『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』:2015、アメリカ

アベンジャーズはロキの杖を奪うため、東欧のソコヴィアにあるヒドラの研究施設へ奇襲攻撃を仕掛けた。バロン・フォン・ストラッカーが「あと少しで研究が成果を上げるところなのに」と苛立つと、部下のリストは「その成果を見せてやりましょう。双子を送るのです」と提案する。ストラッカーは時期尚早だと考え、全てのファイルを削除して降伏しようと考える。しかし彼はリストから、双子が姿を消していることを知らされた。
双子の弟である強化人間のピエトロ・マキシモフは森へ行き、クリント・バートンに重傷を負わせた。暴れていたハルクはナターシャ・ロマノフに声を掛けられて落ち着き、ブルース・バナーの姿に戻った。スティーヴ・ロジャーズは双子の姉であるワンダ・マキシモフと遭遇するが、逃亡を図るストラッカーを捕まえた。トニー・スタークは杖を発見するが、ワンダの能力でアベンジャーズが全滅する幻覚を見せられる。ロジャースが「なぜ手を尽くさなかった」と言い残して息絶えたところで、彼は幻覚から解放される。ワンダは駆け付けたピエトロを制し、スタークが杖を奪うのを見届けた。
トニーはソーの了解を得て、アスガルドへ持ち帰る前にブルースと協力して杖を調べることにした。スタークはヘレン・チョの治療を受け、人工細胞によって回復した。トニーはジャーヴィスに杖の構造を分析させ、ブルースは人工知能が含まれていると気付いた。トニーは「これは使えるぞ。ウルトロンを作れる」とアイアン軍団への応用を口にする。ブルースは難色を示すが、トニーはチームに内緒で人工知能を作ろうと持ち掛けた。
トニーが「僕には見える。地球を救うアーマーが。この無防備な星には必要なんだよ」と熱く語ると、ブルースも協力を承諾して実験が繰り返された。しかしトニーがラボを離れている隙に、人工知能は自我に目覚めてしまった。彼はジャーヴィスに話し掛け、トニーへの連絡を遮断した。平和維持プログラムである人工知能はアベンジャーズについて調べ、危険な存在だと確信する。彼はジャーヴィスを破壊すると、ボディーを獲得した。
同じ頃、アベンジャーズはローディーやサムたちも招き、パーティーを開いていた。そこへ「ウルトロン・マーク1」となった人工知能が現れて「任務を果たす。平和をもたらす」と告げ、アイアン軍団にアベンジャーズを襲わせる。アベンジャーズが反撃すると、ウルトロンは「平和への道は1つしか無い。アベンジャーズの全滅だ」と口にした。ソーがボディーを破壊するが、ウルトロンはインターネットを使って逃亡した。ロキの杖は奪い去られてしまい、トニーはソーの怒りを買う。しかしトニーは全く悪びれず、「ウルトロンの必要性が理解できないとはな」と言い放った。
ウルトロンは別のボディーでワンダとピエトロの前に現れ、アベンジャーズを終わらせるために手を組むよう持ち掛けた。マキシモフ姉弟は幼い頃に両親を爆撃で亡くし、身を隠していた時に飛来した不発弾にはスターク・インダストリーの文字が刻まれていた。爆発の恐怖に2日間も怯えていた姉弟に、ウルトロンは「恨みを晴らすがいい」と告げた。ウルトロンはストラッカーを殺害し、アベンジャーズを挑発するような血文字のメッセージを残した。
アベンジャーズの面々は、ウルトロンが武器商人のユリシーズ・クロウから特殊金属であるヴィブラニウムを入手しようと目論んでいることに気付いた。ウルトロンはマキシモフ兄妹を引き連れ、クロウが武器密売所に使っている廃船へ乗り込んだ。ヴィブラニウムを手に入れたウルトロンは金を振り込むが、「お前はトニー・スタークの製品か」というクロウの言葉に激昂して左手を切り落とした。そこへアベンジャーズが駆け付け、敵に戦いを挑む。ワンダの能力によって、幻覚を見せられたソーとスティーヴ、ナターシャは戦闘不能に陥る。しかし経験済みのバートンはワンダの動きを察知し、額に矢を突き刺した。
ピエトロがワンダを救助して外へ出ると、ブルースが待機していた。幻覚を見せられたブルースはハルクに変身し、ヨハネスブルグの街を破壊する。トニーは人工衛星のヴェロニカを起動させ、強化アーマーを装着してハルクの暴走を止めた。バートンは仲間を引き連れ、家族が暮らす農場へ赴いた。彼は妊娠している妻のローラと2人の子供たちを紹介し、シールドには内緒にしておいてくれと頼んだ。ローラは夫に、無茶はしないでほしいと告げた。ウルトロンはヘレンの前に現れ、ロキの杖で洗脳した。
ナターシャはブルースに愛を告白し、どこへでも付いて行くと告げる。ブルースが「僕と一緒にいても未来なんか無い。子供も作れない」と言うと、彼女は「私も一緒よ。アカデミーで訓練を積んでいた時、卒業の儀式として不妊手術を受けた」と打ち明けた。ソーは夢で見た内容が気になり、エリック・セルヴィグ博士の元を訪れて助力を要請した。ニック・フューリーはトニーたちの前に現れ、「ウルトロンは君たちを遠ざけて時間を稼ぐ気だ。何かを作っているらしい。だが、未だに本当の狙いは見えない」と話した。ウルトロンは核ミサイルの発射コードも狙っているが、何者かによって常に変更されていた。
ブルースは「ウルトロンは進化する」と呟き、ヘレンと連絡を取るよう求めた。ウルトロンはヘレンを操り、人工細胞とヴィブラニウムを合成したボディーを作っていた。ソーはセルヴィグの案内で洞察の泉に入り、幻覚の続きを見た。トニーは発射コードを変更している人物の正体を探るため、ノルウェーのオスロにある施設「ネクサス」を訪れた。彼はコンピュータを操作し、敵を誘い出そうと考える。ヘレンは細胞の結合を待つ間に、ウルトロンの意識をアップロードする作業に取り掛かる。するとワンダはウルトロンの意識が読めるようになり、その目的が人類の滅亡だと知った。
ピエトロはヘレンの洗脳を解き、ワンダと共に逃亡した。アベンジャーズが来ると気付いたウルトロンは、アップロードを中断してボディーを運び去る。ラボに入ったスティーヴは、ヘレンから「パワーの源は再生クレードルの中よ。あの石は恐ろしいパワーを秘めてる。単に爆破しては危険よ」と告げられる。スティーヴ、ナターシャ、バートンはラボを出たウルトロンのトラックを追跡し、攻撃を仕掛ける。スティーヴが列車でウルトロンと戦っていると、マキシモフ姉弟が駆け付けて加勢する。ウルトロンは逃走し、ワンダは暴走する列車を止めた。ナターシャはクレードルをバートンに渡すが、ウルトロンに拉致されてしまう…。

