『アルビン2 シマリス3兄弟(しまっピーズ) vs. 3姉妹(しまペッツ)』:2009、アメリカ

チップマンクスはチャリテイー・ライブに出演し、観客の喝采を浴びる。アルビンは調子にのってギターを演奏し、弦が切れたので予備を取りに行く。デイヴは「突っ走るな。ワンマンショーじゃないんだぞ」と注意するが、アルビンは全く気にしなかった。彼は激しく暴れて看板を倒してしまい、デイヴは弾き飛ばされて大怪我を負った。デイヴは入院を余儀なくされ、チップマンクスの世話をしてもらうために叔母のジャッキーに来てもらうことにした。彼はアルビン、サイモン、セオドアに、学校へ通う手配をしたことを教えた。
チップマンクスが空港へ車椅子のジャッキーを迎えに行くと、孫のトビーも一緒だった。ビデオゲームに夢中のトビーは、ジャッキーと同居していた。トビーの失態でジャッキーは大怪我を負い、入院する羽目になった。そのため、チップマンクスはトビーと暮らすことになった。トビーはデイヴの家でもビデオゲームに没頭し、チップマンクスはチーズボールの袋を開けて夕食にした。デイヴから電話が入るとアルビンは喜ぶが、ジャッキーについて訊かれると誤魔化して切った。
翌朝、トビーはチップマンクスを車に乗せ、ウェスト・イースタン高校まで送り届けた。ルービン校長は3匹を出迎え、エミリーが担任を務める教室へ案内した。女子生徒のジュリーやベッカたちが一斉にチップマンクスに群がると、男子生徒のライアンは腹を立てた。イアン・ホークはジェット・レコーズ本社の地下でチップマンクスへの復讐心を燃やし、歌える動物を捜していた。小さな田舎町から出て来たシマリス3姉妹のブリタニー&ジャネット&エレノアは、イアンに「チッップマンクスのようなスターにしてほしい」とマネージメントを依頼した。イアンは「チペッツ」と称する3姉妹のパフォーマンスを見て、絶対に売れると確信した。彼はチップマンクスの悪口を吹き込んだ上で、マネージメントを引き受けた。
チップマンクスはライアンや仲間のザンダーたちに襲われ、反撃を食らわせた。ルービンは3匹を呼び出し、予算削減で音楽教育が存続の危機にあることを話す。彼女は地域主催の音楽コンテストで優勝すれば2万5千ドルが貰えるので出てほしいと頼み、実はチップマンクスの大ファンだと打ち明けた。イアンはモデルルームを自宅だと偽り、チッピーズを案内した。トビーはセオドアに「学校はどうだった?」と問われ、イジメを受けていた辛い過去を思い出した。
翌朝、チップマンクスが学校へ行くのを嫌がると、トビーは「2日目は初日よりマシだから」と説得した。しかしチップマンクスが学校へ行くと、ドッジボールの授業でライアンとザンダーはチップマンクスを標的にした。アルビンはライアンの投げたボールをキャッチすると、フットボールチームにスカウトされた。アルビンは喜んでチームに加わり、ライアンたちと仲良くなった。サイモンは自分たちとの約束をキャンセルしようとするアルビンを注意するが、彼は全く悪びれなかった。
イアンはチップマンクスが音楽コンテストに出場すると知り、チペッツを連れて高校へ赴いた。チペッツと出会ったチップマンクスは、すっかり心を奪われた。チップマンクスを迎えに来たトビーは、かつて好意を寄せていた同級生のジュリーが先生になっているのを見て驚いた。彼は激しく動揺し、その場から逃げるように去った。イアンはルービンに、音楽コンテストにチペッツを出すよう持ち掛けた。彼はチペッツにパフォーマンスを披露させ、生徒を観客として集めた。
生徒はチペッツの歌とダンスに喝采を送るが、ルービンは「もうチップマンクスに決めてるの」と言う。しかしイアンが「生徒の投票で決めませんか」と提案すると、ルービンは「金曜日に1曲ずつ歌ってもらって、生徒の拍手が多い方を学校の代表にするわ」と決定した。アルビンとサイモンは家で喧嘩し、1人にされたセオドアは寂しさを感じた。翌日、アルビンはブリタニーに「イアンは悪魔だ」と言うが信じてもらえず、馬鹿にする態度を取って怒りを買った。
イアンはチッピーズに練習させ、ブリタニーを前に出してジャネットとエレノアをバックダンサーのように扱った。デイヴが自宅に電話を掛けると、トビーが出た。トビーはジャッキーが病院にいることを話してしまい、何があったのか問われると誤魔化して切った。サイモンは生徒会長のジェレミーから「頼りになるリーダーが必要だ」と言われ、ゴミ監視員の仕事を引き受けた。ライアンは彼を嘲笑し、学校にゴミ監視員の仕事など無いことを教えた。
アルビンが事実を知っていながらライアンたちと同調したので、サイモンは腹を立てた。ライアンがサイモンをゴミ箱に投げ捨てると、アルビンは謝罪した。サイモンは彼に襲い掛かるが、許すことにした。しかしライブコンペの日にフットボールの試合があると聞き、また彼はアルビンに腹を立てて襲い掛かった。サイモンが気持ちを落ち着かせて絶対に来るよう要求すると、アルビンは必ず行くと約束した。ジュリーはセオドアの元気が無い様子を見て、エレノアに話し掛けるよう頼んだ。背の低いエレノアはイアンに指示されて厚底サンダルを履いており、セオドアに「僕は低くてもいいと思うなあ」と言われて喜んだ。
金曜日。アルビンはフットボールの試合終盤に出場し、逆転のタッチダウンを決めた。彼の活躍で勝利し、チームは大いに盛り上がった。アルビンはチームメイトに称賛されてパーティーに出掛け、コンペのことを忘れてしまった。コンペではチペッツだけがパフォーマンスを行い、チップマンクスはサイモンとセオドアが「アルビンがいないと歌えない」と告げた。チップマンクスは不戦敗となり、学校代表にはチペッツが選ばれた。帰宅したアルビンは謝罪しようとするが、サイモンとセオドアは寝たフリで無視した。
翌朝、セオドアは置手紙を残し、ロサンゼルス動物園へ行く。彼はミーアキャットの仲間に入れてもらおうとするが引っ越しており、そのフロアにはハゲワシがいた。アルビンはセオドアを助け、3兄弟は仲直りした。一方、チペッツにはブリトニー・スピアーズの前座の仕事が入り、イアンは音楽コンテストの欠場を告げる。イアンは「君をスターにするためだ」とブリタニーに言い、ジャネットとエレノアには「コーラスを歌えばいい」と告げて別の衣装を渡す。ブリタニーが「一緒じゃないと歌わない」と拒否すると、イアンは「バーベキューのレストランでローストにしてやる」と脅して自分に従うよう要求する…。

