『アナライズ・ミー』:1999、アメリカ
ベン・ソボルはバツイチの精神分析医。TVリポーターのローラ・マクナマラと結婚式を挙げるため、休暇を取って息子マイケルと共にマイアミに向かうつもりだった。そんな彼の元に、マフィアのボスであるポール・ヴィッティが訪れた。
ポールは緊張すると心臓が苦しくなるという症状に悩まされており、病院ではパニック障害だという診断を受けていた。その場を取り繕ってポールを追い返したベンは、マイアミへ向かった。しかし、そこにもポールがやって来て、治療を要求してくる。
結婚式まで台無しにされ、ローラや彼女の家族からも非難されるベン。さらにFBIが捜査協力を要請してきたため、ベンは隠しマイクを付けてポールと会うことに。一方、ポールの周囲の人間は、内情を知りすぎたベンを殺すようポールに忠告する…。監督はハロルド・ライミス、原案はケネス・ローナガン&ピーター・トーラン、脚本はピーター・トーラン&ハロルド・ライミス&ケネス・ローナガン、製作はポーラ・ワインスタイン&ジェーン・ローゼンサール、共同製作はレン・アマート、製作総指揮はビリー・クリスタル&クリス・ブリガム&ブルース・バーマン、撮影はスチュアート・ドライバーグ、編集はクリストファー・テレフセン、美術はウィン・トーマス、衣装はオード・ブロンソン=ハワード、音楽はハワード・ショア。
出演はロバート・デ・ニーロ、ビリー・クリスタル、リサ・クードロー、チャズ・パルミンテリ、ジョー・ヴィテレッリ、カイル・サビヒー、トニー・ベネット、ビル・メイシー、レオ・ロッシ、レベッカ・シュル、ジミー・レイ・ウィークス、ロバート・シー、ウィリアム・ヒル、アイラ・ウィーラー、ルース・エニス、エリザベス・ブラッコ、ジーナ・ギャラガー、フランチェスカ・マリ他。
ベン役のビリー・クリスタルが製作総指揮も兼ねた作品。ポールを演じるのはロバート・デ・ニーロだが、これまで彼が演じてきたマフィアのボスというキャラクターを、パロディ化したような形になっている。
しかし、残念ながら着想を膨らませることが出来ておらず、テンポの良さも無い。これは基本的に「控えめなコメディー」なのだが、デ・ニーロの演技だけは控えめな部分が無い。彼のクドイ演技が悪い方向に出てしまっている。むしろ、ジョー・ヴィテレッリのような俳優がポールの役を演じた方が良かったのではないだろうか。
まあ、それだと全く意味合いの違う作品になっちゃうんだけどさ。ポールのキャラに悪意があるのは、どうにも気になるところ。
例えば、ベンの結婚式を台無しにしたことを悪く思ったり、迷惑を掛けたことを反省したりと、そういうキャラ設定にした方が良かったのでは。そして、ベンのために良かれと思ってしたことが、全て裏目に出るという展開を作れば面白くなったのでは。ポールだけでなく、ベンも父親に関する心の問題を抱えているのだが、その設定は必要無かった。それほど生かされているわけでもないし、心の問題はポールだけのものにしておいた方がスッキリしていて良かったのでは。
例えばポールは心理面での問題を抱えていて、ベンはもっと目に見える問題(例えば肉体的であったり経済的であったり)を抱えているという設定の方が良かったのでは。
そして、ベンはポールの心を治療して、その代わりにポールはベンの問題を解決するという流れにすれば良かったのではないだろうか。結局、最後までポールは「暴力によって物事を解決する」という部分から抜け切れていない。ベンと関わり合う中で、例えば相手の心理について解説することで事態の収拾を図ろうとする場面を作るとか、そういう工夫があっても良かったのでは。
ベンの結婚相手をリサ・クードローが演じているが、全く見せ場は無い。ただ出ているだけである。チャズ・パルミンテリ演じるポールのライバル、プリモ・シンドーネの使い方も半端に終わっている。多くの脇キャラ(俳優)が、勿体無い使われ方となっている。
前半でポールとベンが共にトニー・ベネットのファンだと話す場面があるのだが、ラストではそのトニー・ベネットが特別出演して歌を披露してくれる。
そこだけは評価しておこう。