『アルビン3 シマリスたちの大冒険』:2011、アメリカ

デイヴはシマリス3兄弟&3姉妹を連れて、豪華客船で家族旅行にやって来た。彼が乗船しようとすると、アルビンが勝手な行動を取っていた。デイヴが「最初にルールを決めないと」と言うと、アルビンは「そんなの要らない。ルールは守る男だよ」と得意げに語る。しかし船が出港すると、相変わらず彼は自由気ままな行動を繰り返した。デイヴがイタズラをたしなめても、アルビンは「みんなが楽しめばいいと思ったんだよ」と悪びれない。それどころか、「いつまで子供扱いするの」とデイヴに反発するほどだった。
船長との会食に招かれたデイヴが準備をしていると、サイモンが「アルビンは競走馬で、デイヴは優秀なジョッキーだ。手綱を少し緩めてあげればいい。子供は少し信用してあげれば成長する」と語る。デイヴは部屋で留守番させるシマリスたちから「テレビを見てもいい?」と訊かれると、「いいよ」と答えてチャンネルを選択しようとする。しかしサイモンの言葉を思い出し、「好きな番組を選んで。自分たちで決められるよね」と告げた。
デイヴが部屋を出ていくと、すぐにアルビンはカジノへ行こうとする。サイモンが止めても、彼は耳を貸さなかった。サイモンはアルビンを追い掛け、3姉妹はクラブのサルサ・ナイトに繰り出した。3姉妹は高慢な女性3人組と遭遇し、ダンス対決になった。3姉妹は見事に勝利し、喝采を浴びた。デイヴは船長にアルビンのイタズラを謝罪し、二度とさせないよう約束した。彼はペリカンのキグルミ男にスープをこぼされ、デッキに出た。するとキグルミ男が現れ、その正体がイアンだと知ってデイヴは驚いた。
デイヴが「ここで何してんの?」と尋ねると、イアンは「これが仕事だよ」と言い、もう音楽業界は雇ってくれないのだと述べた。イアンはデイヴの人生を潰すと宣言し、「シマリスたちがルールを破ったら、すぐ船長に言い付けてやる」と告げて去った。部屋に戻ったデイヴはテレビを見ているセオドアしかいないことを知り、残りのシマリスたちを捜しに行く。アルビンが国際音楽賞に参加することをカジノの女性客に自慢していると、デイヴがやって来た。アルビンは逃げ出そうとするが捕まり、続いてデイヴはサイモンも発見した。デイヴは部屋に戻ろうとするが、船長に見つかった。彼はシマリスたちを部屋に戻し、「また何かあったら船を降りるこにとなる」と注意した。アルビンは屁理屈を口にするが、デイヴは相手にしなかった。
翌朝、デイヴは船長から「もう1つだけなら何かで遊んでもいい」という許可を貰ったので、シマリスたちをデッキに連れ出した。しかしデイヴが用意した遊びがシャッフルボードなので、シマリスたちは「つまらない」と愚痴をこぼす。それでも仕方なくシマリスたちが遊び始めると、アルビンはブリタニーを馬鹿にする。アルビンはデイヴが転寝したのを見計らい、少年が遊んでいた凧とドーナツを交換した。彼はエレノアやジャネットたちに紐を引っ張らせ、凧に乗って楽しんだ。
サイモンが呆れていると、エレノアたちが強風で上空に引っ張られてしまった。サイモンはデイヴが寝ていた椅子の脚部に紐を結び付け、エレノアたちを船に戻そうとする。しかし風が強すぎて椅子ごと引っ張られ、シマリスたちは飛ばされてしまった。目を覚ましたデイヴはハンググライダーで追い掛けようとするが、イアンが妨害した。するとイアンごと飛ばされてしまい、2人は海に落下した。シマリスたちは島に漂着し、ブリタニーはアルビンに激怒した。デイヴとイアンも海を漂い、島を発見した。
アルビンは浜辺に石を並べてSOSの文字を作り、「これで飛行機が見つけてくれる」と楽観的な態度を見せた。彼は「火を起こして焚き火をしよう」と言うが、そのための道具が無かった。するとサイモンが眼鏡で太陽熱を集め、薪に火を付けた。デイヴは島に辿り着いてシマリスたちの捜索を始めようとするが、イアンは火を起こし始める。彼は「もうすぐ日が暮れる。まずは火を起こして、朝になってから行こう」と言うが、デイヴはシマリスたちが心配だった。夜になっても、アルビンは楽観的なことばかり口にした。
翌朝、アルビンは木の皮を朝食として用意するが、不味くて誰も食べられない。そこでサイモンが提案し、シマリスたちは島の奥へ食べ物を探しに行く。マンゴーを見つけたアルビンは独り占めしようとするが、見つけたブリタニーに奪われた。アルビンはブリタニーを縛り上げてマンゴーを取り戻すが、セオドアの手に渡った他のシマリスたちも加わって争奪戦になる中、ゾーイという女性が現れた。9年も島にいるゾーイは、シマリスたちのことを知らなかった。
ゾーイは貨物飛行機のパイロットで海に墜落したこと、上司は救助に来なかったことを話した。シマリスたちが「デイヴが来てくれる」と言うと、彼女は「やっと島から出られる」と喜んだ。彼女は「友達を紹介するわ」と言うが、その「友達」は目と口を描いた4つのボールだった。ゾーイは自分が暮らすツリーハウスへシマリスたちを案内するが、エレノアが落下して左足を怪我してしまった。しかしゾーイは大して心配することも無く、「バンジージャンプで遊ぶ?」と持ち掛ける。アルビンは「やる」と即答するが、サイモンはゾーイが厄介者だと感じて「僕たちのことは放っておいてくれ。一緒にいると怪我をする」と激しく反発する。しかし彼はゾーイに文句を言っている最中、神経毒を持っているクモに噛まれてしまった。
翌朝、サイモンが目を覚ますと、毒の影響でシモーンという別人格に変貌していた。冒険好きのシモーンは、他の面々に内緒でセオドアを連れ出した。アルビンが捜索に行くと、彼はゾーイ&セオドアとバンジージャンプを楽しんでいた。プレイボーイのシモーンは3姉妹の元へ行き、ジャネットを口説いた。サイモンは小屋作りに全く関心を示さず、雨が降り出してもジャネットと踊ることに夢中だった。次の日、アルビンが真面目なキャラになって小屋作りを始めると、それを知ったブリタニーが手伝おうとする。しかしアルビンが馬鹿にしたので、ブリタニーは「そうやって過小評価してなさい」と対抗心を剥き出しにした。
ゾーイはアルビンとブリタニーを除く4匹を連れて丸太橋を渡り、滝へ遊びに出掛けた。シモーンは川に入って魚を乗りこなし、滝の裏にある洞穴を探検して戻った。彼はブレスレットを持ち帰り、ジャネットにプレゼントした。ゾーイは目を輝かせ、それだけだったのかとシモーンに尋ねる。他にも財宝があると知り、彼女は全て手に入れようと目論んだ。ゾーイが貨物飛行機で墜落したという話は嘘で、財宝を探すために島へ来ていたのだ。
翌日、アルビンは小屋を完成させるが、ブリタニーは彼より派手なツリーハウスを作り上げていた。アルビンが「デイヴが来ない理由が分かった。きっと俺たちのことを捜してないんだ。俺がイタズラばかりしてたから。今回、サイモンに振り回されてウンザリだと思った。でも俺も何年もデイヴに同じことをやってた。嫌われて当然だよ」と漏らすと、ブリタニーは「大丈夫よ。デイヴはサイモンとセアドアのことは大好きだもの」と励ました。夜、ゾーイは滝へ行って財宝を手に入れようとするが、穴が小さすぎて手が届かなかった。
翌朝、シモーンはセオドアに頼まれてデイヴを捜索し、イアンと一緒にいる彼を発見した。一方、火山が活動を始めたのを見たアルビンとブリタニーは、脱出のために筏を作ろうと考える。ゾーイが「滝までハイキングに行かない?」と誘うと、アルビンは「この島はもうすぐ爆発する」と告げる。イアンと争っていたデイヴは、シモーンとセオドアに遭遇した。デイヴとイアンは火山活動に気付き、シマリスたちの元へ赴いた。デイヴは反省しているアルビンに優しく声を掛け、財宝目当てのゾーイを除く全員が協力して脱出の準備を進める。しかし食料集めに出ていたシモーンは飛んで来たゴルフホールの直撃で気絶し、ジャネットはバスケットボールに追われて穴に閉じ込められてしまう。それは全てゾーイの策略で、彼女はジャネットを縛って財宝を取って来るよう命じた…。

