『A-X-L アクセル』:2018、アメリカ

アメリカ軍は長年に渡って兵士に代わる軍用犬を開発してきたが、実用化には至っていない。そんな中、超小型ドローン兵器のメーカーであるクレイン社が軍用ロボット犬「アクセル(A-X-L)」の開発に成功した。Attack(攻撃)、Exploration(探査)、Logistics(支援)の機能を兼ね備え、優れた性能とパワーを誇るロボットだ。そして本物の犬と同じように、人間と意思疎通を図って信頼関係を結ぶ。搭載する兵器は高い互換性を持ち、究極の軍用犬として活動することが出来るとクレイン社は宣伝している。
マイルズ・ヒルはモトクロスに参加し、トップに立った。しかし後ろから迫ったサム・フォンテインに激突されて転倒し、優勝を奪われただけでなくチェーンが切れてしまった。マイルズは父のチャックと2人だけで参加しているが、金持ちの息子であるサムには大勢の仲間がいた。チャックはサムの父であるジョージに予備のチェーンを貸してほしいと頼むが、冷たく拒否された。するとサムのチームにいたサラという女性が、内緒でチェーンを持ち出してマイルズにを渡した。
マイルズは次のレースでサムを追い抜き、優勝を飾った。マイルズが会場を去ろうとすると、サムは自宅のパーティーに来ないかと誘う。マイルズは「明日も朝が早い」と言い、誘いを断った。するとチャックはパーティーに行くよう勧め、「あいつの父親はコネを持ってる。コネがあればスポンサーが付く。成功したいなら、上手くやれ」と告げた。その夜、クレイン社のラボからアクセルが脱走し、開発担当のアンドリックはドローンで捜索するよう部下のランドールに命じた。
マイルズがパーティーへ赴くと、サムは仲間に紹介した。サムは工業用トーチで車に火を燃やし、仲間に撮影させた。彼らは楽しそうに盛り上がるが、マイルズは付いて行けなかった。彼は屋内に入り、ガレージでサムのバイクを発見した。マイルズがバイクを見ていると、彼と同じくパーティーに馴染めないサラが現れた。サラは母のジョアンナが家政婦をしていること、離れに住んでいることを話す。サムと付き合っているのかと問われたサラは、笑って否定した。
マイルズがサラと話していると、サムがやって来た。サムがパーティーに戻るよう誘うと、マイルズは「そろそろ帰らないと」と告げる。しかし「もう少し付き合えよ。紹介したい奴がいる」と言うと、マイルズは承諾した。翌朝、二日酔いで帰宅した彼は父の仕事を手伝い、サムの潤沢な資金力について語った。まだアクセルを発見できずにいるアンドリックは、ウェバー大尉からの連絡を受けた。ウェバーは「あと2日で実演よ。状況を報告して。7千万ドルの軍事費を使ってる」と鋭く告げ、アンドリックはアクセルに目覚ましい進歩が出ていると話す。ウェバーは彼に、「ラボにリモート接続できるようにしなさい」と命じた。
マイルズがバイクを洗っていると、サムが仲間と一緒に車で現れた。マイルズは「凄いジャンプを撮ってネットに投稿しよう。お前の才能を知らしめるんだ」とサムに誘われ、彼らに付いて行く。一行は廃棄物が放置されている郊外の空き地に着き、モトクロスで走る映像の撮影を始めた。サムはマイルズの気を逸らせ、その間に仲間がバイクの燃料タンクにジュースを注ぎ込んだ。マイルズは何も知らないまま大ジャンプに挑み、転倒して怪我を負った。サムと仲間は嘲笑し、マイルズを放置して去った。
マイルズが立ち去ろうとすると、廃棄物の方から物音がした。彼が警戒しながら歩み寄ると、アクセルが潜んでいた。マイルズは慌ててバイクに乗り、エンジンを掛けた。アクセルが追跡を開始すると、彼はテクニックを駆使して逃走する。マイルズがバイクでジャンプすると、追って来たアクセルは着地に失敗する。アクセルは鉄パイプが突き刺さって動かなくなり、マイルズは恐る恐る近付いた。アクセルは自爆モードに切り替わるが、マイルズは知らないまま歩み寄る。彼は本物の犬を相手にするように、優しく話し掛けて頭を撫でた。するとアクセルは自爆モードを解除し、鉄パイプを引き抜いたマイルズを「信頼すべき対象」と認識した。
