『宇宙空母ギャラクティカ』:1978、アメリカ

12の植民地惑星に分かれて暮らす人類は、七千年に渡って機械生命体「サイロン」との戦争を繰り広げていた。アダー大統領がサイロンと和平会談を持つことになり、宇宙空母アトランティアに集まった植民地惑星の代表者たちと祝杯を挙げた。宇宙空母ギャラクティカの乗員であるザック中尉は、兄のアポロ大尉に実力を示したいと考え、スターバック中尉にパトロールを代わって欲しいと頼んだ。ザックはスターバックに仮病を使ってもらい、アポロに同行を申し出た。
アダーは和平会談の功労者である側近のバルター伯爵に、感謝の言葉を掛けた。だが、サイロン側から申し込まれた休戦協定に対して、アダマ司令官は不審を抱いていた。パトロールに出ていたアポロとスターバックは、サイロンのタンカーを発見した。中身が空っぽなので、2人は奇妙に感じる。接近するとサイロンの貨物船がおり、妨害電波を発信していた。待ち伏せている戦闘艇部隊の隠蔽を知った2人は攻撃を受け、急いで離脱した。
エンジンをやられたスターバックは、自分を置いて艦隊へ報告に行くようアポロに促した。アダマ司令官は艦長を務めるギャラクティカに戻り、警戒態勢に入っていることを知った。アダマはアダーに通信し、念のために戦闘艇を配置するよう進言する。しかしバルターから「微妙な時期です」と反対されたアダーは会談に支障が出ることを危惧し、「正確な情報を待て」とアダマに告げた。アダマはタイ大佐に、「戦闘配置の訓練をするぞ」と告げた。
未確認の戦闘艇部隊が接近していることを確認したアダマは、アダーに報告する。しかしバルターは部隊を出して迎えるのを控えるよう進言し、アダーは彼の意見を受け入れる。ザックの戦闘機が攻撃を受け、そのことをアダマが告げる。アダーはバルターを捜すが、彼は姿を消していた。ザックが攻撃を受けて命を落とし、アダマはスターバックたちに応戦を命じた。ギャラクティカに戻ったアポロは、敵が戦闘艇だけで母艦が見当たらなかったことを知らせた。
アダマは植民地惑星群に危機が迫っていることを察知し、アダーに離脱許可を求めた。しかしアダーは茫然自失としており、攻撃を浴びたアトランティアは爆発した。母星へ戻るよう指示したアダマは、サイロンの戦闘艇部隊が惑星群へ向かっているという報告を受けた。船のモニターに視線をやったギャラクティカの乗員たちは、惑星全土が激しい攻撃を受けて壊滅寸前に追い込まれる姿を目にした。アダマがシャトルでサイロンの惑星キャプリカへ行くことを決めると、アポロは同行を申し入れた。
生存者の救助を命じられた乗員のタイやアセナたちは、戻って来た戦闘艇を収容する。他の空母が全滅しているため、ギャラクティカが全ての戦闘艇を収容することになった。キャプリカに降り立ったアポロとアダマは、生き残った住人たちから「待っていたのに、何をしていたのか」と責められる。セリーナという女性が「話を聞きましょう」と仲間たちをなだめ、2人は艦隊が全滅したことを説明した。セリーナの息子であるボクシーが「船に乗せて」と言うと、アポロは「子供は乗せられないんだ」と述べた。
「反撃を」とセリーナが告げると、アダマは「機が熟すのを待とう。生き残った人々に、あらゆる手段を講じて脱出するよう伝えるのだ」と指示した。全ての植民地惑星から220隻の船舶が集結した。人類をサイロンに売ったバルターは、「全滅だ」と満足そうに言う。「船で脱出した生存者がいることを捕虜が白状した」とサイロン兵に聞かされても、「食料も燃料も無い。何も出来ん」と余裕を示した。
アダマは船団の乗員を集め、古文書に記されている姉妹惑星の地球を目指すことを語る。正確な場所は分かっていないが、遥か彼方の類似した銀河系にあることだけは分かっていた。サイロンの首領は報告を入れた隊長に対し、「ギャラクティカの所在を突き止めなければ殺すと、バルターに伝えろ」と告げた。アポロは各船の点検を実施し、適当に済ませようとするスターバックを注意した。アポロがブーマー中尉とスターバックを引き連れて船を回ると、人々は水や食料が不足している窮状を訴えた。
カシオペアという娼婦が軽い熱を出していると知ったゲモン人の中年女性は、口汚く罵って追い出すよう要求した。その場からカシオペアを連れ出したスターバックは、彼女と親しくなった。アポロは食糧の支給をギャラクティカの作戦本部に要請するが、「情報不足で決定できない」と却下されてしまった。アポロはブーマーを引き連れ、シャトル・アルファで豪華客船ライジング・スターへ赴いた。アポロはジョリー軍曹に、コンテナを点検するよう指示した。
アポロはセリーナから、ボクシーが飼っていたダギット(イヌに似た愛玩動物)のマフィットを失って落ち込んでいることを相談される。彼は「マフィットの友達がいたら、君が一番に貰える。これを付けていなさい」と言って自分のバッジを渡し、ボクシーを元気付けた。アポロは評議会のユリ議員が女をはべらせて食料を独占していると知り、逮捕を通告した。アポロはブーマーに、ジョリーを呼んで食料を分配させるよう指示した。
カシオペアは医師の治療を受け、体調が回復した。元の貨物船に戻ることを嫌がる彼女に、スターバックは他の船を探すことを約束した。アダマは評議会に参加し、船団を惑星キャリロンへ向かわせる考えを明かす。ユリは「遠すぎる」と言い、惑星ボララスに進路変更するよう主張した。水や食料は豊富だが、そこにはサイロンの部隊も待ち受けているため、アダマは反対する。アポロはマダゴン星源を抜けるルートを使ってキャリロンを目指すよう進言するが、そこは機雷地帯だったためにアントン議員が馬鹿にした。
アポロが「安全な航路を確保する。志願者が戦闘機で船団の前に出て機雷を爆破する」と語ると、アダマは「危険すぎる」と反対するが、評議会は全員一致で賛成した。アポロはボクシーに、ロボット製のマフィットをプレゼントした。ボクシーの嬉しそうな姿を見て、アポロとセリーナは笑顔を浮かべた。アポロはスターバックとブーマーを率いて戦闘艇で出撃し、極度の高温に苦しめられながらもマダゴン星源の機雷を破壊した。
走査器がキャリロンに鉱山らしき場所を発見したため、アダマは調査隊を派遣した。スターバックとブーマーはまばゆい光を放つ場所に到達し、そこから走って来たトーラ人の若い女性と遭遇する。どこから来たのか尋ねると、女性は旅行会社が用意したスカイバスでツアーとして訪れたことを語った。そこにはモグリのカジノがあって、女性は大儲けして出て来たところだった。スターバックとブーマーは、客を装って情報収集することにした。
スターバックはギャンブルで稼いで呑気に浮かれるが、ブーマーは不審を抱いた。アポロの運転する探検車はチリューム鉱の存在を確認し、ジョリーが調査に向かおうとする。マフィットが車から逃げ出したので、ボクシーは後を追った。だが、そこへ昆虫族のオビオン人が現れ、驚いて叫ぼうとするボクシーの口を塞いだ。アポロ、セリーナ、ジョリーはオビオン人に案内されてカジノに入り、スターバックやブーマーと一緒に楽しんでいるボクシーと再会した。
ギャラクティカには、ユリ議員から「オビオン人が生存者のために全面的な支援を約束した」という情報がもたらされた。人々は大喜びし、一刻も早く上陸させるよう求めた。アダマはタイに「少数ずつ上陸させろ」と指示するが、「もう手遅れです。ユリ議員が半数に許可を出しました」と聞かされる。疑惑を抱くアダマに、ユリは「武器を放棄してサイロンの正義にすがるべきだ」と主張した。アダマは厳しい口調で批判するが、評議会はユリの意見に賛同していた。彼らはアポロたちの祝賀パーティーを開き、そこで武装解除を提案して強引に押し切ろうと画策する。その頃、カジノではエレベーターに乗った人々がオビオン人に餌として捕獲されていた…。

