『アナベル 死霊人形の誕生』:2017、アメリカ

1945年。サミュエル・マリンズは「マリンズ玩具工房」として人形を作っており、納屋を作業場にしている。「ビー」の愛称で呼ばれる娘のアナベルは、納屋に「私を見つけて」と書いたメモを差し入れて走り去る。メモを見つけたサミュエルは自宅に戻り、ビーを見つけた。日曜日、サミュエルと妻のエスターはビーを連れて、教会へ出掛けた。その帰り、車が故障したのでサミュエルがタイヤを外すと、ボルトが道路に飛んだ。それを拾おうとしたビーは、走って来た車にひかれて死亡した。
12年後。聖ユースタス女子孤児院のマッセイ神父はバスを運転し、6名の孤児とシスターのシャーロットを乗せてマリンズ家へ向かっていた。サミュエルがマッセイに、自宅の一部を提供すると申し入れたのだ。孤児のジャニスとリンダは仲良しで、いつも一緒にいる。他の4名は、年長のキャロルとナンシー、ケイトとティアニーという面々だ。マッセイはシャーロットに、「奥さんは顔を見せないが、詮索するな。数年前に事故に遭った」と話した。
一行が家に到着すると、サミュエルが出迎えた。彼は孤児たちに、寝室は2階と教える。サミュエルはポリオを発症して左足が不自由なジャニスのため、エスター用に設置して使っていなかった階段の昇降機を動かした。キャロルたち4人が1つの寝室を利用し、ジャニスとリンダは隣の部屋を使うことになった。ジャニスは「ビー 7歳」と柱に書いてある部屋を発見するが、サミュエルが来て「鍵が掛かっている。ここには入るな」と告げた。
孤児たちはシャーロットに許可を貰って家の探検を始めるが、ジャニスは部屋に残った。彼女が窓の外を眺めていると、部屋の隅にいた少女の悪霊が静かに歩み寄った。しかし気配を感じたジャニスが振り向くと、そこには誰もいなかった。夕食の際、サミュエルは神に祈りを捧げてから、エスターの部屋に入った。シャーロットは部屋を気にするナンシーに、詮索しないよう注意した。その直後、シャーロットと孤児たちのいる食堂の明かりが点滅した。
寝室に入って就寝しようとしたジャニスは、誰かがメモをドアの隙間から差し入れたのに気付いた。ジャニスがメモを開くと、そこには「私を見つけて」と書かれていた。ジャニスが廊下に出ると、ビーの部屋から「この中」と記されたメモが出て来た。ドアに鍵は掛かっておらず、ジャニスは中に入った。すると大きなドールハウスがあり、ジャニスはマリンズ家と同じ構造だと気付いた。鍵を見つけた彼女がクローゼットを開けると、不気味な少女人形が置いてあった。
ジャニスがクローゼットを閉じると、勝手に扉が開いた。ジャニスは扉を閉じて施錠するが、また扉は開いた。彼女は人形に恐怖を覚え、シーツを被せた。ジャニスが窓の外に目をやると、サミュエルが納屋から戻って来るところだった。振り向くと人形が歩き出していたが、シーツが落ちると何も無かった。ジャニスは慌てて寝室へ戻り、ベッドに体を滑り込ませ。足音が近付いてきたのでジャニスは怯えるが、それは様子を見に来たサミュエルだった。
翌朝、キャロルやナンシーたちは井戸を覗き込みながら、「ここにマリンズ夫人は監禁されてる」と話す。彼女たちは邪魔なリンダを追い払うため、「かくれんぼしよう」と持ち掛けて隠れるよう促した。階段の下の物置に隠れたリンダは、少女人形を発見した。突如として人形が消滅したので、リンダは慌てて物置から飛び出した。深夜、キャロルとナンシーはシーツを被り、「マリンズ夫人は獲物を求めて夜に歩き回る」などと話す。そこへ不気味な人影が近付き、シーツの中に悪霊が入り込んだ。2人は悲鳴を上げるが、ケイトが電気を付けると誰もいなかった。キャロルたちはエスターがいたと主張するが、サミュエルは「有り得ない。寝たきりだ」と否定した。