マイルズはアクセルの体を調べ、銃弾による傷を発見した。アクセルは彼のスマホを通じて、名前を伝えた。マイルズはアクセルを運び、修理に取り掛かった。アクセルは自分の管理者を、マイルズに変更した。翌朝、サムと仲間がマイルズの失敗映像をネットに流して嘲笑していると、サラが現れた。彼女はサムたちを批判し、マイルズの居場所を教えるよう要求した。マイルズはアクセルの修理を終えると、ガソリンを入れた。アクセルはマイルズを友達として受け入れ、バイクを走らせる彼と一緒に遊んだ。アンドリックはアクセルの居場所を知るが、システム破壊を進言するランドールに対して「これは求めていた突破口だ」と告げた。
アクセルはサラを目撃し、拘束すべき対象として襲い掛かった。マイルズは慌てて「彼女は友達だ」と説明し、アクセルに理解させた。サラはアクセルが軍に作られたと推理し、持ち主に引き渡すべきだとマイルズに言う。しかしマイルズは銃創を見つけたこともあり、素直に同意することが出来なかった。サラの車はアクセルのせいで翌朝まで動かせない状態になっており、マイルズは彼女と互いの親について語り合った。アクセルは曲を流したりライティングに凝ったりして、場の雰囲気を盛り上げた。ランドールはマイルズとサラが貧困家庭だと突き止め、アクセルを買い取ろうとアングリックに提案した。しかしアンドリックは「アクセルが急速に進化してる」と言い、そのまま観察を続けることにした。
次の朝、マイルズはアクセルに牽引させ、サラの車が動かせるようにした。彼はサラに、アクセルの持ち主を自分たちで見つけ出そうと提案した。街に入った2人はガソリンスタンドに立ち寄り、給油することにした。するとアクセルは支払い無しで給油させただけでなく、近くのATMを操作して金を引き出した。マイルズとサラは困惑しながらも紙幣を手に取り、その場を去った。サラはマイルズを廃墟へ案内し、そこにアクセルを隠すことにした。
サラが廃墟の壁に羽根の絵を描くと、アクセルのメモリーと合致した。アクセルが極秘計画の映像を壁に投影したため、マイルズとサラはクレイン社が軍用犬として開発したことを知る。頭部から出た装置をマイルズが掴むと、アクセルは彼の指先から血液を採取した。これによって生体認証が完了し、アクセルはマイルズの命令でしか動かない状態になった。ランドールは焦るが、アンドリックは「彼も連れてくればいい」と落ち着き払って述べた。
サムが廃墟に来ると、サラは1人で対応しようとする。しかし彼女がサムを追い払おうとしていると、マイルズが姿を見せた。サムが殴り掛かろうとすると、マイルズはパンチをかわした。そこへアクセルが飛び出し、サムを制圧する。サラは「早く止めて」と叫ぶがマイルズは耳を貸さず、アクセルにサムを連れて来るよう命じた。マイルズは2度とサラに近付かないよう要求し、サムが承諾したのでアクセルに解放するよう命じた。マイルズの命令を受け、アクセルはサムを攻撃対象から外した。
サムが慌てて立ち去ると、サラはマイルズを批判した。マイルズは反省し、「やり過ぎだった」と謝罪した。彼はサラから父親に話すよう提案され、アクセルを廃墟に隠して自宅へ戻ることにした。マイルズはサラを連れて帰宅し、チャックに事情を説明した。サムは仲間を引き連れて廃墟に戻り、アクセルを攻撃しようとする。アンドリックとランドールは慌てるが、捜索チームを派遣しようにも離れた場所にいて無理だった。サムはガソリンを撒いてアクセルを燃やし、その様子を撮影した動画をサラに送り付けた。
マイルズとサラが廃墟に駆け付けると、アクセルは黒焦げで動かなくなっていた。マイルズはセーフモードを起動し、スマホに示された場所へアクセルを運ぶことにした。捜索チームの1人はヒル家へ行ってチャックに動かないよう命じ、室内の捜索を始める。チャックはボウガンを構えて男を脅し、銃を放棄させた。ランドールは事態を解決するため、アンドリックに内緒でウェバーに連絡を取る。マイルズとサラは3Dプリンター製作所にアクセルを運び込み、修理してシステムを再起動した。2人は再起動の完了を待つが、アンドリックが回収チームを差し向ける。再起動の終わったアクセルは回収チームの2人を蹴散らし、サムを攻撃するため製作所を飛び出す…。

