『アクアマン/失われた王国』:2023、アメリカ

アーサー・カリーは4年前にメラと結婚し、息子であるアーサーJr.の子育てに追われながらアトランティス王としての仕事もこなしている。王の仕事は退屈な会合ばかりで、代表者評議会では座っているだけだった。息子が能力を受け継いでいると知ったアーサーは、父であるトムの前で喜びを見せた。一方、ブラックマンタはスーツを直してアーサーを倒すため、アトランティスの技術を見つけ出そうとしていた。彼はスティーヴン・シンに命じて、氷河を調査させていた。
シンは氷床が崩れて転落し、巨大な怪物と遭遇した。現場に来たマンタは怪物が消えた地下洞窟を調べ、海に潜った。彼は封印されていた謎の海底王国を発見するが、怪物に襲われた。マンタは「お前が来るのを待っていた」という声を聞き、怪しく光る黒い鉾に気付いた。彼が鉾を手に取ると、「我を幽閉から解き放て。お前に特別な力を与えよう。父親を殺した男から全てを奪い取れ」という声が聞こえた。マンタは鉾に宿った力を手に入れ、海底王国を後にした。
5ヶ月後、地上の世界は異常気象が続いていたが、アーサーは大して気にしていなかった。魚人王国で疫病が発生したことを受け、評議会が緊急招集された。原因が地上にあることは明らかになっていたため、アーサーは対話の席を設けてアトランティスの存在を示すべきだと提案した。彼は「地上の科学と王国の技術で元の自然を取り戻せる」と訴えるが、カーションを始めとする評議会の面々は「存在を示す時は地上を滅ぼす時」と主張し、誰も賛同しなかった。
マンタは特別な燃料であるオリカルクムを入手するため、小型潜水艇で保管庫に侵入した。ゲートが閉まると、彼は潜水艦にいる部下のスティングレイに強行突破を命じた。スティングレイは部下たちを戦闘配置に就かせ、アトランティスの警備艇をソニック砲で攻撃した。潜水艦はオリカルクムを回収するが、マンタは離脱せずに現場へ到着した駆け付けたメラを殺そうとする。アーサーが来たのでマンタは戦うが、シンが「全軍が来るぞ。逃げないと全滅する」と言うのでソニック砲を撃たせて逃走した。
アーサーはアトランナとネレウスから、オリカルクムは古代に使われていた動力源で地球を破壊するほどの温室効果ガスを発生させること、12の保管場所に隠されていたが全て盗まれたことを知らされた。アーサーはマンタを止めるため、オームの力を借りようと考えた。現在、オームは魚人王国領にある砂漠の牢獄に幽閉されていた。他の国や評議会に知られれば大問題になるが、アーサーは極秘で行動することを決めた。彼は特殊スーツで牢獄へ乗り込み、オームを連れ出した。
オームはアーサーを伴い、世界中の廃船が集まった海賊の王国である深淵の砦を訪れた。彼は過去にマンタと取引していた闇ブローカーのキング・フィッシュと会い、情報を得ようとする。フィッシュはマンタとの関係が切れていること、今のマンタはフリーであることを話す。彼は情報提供の交渉に応じず、馬鹿にする態度を見せた。アーサーはフィッシュを脅し、「南太平洋に休火山がある。悪魔の深奥だ。不毛の地がジャングルになっているらしい。たぶん、そこが隠れ家だ」という言葉を引き出した。
アーサーとオームは悪魔の深奥へ行き、ジャングルを進んだ。巨大昆虫の群れに襲われた2人は、何とか逃げ切った。シンは鉾の危険性に気付いてマンタに警告するが、聞き入れてもらえなかった。アーサーとオームは古代オリカルクム精錬所に侵入し、盗んだオリカルクムを燃やしている現場を目撃した。2人は大気を高温にして地球を滅ぼすつもりだと悟るが、止めるには火山ごと破壊するしか方法が無かった。そこへシンが現れ、外に連れて行ってほしいと頼む。彼が「研究のためにアトランティスを見たかっただけだ。間違いを犯した」と釈明すると、アーサーは連れて行く交換条件として情報提供を要求した。
シンが「黒い鉾に宿る古代の邪悪な霊がケインに力を与えた」などと話していると、スティングレイが部隊を率いて駆け付けた。アーサーとオームは協力し、スティングレイを戦闘不能に追い込んだ。オームはマンタに襲われ、窮地に陥った。しかしネレウスの率いる軍勢が島に総攻撃を仕掛けたため、マンタの部隊は撤退した。救助されたオームは、「黒い鉾に触れた時、失われた王国であるネレウスを見た」と語った。ネレウスはアトランティスが崩壊する直前に歴史から消えた、7つ目の王国だった。オリカルクムのおかげで超大国になったが、王のコーダックスは心を毒された。兄のアトラン王から世界が壊れる前にオリカルクムを停止するよう促され、激しい怒りを覚えた。彼は魔術でブラック・トライデントを生み出し、民と自らを魔物に変貌させた…。

