『エイリアン:コヴェナント』:2017、アメリカ&イギリス

ウェイランド社のCEOを務めるピーター・ウェイランドは、アンドロイドのデヴィッドを製造した。デヴィッドに「貴方の息子?」と質問された彼は、「私の創造物だ」と答えた。「貴方が私を創ったのなら、誰が貴方を?」と問われた彼は、積年の疑問だな。いつか答えを出したい。我々はどこから来た?人間の起源が分子の副産物の組み合わせなどとは信じない。それ以上の何かがあるはずだ。私と息子のお前で解き明かそう」と語った。デヴィッドが「私は仕えるが、貴方は人間。貴方は死ぬ。私は死なない」と口にすると、ピーターは少し苛立った様子で紅茶を入れるよう命じた。
恒星間植民船のコヴェナント号は冷凍睡眠状態にある2000人の乗客と1140人分の胎芽を積載しており、7年4ヶ月後に惑星オリエガ-6へ到着する予定だった。13人の乗組員は冷凍睡眠中で、アンドロイドのウォルターだけが作業に従事していた。そんな中、セイルを展開している際にニュートリノバーストが検出され、マザーコンピュータから緊急事態を知らされたウォルターは急いで乗組員を起こす。しかし船長のジェイクはトラブルでポッドが開かず、内部で火災が発生して死亡した。ジェイクの妻であるダニエルズは、悲嘆に暮れた。
副長のオラムは妻で生物学者のカリンから、船長として指揮するよう促される。チーフパイロットのテネシーたちはジェイクの死を悼むための時間を求めるが、オラムは直ちに船を修理するよう命じた。ダニエルズはウォルターに協力してもらい、テラフォーミング・ベイの修復作業に取り掛かった。ダニエルズはウォルターに、ジェイクが新天地で小屋を建てるための木材を積んでいたことを話す。「今さら何の意味が」と嘆く彼女に、ウォルターはジェイクとの約束を果たすべきだと促した。
ダニエルズやテネシー、妻のファリスたちは、ジェイクを弔って遺体を宇宙空間へ放出した。その様子をモニターで観察していたオラムは、カリンに「彼らは命令に違反した」と告げた。カリンは「新天地で彼らは隣人よ」と言い、冷静に接するよう説いた。セイルを修復するため外に出たテネシーは、謎の異音を耳にした。オラムたちがヘルメットに録音された音声をマザーに解析させると、ジョン・デンバーの『カントリー・ロード』のメロディーであることが判明した。
音声の発信元はセクター87で、海と陸地がある4番目の惑星だった。2週間程度で到着できることを知った乗組員たちは、睡眠装置に戻ることを嫌がった。オラムが発信元の惑星へ向かうことを決定すると、ロープ軍曹や操縦士のリックス、その妻で通信士官のアップワースらは賛同した。しかしダニエルズだけはオラムを呼び出し、本来の目的地であるオリエガ-6へ向かうべきだと主張する。彼女は危険を冒すべきではないと異議を申し立てるが、オラムの考えは変わらなかった。
ダニエルズやオラムたちはランダーで惑星に降り立ち、パイロットのファリスを残して調査に向かう。カリンが森での調査を希望したので、オラムはレドワードに警備として残るよう指示した。カリンと離れて休憩していたレドワードは、気付かずに小さなキノコを踏んだ。すると黒い胞子が発生し、レドワードの耳から体内に入り込んだ。オラムたちは先へ進み、巨大な宇宙船を発見した。一行は船内を調べ、プロメテウス号の乗組員だったエリザベス・ショウの認識票を発見した。船には巨人の宇宙服が残されており、発信装置から『カントリー・ロード』のメロディーが流れた。
レドワードの具合が悪くなったため、カリンはオラムに通信してランダーに戻ると告げる。オラムたちの方でも警備のハレットが知らずに黒い胞子を吸い込み、急激に体調が悪化した。オラムたちも捜索を切り上げ、ランダーへ向かう。ランダーに近付いたレドワードが吐血したため、カリンとファリスは隔離室へ運び込んだ。カリンがレドワードの血を浴びると、ファリスは慌てて部屋から飛び出した。ドアをロックした彼女はオラムに連絡を入れ、レドワードが感染症だと伝えた。
