『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』:2002、アメリカ
宇宙から戻ったドクター・イーヴルは、相変わらず8分の1クローンのミニ・ミーを可愛がり、実の息子スコットには冷たく当たる。イーヴルはナンバー2から、ハリウッドのタレント・エージェンシーを始めて稼いでいることを聞かされる。その新しい事業のために、ナンバー2は顔に大きな黒子があるナンバー3を雇い入れていた。
イーヴルは部下のナンバー2やフラウらに、1970年代に低音核融合装置を作ったゴールドメンバーと呼ばれるオランダ人のことを語った。イーヴルはゴールドメンバーを協力させてトラクタービームを完成させ、隕石を地球に引き寄せる「プレパレーションH」と名付けた計画を企てていた。イーヴルは1975年に飛ぼうとするが、オースティン・パワーズに捕まってしまった。
オースティンはエリザベス女王から表彰されるが、喜んでくれると思っていた父ナイジェルは式典に欠席していた。パーティーで双子の日本人女性と楽しくやっていたオースティンの元に上司ベイジルが現れ、ナイジェルが誘拐されたことを告げる。オースティンは特別監視の刑務所に収容されているイーヴルと面会し、ナイジェルの情報を教えるよう求めた。
オースティンはイーヴルから父親への感情を問い詰められ、スパイ学校時代のことを思い出した。オースティンと同室のイーヴルは、卒業式で自分が賞を貰えると確信していた。だが、選ばれたのはオースティンだった。しかし喜んでくれると思っていたナイジェルは、式に欠席していた。オースティンはイーヴルを普通の刑務所に移すのと引き換えに、ナイジェルがゴールドメンバーによって1975年に連れ去られたことを教えた。
オースティンは1975年にタイムスリップし、ニューヨークのディスコ「スタジオ69」に現れた。オースティンは、そこで潜入捜査をしていた元恋人フォクシー・クレオパトラと再会した。オースティンはオカマを挟んで彼女と会話を交わし、ナイジェルが奥の部屋にいることを教えてもらう。オースティンは女性をはべらして御機嫌なナイジェルを発見し、連れて行こうとする。しかしゴールドメンバーが現れ、ナイジェルを連れて2002年に逃亡する。オースティンもフォクシーと共に、2002年へタイムスリップした。
刑務所を移ったイーヴルはミニ・ミーと再会し、共に歌い踊って囚人たちを仲間にした。イーヴルとミニ・ミーはフラウの協力を得て、脱獄に成功した。イーヴルはスコットが悪党への変貌を見せたことに喜び、ミニ・ミーを疎外するようになる。オースティンとフォクシーは、脱獄したイーヴルを追って日本へと飛んだ。オースティンは力士に転職していたファット・バスタードの情報から、ロボト産業社長の日本人ロボトがイーヴルと手を組んでいることを知る…。監督はジェイ・ローチ、脚本はマイク・マイヤーズ&マイケル・マッカラーズ、製作はスザンヌ・トッド&ジェニファー・トッド&デミ・ムーア&エリック・マクラウド&ジョン・S・ライオンズ&マイク・マイヤーズ、共同製作はグレッグ・テイラー、製作総指揮はトビー・エメリッヒ&リチャード・ブレナー、撮影はピーター・デミング、編集はジョン・ポル&グレッグ・ヘイデン、美術はラスティ・スミス、衣装はディーナ・アッペル、視覚効果監修はデヴィッド・D・ジョンソン、振付はマーガレット・デリックス、音楽はジョージ・S・クリントン、音楽監修はジョン・フーリハン、音楽製作総指揮はダニー・プラムソン。
主演はマイク・マイヤーズ、共演はマイケル・ケイン、ビヨンセ・ノウルズ、セス・グリーン、マイケル・ヨーク、ロバート・ワグナー、ミンディー・スターリング、ヴァーン・トロイヤー、フレッド・サヴェージ、ダイアン・ミゾタ、キャリー・アン・イナバ、ノブ松下、アーロン・ヒメルスタイン、ジョシュ・ザッカーマン、エディ・アダムス、エヴァン・ファーマー、ニール・マラーキー、エリック・ウィンゼンリード、トム・“ティニー”・リスター他。
シリーズ第3作。マイク・マイヤーズは前作と同じくオースティン&イーヴル&ファット・バスタードを演じる他、新キャラクターのゴールドメンバー役もこなしている。スコット役のセス・グリーン、ベイジル役のマイケル・ヨーク、ナンバー2役のロバート・ワグナー、フラウ役のミンディー・スターリング、ミニ・ミー役のヴァーン・トロイヤーは前作から引き続いての登場。