監督はマイク・ミッチェル、キャラクター創作はロス・バグダサリアン&ジャニス・カーマン、脚本はジョナサン・エイベル&グレン・バーガー、製作はジャニス・カーマン&ロス・バグダサリアン(ロス・バグダサリアンJr.)、製作総指揮はカレン・ローゼンフェルト&アーノン・ミルチャン&ニール・マクリス&スティーヴ・ウォーターマン、撮影はトーマス・アッカーマン、美術はリチャード・ホランド、編集はピーター・アムンドソン、衣装はアレクサンドラ・ウェルカー、アニメーション監修はケヴィン・ジョンソン、音楽はマーク・マザースボウ、音楽監修はジュリア・マイケルズ、音楽製作総指揮はアリ・ディー・セオドア。
出演はジェイソン・リー、デヴィッド・クロス、ジェニー・スレイト、マイケル・ノーシー、ソフィア・アギアー、ローレン・ゴットリーブ、テラ・ペレス、アンディー・バックリー、チャド・クロウチュク、ルイザ・デオリヴェイラ、タッカー・アルブリッツィー、ネルソン・ウォン、マイケル・カーマン、アンバー=ロシェル・デマルコ、マルセラ・カセレス、ナタリー・サトクリフ、イアン・ハーモン、フィリス・スミス他。
声の出演はジャスティン・ロング、マシュー・グレイ・ギュブラー、ジェシー・マッカートニー、エイミー・ポーラー、アンナ・ファリス、クリスティーナ・アップルゲイト、アラン・テュディック他。