脚本&監督はオリヴァー・デイリー、製作はデヴィッド・S・ゴイヤー&ケヴィン・チューレン&トム・ローゼンバーグ&ゲイリー・ルチェッシ&リチャード・ライト&エリック・リード、製作総指揮はデヴィッド・カーン&ジェームズ・マクウェイド&エリザベス・ゲサス&アダム・P・シュナイダー&トム・オーテンバーグ&キャシー・ウィッティング、共同製作はジャッキー・シェノー、撮影はティム・オアー、美術はスズキ・イナースレウ、編集はジェフ・マカヴォイ、衣装はリンジー・アン・マッケイ、音楽はイアン・ハルトクイスト。
出演はアレックス・ニューステッター、ベッキー・G、トーマス・ジェーン、アレックス・マクニコル、ドミニク・レインズ、ルー・テイラー・パッチ、パトリシア・ドゥ・レオン、ニコ・グァルダード、マリー=フランソワーズ・テオドール、テッド・マッギンリー、マデリーン・ベルターニ、アンドリュー・オーテンバーグ、ハッシー・ハリソン、マグダレン・ヴィック、サム・アップトン、エリック・エテバリ、ジョナサン・キャンプ、ドニー・スミス、ダン・キャラハン、アシュリー・ギブソン、チャンス・ラング他。
声の出演はフレッド・タタショア。


2014年の短編映画『Miles』を基にした作品。
短編映画を手掛けたオリヴァー・デイリーが引き続いて脚本&監督を務め、長編デビューを果たしている。
マイルズ役はTVシリーズ『COLONY/コロニー』のアレックス・ニューステッター、サラ役はシンガーソングライターのベッキー・G。
チャックをトーマス・ジェーン、サムをアレックス・マクニコル、アンドリックをドミニク・レインズ、ランドールをルー・テイラー・パッチが演じている。

チャックはマイルズがサムのパーティーへの参加を断った時、「あいつの父親はコネを持ってる。コネがあればスポンサーが付く。成功したいなら、上手くやれ」と言う。
ところがマイルズが帰宅すると、「いつか怪我や年齢で引退する時が来る」と言い、モトクロス以外の道に目を向けるよう勧める。「学校の成績は悪いし、大学に行く金も無い。でもレースだけは別だ」とマイルズが話すと「だが、他に何を試した?」と問い掛ける。
それは矛盾してないか。
しかも、そこで「モトクロス以外の道も考えたらどうか」みたいなことを言っているけど、これが後の展開には何も影響しない台詞になっちゃってるし。

サムはマイルズがパーティー会場から去ろうとした時、「もう少し付き合え。紹介したい奴がいる」と告げる。ところが次のシーンでは、二日酔いで帰宅したマイルズがチャックの仕事を手伝っている。
つまり、「マイルズが会場に戻り、サムが誰かを紹介する」という手順がカットされているのだ。
だったら、「紹介したい奴がいる」というトコも要らないでしょ。そのままマイルズが去る展開でいいでしょ。
二日酔いってのが、ストーリー展開に関係してくるわけでもないし。

あと、サムは翌日になってからマイルズに罠を仕掛けているんだけど、だったらパーティー会場でも嫌がらせをすりゃいいだろ。
その時は特に何も行動を起こさず、翌日になってから初めて嫌がらせに出る意味なんて何も無いぞ。
パーティーのシーンでも、マイルズを騙したり、嘲笑したりするチャンスなんて幾らでもあったはずで。
「紹介したい奴がいる」と言って引き留めたんだから、そこで何か仕掛けて嘲笑する流れでもいいわけだし。

