『ウェス・クレイヴン’s カースド』:2005、アメリカ&ドイツ

ロサンゼルス。ある遊園地で、ジェニーは友人ベッキーを連れて占い師ジーラの元を訪れた。男性関係について占ってもらうつもりだった が、ジーラは2人を見ると引きつった表情を浮かべ、「2人とも恐ろしい危険が迫っている。恐ろしい獣が来る。月夜の晩よ」と告げた。 高校生のジミーは飼い犬ジッパーを迷い込んだように装い、ビデオ店でバイトする片思い中の同級生ブルックに声を掛けた。すると、そこ へブルックの恋人でレスリング部主張のボーと仲間たちが現れた。ボーに恫喝されたジミーは、その場を去った。
テレビ番組のスタッフとして働くジミーの姉エリーは、2日後の開店準備をしているクラブ「ティンセル」へ赴いた。店のオーナーは、 交際して2ヶ月になる恋人ジェイクだ。エリーはジェイクが少し疲れている様子なのに気付いた。エリーとジミーを車に乗せ、帰路に 就いた。マルホランド・ドライブを走っている時、大きな動物がフロントガラスに激突した。エリーは驚いて運転を誤り、別の車と ぶつかった。その車が崖下に転落したため、エリーとジミーは救出に向かった。
ジミーが運転していたベッキーを助け出そうとした時、どこからともかく大きな獣が出現した。獣はベッキーを茂みに引きずり込んだ。 助けようとしたエリーとジミーは、その獣に襲われて軽傷を負った。現場にやって来た警官に、ジミーは「大きな狼だった」と告げるが、 信じてもらえなかった。エリーも獣を見ていないため、その言葉を信じなかった。帰宅したエリーは、ジェイクの首筋に噛み付く夢で夜中 に目を覚ました。翌朝、ジミーは裸の状態で、庭で目を覚ました。
ジミーから「昨日の夜、ネットで調べた。あれは人狼の仕業だ」と言われても、エリーは相手にしなかった。出社したエリーは、担当して いる『レイト・レイト・ショー』の同僚カイルから「いつもと違ってセクシーだね」と言われる。別の同僚ジョアニーが嫌味な態度を示す ので、エリーは不愉快な気分になった。いい匂いを嗅ぎ付けたエリーが給湯室へ行くと、女性局員が鼻血を出していた。
その夜、エリーは番組のゲスト出演者スコット・バイオと打ち合わせをするため、パーティー会場へ赴いた。するとジェイクが現れ、 「怒ってるんだね。ちゃんと話がしたい」と言う。エリーが「仕事が終わった後で」と告げていると、ジョアニーが来て「スコットの元へ 案内するわ」と述べた。ジェニーが現れてジェイクに声を掛け、「ベッキーが会いたがっていたわよ」と言う。「恋人が出来たって彼女に 伝えてくれないか」とジェイクが告げると、「あら、残念。私も残念」とジェニーは口にした。
エリーはスコットと挨拶を交わし、打ち合わせに入った。するとスコットは「君はセクシーだ。こうせずにはいられない」と言い、体に 触れて来た。そそくさと打ち合わせを終えたエリーは、ジェイクが女性たちに囲まれているのを目撃し、腹を立てて会場を去った。その 直後、地下駐車場に現れたジェニーは、人狼に襲撃された。彼女はエレベーターに逃げ込むが、人狼はドアを壊して突入した。
人狼に関する書物を読んだジミーは、人狼になると性的魅力やパワーが増すこと、掌に野獣の刻印が現われることを知った。ジミーの掌 には、星型になる野獣の刻印が現れていた。ジミーは帰宅したエリーに、そのことを話した。エリーは軽く聞き流すが、彼女の掌にも野獣 の刻印が現われていた。ジミーが自分の部屋に戻って書物を読んでいると、家の外の通りに3匹の野良犬が集まって吠え始めた。ジミーが 遠吠えをすると、野良犬たちは静かに立ち去った。
翌日、エリーがテレビ局に出勤すると、そこに来ていたジーラが血相を変えて駆け寄り、「貴方には呪いが掛かっている。呪いを説くには 野獣を殺すしかない。野獣は人の姿をして、すぐ近くにいるわ」と告げた。ジミーはレスリング部の練習を見学しているブルックの前に 現れ、積極的に話し掛けた。それを見たボーはジミーを挑発し、入部テストを受けるよう持ち掛けた。ジミーは軽くOKし、ボーを高く 持ち上げてから後ろに投げてみせた。
エリーが番組司会者クレイグ・キルボーンの出番前の準備をしていると、彼が指を切って出血した。咄嗟にエリーは、彼の血を舐めた。 その後、エリーは体に異常を感じ、トイレに駆け込んだ。心配する女性スタッフに、エリーは攻撃的な姿勢を示した。ジミーはジェイクの 元を訪れ、「僕らは人狼に噛まれて呪われた」と告げる。しかしジェイクは「落ち着け、頭を冷やせ」と言うだけだった。
帰宅したジミーが銀のナイフに触れると、焼けるような痛みを覚えた。ボーがジミーを訪ね、「俺はゲイでお前を愛してる」と告白した。 ジミーは激しく動揺するが、「僕にその気は無いから」と告げてドアを閉めた。しかしジミーを噛んで感染したジッパーを襲ってきたので 、彼はボーの車に乗せてもらって逃亡した。ジミーはエリーに電話を掛けてるが、繋がらなかった。ティンセルの開店イベントに出席する はずなので、ジミーは店へ行くことにした。
テレビ局を出ようとしたエリーは、ニュース番組でマルホランド・ドライブの被害者がベッキーであること、ジェニーが大型動物に襲撃 されて死んだことを知った。2人とも、ジェイクと関わりのあった女性だ。エリーはティンセルへ行かず、帰宅しようとする。彼女が車へ 行くと、ジェイクが現れた。エリーが無視しようとすると、ジェイクは窓を人間離れした力で叩き割った。ジェイクは「話を聞いてくれ。 君たちを襲った獣のことだ」と語り出そうとするが、エリーは隙を見て車を発進させた。
ティンセルに到着したジミーは、エリーに電話を入れた。エリーはジミーに「犯人はジェイクよ。そこから逃げて」と告げ、ティンセルへ 車を向けた。エリーは店に到着し、弟を捜す。そこにジェイクが現れ、「犯人は別にいて、俺も狙われている」と告げる。エリーが彼を 信じて手を伸ばそうとした時、人狼が襲ってきた。人狼の出現で店内はパニックになり、大勢の客は一斉に外へ避難した。エリーはジミー を捜すため、店に戻った。2人が合流した直後、ジョアニーが現れ、自分がベッキーたちを殺した人狼であることを明かした…。