監督はリチャード・A・コーラ、脚本はグレン・A・ラーソン、製作はジョン・ダイクストラ、製作総指揮はグレン・A・ラーソン、製作監修はレスリー・スティーヴンス、製作協力はウィンリッチ・コルビー、撮影はベン・コールマン、編集はロバート・L・キンブル&レオン・オーティス=ギル&ラリー・ストロング、美術監督はジョン・E・チルバーグ二世、衣装はジャン=ピエール・ドルレアック、テーマ曲はグレン・A・ラーソン&スチュー・フィリップス、主題歌はジョン・タータグリア&スー・コリンズ&グレン・A・ラーソン、音楽はスチュー・フィリップス。
出演はリチャード・ハッチ、ダーク・ベネディクト、ローン・グリーン、レイ・ミランド、ジェーン・シーモア、テリー・カーター、ハーバート・ジェファーソンJr.、マレン・ジェンセン、トニー・シュワルツ、ノア・ハサウェイ、リュー・エアーズ、ウィルフリッド・ハイド=ホワイト、ジョン・コリコス、ローレッタ・スパング、ジョン・フィンク、エド・ベグリーJr.、リック・スプリングフィールド、ランディー・オークス、ノーマン・スチュアート、デヴィッド・グリーナン、サラ・ラッシュ、デヴィッド・マッソー、チップ・ジョンソン、ジェフリー・ビニー、ポール・コーフォス、ブルース・ライト他。