監督はベティー・トーマス、脚本はジョー・ヴィッティー&ジョナサン・アイベル&グレン・バーガー、キャラクター創作はロス・バグダサリアン&ジャニス・カーマン、製作はジャニス・カーマン&ロス・バグダサリアン(ロス・バグダサリアンJr.)、製作総指揮はカレン・ローゼンフェルト&アーノン・ミルチャン&ミシェル・インペラート・スタービル&スティーヴ・ウォーターマン、撮影はアンソニー・B・リッチモンド、美術はマーシア・ハインズ、編集はマシュー・フリードマン、衣装はアレクサンドラ・ウェルカー、アニメーション監修はクリス・ベイリー、音楽はデヴィッド・ニューマン、音楽監修はジュリアンヌ・ジョーダン、音楽製作総指揮はアリー・ディー・セオドア。
出演はザッカリー・リーヴァイ、デヴィッド・クロス、ジェイソン・リー、ウェンディー・マリック、アンジェラー・ジョンソン、キャスリン・ジューステン、ケヴイン・G・シュミット、クリス・ウォーレンJr.、ブリジット・メンドラー、エイミー・カレロ、アレクサンドラ・シップ、グレッグ・ビンクリー、シャリース・ペンペンコ(ジェイク・ザイラス)、バーナード・ホワイト、アデル・ジャックス、ジョイ・オスマンスキー、アーチー・ハーン、ラニー・ジューン、ブランドー・イートン他。
声の出演はジャスティン・ロング、マシュー・グレイ・ギュブラー、ジェシー・マッカートニー、エイミー・ポーラー、アンナ・ファリス、クリスティーナ・アップルゲイト他。