シャーロットはエスターの寝室へ行き、ベッドで寝ている彼女と会話を交わす。ジャニスは2人の会話を盗み聞きし、マリンズ夫妻に娘がいたが死んだことを知る。壁に飾られているビーと人形の写真を見つけた彼女は、部屋に持ち帰った。音が聞こえたので彼女がビーの部屋に行くと、レコードが掛かっていた。そこへリンダが来ると、ジャニスは「娘がいたけど死んだみたい。レコードを掛けたのは彼女」と話す。リンダは部屋にある人形の顔が動いたのに気付き、「入っちゃいけない」と怖がって立ち去った。
ジャニスは日記を発見し、開くと「今日、戻って来た」と記されていた。部屋のドアが閉まり、指人形が動いた。ドールハウスの明かりが付き、窓際に後ろ向きのビーが出現した。ジャニスが「何があったの?」と話し掛けると、ビーは「助けてほしい」と言う。恐ろしい形相で振り向いたビーは、「魂をくれ」と凄んだ。ジャニスは見えない力で引っ張られ、何とか部屋から脱出した。しかし寝室のドアは閉まり、シャーロットを呼んでも誰も来ない。ビーの寝室からは、黒い影が這い出した。ジャニスは昇降機を使うが、勝手に戻ってしまう。彼女は激しく吹き飛ばされ、1階に落下した。
翌日、治療を受けたジャニスは車椅子でマリンズ家に戻り、シャーロットに「この家には住めない。みんなが危ない」と訴える。彼女は「悪魔が私の命を狙ってる」と話すが、シャーロットには信じてもらえなかった。サミュエルはエスターに、「子供たちを預かったのは間違いだった。あの子は本当に階段から落ちたのかな」と漏らす。エスターは「あれは事故よ。12年間、何も起きていない。せっかく迎えた子供たちを怖がらせないで」と彼に告げる。ジャニスは1階で就寝し、リンダは1人で寝室を使うことになった。ビーの部屋が気になった彼女が覗き込むと、揺り椅子に人形が座っていた。しかしドアを開けると、人形は姿を消していた。リンダが寝室に入ると、覗き込んでいた人形を黒い手が持ち去った。
次の朝、シャーロットはジャニスを庭に連れ出し、太陽に当たるよう促した。シャーロットが目を話すと、何者かジャニスを納屋に閉じ込めた。人形がジャニスを捕まえて黒い液体を浴びせ、悪魔は彼女に憑依した。リンダはサミュエルに、「ジャニスは貴方の娘さんを見た。部屋に入って、白いドレスの人形を見つけた」と話す。サミュエルは焦った様子で、「有り得ない。厳重に仕舞ったはずだ。人形には近寄るな」と声を荒らげた。
サミュエルが食堂に入ると、そこには人形が座っていた。「見つけた」というメモを見つけたサミュエルの前にジャニスが現れ、悪魔の力で彼を殺害した。リンダはジャニスが眠っている部屋へ行き、その近くにあった人形を密かに持ち出した。彼女が人形を持って家を出る姿を、シャーロットは目撃した。シャーロットは井戸へ向かったリンダを尾行し、声を掛けた。するとリンダは、人形がジャニスを襲ってサミュエルを殺したのだと話す。彼女が人形を井戸へ落そうとすると、見えない力で引きずり込まれそうになった。シャーロットはリンダを救い、井戸の蓋を閉めた。しかしシャーロットとリンダが家に戻ると、捨てたはずの人形が戻っていた…。