監督はジェームズ・ワン、キャラクター原案はDCコミックス、アクアマン創作はポール・ノリス&モート・ワイジンガー、原案はジェームズ・ワン&デヴィッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリック&ジェイソン・モモア&トーマス・パー・シベット、脚本はデヴィッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリック、製作はピーター・サフラン&ジェームズ・ワン&ロブ・コーワン、製作総指揮はゲイレン・ヴェイスマン&ウォルター・ハマダ&ピート・キアペッタ&アンドリュー・ラリー&アンソニー・チッタネグロ、撮影はドン・バージェス、美術はビル・ブルゼスキー、編集はカーク・モリ、衣装はリチャード・セイル、視覚効果監修はニック・デイヴィス、視覚効果プロデューサーはアレックス・ビックネル、音楽はルパート・グレッグソン=ウィリアムズ、音楽監修はミシェル・シルヴァーマン。
出演はジェイソン・モモア、パトリック・ウィルソン、アンバー・ハード、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、ニコール・キッドマン、ランドール・パーク、ドルフ・ラングレン、テムエラ・モリソン、マーティン・ショート、ピルウ・アスベック、インディア・ムーア、ジャニ・ザオ、ヴィンセント・リーガン、ジェイ・マクドナルド、タイラー・バーガー、マドックス・クルス=ポーター、リヴァー・アオ・モーモーア・グリーン、ボーディー・マッケイブ、エリオット・オーベン=ペプラ、ルシエン・オーベン=ペプラ、アーサー・ロウ=メイヤー、ノア・ロウ=メイヤー、ナタリア・サフラン、サミュエル・ゴスラニ他。
声の出演はジョン・リス=デイヴィス。


2018年の映画『アクアマン』の続編。「DCエクステンデッド・ユニバース」の第15作にして最終作。
監督は前作に続いてジェームズ・ワンが担当。脚本は前作のコンビから脚本はウィル・ビールが抜けて、デヴィッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリックが単独で手掛けている。
アーサー役のジェイソン・モモア、オーム役のパトリック・ウィルソン、メラ役のアンバー・ハード、マンタ役のヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、シン役のランドール・パーク、ネレウス役のドルフ・ラングレン、トム役のテムエラ・モリソンは前作からの続投。
アトランナをニコール・キッドマン、フィッシュをマーティン・ショート、コーダックスをピルウ・アスベック、カーションをインディア・ムーア、スティングレイをジャニ・ザオが演じている。
前作でアトラン王を演じていたのはグレアム・マクタヴィッシュだが、本作ではヴィンセント・リーガンに交代している。

映画の冒頭、海賊に襲われた船にアーサーが駆け付ける様子が描かれる。
ここはハードでシリアスなムードだが、これから戦いが始まるというタイミングでシーンが切り替わると、アーサーが子守りをしている様子が映る。こちらは完全にユーモラスなモードだ。
そして船での戦いと子守りの様子が、カットバックで描かれる。こうなると、バトルシーンもユーモラスの側に染まる。
その後は「子育てと王の仕事をアーサーがこなしている」ってのが描かれ、アーサーがモノローグを語るが、この辺りも全てユーモラスなモードだ。

