『エルフ 〜サンタの国からやってきた〜』:2003、アメリカ
エルフに出来る仕事は3つだけだ。靴屋が寝ている間に靴を作ること。木の中でのお菓子作り。そして最後にエルフの夢と憧れである、サンタ工房でのオモチャ作りだ。手先が器用で元気一杯なエルフにとって、サンタ工房での仕事は適任だった。30年前まで、サンタ工房に足を踏み入れた人間はいなかった。この物語は、そんな30年前の出来事から始まる。クリスマス養護施設を訪れたサンタクロースが目を離した隙に、1人の赤ん坊が袋の中に入り込んだ。サンタは全く気付かず、袋を持って北極に戻った。
赤ん坊が袋から出て来ると、パンツのブランドロゴを見たエルフたちはバディーという名前だと誤解した。本来なら施設に返すべきだが、サンタは赤ん坊に弱かった。1人のエルフはサンタに申し出て、バディーを息子として育てることにした。バディーが大人になると、パパ・エルフは弟子にしてジェットエンジン付きのソリを見せた。バディーは不器用で、仕事をさせてもノルマを達成できなかった。しかしエルフたちは優しく、バディーに別の仕事を任せた。
エルフたちの会話を盗み聞きしたバディーは、自分が人間だと知ってショックを受けた。パパ・エルフは彼に、母親のスーザン・ウェルズが出産後に手放して他界したこと、父親のウォルター・ホッブスが息子の存在を知らないことを教えた。ウォルターがニューヨークにいることを聞いたバディーは、雪だるまのレオンに相談した。「自分探しの良い機会だ」と助言された彼は、ニューヨークへ行くことに決めた。サンタはウォルターが悪い子リストに載っていると明かし、「クリスマスの心があれば目を覚ますことも出来る」と語った。
バディーはニューヨークに到着し、ウォルターが勤務するエンパイア・ステート・ビルを見つけた。ウォルターは出版社の編集長で、絵本が2ページ抜けた状態なのに「子供は気付かない」と出荷を命じた。バディーはウォルターの秘書に、北極から来たエルフだと自己紹介した。秘書はクリスマスのメッセンジャーだと思い込み、ウォルターの部屋に通した。バディーがスーザンの名前を出して息子だと話すと、ウォルターは警備員を呼んでビルから追い出させた。
警備員はバディーの頭が変だと確信し、「サンタの国に帰れ。デパートにあるぞ」と言う。バディーがデパートに入ると、支配人は従業員だと思い込んで「仕事をしろ」と命じた。支配人が客に向かって「明朝10時にサンタが来店します」と呼び掛けると、バディーは「サンタを知ってるよ」と興奮した。従業員のジョヴィーがツリーの飾り付けをしている様子を見た彼は、「クリスマスだよ。大きな声で歌ってみない?」と話し掛けた。ジョヴィーが「人前では歌わない」と断ると、バディーは「人がいても同じだよ」と大声で歌った。
閉店後、バディーは無人になったオモチャ売り場を勝手に飾り付けた。ジョヴィーの歌声に気付いた彼は女子シャワー室に入った。彼はシャワーを浴びながら歌っているジョヴィーに話し掛け、「出て行って」と怒られた。翌朝、ウォルターは出版社に向かう途中、デパートのショーウィンドーで寝ているバディーを目撃した。バディーはプレゼントの箱を持ってウォルターを訪ねようとするが、警備員に制止された。彼は「クリスマスのプレゼントだ」と言うが、警備員は「渡しておく」と箱を回収して追い払った。
デパートにサンタ役の男が来ると、バディーは」「偽者だ」と騒ぎ立てた。彼は男の怒りを買い、追い回される羽目になった。ウォルターはバディーの届けた箱を開け、中に若い頃の自分とスーザンのツーショット写真が入っているのを見つけた。警察署に連行されたバディーが名前を出したので、ウォルターは連絡を受けて出向いた。彼はバディーの身柄を引き取り、「写真はどこで手に入れた?金が目的か?」と詰め寄った。バディーが「僕に会いたいと思って」と答えると、ウォルターは医師であるベンの元へ連れて行く。彼はバディーの血液を検査してもらい、ベンから間違いなく息子だと告げられた。