ミュージシャンでレコード・プロデューサーのロス・バグダサリアンが生み出したキャラクター、アルビン&チップマンクスを主役とする映画『アルビン/歌うシマリス3兄弟』の続編。
監督は『ドクター・ドリトル』『アイ・スパイ』のベティー・トーマス。
脚本は1作目から続投のジョー・ヴィッティーと、『カンフー・パンダ』『モンスターVSエイリアン』のジョナサン・アイベル&グレン・バーガーによる共同。

イアン役のデヴィッド・クロスとデイヴ役のジェイソン・リー、声優陣ではアルビン役のジャスティン・ロングとサイモン役のマシュー・グレイ・ギュブラーとセオドア役のジェシー・マッカートニーが前作からの続投。
他に、エレノアの声をエイミー・ポーラー、ジャネットをアンナ・ファリス、ブリタニーをクリスティーナ・アップルゲイトが担当している。
トビーをザッカリー・リーヴァイ、ルービンをウェンディー・マリック、ジュリーをアンジェラー・ジョンソン、ジャッキーをキャスリン・ジューステン、ライアンをケヴイン・G・シュミットが演じている。
歌手のシャリース(現在はジェイク・ザイラス)が、本人役で出演している。

前作を取り上げた時、でチップマンクスを「しまっピーズ」と命名した日本の担当者のセンスを批判した。
しかし今さら後には引けないってことなのか、それが正解だと思い込んでいるのか、今回はシマリス3姉妹の「チペッツ」を「しまペッツ」と呼んでいる。
それに伴って、邦題も「シマリス3兄弟」と書いて「しまっピーズ、「3姉妹」と書いて「しまペッツ」と読ませている。
それは無駄に邦題をゴチャゴチャさせているだけであり、引き付ける力になっているとは到底思えないぞ。

デイヴやジャッキーが大怪我で入院するシーンを「笑えるアクシデント」として描いているが、それでホントにいいのかと思ってしまう。
作品のテイストを考えると、そこをマジに考えちゃダメなのは分かるのよ。
ただ、ジャッキーは車椅子生活を送っているわけで、そんな人が後ろ向きでエスカレーターを転落するのを「笑えるアクシデント」にしちゃうのは、どうなのかと。
下手すりゃ死んでいたかもしれないような、危険な事故だからね。

チップマンクスが高校に通い始めるのは、かなり無理がある展開だ。学校に通うにしても、3匹は小学校レベルじゃないかと。
そこを高校にしてあるのは、トビーの年齢に合わせるための都合だろう。
ただ、そもそも高校を舞台にしている時点で、いかがなものかと。せっかく前作でチップマンクスがデビューして人気グループになったんだから、音楽業界を舞台にすればいいでしょうに。
欲張り過ぎて散らかってしまい、盛り込んだ要素を全く捌けなくなっているぞ。

アルビンはヘマをやらかして周囲に迷惑を掛けるキャラクターなので、トビーは少しキャラが被っている部分がある。本来なら彼は、3匹に振り回されるポジションを担当すべきじゃないかと思うのよね。
っていうか、トビーって全く要らないキャラになっているんだよね。
一応は恋愛劇も用意しているけど、そことチップマンクスの関連性は皆無に等しいし。
今回はチッピーズというチップマンクスのライバルが登場するんだから、そこだけで話を作ればいいでしょ。