そのままコメディー寄りで進めていくのかと思いきや、ブラックマンタのターンに移ると、一気にシリアスモードへ変化する。
その後には疫病が発生したり、アトランティスがマンタ軍団に襲われて戦ったりするので、アーサーもコミカルなままじゃいられなくなる。
しかし、砂漠の牢獄へ赴いてオームを脱獄させるシーンでは、またコミカルな描写が入って来る。
アーサーはともかく、オームは前作で終盤までヴィランのポジションでシリアスなキャラだったはずだが、今回はアーサーに引っ張られたのか、ちょっと滑稽さの見える奴になっている。本人は至って真面目だが、何となくユーモラスなノリが漂う感じになっている。

今回はアーサーとオームの兄弟コンビを軸にして話を進めており、メラの存在感は薄い。
これは当初から予定されていた扱いじゃなくて、たぶんアンバー・ハードの私生活における問題が影響したのではないかと思われる。
前作が公開された後、アンバーはジョデー・デップとの離婚問題が互いに名誉毀損で訴えるほどの泥沼状態に陥った。最終的には裁判で賠償金の支払いを求められたアンバーが再審を諦める形になったが、その影響は避けられなかった。
そのため、製作サイドとしても彼女の出番を減らしたのではないかと推測される。

本作品の製作過程ではアンバー・ハードの問題だけでなく、それ以上に大きな問題が起きていた。
映画を作っている最中に、『マン・オブ・スティール』から始まったDCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)を終了させて仕切り直すことが発表されたのだ。
確かにDCEUは色々と問題が多く、順調とは到底言い難かった。しかし本作品の製作陣からしてみれば、「このタイミングなのかよ」って話だろう。
この決定により、本作品はDCEUとリンクさせず、とりあえず話を綺麗に片付けることが求められたわけだ。

アーサーは序盤におけるトムとの会話で、オームに対する強い嫌悪感を語っている。オームの側も、牢獄へアーサーが来た時点では素直に歓迎する様子など微塵も見せていない。
なので、そこから「いがみ合いながらも同じ目的があるので仕方なく協力する」とか、「一緒に行動する中で少しずつ関係性が変化し、最終的には相手を命懸けで助けようとするほどの絆が芽生える」みたいなドラマでも描かれるのかと思った。
しかし、そんな兄弟の愛憎ドラマなど全く無い。早い段階からオームは協力的な姿勢だし、アーサーも弟への猜疑心や反発など全く見せていない。
ふざけたコンビネーションを重視する余り、そっちのドラマは蔑ろにされている。

この映画には大きな弱点があって、それは魅力的な新キャラクターが見当たらないということだ。
マーベルにしろDCにしろ、ヒーロー物は1本の映画でヴィランを倒し、続編では新たなヴィランを登場させることで観客の興味を引き付けようとするのが基本になっている。
しかし本作品は前作で登場したマンタが、そのままヴィランの座を守り続けている。
一応は「コーダックスが憑依している」という形だが、そのコーダックスはオームが説明する回想パートで登場するだけであり、姿としてはマンタだ。

残り時間も少なくなった辺りで、コーダックスは魔物である自身の姿で復活する。
だが、ようやく復活したかと思ったら、1分も経たない内にアーサーによって簡単に退治されてしまう。
なのでコーダックスは、新たなヴィランとしての存在感を発揮しているとは到底言い難い。そして言わずもがなだろうが、魅力的な新キャラではない。
こっちがキャラとして弱い分、マンタがヴィランとしての力を存分に発揮してくれているならともかく、ただの操り人形になっちゃってるし。

他にはスティングレイというキャラも登場するが、こいつは所詮、マンタの側近に過ぎない。
悪役として魅力を充分に見せているわけでもなく、極端に言えば「名も無き手下」でも大きな影響は無い。
他にはカーションというキャラもいて、こいつは「緊急の評議会をアーサーの執行権を剥奪する動議を検討している」ってことがアナウンスされる。
だけど、そこから話が発展することは何も無いし、カーションがアーサーの敵として立ちはだかることも無い。

(観賞日:2025年11月25日)

 

*ポンコツ映画愛護協会