アメリカのABCネットワークが製作し、3時間枠で放送された同名TVシリーズのパイロット版を、劇場公開用に短縮して再編集した作品。『スタートレック』や『スター・ウォーズ』の影響を受けている(というか模倣している)ことは、言うまでもないだろう。
脚本と製作総指揮を務めたのは、TVドラマ『警部マクロード』シリーズのグレン・A・ラーソン。
最初にテレビ放送された時は、新聞のテレビ欄で1行に収めるには1文字多いということで、『宇宙空母ギャラクチカ』という邦題に変更された。
アポロをリチャード・ハッチ、スターバックをダーク・ベネディクト、アダマをローン・グリーン、タイをテリー・カーター、ブーマーをハーバート・ジェファーソンJr.、アセナをマレン・ジェンセン、ジョリーをトニー・シュワルツ、ボクシーをノア・ハサウェイ、アダーをリュー・エアーズ、アントンをウィルフリッド・ハイド=ホワイト、バルターをジョン・コリコス、カシオペアをローレッタ・スパング、ペイ医師をジョン・フィンクが演じている。ユリ役でをレイ・ミランド、セリーナ役でジェーン・シーモアが出演しており、他に戦闘機部隊のグリーンビーン軍曹をエド・ベグリーJr.、ザックをリック・スプリングフィールドが演じている。

公開された時に一番のセールスポイントとなっていたのは、既に『大地震』『ミッドウェイ』『ジェット・ローラー・コースター』でも採用されていたセンサラウンド方式だった。
センサラウンドはMCAとユニヴァーサル映画音響部が共同開発した音響装置で、劇場に設置した大型スピーカーから発する超低周波で空気を振動させ、爆発音や轟音のような衝撃を出すことによって、観客に臨場感を与えるというものだった。
結果的には、それが「一番」ではなく、「唯一」の売りになっている。
他に見所は無い(センサラウンドは音響システムだから、見所じゃなくて聴き所か)。

パイロット版の製作費は、監督の言葉を信じるならば900万ドル。
ちなみに『スター・ウォーズ』の製作費は1100万ドルで、これもSF映画としては相当に少ない予算だった。
それより劣る規模となれば、まあチープな仕上がりになってしまうのも仕方が無いっちゃあ仕方が無い。
ただしTVドラマとしては高額で、ABCの買値が安かったために製作費の回収が出来なくなり、それを補うために劇場版が製作されたという事情があるらしい)。

ただし、特撮のクオリティーが云々というよりも、脚本がボロボロだ。
まず、いきなり物語が開始されるので、世界観や状況の設定が全く掴めない。
台詞を読み取って、人類が12の植民地惑星に分かれて暮らしていること、サイロンという敵組織と長きに渡っていたこと、休戦の協定がサイロン側から持ち込まれてアダーが受諾したことは理解できる。
ただ、初期設定がどうなっているのかを、まず最初にテロップなりナレーションなりで軽く説明すべきではないかと。

アポロとスターバックが交戦状態に突入すると、サイロンの戦闘艇を操縦しているロボットらしき存在が写る。
本当にロボットなのか、それともロボット的なスーツを脱いだら中身は人間なのか、その辺りはハッキリしない。
っていうか、そもそも、そこで初めてサイロンの連中が登場するという見せ方が上手くない。
それより先に、サイロンがどういう連中なのかを見せておくべきだ。アダーがモニターでサイロンと通信するとか、サイロンの連中が和平会談について喋っている様子を挿入するとか、幾らでも方法はある。

主要キャラクターの紹介がスムーズに行われていないのも上手くない。
和平会談が予定されていることを示した後、ギャラクティカの様子が写るんだから、そこで乗員を紹介するパートを設ければ良かったのだ。それなのに、アポロとザックとスターバックを登場させただけで、さっさと次のシーンへ移ってしまう。
そのせいで、乗員だけでなく、ギャラクティカの内部を描写することも出来ていない。
どんな船で、どんな連中が乗っていて、どんな関係性なのか、序盤に紹介しておいた方が、後の展開にも都合がいいはずだろうに。