監督はウェス・クレイヴン、脚本はケヴィン・ウィリアムソン、製作はケヴィン・ウィリアムソン&マリアンヌ・マッダレーナ、共同製作 はジェニファー・ブレスロウ&ダン・アルレドンド&ディキシー・J・プレク、製作総指揮はボブ・ワインスタイン&ハーヴェイ・ ワインスタイン&アンドリュー・ローナ&ブラッド・ウェストン、共同製作総指揮はスチュアート・ベッサー&デヴィッド・クロケット、 撮影はロバート・マクラクラン、編集はパトリック・ルシエ&リサ・ロマーニウ、美術はブルース・アラン・ミラー&クリス・ コーンウェル、衣装はアリックス・フリードバーグ、特殊メイクアップ・デザイン&創作はリック・ベイカー、視覚効果監修はリチャード ・R・フーヴァー、音楽はマルコ・ベルトラミ、音楽監修はエド・ジェラード。
主演はクリスティーナ・リッチ、共演はジョシュア・ジャクソン、ジェシー・アイゼンバーグ、マイア、シャノン・エリザベス、 ジュディー・グリア、スコット・バイオ、マイロ・ヴィンティミリア、クリスティーナ・アナパウ、ポーシャ・デ・ロッシ、 クレイグ・キルボーン、ランス・バス、ニック・オファーマン、シャシャウニー・ホール、デレク・ミアーズ、エミリー・オディール、 ジョニー・アッカー、エリック・ラディン、ダニエル・モラ他。


『スクリーム』のウェイ・クレイヴン監督と脚本家のケヴィン・ウィリアムソンとがタッグを組んだ映画。
エリーをクリスティーナ・ リッチ、ジェイクをジョシュア・ジャクソン、ジミーをジェシー・アイゼンバーグ、ジェニーをマイア、ベッキーをシャノン・エリザベス 、ジョアニーをジュディー・グリア、ボーをマイロ・ヴィンティミリア、ブルックをクリスティーナ・アナパウ、ジーラをポーシャ・デ・ ロッシが演じている。アンクレジットだが、カイルをマイケル・ローゼンバウムが演じている。
また、スコット・バイオ、クレイグ・キルボーン、歌手のランス・バス、バンドのボウリング・フォー・スープが本人役で出演している。