アルビン&チップマンクスを主役とするシリーズ第3作。
監督は『スカイ・ハイ』『シュレック フォーエバー』のマイク・ミッチェル。
脚本はシリーズ第2作に続いてジョナサン・エイベル&グレン・バーガーが担当。
デイヴ役のジェイソン・リーとイアン役のデヴィッド・クロスは、1作目からのレギュラー。声優陣ではアルビン役のジャスティン・ロング、サイモン役のマシュー・グレイ・ギュブラー、セオドア役のジェシー・マッカートニーが1作目から、エレノア役のエイミー・ポーラー、ジャネット役のアンナ・ファリス、ブリタニー役のクリスティーナ・アップルゲイトが2作目からのレギュラー。
他に、ゾーイをジェニー・スレイトが演じており、シモーンの声をアラン・テュディックが担当している。

他のシマリスたちはともかく、アルビンがホントに厄介な奴なので、ここを好意的に受け入れることが出来るかどうかってのはシリーズを観賞する上で重要なポイントになる。
アルビンは始まった直後から勝手気ままな行動を繰り返すので、早い段階で判断することは出来る。厄介なのは、単に「自由気ままに行動する」ってだけじゃなくて、反省しないし生意気ってことなんだよね。
これが「ただ無邪気に遊んでいるだけ」ってとこなら、それを可愛いと思うのは難しくないかもしれない。
でもアルビンって、やたらと反抗的だし、屁理屈はこねるし、実は「勝手な行動」そのものよりも、そっちの方が厄介なんだよね。

冒頭、アルビンは他のシマリスたちが集まっているのに勝手な行動を取り、デイヴがルールを決めようと提案すると「ルールは守る男だ」と得意げに言う。
でも分かりやすい前フリなのはバレバレで、乗船した直後から次々に騒ぎを起こす。
ただし、この辺りは、まだ「乗客と楽しんでいる」ってだけなので、そんなに気にならない。
だが、デイヴから留守番を言い付けられても無視し、サイモンが注意しても無視してカジノに繰り出すと、もう厳しくなる。

しかし、それより問題なのは、部屋に連れ戻された後の反応だ。
アルビンはデイヴから「また何かあれば下船する」と言われると、「もし何か起きて逆らうしか無かったら?例えば座ってろと言ったとするじゃない。でも海賊が来るのが見えたとする。俺が動けば全員が助かるとしても、それでも動いちゃいけないんだ?」などと屁理屈をこねるのだ。
これがまあ、見事に神経を逆撫でするんだよね。
しかも、この時の表情が、これまたムカつくように作ってあるんだよね。

ここで問題をややこしくするのが、サイモンの動かし方だ。
彼はデイヴに、アルビンへの接し方について「少し手綱を緩めてはどうか」と提案した。それに応じて、デイヴは少し手綱を緩めたのだ。
その結果としてアルビンは言いつけを守らず騒ぎを起こしたのだし、サイモンも彼が勝手な行動を取ったことは分かっているはずだ。だからこそ、慌てて捜索に行ったはず。
ところがアルビンが屁理屈をこねた時には、デイヴに「もうちょっと僕たちを信用してくれてもいいんじゃないかなあ」と言うのだ。
いやいや、デイヴの言うように、信用した結果として裏切られたわけで。それで「もっと信じろ」って、それは無理な相談でしょ。