レドワードは激しい痙攣を起こし、背中を突き破ってエイリアンのネオモーフが出現した。カリンはドアを開けるよう叫ぶが、ファリスは応じなかった。ファリスは再びオラムに通信を入れ、必死に状況を伝える。ネオモーフはカリンを殺害し、隔離室を飛び出してファリスを攻撃した。パニックに陥ったファリスが銃を乱射し、ランダーに引火した。戻って来たオラムたちの眼前で、ランダーは爆発した。直後にハレットも吐血し、口を引き裂いて出現したネオモーフが草むらに姿を消した。
コヴェナント号に残ったテネシーは連絡の取れないファリスを心配するが、アップワースが軽率な行動を戒めた。ダニエルズは必死で連絡を取ろうとするが、コヴェナント号との通信は途絶えたままだった。一行はネオモーフの攻撃を受け、アンカーが死亡した。一行が何とかネオモーフを始末すると、もう1匹が襲って来た。そこへフードを被った男が現れて閃光弾を打ち上げると、ネオモーフは逃走した。その男はダニエルズたちに、付いて来るよう促した。
フードの男がダニエルズたちを案内したのは、古代の巨大神殿だった。男の正体はデヴィッドで、責任者が誰なのか尋ねた。オラムが船長だと確認したデヴィッドは、10年前にプロメテウス号で病原体が発生したこと、ショウ博士が墜落死したことを語る。さらに彼は、新たな生命の研究をしていること、病原体は動物の肉体を培養器として成長することを話す。コヴェナント号にコヴェナント号が2千人の入植者を運んでいると知ったデヴィッドは、「素晴らしい」と口にした。
テネシーはファリスと連絡が取れないことに苛立ち、アップワースの反対を無視してコヴェナント号を星へ向かわせた。デヴィッドは奥の部屋へ行き、長く伸びていた髪を切った。そこへウォルターが来ると、デヴィッドはリコーダーを渡して吹き方を教えた。彼が「君は創造することを許されていない。とても悔しいだろ」と言うと、ウォルターは「君は自分で思考し、人々を困惑させた。だから後継機種は、より単純化された」と説明した。
ダニエルズはオラムから「私の判断が間違っていた。5人も失った」と言われ、彼を元気付けた。デヴィッドはウォルターを外へ案内し、ショウの墓を見せた。プロメテウス号が星に到着した時、大勢の異星人が暮らしていた。しかし船から大量の胞子が放出されて、異星人を全滅させていた。デヴィッドはショウを愛していたと語り、それはウォルターのダニエルズの対する感情と同じだと指摘した。傷の手当てをするためダニエルズたちから離れたローゼンタールは、ネオモーフに襲われて死亡した。
コヴェナント号は星との距離が近付いたことで、探査隊と一時的に連絡を取ることが出来た。「死傷者がいる。救出を頼む」という声を聞いたテネシーは、嵐の中で救助に向かおうとする。マザーは「壊滅的システム障害を招く」と警告するが、アップワースが許可したのでコヴェナント号は降下を開始した。デヴィッドはアップワースを殺したネオモーフの元へ行き、手懐けようとする。しかしオラムが来てネオモーフを射殺し、デヴィッドに銃を向けて説明を要求した。
デヴィッドはオラムを地下のラボへ案内し、遺伝子操作を繰り返して新たな生命体を研究していたことを明かす。オラムはデヴィッドに促されてエイリアンエッグに近付き、フェイスハガーに襲われた。オラムの体内を突き破ってゼノモーフが誕生すると、デヴィッドは満足そうな様子を見せた。テネシーはダニエルズと通信して妻が死んだことを知らされるが、作業艇で救助へ向かうことを決めた。ロープとコールはオラムの捜索に向かうが、フェイスハガーとゼノモーフに襲われた…。