アダマが戻るとギャラクティカは警戒態勢に入っているが、まだ敵の正体は不明ということになっている。
だけど、アポロが艦隊に警告するため、スピードの出ないザックを残して離脱したんじゃなかったのかよ。もう妨害電波も無いはずで、なぜ敵がサイロンであることが伝わっていないのか。
そもそも、アポロはどこにいるのか。ザックが撃墜された後でアダモの元に来ているけど、今までどこで何をしていたのか。
別の場所にいる艦隊に知らせていたとしたら、そこからギャラクティカに伝わるはずだし。

サイロンの戦闘艇部隊が攻撃を仕掛けてきたのでアダマは応戦を指示するが、なぜかアトランティアからは攻撃部隊が出撃しない。
まさか攻撃部隊が無いわけでもないだろうに、なんで全く反応を示さないのかと思っていたら、アダマが離脱を要請した時にアダーは泣きそうな顔で「私が愚かなせいで、人類を滅亡に導いた」と漏らす。
どうやら、このオッサンがショックを受けて何も出来なくなっていたようだ。
その前から何でもかんでもバルターの助言を仰いでいたし、どんだけボンクラなんだよ。
そこに「リーダーが愚かだと犠牲を支払うのは庶民」というメッセージが隠されている、とは到底思えない。

TVシリーズのパイロット版を再編集し、約2時間の上映時間に合わせて幾つかのカットやシーンを削除した結果として、登場人物の行動に違和感が生じたり、説明不足の部分が出来てしまったりしているという事情はあるんだろう。
ただ、それにしたって色々とギクシャクしている箇所が多すぎる。
TV版は見ていないが、そちらの方も、あまり良い出来栄えではなかったんじゃないかと思ってしまう。

それと、説明不足を感じる一方で、「そこはカットせずに残したのかよ」と感じるような箇所もある。
具体的に例を挙げると、被弾した戦闘機でスターバックがギャラクティカへ帰還するシーン。
スターバックとアセナの「着艦装置の回線が破損した」「詳しい状態は?」「訓練じゃないぞ、実戦だ」「分かってるわ。燃料は?」「もう無い」「アルファを閉鎖して左サーボ回線に」「反応しない」「オメガを閉鎖して補助回線に」「ダメだ」といった会話があり(その間にコンピュータやスイッチを操作する様子も挿入される)、ブーマーが乗員を避難させた上でスターバックにそのまま戦闘機を突っ込ませるという様子が丁寧に描かれるのだが、それ、要るかね?
そんなのバッサリとカットしてもいいだろ。サイロンと戦っている最中の出来事でもなくて、帰還する時のトラブルなんだし。

アポロがセリーナからボクシーのことで相談を受け、彼のためにロボットのマフィットを作ってプレゼントするエピソードも、バッサリと削り落としていいんじゃないかと。
それでボクシーは喜んでいるけど、「どこからどう見ても動物の姿をした精巧なロボット」ではなくて、外見も動きもモロにロボットなので、むしろ「こんなのマフィットじゃないよ」と拒絶反応を示す方が普通じゃないかと思うんだよね。
一応はボクシーも「本物のマフィットじゃない」とは言っているけど、「利口だから何でも覚える」と説明されて簡単に受け入れちゃうし。そういう問題じゃねえだろ。
終盤、勝手に逃げ出してしまうマフィットも、それを追い掛けたり、戦闘状態の中で「マフィットを置いて行けない」と駄々をこねてアポロの手を焼かせたりするボクシーも疎ましい存在になっているし。

サイロンに惑星群と艦隊を壊滅させられ、そこからギャラクティカと船団が非難して地球へ向かっているので、追って来るサイロンとの戦いが繰り広げられるのかというと、その部分は少ない。
その代わりに何をやるのかというと、ギャラクティカ船団の人々の様子を描くパート。
アポロ&セリーナ恋愛劇+ボクシーとの交流、スターバック&カシオペア&アセナの三角関係、そしてアダマと評議会の確執、そういったことだ。

前者2つは、常に戦闘状態や張り詰めた緊張感だけだと疲れるので、恋愛劇を入れるのは構わないが、ちとヌルいかな。
ただ、それよりも問題なのは3つ目で、緊迫感を作り出す主な要素が内輪揉めってのは、いかがなものかと。評議会が武装解除を求める裏にはサイロンの罠があるんだけど、でも図式としては「騙された評議会と郡部の内輪揉め」でしかないわけで。
そりゃあ、これで物語が完結するわけではなく、長いTVシリーズの序章なので、いきなりサイロンとの全面戦争を用意できないという事情はあるだろう。
ただ、やはりスタートとしては、内部のゴタゴタじゃなくて、もっと「人類vsサイロン」という対立軸に集中した方が良かったんじゃないかと。

(観賞日:2014年4月28日)


1979年スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最も苛立たしい非人間キャラクター】部門[ロボット製ダギットのマフィット]

 

*ポンコツ映画愛護協会