『エンド・オブ・ステイツ』:2019、アメリカ

マイク・バニングは友人のウェイド・ジェニングスが経営する軍事会社「サリエント社」を訪れ、軍事訓練に参加した。彼はウェイドから、シークレット・サービス長官のデヴィッド・ジェントリーが退任して後任候補に挙がっていることを確認される。「特別作戦の訓練を委託してくれたら赤字から抜け出せる」と言われたマイクは、「ジェントリーに話してみるよ」と約束した。帰宅した彼は眩暈に襲われ、医師に診てもらう。彼は交通事故が原因で偏頭痛や眩暈に悩まされており、不眠症も抱えていた。医師は頸椎が圧迫されていて脊髄損傷の疑いもあることを説明し、「体が悲鳴を上げている」と指摘した。
記者会見に出席したアラン・トランブル大統領は、軍事介入に議会の承認を必要とするよう武力行使容認の決議を改訂する意向を問われて「武力行使は最終手段にすべきだ」と述べた。ロシアが国外で軍事活動を活発化させていることへの対処を記者から訊かれた彼は、G20で取り上げると答えた。彼は「正規軍を支援するため、民間軍事会社への外注を増やす」という情報について質問され、不快感を見せる。彼は民間軍事会社への委託縮小を選挙で公約しており、内部の裏切り者がデマを流していると推理した。
マイクはウェイドを自宅に招き、妻のリアと娘のリンを紹介した。彼が「長官に指名されても受けるつもりは無い」と明かすと、ウェイドは「現場で働きたいんだろ?」と心の内を見抜いた。マイクは湖へ釣りに出掛けるトランブルに警護で同行し、SS長官に任命された。マイクが死ぬまで現場を貫きたい思いを打ち明けると、トランブルは「良く考えて決めればいい」と告げた。マイクは立ちくらみを起こし、トランブルは交代するよう促した。
マイクは部下のマーフィーに代わりを頼み、トランブルのボートを離れた。すると大量のドローンが出現し、警護の面々を次々に射殺した。マイクがトランブルのボートへ戻ろうとすると、なぜかドローンは彼を狙わなかった。マーフィーはマイクの指示を受けてトランブルを湖へ投げ落とし、ドローンの攻撃で命を落とした。マイクはトランブルの元へ駆け付け、潜って攻撃を回避させる。しかし2人は爆撃に巻き込まれて重傷を負い、意識を失った。
マイクとトランブルは病院に運ばれて治療を受けるが、昏睡状態に陥った。カービー副大統領は病院に駆け付け、大統領代理に任命された。FBI捜査官のトンプソンは部下のラミレスやマーフィーたちと共に、湖へ赴いた。マイクが意識を取り戻すと、手錠で拘束されていた。トンプソンの尋問を受けたマイクは、犯人の車両から自分のDNAが検出されたこと、発射装置に皮膚細胞と毛髪が付着していたこと、自宅の車庫から同じ成分の爆薬が発見されたことを聞く。闇サイト上の暗号フォルダに機密扱いの地図と旅のスケジュールが入っていたこと、ドローンの殺害目標がマイクを除く全ての警護官とトランブルだったことも、トンプソンは説明した。
マイクとの面会を求めたリアはトンプソンの尋問を受け、夫の口座に1000万ドルが入金されていたことを知らされた。マイクはトランブル暗殺を企てた実行犯だとFBIが断定していることを知り、誰かにハメられたのだと主張する。しかしトンプソンは全く信じず、罪状認否の手続きをするため安全な場所へマイクを移送することにした。マイクが護送車で移送されると、覆面集団が襲撃して護衛の面々を始末する。マイクは自分を連れ去ろうとした連中から銃を奪って殺害し、サリエント社の人間だと気付いた。
ウェイドに指示を出している黒幕は、マイクに罪を着せて仲間が救出したように見せ掛け、金ごと消す筋書きを立てていた。彼はマイクに逃げられた件でウェイドを責め、必ず始末するよう命じた。FBIはマイクの口座にモスクワから入金されていることを知り、彼がロシアに雇われてトランブルを狙ったと断定した。マイクは盗聴されていることを知った上で、ガソリンスタンドからリアに電話を掛けた。彼は真犯人を見つけ出すと宣言し、電話を切った。マイクは民兵団を名乗る2人組に銃を向けられるが、制圧してトレーラーを奪う。パトカーに追われたマイクは振り切るが、横転事故を起こしてしまう。彼はトレーラーを捨て、森へ逃げ込んだ。
翌朝、マイクは車を盗み、ウエスト・バージニアの山奥で暮らす父のクレイを訪ねた。クレイはベトナム戦争で心を病み、家族を捨てて隠遁生活を送っていた。カービーは会見を開き、マイクの背後にロシア政府がいると告げた。彼は記者たちに、民間軍事会社の活用拡大を求める大統領令に署名したことを発表した。ウェイドはマイクの検索履歴を調べ、クレイの元にいることを突き止めた。クレイは深夜に武装した集団が来たことを知り、マイクに教えた。クレイは秘密の地下道からマイクを連れて脱出し、森に仕掛けておいた爆弾を次々に起動させて武装集団を始末した。
翌朝、マイクは遺体の携帯電話を使ってウェイドに連絡し、「戦争を起こして荒稼ぎするのが狙いか?」と詰問する。ウェイドが「金の問題じゃない。お前と代わりたかった。お前は命懸けで戦ってる。その感覚を俺も味わいたい」と告げると、マイクは「来る必要は無い。こっちから見つけてやる」と言って電話を切った。クレイはマイクを車に乗せ、小屋を後にした。トンプソンたちが小屋に到着すると遺体が並べてあり、壁には「我々はサリエント社の兵士だ」というメッセージが残されていた。トンプソンたちは遺体の身元を調べるが、1人も政府のデータベースには記録が無かった。トンプソンは部下たちに、サリエント社に接触した人間を調べるよう命じた。
マイクが妻子を心配して去ろうとすると、クレイが声を掛けた。トランブルに刺激への反応が確認され、回復への前兆としてニュースが報じられた。テレビのニュースでは、カービーの報復的な軍事行動に疑問の声が上がっていることも報じられた。トランブル襲撃の黒幕であるカービーはウェイドに電話を入れ、「最後のチャンスだ」と述べた。ウェイドが「契約書はどこだ?1千万ドルと引き換えの約束だ」と言うと、カービーは「ここに用意してある。作戦を遂行しろ」と命じた。
ウェイドの手下2人はマイクの家へ乗り込み、リアとリンを拉致しようとする。そこへクレイが現れ、手下たちを始末した。ウェイドはサリエント社に来たトンプソンと部下を殺害し、作戦を中止して海外へ拠点を移すことにした。彼は手下に「その前に仕事を片付けろ」と告げ、トランブルの抹殺を命じた。マイクはトランブルが収容されている病院へ行き、待機中の警官を襲って制服を奪い取った。彼は警官に変装し、トランブルの病室へ向かう…。

