『おとなの恋は、まわり道』:2018、アメリカ&イギリス&カナダ

リンジーは遠く離れたリゾート地で行われる結婚式に出席するため、空港へ赴いた。彼女が8席しか無い小型機の搭乗手続きを待っていると、後ろにいたフランクという男が横に移動した。フランクに声を掛けられた彼女は、「遅れないかな」という言葉に「この航空会社は時間に正確なの」と教える。彼女が話していると、フランクは適当に受け流しながら前に出た。リンジーが割り込み行為を指摘すると、彼は「君が冷淡だったから、避けるために前へ出た」と言い、さらに前へ出た。リンジーが呆れて批判すると、フランクは開き直って「早く乗りたい」と前へ出た。
リンジーはフランクと機内で隣り合わせになり、旅の目的を問われて黙るよう要求した。おつまみの袋を見つけたリンジーだが、切れ目が無くて開かなかった。フランクは渡すよう要求するが、どれだけ力を入れても開かなかった。彼は歯を使って袋を開けるが、リンジーが嫌がったので自分の物と交換した。リンジーがパソローブレスで行われるリゾート婚に出席することを知ったフランクは、「まさかキースとアンじゃないだろうな」と困惑した。2人は同じ結婚式に招待されていたのだ。リンジーはキースの元婚約者で挙式の5週間前に中止にされており、フランクはキースの異母兄弟だった。
サンルイスのオビスポ空港に着いたリンジーとフランクは、迎えの車を待つ間に会話を交わす。「キースは貴方の悪口を言ってたわ」とリンジーが言うと、フランクは「キースはクズだ。君は別れて正解だ」と告げる。彼はキースと距離を置いていたこと、母の命令で結婚式に出席することを話す。リンジーはフランクの質問を受け、挙式の中止でキースを訴えたこと、示談になったことを語る。しかしリンジーはキースの招待を受けて式への参加を決めており、「ケジメを付けたかった」と理由を説明した。
リンジーとフランクは迎えの車に乗り込み、さらに会話を続ける。仕事を問われたフランクは、J.D.パワーで市場調査をしていると答えた。するとリンジーはカー・オブ・ザ・イヤーについて文句を付け、フランクに嫌味を浴びせた。リンジーが企業を訴える仕事をしていると話すと、今度はフランクが鋭く口撃した。車はレストラン&ホテルの「アップルファーム」に到着し、2人は部屋に入った。扉で繋がっている部屋だと知った2人は、すぐに施錠した。
金曜の夜にリハーサル・ディナーが開かれ、リンジーとフランクは指定された隣の席に座った。リンジーはキースが何か企んでいるのではないかと疑うが、フランクは「キースは気遣う奴じゃない」と否定した。リンジーはフランクに、キースを見て予想以上に辛いと告げる。フランクは彼女に、「彼の人生に運良く名前を刻めたと思えばいい」と言う。キースの母を見たリンジーは、「ラスボスだわ」と口にした。キースの父を見てリンジーが顔を背けると、フランクは「妻から逃げて愛人を作った」と述べた。
フランクはリンジーに、「父が若い女に走って母は救われた。父が身投げして、母はチャラにした」と話した。さらに彼は、父に撃たれて反撃したこと、その夜に父が身投げしたことを語る。リンジーはキースとアンの元へ挨拶に行き、フランクは席に留まった。戻って来たリンジーは、フランクに「大丈夫か?」と問われて「いいえ」と答えた。彼女は部屋に戻り、フランクが話した父との出来事について思い返した。フランクは部屋に戻り、テレビを見た。2人は互いが気になって扉に近付くが、行動は起こさなかった。
土曜日の朝。リンジーとフランクは無料サービスのフットマッサージに行き、隣同士で会話を交わす。「君はキースに捨てられたのに未練タラタラだ」とフランクが言うと、リンジーは「傷付いても愛さずにいられない」と告げる。「キースの幸せを願ってる?」と質問された彼女は、「惨めに暮らして、後悔しながら死んでほしい」と答えた。フランクはリンジーに、「振られるのは時間の節約になる。運命の人じゃないと分かったら、次を探すことが出来る」と語る。「全人類を振るいに掛けたの?」と問われた彼は、「僕は恋愛から手を引いた。だから批評できる」と述べた。
フランクが「昨晩、新婦と話した。君と友達になりたいと言ってた」と話すと、リンジーは「どうでもいいくせに」と返した。フランクは彼女に、「まあね。明日に向けて気分を上げたい」と告げた。2人はワイナリーの見学に行き、会話を交わした。フランクは独身の理由について、「両親の過ちを繰り返さないと決めた」と説明する。それから彼は、「結婚しても惨めな結果になる。そんな奴のために傷付く必要は無い」とリンジーに語った。「運命の人を信じないの?」と訊かれた彼は、「そうだ」と即答した。
他の招待客がバブルボールのゲームを始める中、リンジーとフランクは少し離れて会話を交わす。リンジーが「親を責めることを心の支えにしてない?」と質問すると、フランクは「何が悪いんだ?」と反発する。リンジーが「貴方に落ち度は無いの?新しい挑戦をしたら?」とリンジーが言うと、彼は「君は何様のつもりだ?そんな単純な失恋、乗り越えるのは簡単だ」と語る。「私は希望を持ってるだけ」とリンジーが告げると、フランクは「弱いだけだ」と一蹴した。
土曜日の午後。リンジーとフランクはブドウ畑で行われる結婚式に向かうが、式場までは歩く必要があった。足元が汚れることを嫌がったリンジーは、フランクに式場まで抱えて行くよう要求した。フランクは文句を言いながらも、リンジーを抱えて式場へ向かった。フランクは母が花嫁付添い人をしているのを見て、「母は僕に文句ばかりだった」と告げる。リンジーはアンと彼女の父親について、「あの2人はキースの餌食になって破滅する」と述べた。
結婚式の後、ダンス・パーティーが始まるが、リンジーとフランクは踊らずに座っていた。キースとアンの熱烈なキスを見たリンジーは、テーブルに頭を打ち付けた。彼女はフランクを誘い、散歩に出掛けた。行く手にピューマが現れたため、2人は体を強張らせた。リンジーが「狙われるのは群れで最も小さい私よ。貴方は逃げて」と言うと、フランクは「2人で逃げよう」と告げる。彼は唸り声でピューマを怯ませ、リンジーを連れて逃亡した。
リンジーが「なぜ助けたの?」と訊くと、フランクは「自分だけ助かっても悔やむことになる」と答えた。リンジーが礼を言うと、彼は唐突にキスをした。リンジーは「何なの?」と乱暴に突き放すが、フランクが「ごめん、つい」と謝ると自分からキスをした。2人は饒舌に会話を交わしながら、そのまま屋外でセックスに及んだ。夜、ホテルの部屋に戻った2人は、ベッドでワインを飲みながら互いの魅力について詳しく語った。
フランクとリンジーはTVドラマを見て、蘇生措置について互いの感想を交わした。リンジーが「キースとの関係で何が一番の問題?」と質問すると、フランクは「性格だ」と答える。質問の意図を問われたリンジーは、「恋愛対象として貴方の資質を見極めてるの」と言う。フランクが「僕に恋愛対象の資質は無い。君もそうだ」と語ると、彼女は「どうして一方的に決めるの?」と問い掛ける。フランクは彼女が考えを変えさせようとしても全く取り合わず、「君の判断は間違ってる」と恋愛への拒否感を貫いた…。