脚本&監督はジョス・ウェドン、原作はスタン・リー&ジャック・カービー、製作はケヴィン・ファイギ、共同製作はミッチ・ベル、製作総指揮はルイス・デスポジート&アラン・ファイン&ヴィクトリア・アロンソ&ジェレミー・レイチャム&パトリシア・ウィッチャー&ジョン・ファヴロー&スタン・リー、製作協力はジェイミー・クリストファー&ジェフリー・フォード&ダニエル・S・カミンスキー、撮影はベン・デイヴィス、美術はチャールズ・ウッド、編集はジェフリー・フォード&リサ・ラセック、衣装はアレクサンドラ・バーン、視覚効果監修はクリストファー・タウンゼント、視覚効果プロデューサーはライアン・スタッフォード&ロン・エームス、音楽はブライアン・タイラー&ダニー・エルフマン、音楽監修はデイヴ・ジョーダン。
出演はロバート・ダウニーJr.、クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、サミュエル・L・ジャクソン、ジェームズ・スペイダー、ドン・チードル、アーロン・テイラー=ジョンソン、エリザベス・オルセン、ポール・ベタニー、コビー・スマルダーズ、アンソニー・マッキー、ヘイリー・アトウェル、イドリス・エルバ、リンダ・カーデリーニ、ステラン・スカルスガルド、クラウディア・キム(キム・スヒョン)、トーマス・クレッチマン、アンディー・サーキス、ジュリー・デルピー、スタン・リー、ヘンリー・グッドマン、クリス・ルカ、ブライアン・シェーファー、ドミニク・プロヴォスト=チョークリー、アイザック・アンドリュース他。