監督はリック・ローマン・ウォー、キャラクター創作はクレイトン・ローゼンバーガー&カトリン・ベネディクト、原案はクレイトン・ローゼンバーガー&カトリン・ベネディクト、脚本はロバート・マーク・ケイメン&マット・クック&リック・ローマン・ウォー、製作はジェラルド・バトラー&アラン・シーゲル&マット・オトゥール&ジョン・トンプソン&レス・ウェルドン&ヤリフ・ラーナー、製作総指揮はスティーヴン・シウJr.&アンドレイ・ゲオルギエフ&クリスタ・キャンベル&ラティ・グロブマン&マーク・ギル&アヴィ・ラーナー&トレヴァー・ショート&ハイディ・ジョー・マーケル&デヴィッド・ベルナルディー&ジェフリー・グリーンスタイン&ジョナサン・ヤンガー、共同製作はダニエル・ロビンソン&ジゼラ・マレンゴ&コナー・チャールズ&ジョン・ヤリンシク、共同製作総指揮はロニー・ラマティー&セム・ガーセル&セバスチャン・サーレル=ワッツ、製作協力はダニエル・カスロウ、撮影はジュールズ・オロフリン、美術はラッセル・デ・ロザリオ、編集はガブリエル・フレミング、衣装はステファニー・コリー、音楽はデヴィッド・バックリー、音楽監修はセレナ・アリザノヴィッチ。
出演はジェラルド・バトラー、モーガン・フリーマン、ダニー・ヒューストン、ニック・ノルティー、ジェイダ・ピンケット=スミス、ランス・レディック、ティム・ブレイク・ネルソン、パイパー・ペラーボ、フレデリック・シュミット、マイケル・ランデス、ジョセフ・ミルソン、オリ・プフェファー、アンドリュー・ブルック、バフィー・デイヴィス、ロッシ=ボーイ・ウィリアムズ、マーク・アーノルド、ケリー・シェイル、ジェシカ・コブレー、メイジー・コブレー、エロール・メーメット他。


