『アメリカン・パイ3:ウェディング大作戦』:2003、アメリカ

ジムはミシェルと付き合い始めて3年になり、レストランでプロポーズしようとする。しかしミシェルはナプキンの下に隠れた指輪の箱に気付かず、ジムは「ナプキン使って」と勧める。そこへ父から電話が入り、ジムは箱に婚約指輪が入っていないことを知らされる。父から「今から持って行く」と言われたジムは電話を切り、ミシェルに適当な嘘をついた。ミシェルは誤解してテーブルの下でフェラチオを始め、ジムは困惑する。そこへ父が来たので、彼は慌てて取り繕った。父が外へ連れ出そうとしたため、ジムは下半身を晒した状態を店にいた大勢の人々に見られてしまった。ズボンを履いた彼はミシェルにプロポーズし、OKを貰った。
ジムは酒場でケヴィンとフィンチに会い、結婚することを伝えた。ジムの家ではパーティーが開かれ、ジョンとジャスティンもやって来た。フィンチは「結婚式を成功させるにはスティフラーを呼ぶな」と忠告するが、それにはジムもミシェルも賛同した。しかしスティフラーは家に上がり込み、ケーキを台無しにした。スティフラーから犬を引き離そうとしたジムはミシェルの両親のハロルドとメアリーに誤解され、慌てて弁明した。
ジムの結婚を知ったスティフラーは、ケヴィンとフィンチに「パーティーを開こう」と持ち掛けた。ジムはミシェルから理想の結婚式をやりたいと頼まれて承諾するが、苦手なダンスをすることになって頭を悩ませた。スティフラーは結婚式に出席する気満々だったが、ジムは「お前は呼ばない」と通告する。しかしジムは「ダンスを教えてやる」と言われ、下品な言動を改めるよう頼んだ上で出席を承諾した。フィンチはジムに、ミシェルの着たがっているドレスがシカゴにあることを教えた。
フィンチはジムを連れてシカゴの店を訪れ、店長に話を聞く。ジムたちは手分けしてドレスのデザイナーであるレズリー・サマーズを捜索するが、スティフラーは性欲だけで動いていた。彼はクラブでジェニファーという女性をナンパし、ベアーという友人を紹介される。困惑したスティフラーは周囲を見回し、そこが同性愛者の集まる店だと気付いた。スティフラーを迎えに来たジムはベアーがレズリーの友人だと知り、事情を説明して紹介してもらおうとする。スティフラーはベアーを馬鹿にしてダンスで挑発し、勝負になった。
ベアーはダンス対決でスティフラーを気に入り、2人は観客の喝采を浴びた。店にいたレズリーは、ミシェルのドレスを作ることを引き受けた。ベアーはジムたちに「バチェラー・パーティーをやるなら女の子を紹介してやる」と言い、スティフラーに連絡先のメモを渡した。ミシェルは妹のケイデンスを空港まで迎えに行くことになり、用事の無かったフィンチだけが同行した。フィンチはケイデンスに一目惚れし、恋人と別れたと知って喜んだ。
スティフラーもケイデンスに欲情し、処女だと知って興奮する。彼女が「ちゃんとした人と出会いたい」と言っていたので、スティフラーは年寄りに優しい善人を装った。スティフラーがケイデンスとメアリーを欺く様子を見てフィンチは腹を立て、ジムとミシェルは困惑した。フィンチとスティフラーはケイデンスを巡り、激しく火花を散らした。ジムはスティフラーに「結婚なんて最悪だ」と言われ、ミシェルとしかマトモにセックスしていないことを馬鹿にされた。彼は父に相談するが、まるで参考にならない意見しか得られなかった。
スティフラーはジムから「ミシェルがウチの両親とシカゴへ出掛ける」と聞き、ケヴィン&フィンチを呼んでバチェラー・パーティーを開いた。彼らはベアーが用意したストリッパーのブランディーとクリスタルに興奮し、ジムが戻る前にパーティーを始めた。しかしジムがミシェルの両親を連れて戻って来たので、彼らは慌てて隠れた。ジムはスティフラーに邪魔されたくないので嘘をつき、ディナーの準備も整えていた。家に入ったジムは、スティフラーたちがいるのを知って狼狽した。何も知らなかったベアーはジムに話を合わせ、ソムリエのフリをした。
ブランディーがジムたちの前に現れてオッパイを露出させると、慌ててフィンチが出て来た。彼はフラハーティー夫妻に、「ブランディーは東ヨーロッパから来た従妹で、習慣の違いが分かっていないんです」と説明した。メアリーは縛られたケヴィンがクローゼットに隠れているのを発見して驚き、クリスタルが鞭を持って現れたので狼狽した。混乱が広がる中でスティフラーは姿を現し、メアリーに「ジムを僕みたいなヒーローにしたかったので芝居を打ったが、ミスがあった」と説明した。メアリーはスティフラーを何も疑わず、友達思いの善人だと称賛した。彼女はスティフラーを信用し、祖母の指輪を預けた。
結婚式の前日、ジムたちは会場のホテルへ移動した。ジムは身繕いが必要だと考え、股間の毛を電動バリカンで剃った。しかし剃った毛を窓から捨てると換気扇の風で下の厨房に入り込み、ウェディングケーキを台無しにしてしまった。ケイデンスと散歩に出たスティフラーは、彼女からキスをされた。犬に餌を与えたスティフラーは、誤って指輪を投げてしまった。スティフラーは犬が指輪を飲み込んだことに気付いて焦り、排便を待ち続けた。
ウンチの中から指輪を拾い上げた彼は、洗いに行こうとするが、フラハーティー夫妻に呼び止められてしまう。夫婦に指輪を見せてほしいと頼まれた彼は、部屋に置いてあると嘘をついた。「手に持っている物を見せて」と言われたスティフラーは、トリュフ・チョコだと嘘をついてウンチを見せた。「係の人は明日まで出ないと言ってたのに」とメアリーは食べたがり、スティフラーが拒んでも「半分だけでも」と粘る。メアリーがウンチを食べようとしたので、スティフラーは慌てて自分の口に放り込んだ。
ジムは祖母の元へ行き、ミシェルを紹介した。すると祖母はミシェルを睨み付け、「ユダヤ人じゃないね。結婚は許さない」と言い放った。ミシェルはショックを受けて部屋を飛び出し、ジムは頭を抱えた。スティフラーはケイデンスに「今夜を特別な夜にする気はある?」と誘いを掛け、深夜12時にリネン置き場で会う約束を取り付けた。しかしフィンチに対して粗野な本性を見せている現場を、ケイデンスに見られてしまった。そんなスティフラーが酒を盗み出すためにキッチンの電源を切ったせいで、結婚式で使う花とシャンパンは全て台無しになった…。