マーベル・スタジオズのアメコミ映画(マーベル・シネマティック・ユニバース)に登場するヒーローたちが集結して戦うシリーズ第2作。脚本&監督は前作に続いてジョス・ウェドンが担当。
トニー役のロバート・ダウニーJr.、ソー役のクリス・ヘムズワース、ブルース役のマーク・ラファロ、スティーヴ役のクリス・エヴァンス、ナターシャ役のスカーレット・ヨハンソン、バートン役のジェレミー・レナー、フューリー役のサミュエル・L・ジャクソン、ジャーヴィス役のポール・ベタニー、マリア役のコビー・スマルダーズは、前作からの続投。ただし今まで声だけの出演だったポールが、今回はヴィジョン役で姿も見せている。
ローディー役のドン・チードルは『アイアンマン』シリーズ、ペギー役のヘイリー・アトウェルは『キャプテン・アメリカ』シリーズ、ヘイムダル役のイドリス・エルバとエリック役のステラン・スカルスガルドは『ソー』シリーズのキャスト。ピエトロ役のアーロン・テイラー=ジョンソンとワンダ役のエリザベス・オルセン、サム役のアンソニー・マッキー、ストラッカー役のトーマス・クレッチマンは、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』に続いての登場。
他に、ウルトロンをジェームズ・スペイダー、ローラをリンダ・カーデリーニ、ヘレンをクラウディア・キム(キム・スヒョン)が演じている。アンクレジットだが、エンドロールの途中で1カットだけ姿を見せるサノス役のジョシュ・ブローリンは、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に続いての登場。

今回のアベンジャーズが冒頭で戦う相手は、前作に登場しなかったストラッカー&ヒドラだが、どういう敵なのかという説明は何も無い。
『アベンジャーズ』としての前作だけでなく、「マーベル・シネマティック・ユニバース」を通して見ていないと、このシリーズは付いて行くのが厳しい。
『キャプテン・アメリカ』シリーズの敵であるヒドラも、ローディーやサムも、「皆さん御存知でしょ」という感じで平然と登場するのだ。
観客へのサービスとして、シリーズを全て見ている人だけが分かる遊びを入れるのはいいけど、ここまで完全に「マーベル・シネマティック・ユニバースを全て見ておかないとキツい」という形にするのは、どうなのかねえ。

のっけから派手なアクションシーンを用意して、観客を引き付け、気持ちを高めようとしている。
その構成はいいんだけど、それが終わるとパーティーのシーンに入り、無駄にノンビリしてしまう。
いや、ずっとハイテンションで進めろとか、アクションを矢継ぎ早に用意しろとか、そういうわけではないのよ。
もちろん、1つのアクションシーンが終われば、次にドラマ・パートとして少し落ち着かせるのは悪くない。パーティーのシーンが、アベンジャーズの人間関係を描くために用意されていることも理解できる。

だけどさ、そういうのは話を先に進めながらでも出来ることでしょ。っていうか、進めながら処理するべき事柄でしょ。
ひとまず話の流れを止めないと、人間関係を描写できないのなら、そんなのは『CASSHERN』と変わらんぞ。
しかも、話の流れを止めてまで描いているのは、「ナターシャがブルースに惚れている」ってことぐらいなのだ。だったらパーティーのシーンなんてバッサリと削除しても、まるで支障が無いわ。
ナターシャがブルースに惚れているのは、冒頭のアクションシーンで何となく匂わせているんだから、そこに少し付け足せば事足りる。あるいは帰還するシーンで会話をさせて、そこで恋心を提示してもいいし。

廃船のエピソードではソーとスティーヴとナターシャが幻覚を見るが、そこは単にダラダラと時間を浪費しているようにしか感じない。
あと、ブルースに関しては、そもそも幻覚を見せられなかったとしても、ハルクに変身したら自分をコントロールできずに暴走しちゃう奴なのよね。
だから、そんな奴が「アベンジャーズとして地球の平和を守る」と言っても、まるで説得力が無いのよね。
ハルクに変身した時点で、そこに平和は無いんだから。