脚本&監督はヴィクター・レヴィン、製作はゲイル・ライオン&エリザベス・デル&ロバート・ジョーンズ、製作総指揮はウェイン・マーク・ゴッドフリー&ジェームズ・ハリス&マーク・レーン&デヴィッド・ディナースタイン&ジェイソン・レズニック&ウィリアム・サドレア&カシアン・エルウィス&ジーン・ワイマン、共同製作はパム・ディクソン、製作協力はアルノー・ラニック&ババク・エフテクハリ&ウミダ・ウマールヴェコヴァ、撮影はジョルジオ・スカーリ、美術はキャリー・アンドレアディス、編集はマット・マドックス、衣装はジャスティン・シーモア、音楽はウィリアム・ロス、音楽監修はアニータ・カマラタ。
出演はウィノナ・ライダー、キアヌ・リーヴス、DJ・ダーレンバック、テッド・デュボスト、D・ロッシュ・ライト、グレッグ・ルーシー、ドンナ・リン・ジョーンズ、カート・デュボスト、マイケル・モグル他。


ウィノナ・ライダーとキアヌ・リーヴスが4度目の共演を果たした作品。
脚本&監督は『5時から7時の恋人カンケイ』のヴィクター・レヴィン。
ウィノナ・ライダーが脚本を読んで気に入り、キアヌ・リーヴスに共演を持ち掛けたらしい。
リンジーをウィノナ、フランクをキアヌ、アンをDJ・ダーレンバック、キースをテッド・デュボスト、フランクの母をD・ロッシュ・ライト、フランクの義父をグレッグ・ルーシー、キースの母をドンナ・リン・ジョーンズが演じている。

