『オースティン・パワーズ:デラックス』:1999、アメリカ

1967年に冷凍冬眠に入ったスパイのオースティン・パワーズは、1997年に目覚めて宿敵ドクター・イーブルを倒した。そして1999年、オースティンは妻のヴァネッサ・ケンジントンと新婚旅行に出掛けたが、フェムボットだった彼女が爆発して独身に戻った。
一方、冷凍睡眠から目覚めたドクター・イーブルは、息子スコットとの対面番組に出演する。イーブルが基地に戻ると、ナンバー2がイーブルの8分の1サイズのクローン“ミニ・ミー”を誕生させていた。オースティンのパワーの源“モジョ”を奪って弱体化させようと企てたイーブルは、タイムマシンを使って1969年へと向かった。
イーブルがファットバスタードという男にモジョを盗ませたため、オースティンは急激にパワーダウン。事情を知ったオースティンは英国諜報部が開発したタイムマシンで1969年に行き、CIAのフェリシティ・シャグウェルの協力を得ることになった。
イーブルは月面基地からレーザービームを発射するとアメリカ大統領を脅し、1000億ドルを要求した。秘密基地を探していたオースティンとフェリシティはイーブルに捕まるが、脱出に成功。彼らはイーブルを追って、宇宙基地へと向かった…。

監督はジェイ・ローチ、脚本はマイク・マイヤーズ&マイケル・マッカラーズ、製作はスザンヌ・トッド&ジェニファー・トッド&デミ・ムーア&エリック・マクラウド&ジョン・ライオンズ&マイク・マイヤーズ、製作協力はエマ・チェイシン、製作総指揮はアーウィン・ストフ&マイケル・デ・ルーカ&ドナ・ラングレー、撮影はウリ・スタイガー、編集はジョン・ポール&デブラ・ニール=フィッシャー、美術はラスティ・スミス、衣装はディーナ・アッペル、音楽はジョージ・S・クリントン、音楽監修はジョン・フーリハン。
主演はマイク・マイヤーズ、共演はヘザー・グラハム、マイケル・ヨーク、ロバート・ワグナー、セス・グリーン、ミンディ・スターリング、ロブ・ロウ、ジーア・カリディス、ヴァーン・トロイヤー、エリザベス・ハーレイ、ウィル・フェレル、クリスティン・ジョンソン、チャールズ・ネイピア、レベッカ・ローミン=ステイモス、フレッド・ウィラード、ミューズ・ワトソン、クリント・ハワード他。


マイク・マイヤーズが好き放題に遊びまくった『オースティン・パワーズ』の続編。
前作から引き続いてのキャストに加えて、フェリシティ役でヘザー・グラハム、ナンバー2役でロブ・ロウなどが出演している。
また、マイク・マイヤーズは前作と同じくオースティンとイーブルの2役を演じているが、それにプラスして巨漢のファットバスタードも演じている。

いきなり冒頭から“スター・ウォーズ”ライクなテロップ表示で前作の粗筋を紹介し、そして007ライクなミュージックが流れてくる。
オープニングロールでは、クインシー・ジョーンズの『ソウル・ボサノバ』に乗せてスッポンポンのオースティンがホテルを歩き回り、最後はシンクロナイズドスイミング。
その段階で、おカタい人は付いていけなくなるだろう。

前回は「1960年代のスパイが1990年代に甦る」という設定だったので、カルチャーギャップによるギャグを使うことが出来た。
だが、今回は舞台が1960年代なので、それは使えない。
で、おのずと幼児系ギャグと映画パロディーと下ネタとマニアックなネタが残る。
カルチャーギャップを失った分は、ミニ・ミーというキャラクターの存在で取り戻そうとしているのだろうか。このミニ・ミー、チョコマカと動く様子を見ているだけでも、どことなく面白い。ヴァーン・トロイヤーのおかげで、この映画は随分と救われている。

もう1つ、有名人のカメオ出演もセールスポイントだろう。
ジェリー・スプリンガーは『ジェリー・スプリンガー・ショー』のホストとして登場し、イーブルとトラブリング。バート・バカラックとエルヴィス・コステロは街角で歌と演奏を披露する。ティム・ロビンスは大統領役で登場し、イーブルの大金要求にバカ笑い。
ウディ・ハレルソンやウィリー・ネルソンは、チンポコのスラングを使ったギャグシーンに本人役で登場する(“ウディ”や“ウィリー”はスラングで「チンポコ」の意味)。

原題は007シリーズの『私が愛したスパイ』のパロディーだが、話が宇宙スケールになる辺りは『ムーンレイカー』だろうか。
映画ネタとしては、他に『チャップリンの独裁者』や『インディペンデンス・デイ』や『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』などが扱われている。

分かりやすい幼児系ギャグ、映画パロディー、下ネタはともかく、マニアックなネタは、ホントにマニアック。ザ・モンキーズやアラン・パーソンズ・プロジェクトのネタが分かる人は、ものすごく限られているだろう。
そういうマニアックなネタが多い辺りから考えても、「分からない人は置いていく」という態度で、もう完全に開き直っているんだろう。

下品がスウィングする、おバカっち爆裂のカラフル・ナンセンス・コメディーだ。
意味も無く歌い、意味も無く踊り、意味も無くラップを披露する。
ナンセンス、ナンセンス、もう1つおまけにナンセンス。
考えたらオシマイ。
バカ脳になってバカ映画をバカ観賞すべし。
イエーイ、ベイビー、イエーイ!
ヤバダバドゥー(それは作品が違うぞ)。


第22回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の続編・前編】部門
ノミネート:【最悪の歌曲・歌唱】部門「Word Up」[メラニーB]

 

*ポンコツ映画愛護協会