アルビンのキャラクター描写には、「自分は充分に大人だと自負しており、だからデイヴの子供扱いに反発する」という軸がある。
なので、そんなプロットから始まるストーリーの当然の帰結として、「アルビンが自身の過ちに気付いて反省する」という展開が用意されている。その前には、「サイモンを頼れなくなったので、仕方なく真面目キャラになる」という手順もある。
でも、「また元に戻っちゃう」という展開がオチ的に用意されているんだよね。
まあコメディーとしては分かるよ。それにアルビンがホントに改心しちゃったら、キャラが死んじゃうからね。
ただ、それによって「無人島での体験は何の役にも立たなかった」ってことになっちゃうわな。

不幸中の幸いで、シマリスたちが無人島に漂着してしまうと、もうアルビンが勝手な行動でデイヴにに迷惑を掛けたり、彼に注意されて屁理屈をこねたりすることは無くなる。
だけど、それは無人島じゃなくても出来ることだ。「シマリスたちがデイヴと離れ離れになる」という展開さえ用意すれば、同じ形になる。
っていうか、実はデイヴがシマリスたちと完全に離れてしまうと、それはそれでマイナスもある。なので、例えば「3兄弟ははぐれて、3姉妹はデイヴと共に行動する」という形でも良かったかもね。6匹を1グループとして動かすことで得られるメリットより、そっちの方がメリットは大きいような気がするなあ。
デイヴとイアンを道連れで動かしても、そこで生じる面白さなんて何も無いよ。ハッキリ言うけど、この映画で人間キャラだけを動かして面白いことなんて1つも無いよ。

このシリーズって、ハッキリ言ってストーリーは二の次だ。いや、製作サイドがどう考えているかどうかは分からないけど、結果としては「そこは完全に無視すべし」というシリーズになっている。
だったら何を見ればいいのかと言うと、「とにかくシマリスたちの可愛さをお楽しみください」というシリーズなのだ。
もう少し限定すると、「シマリスたちが歌って踊る様子を堪能してね」ってことだ。
そこだけが作品の見所であり、それ以外には何も無いと言い切ってもいいぐらいなのだ。

そして「シマリスたちが歌って踊る様子」を充分に魅力的なシーンとして演出するために必要なのが、実は人間たちである。
「ちょっと何言ってんのか分かんない」と思うかもしれないが、「人間社会に入り込んだシマリスたちが歌って踊る」ってことが大きなポイントなのだ。
つまり背景として「人間たちの生活風景」が必要であり、その中に「歌って踊るシマリスたち」というキャラクターが入り込むことで、アルビンたちが「特異な存在」として引き立つようになっているのだ。

船のクラブでシマリス3姉妹が踊るシーンが文句なしに楽しいのは、そういうことだ。「大勢の人間たちがいるクラブ」という場所であり、しかも3姉妹は人間の女性3人組とダンスで対決する。それが楽しいのだ。
だから主な舞台を無人島にするのは、愚の骨頂と言わざるを得ない。
仮に人間が出て来ないにしても、最低でも「人間の生活空間」は用意しないとダメだわ。
もちろん3作目として変化を付けるために今までと大きく異なる場所を用意したのは分かるけど、その選択を完全に間違えているのだ。

無人島を舞台にするのは愚かだと前述したが、一応はゾーイという人間のキャラクターも登場する。そして彼女がシマリスたちと絡むことで、「人間のいる空間」は作られている。
だけど、それじゃ全く足りないんだよなあ。
まず「背景としての人間」がいないってのが1つ。そして、無人島が「人間の生活空間」じゃないことが1つ。
島や森って、リスが普通に生活している場所でしょ。だから、そこでシマリスが歌ったり踊ったりしても、それは「歌ったり踊ったり」ということを除けば「普通の光景」でしかないわけで。

さらに、これが最大の問題だが、ゾーイが魅力的なキャラじゃないってことも痛手になっている。
こいつは単体でも魅力的なぐらいじゃないと困るのに、ただの疎ましいトラブルメーカーでしかないのよね。
人間サイドのヒロインなのに、こんなキャラ造形にした意味が全く分からんわ。最終的には改心するけど、ラスト直前まではジャネットを脅して財宝を手に入れようとするわ、デイヴを殺そうとするわと、最低のヴィランなのよね。
だけど、そもそもヴィランなんて要らないし。そしてヴィランとして登場させたのなら、簡単に改心させるのはヌルいだけで要らないし。
ともかく、どう考えても要らないキャラになっているのよ。こんな奴を中途半端に絡ませるぐらいなら、まだシマリスたちだけで行動させた方がマシだわ。

(観賞日:2021年9月19日)

 

*ポンコツ映画愛護協会