リンジーはフランクを「聞いていたより酷い」と評し、フランクはリンジーを「君も最悪だ」と扱き下ろす。
だけど、どう考えても一方的にフランクが悪い。
先にフランクが嘘をついて列に割り込んだことで、リンジーは腹を立てているのだ。彼がクソヤローっぷりを見せたから、リンジーは不快感を抱いて拒絶するわけで。
そこで開き直ったフランクがリンジーに悪い印象を抱いて批判するのは、「どのツラ下げて」ってことでしかないぞ。

リンジーとフランクは空港で互いに「嫌な奴」と強烈に感じたはずなのに、飛行機の中でも会話を交わす。フランクが話し掛け、リンジーが応じるのだが、ちっともスムーズな流れだと思えない。
オビスポ空港に着いた後、今度はリンジーから会話の続きを始めようとするが、もっと不自然だ。
互いに不快な印象は何も変わっていないし、たからカリカリした態度を示したり嫌味を口にしたりしている。そんな中で、それでも積極的に会話を続けようとするのは何なのかと。
これが「昔から知り合い」ってことならともかく、会ったばかりの赤の他人であり、無理に親しくしなきゃいけない間柄じゃないんだからさ。

リンジーとフランクの会話劇だけで全体を構成するという趣向であり、他のキャラクターは背景も同然で台詞も用意されていない。
そんな趣向が悪いとは言わないが、リンジー&フランクの初期設定と話の内容が上手く噛み合っていない。
しかも、リンジーとフランクがまるでハッピーじゃないから、こっちも見ていて気持ちが良くない。
喧嘩腰だったり嫌味たっぷりだったりする会話を喜劇として演出しているけど、それで微笑ましく見られる形になっているわけではないのよね。

何よりも痛いのは、リンジーとフランクの会話の中身が、ちっとも面白くないってことだ(笑えるかどうかってことじゃなくて、興味をそそるかどうかって意味ね)。
そもそも、リンジーとフランクのキャラも魅力に乏しいしね。
「男女の会話で全体を構成する」という趣向で連想したのは1995年に公開されたリチャード・リンクレイター監督の『恋人までの距離(ディスタンス)』で、ひょっとすると意識している部分はあるのかもしれない。
だけど、両作品には雲泥の差がある。

リンジーとフランクを旧知の間柄にしておいて、「互いに気になっているけど素直になれなくて」みたいな設定にしておけば良かったんじゃないかと思うんだよねえ。
あと、そもそもキアヌ・リーヴスが、この手の作品に向いていないんじゃないかとも思うんだよね。
前述の『恋人までの距離(ディスタンス)』では、イーサン・ホークとジュリー・デルピーが魅力的だったしね。
そして会話の内容だけじゃなく、細かい仕草とか何気無い表情という部分でも引き付けるモノが大きかったし。

リンジーとフランクの台詞や行動には、「なぜそうなるのか」と疑問を覚えることが少なくない。
用意された段取りに対して、適切な支度を整え切れていないんじゃないか。2人がホテルに着いた最初の夜の時点で既に互いを意識している様子を見せるが、かなり強引だという印象だし。
リンジーはフランクを意識している様子だけど、一方でキースに未練タラタラなので、そこも半端に感じるし。
「最初は互い嫌悪感を抱くが、次第に惹かれ合うようになって」という恋愛劇は世界中で山ほど作られているし、それがダメだとは言わない。ただし、この映画では、その処理を完全に失敗しているのだ。
そのため、「だったら最初から“気になる2人”にしておけばいいんじゃないの」と言いたくなる。

リンジーが恋人として付き合おうと持ち掛けても、フランクは決して首を縦に振らない。リンジーが粘り強く交渉しても、彼は頑なな態度を崩さない。
どれだけリンジーが頑張ってもフランクが冷たく拒み続ける様子が続く内に、だんだんイライラしてくる。めんどくせえなあ、うっとおしいなあと感じるのだ。
どう最終的にはフランクも考えを改め、2人がカップルになることは分かり切っている。そして実際、その通りになる。
でも、そういう結末が訪れても、ちっとも喜べないし、祝福する気も湧かない。「どうせ幸せな時間はわずかだろうな、長続きしないだろうな」と思っちゃうしね。

(観賞日:2021年2月1日)

 

*ポンコツ映画愛護協会