『エマニエル夫人』:1974、フランス

パリに住むエマニエルは、外交官の夫ジャンがいるタイのバンコクへと向かった。ジャンはバンコクで、周囲の人々にエマニエルのヌード写真を見せびらかしていた。久しぶりに会ったエマニエルとジャンのセックスを、召し使いとメイドが覗いていた。
エマニエルは友人アリアーヌに連れられて、外交官夫人の面々と会う。彼女達は浮気の話に夢中で、エマニエルにも他の男と寝ることを勧める。パリで夫を裏切ったことは無いと言ったエマニエルだったが、タイに向かう飛行機の中で男とセックスしていた。
エマニエルはマリー・アンジュという少女と出会い、親しくなった。家に遊びに来たマリー・アンジュは、エマニエルの目の前でオナニーを始める。アリアーヌと一緒にスカッシュに出掛けたエマニエルは、ゲームを終えた後に彼女とのレズ行為に及んだ。
ジャンと共にパーティーに出向いたエマニエルは、マリー・アンジュからマリオという老人を紹介され、性欲の手ほどきを受けることを勧められる。エマニエルは女性考古学者ビーに興味を抱き、作業現場に向かう彼女に同行することにした。
エマニエルを探していたジャンは、アリアーヌとセックスする。一方、ビーとのレズ行為にふけったエマニエルは愛を告白するが、好きな気持ちはあるが愛とは違うと言われてしまう。家に戻ったエマニエルは、ジャンやアリアーヌに勧められてマリオに会う…。

監督はジュスト・ジャカン、原作はエマニエル・アルサン、脚本はジャン=ルイ・リシャール、製作はイヴ・ルッセ=ルアール、撮影はリシャール・スズキ、編集はクローディーヌ・ブーシェ、音楽はピエール・バシュレ。
出演はシルヴィア・クリステル、アラン・キュニー、マリカ・グリーン、ダニエル・サーキー、ジャンヌ・コレティン、クリスティーヌ・ボワッソン、サマンサ、ギャビー・ブリアンド、グレゴリー他。


ようするに単なるポルノ映画であり、日本での上映権を獲得した日本ヘラルドもポルノ映画館用に購入したらしいが、“女性向けソフト・ポルノ”というハッタリ(インチキとも言う)の宣伝文句がまんまと成功し、大ヒットを記録した(してしまった)という作品。

前述したように、結局は単なるポルノ映画である。ポルノ映画にも、中にはドラマとして優れている作品や、エロとは別の部分で面白さのある作品も存在する。しかし、この映画には、そういうモノは無い。ある意味、真っ当なポルノ映画である。

ということは、つまりエロ以外に見るべきモノは無いわけだ。実際、エロのシーンはかなり多い。しかし、あくまでも“ソフト”なポルノなので、過激なエロを期待すると、思いっきり肩透かしを食らうことになるだろう。「質より量」ってな感じだろうか。
ファッション・カメラマンのジュスト・ジャカン監督は、エロいシーンをゲージツ的に撮影しちゃっている。恐怖のソフト・フォーカス殺法で、フェロモン分泌を抑えようとしている。エロい場面なのに、どこかエロを打ち消そうとしている向きがある。

出てくる連中は、基本的に性欲バカ。ジャンは好色オヤジだし、マリオは変態オヤジ。アリアーヌやマリー=アンジュはスケベ女だし、エマニエルはもっとスケベ女。だから女はやたらと服を脱ぐ。
性欲の解放とか、絶対的な愛とか、それらしい理由付けはあるのかもしれないが、単純にエロいシーンを描きたいだけ。小難しいテーマなんて、野良犬にでも食わせてしまえばいい。本気で監督や脚本家がテーマを考えていたとしても、そんなのは屁の突っ張りにもならない。

それにしても、エマニエルがマリオの指示を受けた男達にレイプされるとか、ムエタイの勝者の慰み者になるとか、そういうコトまで「性戯」として扱ってるんだけど、そんな映画を多くの女性が観賞したんだよなあ。よく女性達は受け入れたもんだねえ。

 

*ポンコツ映画愛護協会