ベンはウォルターに、「彼には養育が必要だ。奥さんと息子のマイケルに会わせろ。社会に慣れさせれば、エルフの世界に逃げなくなる」と語った。ウォルターは気乗りしなかったが、仕方なく自宅へバディーを連れ帰る。妻のエミリーはバディーを歓迎し、泊まって行くよう促した。ウォルターが眠っている間に、バディーは本棚を勝手に解体して木馬を作り、部屋を飾り付けた。彼は遊ぶ予定を立てていたが、ウォルターは「仕事がある」と冷たく告げた。
出勤したウォルターは、社長のフルトンからページが抜けた状態で出版した絵本のことを叱責を受けた。フルトンはウォルターに、年明けに新刊を出版するので12月24日までに準備をしておくよう指示した。学校が終わってマイケルが外へ出ると、バディーが待っていた。友人から質問されたマイケルは「知らない人」と無視しようとするが、バディーは「お兄ちゃんだよ」と大声で呼び掛けた。マイケルは冷たく立ち去るが、バディーは追い掛けて来た。
悪ガキ集団が雪玉を投げて来たので、バディーとマイケルは慌てて隠れたバディーは大量の雪玉を作り、高速で投げ付けて悪ガキ集団を追い払った。マイケルはバディーを気に入り、一緒にデパートで遊んだ。バディーがウォルターを「世界一のパパだ」と絶賛すると、彼は「最低さ。仕事ばっかり。お金しか頭が無い」と不満を漏らした。マイケルはバディーがジョヴィーに惹かれていると気付き、食事に誘うよう促した。ジョヴィーが「木曜なら空いてる」とOKしたので、バディーは喜んだ。
ウォルターが帰宅すると、バディーは公園の木を持ち込んでマイケルと一緒に飾り付けをしていた。エミリーはウォルターに、「いいじゃない。楽しんでるんだから」と告げる。ウォルターが「公園の木だぞ。犯罪だ」と話すと、彼女は「あんな幸せそうなマイケルは初めて。貴方はいつも傍にいない」と苦言を呈した。ウォルターが「あいつに留守番させたら家を破壊される。明日は休んで見張ってくれ」と言うと、エミリーは「予算会議だから無理よ」と断った。ウォルターが「私は休めない。クビ寸前だ」と語ると、彼女は「だったら彼を職場に連れて行けばいい」と提案した。
翌朝、ウォルターはバディーを伴って出勤するが、オフィスに座らせていると邪魔になった。そこで「郵便室を知ってるか。世界中の手紙が集まる。仕分けしてピカピカの箱に入れる」と語ると、バディーは「楽しそう」と目を輝かせた。ウォルターが郵便室で働くよう勧めると、バディーは快諾した。しかし実際に郵便室へ行くと、地味で暗い場所だった。それでもバディーは元気に働き、それだけでなく他の従業員も巻き込んで楽しい時間を過ごした。
ウォルターは会社のトップライターであるモリスとユージンを呼び、「明日は社長が来る。案を聞かせろ」と告げる。するとモリスたちは、伝説のゴーストライターであるマイルズ・フィンチを雇うよう提案した。ウォルターはフィンチと連絡を取り、5時間だけ来てもらえることになった。バディーはジョヴィーとデートに出掛け、楽しい時間を過ごした。ウォルターは会議室にフィンチを迎え、報酬を渡してプロットを決めようとする。そこへバディーが現れ、小柄なフィンチを見て「エルフがいたの?」と口にする。しつこくエルフ扱いされたフィンチは激高し、バディーを殴り付けて立ち去った。ウォルターはバディーに腹を立て、「今すぐ消えろ」と声を荒らげた…。監督はジョン・ファヴロー、脚本はデヴィッド・バレンバウム、製作はジョン・バーグ&トッド・コマーニキ&ショウナ・ロバートソン、共同製作はデヴィッド・ハウスホルター、製作総指揮はトビー・エメリッヒ&ケント・オルターマン&ケイル・ボイター&ジミー・ミラー&ジュリー・ウィクソン・ダーモディー、撮影はグレッグ・ガーディナー、美術はラスティー・スミス、編集はダン・レーベンタール、衣装はローラ・ジーン・シャノン、視覚効果監修はジョー・バウアー、音楽はジョン・デブニー。