監督はジェシー・ディラン、脚本はアダム・ハーツ、製作はウォーレン・ザイド&クレイグ・ペリー&クリス・ムーア&アダム・ハーツ&クリス・ベンダー、製作総指揮はポール・ワイツ&クリス・ワイツ&ルイス・G・フリードマン、撮影はロイド・エイハーン、美術はクレイトン・ハートリー、編集はスチュアート・パッペ、衣装はパメラ・ウィザース・チルトン、音楽はクリストフ・ベック、音楽製作総指揮はキャシー・ネルソン。
出演はジェイソン・ビッグス、モリー・チーク、アリソン・ハニガン、ジャニュアリー・ジョーンズ、トーマス・イアン・ニコラス、ショーン・ウィリアム・スコット、エディー・ケイ・トーマス、フレッド・ウィラード、ユージーン・レヴィー、デボラ・ラッシュ、ジェニファー・クーリッジ、エリック・アラン・クレイマー、アンジェラ・ペイトン、ジョン・チョー、ジャスティン・イスフェルド、アマンダ・スウィステン、ニッキー・シーラー・ジーリング、ローレンス・プレスマン、アントワネット・レヴィン、アレクシス・ソープ、レイナルド・A・ガリェーゴス、ケイト・ヘンドリクソン、ロブ・ネイグル、コリンヌ・レイリー=エルフロント、ローレン・レスター他。


「アメリカン・パイ」シリーズの第3作。この時点では完結編として作られていた。
監督は『ビー・バッド・ボーイズ』のジェシー・ディラン。脚本はシリーズ1&2作目を手掛けたアダム・ハーツ。
ジム役のジェイソン・ビッグス、ジムの母役のモリー・チーク、ミシェル役のアリソン・ハニガン、ケヴィン役のトーマス・イアン・ニコラス、スティフラー役のショーン・ウィリアム・スコット、フィンチ役のエディー・ケイ・トーマス、ジムの父役のユージーン・レヴィー、スティーヴの母役のジェニファー・クーリッジ、ジョン役のジョン・チョー、ジャスティン役のジャスティン・イスフェルドは、1作目からのレギュラー。
他に、ケイデンスをジャニュアリー・ジョーンズ、ハロルドをフレッド・ウィラード、メアリーをデボラ・ラッシュが演じている。

1作目からシリーズを見てきた人にしてみれば、オズやヘザー、ヴィッキー、ジェシカ、ナディア、シャーマンたちがいないってのは、大いに不満を覚えるポイントだろう。
「これで完結」ってことも含めて、「ファミリーが勢揃いする」ってのは何よりも重要な要素だ。
もちろん話の内容も大切だが、何よりも「御馴染みのメンバーが顔を揃えている」ってことが一番の査定ポイントになる。
そういう意味では、メンバーが欠けていることで大きく評価を下げている。