ナイジェル役は、かつて『国際諜報局』に始まる“ハリー・パーマー”シリーズで眼鏡スパイを演じたマイケル・ケイン。フォクシー役は、デスティニー・チャイルドのビヨンセ・ノウルズ。他に、ナンバー3をフレッド・サヴェージ、ロボトをレストラン「NOBU」(ロバート・デニーロが共同経営者)のオーナーであるノブ松下(松久信幸)が演じている。前作『デラックス』に引き続き、というか前作以上にミニ・ミーの存在感は強い。今回は、終盤にミニ・ミーからミニ・オースティンに変身するという展開もある。
ちっちゃい体でチョコマカ動く彼の存在は、見た目も手伝って(というか見た目のおかげで)、かなり映画への貢献度が高い。
まあ良く考えると、ヴァーン・トロイヤーは体が小さいだけで、中身は完全にオッサンなのだが。シリーズが3作目に入り、レギュラーとなったキャラクターに加え、新たなキャラクターも見せなきゃいけない。
マイク・マイヤーズも、1人で4役をこなさなきゃいけない。
もちろん、そのキャラが被るようなことは避けねばならない。
ってなわけで、キャラ捌きだけでも大変で、そこで手一杯になってんじゃないかという感もある。元々『オースティン・パワーズ』シリーズはスパイ映画のパロディーというフォーマットで作られているが、スパイ映画だけじゃなくて、『羊たちの沈黙』や『アルフィー』や『ゴジラ』など、ジャンルを問わずネタにしている。
だが、それは面白さをアップさせるために手を広げたということじゃなくて、もうパロディーのネタ探しがスパイ映画だけではキツくなってきたってことじゃないのかね。
3作目まで来ると、このシリーズそのものがセルフ・パロディー化している匂いもするし。このシリーズ、笑いのタイプを大まかに分けると2つある。
1つはマニアックなネタで、もう1つは下ネタ。
で、なんか下ネタの方がパワーアップしている印象を受ける。かなり強引に、力技で下ネタに持って行ったりもする。
で、その場その場で下ネタをカマして、ショートコントを繋げていくという形式。
大きなストーリーの構築は、あまり気にしていないようだ。
偉大なるマンネリズムってのはあるし、ある程度は前作で使ったギャグのパターンを再び持ってくるのもいいだろう。ただ、その使い回しのネタが強くなりすぎるってのはマズい。シルエットを使った下ネタなどは、吉本新喜劇のような「来た来た」という面白さではなく、「また同じことか」という印象になっている。
そこには、他のギャグが弱いというバランスも関係しているだろう。この映画の一番の売りは、カメオ出演の豪華さ。
まず隠れたレギュラーとも言うべきバート・バカラックとロブ・ロウは、今回も登場。バカラックはエンドロールで本人として顔を見せ、ロブ・ロウは若きナンバー2を演じている。
パーティーでオースティンのバッグバンドのメンバーとしてギターを演奏するのは、元バングルズのスザンナ・ホフス(監督の奥さんでもある)。スタジオ69でオースティンとフォクシーの会話の真ん中に入るオカマは、『バードケージ』のセルフ・パロディーみたいなネイサン・レイン。
刑務所の女性看守は、NBCの司会者ケイティ・クーリック。終盤の劇場シーンでゴールドメンバーを演じているのはジョン・トラヴォルタ。オジー・オズボーンは、家族4人で顔を見せている。しかし、あえて後回しにしたが、何と言っても豪華なカメオ出演が見られるのはオープニングだ。オースティンをモチーフにした映画『オースティンプッシー』が製作されているという設定なのだが、そこでオースティンを演じるのがトム・クルーズ(見た目は完全にオースティン・パワーズに似せている)。そしてヒロイン役は、グウィネス・パルトロウ。
こちらもオースティンと同じく見た目を似せているイーヴル&ミニ・ミーの役は、ケヴィン・スペイシーとダニー・デヴィート。カットが掛かって画面がスタジオに切り替わると、その映画を撮影している監督はスティーヴン・スピルバーグ。
お馴染み「ソウル・ボサノバ」が流れてオースティンとダンサーたちが踊り始めると、楽団を指揮しているクインシー・ジョーンズも登場。別のスタジオではブリトニー・スピアーズがオースティンとダンス対決を繰り広げ、フェムボットとしてオッパイ機関銃を放ち、最後は頭が爆発する。で、そのオープニングの掴みは文句無しに素晴らしいんだが、そこが映画全体におけるピークになっているんだよな。
その圧倒的なテンションに、それ以降のシーンは全く敵わない。