にエンダーを嘲笑するメッセージを書き込み、それをエンダーが嫌味で切り返すシーンがある。その後で食堂のシーンになると、他の新入生たちがバーナードのテーブルからエンダーの方へ移動する様子が描かれる。
だけど、そもそもエンダーが他の新入生から露骨に避けられていた印象が全く無かったので、そこの手順が死んでいる。
仲良くしているのはピーンぐらいだったけど、バーナードの嫌がらせは兵舎に入った時のベッドぐらいだし、他の全員が仲良くしているわけでもないので「エンダーだけが孤独」という印象は全く受けなかったのよ。
あとバーナードがエンダーを嫌っていたのはベッドのシーンで提示されているけど、「他の新入生を束ねている」という印象は乏しかったし。それに、授業で馬鹿にするメッセージを切り返しただけで他の全員が寝返るって、なんちゅう簡単な奴らなのかと思っちゃうし。

バトル・スクールに入った直後、グラッフはエンダーたちをバトル・ルームに案内し、ダップがゲームについて説明する。だから、その訓練が始まるんだろうと思っていたら、いつまで経っても描かれない。エンダーがサラマンダー隊に昇格して、初めてゲームのシーンが訪れる。
昇格しなきゃゲームに参加できないのなら、早い段階で説明した意味が全く無いでしょ。
あと、その説明もザックリしているので、いざゲーム本番のシーンが訪れても、どういう状況なのか、誰が何をやっているのかが全く分からない。
どうやらボンソーの指示を無視したエンダーは見事に活躍したようだが、それは本人の表情や周囲の反応から判断するしかない。実際に「エンダーが見事な作戦で活躍した」という印象は全く受けない。

ドラゴン隊として参加したバトル・ゲームでは、他の隊員がエンダーを包み込むようにして盾となり、「士官候補生が無傷でゴールする」という条件を満たして勝利する。
だけど、「幾ら他の方法で得点を稼いでも、士官候補生が無傷でゴールすれば勝利」ってのは最初から分かり切っていることだ。
なので、なぜ今まで他のチームが実践しなかったのかと思ってしまう。
まるでエンダーの作戦が今までに無い見事な発想のように描かれているけど、他の連中がボンクラだっただけにしか思えないのよ。

後半、エンダーがヴァレンタインに会うため、地球へ一時帰還する展開がある。
そこでヴァレンタインの存在意義を持たせているけど、「要らない」という印象は全く変わらない。
そんな手順を入れたせいで、後半になって地球のシーンが挿入されるのはマイナスでしかない。せっかく閉鎖された空間で話を続けて来たのに、そんなトコで中途半端な解放感とか要らないでしょ。
っていうか、実は「閉鎖された空間で話を進める」という構成も、どうかは思うんだけどね。ずっと訓練ばかりが続くので、盛り上がりに欠けるのよ。
エンダーが勝利を収めたところで、「所詮はゲームだし」と思っちゃうし。

グラッフが最終テストのためにエンダーを連れて行った基地には、ラッカムが教官として待ち受けている。
だけど、前回の戦いで敵を撃退したラッカムが生きているのなら、なぜ彼に司令官を任せず、エンダーを抜擢するのか。
「年寄りだから体力的に厳しい」ってのは、何の言い訳にもならないからね。なんせ実際に戦闘機を操縦して敵と戦うわけじゃなくて、基地のコンピュータで隊員たちに指示を出し、無人の飛行機を操るだけなんだから。
それを明確な実績のあるラッカムではなく、実戦経験ゼロのエンダーに委ねる理由は何なのかと。
人類の存亡が懸かったミッションなのに、そんなにリスキーな選択を取る意味がサッパリ分からんよ。

エンダーはグラッフは「これは最終テスト」と騙され、フォーミックの惑星を破壊する。
それは見守っていたIF幹部の面々からすれば「ミッション大成功」のはずなのに、なぜか全く喜ぶ様子が無い。それは変だろ。
あと、なんで最後までエンダーたちに「最終テスト」と偽ったまま終わらせず、「実際にフォーミックの種族を全滅させたよ」と暴露しちゃうのか。
「真実は隠したままにしようとしたけど、エンダーが気付いてしまった」という形にでもしておけばいいだろうに。

「最終テストと思わせて実戦でした」というドンデン返しが訪れた時に、そこまで延々と訓練シーンばかりを見せられていたのは、その仕掛けに向けての壮大なネタ振りだったことが分かる。
ただ、それが分かっても、「だったら納得できるわ」なんてことは全く思わない。
「そんなドンデン返しのためだけに、長々とネタ振りを見せられていたのかよ」という不満を感じるだけだ。
強いられた忍耐に対して、得られる報酬が全く足りないわ。

エンダーは地球へ一時帰還してヴァレンタインと話した時、「誰かを真に理解すると、情愛が湧くものだ。その瞬間、もう攻めて来ないよう破壊するんだ」と口にする。
「情愛が湧いた瞬間に破壊する」って、ホントに危険な思想の持ち主じゃねえか。
そんなエンダーは最終テストが実戦だったと知り、激しいショックを受けてグラッフを非難する。
「勝利のためにIFの艦隊を犠牲にした」ってことに対する罪悪感を抱くのは理解できる。ただ、「フォーミックを滅ぼしてしまった」ということへの強い罪悪感を示すのは、「そこに来て急に、そんな真っ当な気持ちを抱くのかよ」と言いたくなる。

夢でフォーミックの女王を見たエンダーは、本物の彼女と接触し、残された卵のために新たな惑星を発見することを約束する。
だけど、そんなに同情心を抱くほど、フォーミックに対する気持ちなんて無かっただろうに。
グラッフがエンダーについて「フォーミックと共感できる」と言っていたけど、共感して行動を読んだ上で「破壊する」と言うぐらい非道な奴だったでしょうに。
最後の最後で急にエンダーをベビーフェイスとして扱おうとしても、そんな急変を受け入れるのは無理だよ。

(観賞日:2016年9月10日)

 

*ポンコツ映画愛護協会