単に登場しないだけでなく、なんとオズとヘザーの存在を完全に「無かったこと」にしている。劇中で2人について、台詞で触れることさえ無い。
ジムとミシェルの結婚式なのだから「仲間は全員が集まる」ってのが当たり前だろうに、その不在は無視されている。
ジムたちは高校時代からオズも含めた仲良し4人組だったはずなのに、なんで彼の不在を誰も気にしていないんだよ。
台詞で少し触れるぐらいのことは、普通に出来る作業だろうに。

中身がスッカラカンで、批評するのがホントに難しい作品である。
正直なことを言うと、見終わった時点では何の感想も浮かばず、批評のコメントは一言も出て来なかった。
「だからダメな映画」と言いたいわけじゃなくて、そういう類の映画ってことではあるのだ(とは言え決して優れた出来栄えだとも思っちゃいないが)。
思い切って「中身はスッカラカン。以上」だけで終わらせることも考えたが、さすがにマズいたろうってことで、何とか絞り出して批評を書いている。

シリーズ1作目は「高校生の仲良し4人組が童貞を捨てようと悪戦苦闘する」という話で、『グローイング・アップ』や『ポーキーズ』のような青春エロ映画だった。
しかしジムたちは1作目で無事に童貞を捨てており、同じ手が2作目以降は使えなくなった。
さらに今回はジムがミシェルと結婚を決めており、もう「誰かとセックスしたい」というムラムラした気持ちも無くなっている。そのため、彼を下ネタに関与させることが難しくなっている。
ケヴィンとフィンチも、そんなにガツガツしているわけではない。

ミシェルは相変わらずエロいアンポンタンで、のっけからジムの言動をエロ目的だと誤解したり、フェラチオを始めたりしている。
しかし、そのシーンを過ぎてしまうと、もう彼女を使った下ネタも完全に無くなる。
じゃあ新たなエロ担当としてケイデンスを登場させたのかと思いきや、彼女は「真面目な人を望んでいる処女」という設定で、ちっとも下ネタに参加しない。
正直に言って、何のためにケイデンスを登場させたのか、その存在意義が薄くなっているんだよね。

オープニングシーンではジムが下半身を晒して恥ずかしい思いをしており、ここは「ちゃんと下ネタを真正面から描いている」という意味でシリーズ3作目の導入部としてふさわしい内容になっている。
パーティーのシーン、「ズボンが脱げた状態のジムが、スティフラーの股間に付いたケーキを舐めている犬を引き剥がそうとしてミシェルの両親たちに誤解を受ける」ってのも、分かりやすい下ネタだ。
でも、ここを過ぎると、おとなしくなっちゃうんだよね。
ゲイバーのダンス対決も、普通にダンスをするだけで終わっちゃうし。

バチェラー・パーティーのシーンではドタバタ喜劇が描かれ、下ネタも含まれている。
決して「下ネタありきのシリーズ」ってのを完全に忘れているわけではないのだが、ジムたちが童貞を卒業した上に年を取って落ち着いたことによって、パンチ力は弱まっている。
そのため、相変わらず性欲剥き出しのスティフラーを積極的に動かすことで、艶笑喜劇としての方向性を貫こうとしている。
ただ、彼はジムたちに迷惑を掛けるトラブルメーカーであって、話の中心に据えちゃダメなタイプのキャラクターなのよね。

「主役には不適正」という問題は置いておくとして、スティフラーを積極的に動かさないと下ネタがおとなしくなってしまうのは確かだ。
ところが彼がケイデンスの前で善人ぶるってのを大きく扱っているため、そこも苦しくなっている。
みんな年を取ったってこともあって弾けっぷりが弱くなっている中で、全く変わらない性欲の塊がスティフラーなのよ。
だけど、こいつまで「ケイデンスに惚れてもらうための芝居」ってことで、おとなしくしちゃってるのよね。

スティフラーの「いい人芝居」は、なかなかボロが出ないまま話が進む。ジムたちがケイデンスに真実を教えようとして、逆に誤解されるようなこともない。フィンチとスティフラーの戦いが、笑いに繋がることも無い。
何より、ほとんど下ネタに結び付かないってのが痛い。
しかも、色々とトラブルを巻き起こすスティフラーだけど、終盤に入ると「ジムのために奔走する」というホントの意味での善人っぷりまで見せちゃうし。
まあ自分の愚かしい行動で結婚式の準備を台無しにしたので何とかしようと頑張るだけで、ただのマッチポンプではあるんだけどさ。

(観賞日:2023年10月9日)

 

*ポンコツ映画愛護協会