冒頭の説明シーンでは、アクセルの姿はハッキリと分からない状態になっている。アクセルが脱走した時も、やはりハッキリとした姿は写らない。マイルズが発見した時に、初めて全体の明確なフォルムが明らかになる。
だけど、そこまで引っ張るほどのモノでもないよね。そんなに効果があるわけじゃないし。
あと、最初に姿が見えた時のインパクトも薄いし。マイルズが目撃した時点で、ちゃんと姿を見せた方がいいと思うのよね。
でも、そこはボンヤリさせておいて、バイクを追い掛ける時に初めてマトモな形で全身を見せるのよ。それだと、全身が分かりにくいんだよね。

マイルズはアクセルを見た途端、怖がって逃げ出す。
でも、まだアクセルは極秘で開発されているはずなんだから、それが軍用ロボット犬ってことをマイルズは知らないはずでしょ。それなのに、ロボット犬を見た途端に「こいつは攻撃してくる」と確信して逃げ出すのは行動として変じゃないかと。単なるロボット犬として捉えた場合、好奇心を抱いて触ろうとする方が腑に落ちるわ。
そこは「アクセルが攻撃してくる様子を見せる」ってのが先にあって、それからマイルズが逃げ出す展開にすべきじゃないかと。
マイルズはアクセルが動けなくなってから「怖がらなくていい」と頭を撫でているけど、それは「見た瞬間にビビって逃げ出す」という行動と矛盾しているだろ。それなら、遭遇した時には既にアクセルが損傷して動けなくなっている設定にでもした方がいいだろ。

アクセルはマイルズを追い掛けるが、ジャンプしてからの着地に失敗して動けなくなる。でも、幾らマイルズがレーサーとして優秀でも、そんな追跡で簡単に動けなくなるようでは兵器として役立たずじゃないか。
それに、アクセルは究極の軍用犬として開発されたはずなのに、なんでマイルズに懐いて一緒に遊んでいるんだよ。ただの愛玩犬じゃねえか。
しかも、マイルズの好きな曲を流したり、ライティングでムードを盛り上げたりもしているし。軍用犬なのに、そんな機能が搭載されているのは変だろうに。
「軍用犬」という目的に特化した性能だけを搭載しているべきだろうに、簡単に愛玩犬として転用できる性能もあるのは設定として不自然だろうに。

クレイン社は米軍から多額の軍事費を貰ってアクセルを開発しているはずなのに、出てくる研究チームのメンバーは2人だけ。それなりの大きさがあるラボだが、他の研究員がいる気配は皆無だ。チャックの元へ来る捜索チームも1人しかいないから、あっさりと拘束されている。
一刻も早く解決しなきゃいけない緊急事態のはずなのに、どんだけ人員が少ないんだよ。
あと人員だけじゃなくて、極秘計画への意識も不足している。何しろサラが壁に羽根の絵を描いたらアクセルのメモリーに合致して、クレイン社の極秘計画の映像を投影するのよ。
そんなに簡単に極秘計画が露呈しちゃうって、どんだけセキュリティーが甘いんだよ。

クレイン会社がアクセルを回収するためにチームを差し向けるんだから、終盤は「マイルズとアクセルがクレイン社に立ち向かう」とか、「マイルズとサラがアクセルを救うために戦う」とか、そういう内容になっているべきだろう。
ところが、「アクセルが凶暴化してサムを襲う」という手順を挟んでしまうんだよね。そんなの、全く要らないからね。
あと、サムの存在が宙ぶらりんになってんのよね。
こいつはクズ野郎だけど、凶暴化したアクセルに殺されるわけにはいかないからマイルズとサラは制止する。クレイン社と結託しているわけじゃないから、「クレイン社がアクセルを回収しようとする」という筋書きには関与しない。なので、クズのままで放り出されているのだ。
だったら最初から、こんなキャラは要らんよ。

(観賞日:2020年11月5日)

 

*ポンコツ映画愛護協会