監督はデヴィッド・F・サンドバーグ、キャラクター創作はゲイリー・ドーベルマン、脚本はゲイリー・ドーベルマン、製作はピーター・サフラン&ジェームズ・ワン、製作総指揮はリチャード・ブレナー&ウォルター・ハマダ&デイヴ・ノイスタッター&ハンス・リッター、共同製作はマイケル・クリア、撮影はマキシム・アレクサンドル、美術はジェニファー・スペンス、編集はミシェル・オーラー、衣装はリア・バトラー、音楽はベンジャミン・ウォルフィッシュ。
出演はステファニー・シグマン、タリタ・ベイトマン、ルル・ウィルソン、ミランダ・オットー、アンソニー・ラパーリア、グレイス・フルトン、フィリパ・クルサード、サマラ・リー、テイラー・バック、ルー・ルー・サフラン、ブライアン・ハウ、ケリー・オマリー、アナベル・ウォリス、ウォード・ホートン、マーク・ブラムホール、ブラッド・グリーンクイスト、アダム・バートリー、ロッタ・ロステン、ジョセフ・ビシャラ、アリシア・ヴェラ=ベイリー他。


『死霊館』シリーズのスピン・オフで、2014年の映画『アナベル 死霊館の人形』の前日譚。
監督は『ライト/オフ』のデヴィッド・F・サンドバーグ。
脚本は『アナベル 死霊館の人形』のゲイリー・ドーベルマン。
シャーロットをステファニー・シグマン、ジャニスをタリタ・ベイトマン、リンダをルル・ウィルソン、エスターをミランダ・オットー、サミュエルをアンソニー・ラパーリア、キャロルをグレイス・フルトン、ナンシーをフィリパ・クルサード、ビーをサマラ・リー、ケイトをテイラー・バック、ティアニーをルー・ルー・サフランが演じている。

冒頭、サミュエルとエスターの前で、ビーが車にひかれて死ぬ出来事が描かれる。
だけど、なぜビーの死因を交通事故死にしたんだろう。
サミュエルがかくれんぼをするビーを捕まえた時、エスターが「熱がある」と言っているんだよね。だったら、ビーは体が弱くて、病気で死ぬ設定にすりゃいいんじゃないかと。
車にひかれて死ぬ設定だと、それは犯人のいる明確な「殺人」になってしまう。
そこに加害者を存在させると、話を見る上で余計な雑音になっちゃうのよ。

ザックリ言っちゃうと、やってることは『アナベル 死霊館の人形』と同じ。
もっと言っちゃうと、『死霊館』シリーズも含めて、そんなに大きな違いは無い。
仕掛け人のジェームズ・ワンは、どうやら「似たようなネタの映画を幾つも製作して金を稼ごう」と決めたようだ。
もはやジェームズ・ワンはホラー映画の世界で1つのブランドと化しているので、しばらくは「彼がプロデュースしている」ってだけでも、それなりに観客を呼び込むことが出来そうだしね。

シリーズ作品だから当然っちゃあ当然かもしれないけど、2作目にして早くもマンネリズムの状態に陥っている。
色んな映画の中でも、特にホラーというジャンルは、「同じパターンの繰り返しで退屈になる」ってことが基本的に避けられないのかもしれない。
マンネリに陥るパターンを外したら、それはシリーズとしての意味を成さなくなる恐れが高いしね。
だからホラー映画ってのは、どんなにヒットしても、あまりシリーズを長く続けない方が、品質を考えれば得策なんだよね。

どんなにヒットしても、ホラー映画ってシリーズ2作目以降は必ずダメになっていくでしょ。『ハロウィン』しかり、『13日の金曜日』しかり、『悪魔のいけにえ』しかり、『エルム街の悪夢』しかり。
最近だと、『ソウ』シリーズなんかも同じだよね。シリーズの途中で盛り返すことなんて、まず無いんだし。
とは言え、ヒットしたら続編を作りたい、出来るだけ長く引っ張って稼ぎたいと思うのも分からんではないけどね。ホラーの場合、ほぼ確実に低予算で作っているだろうし。
「安く作って大きく稼げるコンテンツ」と考えれば、出来るだけ長く引っ張りたくなるよね。