『エンド・オブ・ホワイトハウス』『エンド・オブ・キングダム』に続く、“マイク・バニング”シリーズの第3作。
監督は『オーバードライヴ』『ブラッド・スローン』のリック・ローマン・ウォー。
脚本は『96時間/レクイエム』のロバート・マーク・ケイメン、『パトリオット・デイ』のマット・クック、リック・ローマン・ウォー監督による共同。
マイク役のジェラルド・バトラーとトランブル役のモーガン・フリーマンは、1作目からのレギュラー。ウェイドをダニー・ヒューストン、クレイをニック・ノルティー、トンプソンをジェイダ・ピンケット=スミス、ジェントリーをランス・レディック、カービーをティム・ブレイク・ネルソン、リアをパイパー・ペラーボが演じている。

まず大きな痛手になっているのは、「レギュラーキャストが2人になってしまった」ってことだ。
前作では1作目に続き、マイク以外にもベンジャミン・アッシャー、トランブル、リン・ジェイコブス、ルース・マクミラン、リア、レイ・モンローが登場した。しかし今回は、その中のトランブルしか残っていない。
リアは登場するが、スケジュールの都合で演者がラダ・ミッチェルじゃないので「続投」に該当しない。
特にアッシャーがいなくなったのは、ものすごく大きなダメージだ。このシリーズって、バニングとアッシャーのブロマンス的な部分も大きかったからね。

『エンド・オブ・キングダム』はロンドンが舞台で、各国の首脳が殺された。しかし今回は再び舞台がアメリカに戻り、命を狙われるのもトランブルだけ。なので、スケールが小さくなっている印象を受ける。
しかもトランブルは序盤で昏睡状態に陥るものの、その後は命を狙われない。そして、マイクが犯人と疑われて追われる展開になる。それはシリーズの方向性がズレてないか。
マンネリズムを避けるために新機軸を打ち出すことが、プラスに出るケースもあるだろう。でも、このシリーズで「マイクが大統領を守って悪と戦う」という部分を外すのは、絶対にダメでしょ。
そこはマイクのアイデンティティーと言ってもいい要素でしょうに。なんで彼が自分のために戦う内容に変えちゃってんのよ。

冒頭、マイクは建物に潜んでおり、武装した大勢の連中から狙われている。彼は深刻な様子で敵と戦うのだが、「実は訓練でした」という種明かしが用意されている。
でも、そんな肩透かしで話を始めて、何の得があるのか。
また、序盤でマイクが体の不調に悩まされていること、医者から「体が悲鳴を上げている」と指摘される。そんな設定が提示されるのに、ストーリー展開には何の影響も与えていない。
マイクが仕事中に体の不調でピンチに陥るようなことも無いのだ。

カービーは病院へ駆け付けるシーンで、始めて副大統領だと明らかになる。実は記者会見後の会合シーンで既に登場しているのだが、その段階では役職が分からない。
こいつは色んな意味で重要なキャラなので、早い段階で副大統領ってことを明示しておくべきだよ。
そこの作業を怠っているせいで、病院で大統領代理に就任するシーンが「急に出て来て存在感をアピールしている」という印象になっている。
彼とトランブルの関係が良好だったのか、どういう政治理念を主張していたのかもサッパリ分からないし。

マイクがトランブル殺害未遂の容疑を掛けられるのは、あまりにも無理があり過ぎるだろ。どんだけFBIはボンクラなのかと。そこにFBIを皮肉るような意図が込められているわけでもないし。
そもそもマイクがトランブルを殺そうとする動機なんて何も無いし、今までの行動や経歴を考えても彼が犯人ってのは不可解なのに、誰も疑問を抱かない。マイクだけが生き残って他が全滅している時点で、ホントに犯人ならもっと利口にやるだろ。
シンプルにシナリオがガバガバカで穴だらけってだけだ。まあ、それは1作目から続いていることなので、ある意味では「シリーズの特徴を踏襲している」ってことになるんだけどさ。
でも、そんなダメなトコを踏襲しても、何のメリットも無いでしょ。