他に『カースド』という邦題の映画があるわではないので、わざわざ「ウェス・クレイヴン’s」と付けて区別する必要は無い。
だが、区別の意味ではなく、ウェス・クレイヴンの名前を冠に付けることで、ホラーであることを分からせるのと、訴求力に繋げようと いう思いがあるのだろう。
『チャック・ノリスin ヘルバウンド/地獄のヒーロー5』とか、『ヴァン・ダム IN ディレイルド 暴走超特急』みたいなモンだね (なんでその2つを例えとして出すんだよ)。
ちなみに『カースド/狼の刻印』という別タイトルもある。

エリーとジミーは下半身がスッパリと無くなったベッキーの無残な死体を見ているのに、それほどショックを受けた様子は無い。
その場では驚いているけど、すぐに軽口を叩けるぐらいの状態に戻る。
「自分たちも同じように、大きな野獣に襲われて殺されるのでは」という恐怖に怯えることも無い。
帰宅したエリーは「知らない内に玄関のドアが開いている」ということで不安を抱くが、それは漠然とした不安であって、「自分が獣に 襲われるのでは」という不安ではない。
しかも、それは現実じゃなくて夢だし。

エリーはカイルから「いつもと違ってセクシーだ」と言われるが、「いつも」の彼女がどんな感じなのか分からないから、違いが全く理解 できない。スコットも「触らずにいられない」と言って体に触れる。
その前にカメラが満月を捉えており、人狼の特徴としてエリーの性的魅力が高まっていることは理解できるけど、そこで彼女がガラリと 変化しているわけではないから、全く伝わらないのよ。
いっそのこと、「男の前でエリーから強烈なフェロモンが放出される」というのを、視覚化してしまった方が良かったんじゃないかな。
なんせエリーの「ビフォー」が描かれていないので、それ以外に、彼女の性的魅力が増していることを表現する方法は思い付かないわ。
そういう演出にするとチープになっちゃうかもしれないけど、どうせチープなテイストの青春ホラー映画なんだしさ。

前半で、ベッキーとジェミーという2人の女性が人狼に襲われて死亡する。
一方で、人狼に襲われたエリーとジミーの性的魅力や運動能力がアップしていることが描かれる。
そのことが、話の薄さ、まとまりに欠ける印象に繋がっているのではないかと感じる。
エリーたちの体に変化が生じるのであれば、その変化の具体的な描写や、それに対して2人が戸惑ったり不安を抱いたりする様子を、 もっと充実させた方が良かったんじゃないだろうか。

2人の身体的な変化に対する描写は、もちろん幾つか盛り込まれているのだが、ちょっと物足りないかなあと感じる。
それに、その変化に対するリアクションも弱い。
一方、殺人に関しては、前述したように1件目のショックをエリーたちが引きずることは無い。
2件目の事件に関しては、終盤に入るまで、エリーたちは発生したことすら知らない。当然、「次は自分たちが狙われるかも」という恐怖 を感じることも無い。
また、「ジェミーを殺したのは姉弟ではないか」というミスリードも無い。

で、後半に入って「呪い」という要素が登場してくるのだが、それはようするに「人狼に噛まれた人間が人狼化していく」ということで あり、それまでのエリー&ジミーに対して、何か変化をもたらす新事実ってわけじゃないのよね。
呪いだと知る前から、2人の体には変化が生じているわけで。
それに、呪いだと知ったから、それを解くための行動を2人が開始するというわけでもないんだし。

終盤、ジョアニーがベッキーたちを襲ったことを明かしてエリー&ジミーに襲い掛かるが、しばらくは人間の姿のままなので、人狼である 意味が無い。
変身シーンを見せたかったのかもしれないが、しばらく人間の姿で引っ張る必要性は無いでしょ。
それと、実はジェイクも悪党で、その後にエリーたちを襲うのだが、彼の行動とジョアニーは全く関係が無い。
別にジョアニーは、ジェイクの仲間として人殺しをやっていたわけではないのだ。
そういう設定にすることで、ジェアニーの役回りが中途半端なモノになっているなあ。

(観賞日:2011年3月18日)


第28回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【ちっとも怖くないホラー映画】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会