そろそろ本作品の中身を具体的に見ていくとしよう。
まずは「特に何も起きていないけど、登場人物が不安を抱く」という描写がある。次に、超常現象にも思えるような小さな出来事で、「実は何も無い」という肩透かしを食らわせる。次はホントの怪奇現象を起こし、その後は悪霊を出現させるという感じで、どんどんエスカレートさせていくわけだ。
この作品に限らず、悪魔や悪霊の出てくる映画って、大体はそういう流れになっちゃうよね。
ただし、アナベルの悪霊を登場させた後に「食堂の明かりが点滅する」という現象を見せる辺りは、「順番が逆でしょ」と言いたくなるけどね。

どうやら最初の内は、「エスターが悪霊のように徘徊している」とキャロルやナンシーだけでなく観客にも思わせたいらしい。
でも、それは無理があるだろ。
エスターが姿を見せなくても、彼女が寝たきり状態なのは分かり切っていることだ。そして、孤児たちの前に出現する不気味な奴がビーや人形ってこともバレバレだ。
っていうか、別の姿を借りた悪魔だってこともね。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という言葉があるけど、この映画はビーが悪霊として登場する前から「悪魔がビーの姿を借りて現れる」ってことは分かっている。

前作と同様に、人形の存在は何の意味も無いと言っていい。
悪魔はビーの姿を借りて姿を現すんだから、人形まで動かす必要性は皆無だ。人形なら人形、ビーならビーと、どっちか一方に絞り込んだ方がいい。
エスターも含め、バリエーションを増やそうとしたのかもしれないけど、「悪魔の行動の無意味さ」というマイナスにしか繋がっていない。仮に人形だけを使ったとしても、バリエーションなんて幾らでも用意できるはずだし。
途中でジャニスが悪魔に憑依されると、ますます人形の存在意義が無くなるんだよね。

序盤でシャーロットが「怪奇現象の肩透かし」を体験し、次にジャニスがハッキリとした形で怪奇現象に見舞われる。
なので、ジャニスが悪魔の標的として集中的に狙われるのかと思いきや、リンダやキャロル、ナンシーといった面々も怪奇現象を体験する。
それは手を広げてマイナスになっているとしか思えない。
標的がジャニスだけなら、「誰に言っても信じてもらえず孤立する」ということが不安や恐怖を高める要因になる。でも他の面々も怖い目に遭うので、そこがフワッとしちゃうんだよね。

そもそも、「悪魔がビーを装ってマリンズに接触する」→「悪魔が人形に入る許可を求める」→「悪魔がエスターの魂を奪おうとする」という手順には、大いに疑問があるんだよね。
人形を道具として使う必要性って、ホントにあるのかと。
「悪魔が実体を持たないので、人間に接触するために人形を使う」という解釈は、成立しないからね。
だって、悪魔はビーの姿でも普通に動き回っているわけで。
なんかね、人形を絡めなきゃいけないから無理に話を作って、まるで筋が通っていない印象なのよ。

映画の最後は、まずヒギンズ夫妻が孤児院を訪れ、アナベルを名乗るジャニスと会うシーンが描かれる。そして12年後に飛び、アナベルが男と共に夫妻を襲撃し、物音を耳にした隣人のミアが起きて夫のジョンが様子を見に行くシーンで終幕となる。
つまり『アナベル 死霊館の人形』の冒頭部分に繋げているわけだ。
でも、それは蛇足になっている。
ヒギンズ夫妻が孤児院を訪れ、アナベルを名乗るジャニスと会うシーンで終わらせた方がスッキリするし、余韻も残ると思うぞ。

(観賞日:2020年1月17日)

 

*ポンコツ映画愛護協会