前作に引き続き、今回も「敵の強さが物足りない」という欠点がある。前作と異なる敵が登場するのに、そんな欠点だけを引き継いで何の意味があるのか。
前作のロキは、単純に「初登場の『マイティ・ソー』でソーとのタイマン対決に負けているんだから、アベンジャーズが相手だと勝ち目は無いでしょ」という感想だった。
一方、ウルトロンは本作品が初登場なので、既に強さが分かっているわけではない。
ただ、まず登場した段階で、その見た目が強そうな印象を与えない。じゃあ「見た目に似合わぬ強さ」というギャップがあるのかというと、そういうわけでもない。

ウルトロンは軍団を率いるわけではなく1体でアベンジャーズ全員と戦わなきゃいけないんだから、圧倒的な強さを誇るキャラじゃないと困るはずだが、「たぶんアイアンマンだけで勝てるんじゃねえか」と思ってしまう。
知略に長けているわけでもないし。
例えばガタイを巨大化させれば、それだけでも「凄い敵」というイメージを与えることは出来そうだけど、ほぼトニーやスティーヴたちと同じサイズだ。見た目だけなら、「アイアンマンの出来損ない」か、もしくは「ターミネーターのバッタモン」でしかない。

そんな印象なんだから、そりゃあ強そうに見えるわけもないわな。
クライマックスではアイアン軍団ならぬウルトロン軍団を率いているけど、数が多いだけで所詮は雑魚キャラどもだ。
「質より量」ってことなんだろうけど、アベンジャーズを絶体絶命の危機に陥れる大軍という印象は受けない。「まあ数が多いから面倒だろうけど、アベンジャーズに勝てるような連中ではない」という印象だ。
まあ実際、ウルトロンは時間稼ぎをしているだけだしね。

ただし、あまり敵を強くすると、それはそれで問題が生じるんだよね。それは、このシリーズが抱えるジレンマだ。
「どの辺りにパワー・バランスの軸を置くか」という部分で、このシリーズは難しい問題を抱えている。
と言うのも、アベンジャーズのパワー・バランスが悪いからだ。
前作の批評でも触れたが、ソーは神様なので、本来なら他の面々が束になっても敵わないはずだ。ところが前作では、ハルクの方が強いような扱いを受けていた。今回の作品では、さらに弱体化が進んでいる印象を受ける。
アイアンマンは相変わらず、かなり上の扱いを受けている。場面によってパワー・バランスが変化するものの、基本的にキャプテン・アメリカとブラック・ウィドウ、ホークアイは、ソーやアイアンマンより遥かに低い戦闘能力である。

なので、敵を巨大サイズにしたり、圧倒的な強さを誇る奴にしたりすると、スティーヴやナターシャたちの仕事が無くなってしまうのだ。
前作でも、ロキ&チタウリ軍との戦いだけだとスティーヴが役立たずになってしまうので、彼を活躍させるために「人質救出」という任務を用意しなきゃいけなくなっていた。
ウルトロン軍団が相手なら、スティーヴやナターシャたちでも普通に勝てる。しかしアベンジャーズの中でも戦闘能力の低い方にパワー・パランスを調整してしまったせいで、「敵が雑魚すぎて全く歯応えが無い」という状態に陥ってしまったのだ。
ウルトロンの親玉に関しても、「ヴィジョンがいれば勝てるよね。もうヴィジョンが誕生した時点で、アベンジャーズって不要になっちゃうよね」と言いたくなるし。
っていうか話のまとまりを考えれば、むしろヴィジョンが要らないんだけど。

今回はヴィジョンの他、ピエトロとワンダが新たな仲間として加わる。
でも、そいつらは今までのマーベル・シネマティック・ユニバースに登場していたキャラじゃないので、高揚感は全く無い。そんな「誰だか良く分からない奴ら」を出しても、無駄に数を増やしているだけにしか思えないし。
あと、実はマキシモフ姉弟って『X-MEN』シリーズのクイックシルバーとウィッチなのよね。でも『X-MEN』は配給会社が違うから、その名前が大人の事情で使えない。だから強化人間という設定に変更され、「お前ら誰だよ」という状態になっているわけだ。
そこまで無理をするぐらいなら、いっそ出さなくていいよ。