チップマンクスは高校に行った初日の夜、翌日からの登校を嫌がる。そして翌朝には、サボタージュを決め込もうとする。
だけどライアンたちに襲われた時は反撃し、ビビらせていたはずで。だったら、もう彼らを恐れる必要は無いはずで。
ルービンに頼まれた音楽コンテスト出場を快諾した後、そこから「学校へ行くのを嫌がる」という手順になるのは流れとして変だよ。
ただ、翌日にライアンたちは懲りずに3匹を攻撃するけど、これはこれで「前日にビビっていたのは何だったんだよ」と言いたくなる。
しかも、すぐにライアンたちはアルビンを仲間に引き入れるので、イジメの図式はあっさりと消えるんだよね。だったら、そんなの最初から要らんわ。

イアンがルービンにチペッツを学校代表として音楽コンテストに出すよう持ち掛けるのは、「なんでだよ」と言いたくなる。
そんな小さなトコでチッピーズに勝負を仕掛けて、どうすんのかと。そもそもチペッツは、その学校の生徒じゃないし。
イアンはチペッツをデビューさせて、その上でチッピーズを潰すための策略を練ればいいでしょうに。
結局、主な舞台として学校を選んだことが、色んなトコで無理を生じさせているのよ。

イアンがブリタニーだけ特別扱いするのは、やりたいことは分かるが「なんで?」と疑問を覚える。
「ブリタニーだけが光っている」とイアンが感じるトコに、説得力が全く無いのよ。相手が人間で、イアンが惚れて特別扱いするなら分かるけど、そういうことじゃないしね。
あと、それでチペッツり関係が険悪になるわけでもないし。
それと、特別扱いを受けるブリタニーがジャネット&エレノアへの申し訳なさそうな様子を見せないので、こいつが嫌な奴になっちゃうでしょ。

アルビンが自己中心的な言動で弟たちに迷惑を掛けるのは1作目からのパターンだから仕方がないんだろうけど、さすがにライブコンペのドタキャンは不快感が強いなあ。
しかも、一応は反省の意識を見せているものの、実際に3兄弟の関係が修復されるシーンにおける彼の様子は、ものすごく軽薄なんだよなあ。そんなに心底から謝罪しておらず、サイモンを茶化すような態度を見せるし。
そもそもセオドアをハゲワシから助けただけで許してもらえるのも、「弟たちの優しさに甘え過ぎだろ」と言いたくなるし。
そんなアルビンを「愛嬌があって憎めない奴」として受け取れないのよね。

ブリタニー・スピアーズの前座が決まると、イアンはチペッツに音楽コンテストの欠場を通告する。
これに対してチペッツは反発するが、3姉妹はスターになりたくてイアンにマネージメントを頼んだんだから、それは違うでしょ。スターになりたいのなら、小さなコンテストよりもブリタニー・スピアーズの前座を選ぶのは当然でしょ。
で、ここでイアンがジャネット&エレノアにコーラスを命じるとブリタニーは抗議するけど、それ以前から自分だけ特別扱いなのは明白だったでしょうに。
なんで今になって抗議するんだよ。

イアンはブリタニーが「一緒じゃないと歌わない」と反発すると、脅しを掛けて命令に従わせる。こいつを悪役として描きたいのは分かるけど、無理があるなあと感じる。
普通に3姉妹の機嫌を取って仕事をさせた方が、絶対に得策でしょうに。
あと厄介なことに、チペッツを登場させたことで、チップマンクスの観客を引き込む力が弱くなっているよね。
だって、チペッツの方が圧倒的に可愛いからね。こっちで話を作った方がいいんじゃないかと思うぐらいだからね。

(観賞日:2021年9月11日)

 

*ポンコツ映画愛護協会