トンプソンは意識を取り戻したマイクに対し、あまりにも揃い過ぎている証拠を次々に説明する。彼女は「完璧な計画ね」と言うが、どこが完璧なのかと。
ホントにマイクが犯人だとしたら、簡単に見つかるような証拠を幾つも残しているのは完璧とは程遠いだろ。あまりにも杜撰すぎる計だろ。
しかしFBIは「あまりにも証拠が揃い過ぎている」ってことに誰も疑問を抱かず、マイクが犯人だと決め付ける。他の可能性を探ろうとする動きは皆無だ。
「他に犯人がいると睨み、マイクをエサにした」とか、「FBIも黒幕と結託している」といった設定でもあるのかと余計な深読みをしたくなるが、そんなことは何も無い。単にボンクラっぷりが酷いってだけだ。

ウェイドの一味がマイクを殺そうとしていることは、前半であっさりと明かされる。まだ黒幕は隠しているけど、他に候補がいないのでバレバレだ。
むしろミステリーの要素を引っ張りたいのなら、ウェイドを隠しておいた方が少しはマシだったかもしれない。あくまでも、「少しはマシ」という程度だけどね。
でもシリーズを1作目から見ている人なら、ミステリーなんて最初から期待しちゃいないよね。
ただ、「じゃあ何を期待しているのか」と問われたら、私には何の答えも思い浮かばないが。

クレイは武装集団が小屋に来ると、仕掛けておいた爆弾を次々に起動させて全滅させる。本人は全く攻撃を受けず、簡単に敵を殲滅させる。そんなクレイの暴れっぷりに、マイクは呆れたり怒ったりする。
このシーンは、ほとんどギャグのようになっている。
さらに厄介なのは、そもそもシリーズにおけるマイクが無双状態になっていたのに、もっと圧倒的なキャラを登場させていることだ。
せっかく無双だったマイクを犯人扱いで追い込んだはずなのに、そんな危機的状況も簡単に無効化しちゃってるのだ。

トンプソンはマイクが小屋に残したメッセージを見て、ようやく「彼は本当にハメられたのかも」と言い出す。いやいや、遅すぎるだろ。
しかも、まだトンプソンが疑い始めただけで、他の連中は相変わらず「マイクが犯人」と決め付けているからね。
で、そんな風にFBIはマイクを犯人と決め付けていたのに、トランブルが「彼は私を助けてくれた。彼の指示に従え」と命じられると、あっさりと態度を変える。
そりゃあ大統領の権限は大きいだろうけど、なんか呆れてしまうわ。

カービーはウェイドに指示してトランブルを襲わせたものの、まだ殺害には至っていない。一刻も早く始末しなきゃいけないはずだが、そこの動きは遅い。
なぜかウェイドはマイクを襲う仕事を優先し、トランブルは後回しなのだ。
「トランブルに回復の前兆」とニュースが報じられてから、ようやく病院へ刺客を向かわせる。
その行動にしても、ニュースが報じられた直後ってわけではない。トランブルが回復し、すぐに喋れる状態だったら、マイクが犯人じゃないことはバレちゃうわけで。

マイクは妻子を心配する言葉を口にした後、クレイに「巻き込んで悪かった」と告げて立ち去ろうとする。しかしリアとリンがウェイドの手下に拉致されそうになった時、駆け付けて助けるのはクレイだ。
そりゃあマイクが父を信頼して任せたってことなんだろうげと、そこは絶対に彼が助けるべきでしょ。なんで妻子をクレイに任せて、自分はトランブルの元へ向かっているんだよ。
「大統領を護衛する」という仕事への高い意識ってことなのかもしれんけど、妻子をクレイに任せてまで取るような行動とは思えんわ。
あと、FBIはマイクを犯人だと決め付けているなら、なぜ誰も自宅を張り込んでいないんだよ。

ウェイドは自分が実行犯であることがバレたと分かっていながら、それでもトランブルの抹殺を企てる。しかも暗殺じゃなくて、大規模な部隊で病院を襲撃するという目立ちまくりの作戦だ。
それでトランブルを殺せたとしても、その後はどうするつもりだったのか。無事に国外へ脱出できるとでも思ったのか。
もうウェイドの犯行なのはバレバレなんだから、カービーだって手を貸してくれないだろ。
あと、ヤケクソになってるとしか思えないウェイドに、強い絆で結ばれているわけでもない部下たちが従順に付いて行くのも変だろ。

(観賞日:2021年6月24日)

 

*ポンコツ映画愛護協会