出演はウィル・フェレル、ジェームズ・カーン、ボブ・ニューハート、エドワード・アズナー、ズーイー・デシャネル、メアリー・スティーンバージェン、ダニエル・タイ、フェイゾン・ラヴ、ピーター・ディンクレイジ、エイミー・セダリス、マイケル・ラーナー、アンディー・リクター、カイル・ガス、アーティー・ラング、クレア・ローティエ、テッド・フレンド、パトリック・フェレル、パトリック・マッカートニー、ジョン・ファヴロー、リディア・ローソン=ベアード、ブレンダ・マクドナルド、アニー・ブレブナー、ルーク・ポール他。
『スウィンガーズ』『シリコンバレーを抜け駆けろ!』のジョン・ファヴローが監督を務めた作品。
脚本のデヴィッド・バレンバウムは、これがデビュー作。
バディーをウィル・フェレル、ウォルターをジェームズ・カーン、パパ・エルフをボブ・ニューハート、サンタをエドワード・アズナー、ジョヴィーをズーイー・デシャネル、エミリーをメアリー・スティーンバージェン、マイケルをダニエル・タイ、デパートの支配人をフェイゾン・ラヴ、フィンチをピーター・ディンクレイジが演じている。サンタは自分のミスでバディーを北極まで連れて来てしまったのに、返そうとはしない。
「赤ん坊に弱い」というパパ・エルフの語りだけでサンタを全面的に擁護し、何の咎めも与えない。
サンタは何の罪悪感も抱いておらず、責任を取ろうともしていない。
「バディーは両親と暮らしていたわけじゃなくて孤児だから」ってことでサンタの行為を正当化しているけど、そういう問題じゃないだろ。
せめてサンタが養父になって責任を取るならともかく、パパ・エルフに全て任せているし。パパ・エルフのナレーションで「人間は成長の速さがエルフの2倍」と説明しており、それによって「バディーは大人なのに子供みたいな言動を繰り返す」という設定を成立させようとしている。
だけどバディーの言動は明らかに幼児レベルであり、「成長の速さがエルフの2倍」という説明では無理がある。
2倍だったら、もう少し年上の感覚を持っているべきじゃないかと。
そもそも、北極で暮らしている時には、周囲に気を遣うようなことも出来ているのだ。それなのにニューヨークに来た途端、全く周囲のことを考えないマイペースっぷりを貫くのは不自然じゃないかと。もちろん、「外見がオッサンなのに中身が子供というウィル・フェレルの演技を笑ってね」ってのが、コメディーとしての軸になっていることは良く分かる。
だけど正直に言って、かなりキツいことになっているんだよね。
あと、ウォルターが北極でサンタやエルフたちと一緒に暮らすのは序盤だけで、すぐニューヨークに行っちゃうのも、話としてどうなのかと。
結果として、「大人だけど中身がガキ」というキャラを作ってしまったら、サンタやエルフの役目って、ほぼ終わっている感じなんだよね。バディーは流氷に乗って北極を離れるが、そこからニューヨークまで、どうやって移動したのか。乗り物に乗ることは無く、徒歩で到着したみたいだけど、ってことは随分と時間が掛かったのか。
それだけ歩き続けるには相当の体力が必要だと思うが、そこは大丈夫なのか。どうやって食事を取り、どこで眠ったのか。その辺りは、全く分からない。