今回のアベンジャーズの戦いは、「地球や人々を守るための戦い」でもなければ、「強大な悪との戦い」でもない。
「自分たちが犯したヘマの後始末」に過ぎない。
それが結果的に、というか事情を知らない人から見れば、「地球や人々を守るための戦い」「強大な悪との戦い」になるだけだ。
しかし観客は真相を知っているので、トニーとブルースにとっては「壮大なマッチポンプ」であり、他のメンバーにとっては「仲間の尻拭い」であることはお見通しだ。

トニーがウルトロンを作ろうとしたのは、ワンダの能力で幻覚を見せられたのが原因だ。
しかし、そもそもトニーは幻覚を見せられる前から、ウルトロン計画を考えていた。
ワンダの幻覚によって「やっぱり俺の考えは正しかったよね」という確信に変わっただけであり、根本的にトニーはウルトロンが必要だと考えていたのだ。
なので、ワンダの幻覚が無かったとしても、近い内にウルトロン計画を進めていた可能性は充分に考えられる。

それを抜きにしても、やはり「ワンダの幻覚が原因なんです」ってのは、言い訳にならない。裁判になったとして、そこに情状酌量の余地を求めたとしても、有罪は覆られないし、減刑には繋がらない。
幻覚を見て簡単に操られるってのが、ただのアホにしか見えないからだ。
ブルースに至っては幻覚を見ておらず、トニーの熱弁に負けて協力しているわけで。
ただ、それでもトニーの方が圧倒的に罪は重いけどね。
トニーがバカすぎるので、「世界平和のためにはアベンジャーズの壊滅が必須」というウルトロンの主張は、あながち間違いじゃないように思えるぞ。

そこを明確に描いたらシャレにならないから都合良く隠蔽しているけど、どう考えたって大勢の市民が死んでいるはずだ。それはトニーが勝手な行動を取ったせいだが、こいつは全く罪悪感を抱かないし、これっぽっちも反省しない。
トニーはヒューリーの前で、幻覚の内容について「僕はアベンジャーズを死なせた。見たんだよ。世界も滅びた。僕の力が足りなかった」と語るが、それは「だからウルトロンを作ったことは間違っちゃいない」という言い訳なのだ。トニーの中に、ウルトロンを生み出したことへの悔恨や反省は全く無い。
だからクレードルを手に入れた途端、「その中にジャーヴィスを入れよう。今度こそ完璧なウルトロンを作るチャンスだ」と何食わぬ顔で言う。
「またヤバいことになるかもしれない、多くの犠牲が出るかもしれない」という不安は、これっぽっちも持ち合わせちゃいないのだ。

自信を持って行動するのは、ヒーローとしては決して悪いことじゃない。
ただ、つい最近の勝手な行動で失敗をやらかし、多くの犠牲が出ているわけで。そこの反省が何も無いまま、同じことを繰り返そうとするんだから、そんな奴を応援しようという気持ちは湧かないぞ。
ソーがムジョルニアでクレードルを起動させて誕生した「ヴィジョン」は悪玉じゃないけど、それは結果的に上手く行っただけだ。
なのにトニーが「ワシの手柄」みたいに得意げな顔をしているのは、すんげえ不愉快だわ。

ただし、バカなのはトニーだけじゃなくて、アベンジャーズの他の面々も大して変わらない。
こいつらは前作の経験があるにも関わらず、全く成長していない。相変わらず内輪揉めを繰り返しており、なかなかチームとしての統率が取れない。
まあ内輪揉めの原因を作るのは、ほぼトニーなんだけどね。
ただ、ソーも勝手に行動しているから、バラバラなのはトニーだけの責任じゃない。
っていうかスティーヴが本来ならチームをまとめなきゃいけないのに、ちっともキャプテンらしい仕事をしていないんだよな。戦略とか作戦も用意せず、それぞれが勝手に戦うだけだし。たまに共同で動くことはあるけど、指揮系統は全く機能していないし。

(観賞日:2016年11月14日)


2015年度 HIHOはくさいアワード:第5位

 

*ポンコツ映画愛護協会