また、彼は中身が幼い子供のはずなのに、ずっと暮らしていた場所を離れ、サンタやパパ・エルフとも会えなくなったのに、寂しがる様子を全く見せない。ホームシックになることは無くて、初めて訪れた都会であるニューヨークで楽しく過ごしている。
その辺りも、かなり引っ掛かる。バディーは北極で生まれ育ち、都会に関する情報は何も持っていないはずだ。
それなのに、ニューヨークに着いても全く驚いた様子は無い。怖がったり戸惑ったりという様子も見せず、カルチャー・ショックを受けた様子も無い。
エンパアイ・ステート・ビルの場所も、何の苦労もせずに見つけ出している。
ところが、エレベーターのボタンを全て押したり、エスカレーターに上手く乗れなかったりと、ギャグをやる時だけは急に「都会の文明を知らない」というムーブを見せる都合の良さだ。バディーを煙たがっていたマイケルが、雪玉で悪ガキ集団を追い払ってもらった途端に仲良くなるってのは、ベタベタではあるが別に悪くはない。
ただ、デパートで高級ベッドの上を飛び跳ねて遊ぶのは、普通に迷惑行為だ。公園の木を勝手に伐採し、ツリーにするのも同様だ。
っていうかウォルターが指摘するように、犯罪行為だ。それは「楽しいからいいじゃない」という問題ではないだろう。
あと、マイケルはウォルターを「仕事ばかりで家族に関心が無い」と評しているが、それに見合う描写は全く足りていない。
そこまでの描写で伝わって来たのは、「ウォルターは消費者を無視した仕事のやり方をする男」ってことだけで、ワーカホリックの印象は無い。ジョヴィーがデートの誘いを快諾するのは、まるで解せない行動だ。
そこまでのバディーは、ジョヴィーからすると「急に大声で歌い出し、女子シャワー室に忍び込む男」という印象だったはず。
それは決して、好印象とは言えないだろう。特に後者は、明らかにヤバい奴だ。
その後、バディーがイメージを回復する行動を取ったわけでもないし。
そもそも本作品における恋愛劇なんて、刺身のツマにすらならない程度の要素なんだし、丸ごとカットでもいいぐらいなんだよね。バディーはウォルターの大事な会議を妨害し、「エルフがいたの?」「サンタは知ってるの?」「ソリで来たの?」とフィンチが嫌がる言葉を繰り返す。
それは失礼極まりない言動であり、フィンチが怒るのも当然だ。
フィンチを銭ゲバの嫌な奴に設定することでバディーの行動を正当化しているけど、「それはそれ」でしょ。
小人症の人間をエルフ扱いするのは、シャレにならん差別だよ。
「バディーは本当にエルフだと思っているので悪気は無い」ってことではあっても、相手からすると傷付く行為だからね。ウォルターがフルトンにプレゼンする大事な会議に出席していると、マイケルが来て「バディーが姿を消した」と伝える。ウォルターが「会議が終わったら何とかする」と告げると、マイケルは「自分のことしか考えない」と非難する。
しかし、ウォルターは冷淡に拒否したわけではなく、明らかに迷いや揺らぎを見せていた。それに、バディーを可及的速やかに捜索しなきゃいけない状況とは思えないし。
だが、その場でウォルターは考え直し、クビ通告を覚悟でマイケルと共にバディーの捜索へ向かう。ウォルターがマイケルに冷たかったターンが全く無かったので、「バディーの影響で云々」ってことじゃなくて、普通に優しいパパじゃねえかと言いたくなるぞ。
で、ウォルターはバディーを見つけると、「風変わりだけどお前は正しい。私の息子だ。愛してる」と抱き締める。
いつの間に、バディーに対してそこまでの親心に目覚めたんだよ。(観賞日:2025年4月8日)