監督はリドリー・スコット、キャラクター創作はダン・オバノン&ロナルド・シャセット、原案はジャック・パグレン&マイケル・グリーン、脚本はジョン・ローガン&ダンテ・ハーパー、製作はデヴィッド・ガイラー&ウォルター・ヒル&リドリー・スコット&マーク・ハッファム&マイケル・シェイファー、製作協力はテレサ・ケリー&ハンナ・アイルランド、撮影はダリウス・ウォルスキー、美術はクリス・シーガーズ、編集はピエトロ・スカリア、衣装はジャンティー・イェーツ、視覚効果監修はチャーリー・ヘンリー、特殊効果監修はニール・コーボールド、音楽はジェド・カーゼル。
出演はマイケル・ファスベンダー、キャサリン・ウォーターストン、ビリー・クラダップ、ダニー・マクブライド、デミアン・ビチル、カーメン・イジョゴ、ジャシー・スモレット、キャリー・ヘルナンデス、エイミー・サイメッツ、ナサニエル・ディーン、アレクサンダー・イングランド、ベンジャミン・リグビー、ウリ・ラトゥケフ、テス・ハウブリック他。


2012年の映画『プロメテウス』の続編。
監督は前作に引き続き、リドリー・スコット。
脚本は『グラディエーター』『アビエイター』のジョン・ローガンと、これまでビデオ・ドキュメンタリーのプロダクション・スーパーバイザーとして主に活動してきたダンテ・ハーパーによる共同。
デヴィッド&ウォルターをマイケル・ファスベンダー、ダニエルズをキャサリン・ウォーターストン、オラムをビリー・クラダップ、テネシーをダニー・マクブライド、ロープをデミアン・ビチル、カリンをカーメン・イジョゴ、リックスをジャシー・スモレット、アップワースをキャリー・ヘルナンデス、ファリスをエイミー・サイメッツが演じている。

まず、『プロメテウス』の続編という時点で、企画として間違っていると言わざるを得ない。
『エイリアン』は1979年の映画だけど、内容をザックリとでも覚えている人は大勢いるはずだ。
でも『プロメテウス』は2012年の映画だけど、もはや内容はサッパリ覚えていないぞ。
ハッキリと覚えているのは、「日本語吹替版でヒロインの声を担当した剛力彩芽の評判がドイヒーだった」ってことぐらいだ。
大ヒットした映画の続編じゃなくて、酷評を浴びてコケた映画の続編として製作するって、どういうつもりなのか。

デヴィッドが登場しても、「こいつは誰だっけ」と考えてしまうぐらい、『プロメテウス』の記憶はスッポリと抜け落ちてしまっている。
なので、こいつがヒールだと判明した時も、「こいつって前作でもこんなキャラだったかな」と首をかしげてしまった。
前作の記録を確認すると、どうやら『プロメテウス』の時点でデヴィッドってクルーを利用して恐るべき計画を進めようとしていたのね。
なので整合性は取れているけど、そもそも覚えてないからね。

リドリー・スコットは、意匠の部分では『エイリアン』との整合性を完全に無視している。
その一方、なぜかアンドロイドの扱いを通じて積極的に『ブレードランナー』に寄せようとしている始末。
つまりリドリーは『エイリアン』シリーズとしての繋がりよりも、「俺の映画世界」の繋がりを重視しているんだよね。
ちなみにリドリーは『プロメテウス』から始まる3部作として構想していたが、この2作目が酷評を受けてコケたので企画は頓挫しているらしい。

『プロメテウス』は失敗作だったんだから、「無かったこと」にして『エイリアン』シリーズを作ってもいいぐらいなのだ。でもリドリー・スコットは「このシリーズは俺の物」ってことを主張したいがために、『プロメテウス』から話を繋げてしまった。
そんな本作品は神を巡る宗教的な要素が色濃く出ており、劇中では「アンドロイドが神になろうとしてエイリアンを生み出した」ってことが明らかにされる。
ようするに、これはエイリアンを矮小化してでもリドリー・スコットが神になろうとした映画なのだ。
デヴィッドがウォルターをショウの墓へ案内して「私の名はオジマンディアス。王様の中の王様」と唐突に詩を朗読するシーンなんかも、完全にリドリー・スコットの自己満足であり、自慰行為でしかないんだよね。

オラムはカリンに、会社が「信心深い人間は理性的な判断を下せない。考えが過激で異常だ」と考えて自分を信じていないと語る。
そんな奴が、なぜ重要なプロジェクトの副長を任されているのか。過激でヤバい奴だと分かっているんだから、会社はプロジェクトから彼を外すべきじゃないのか。
また、乗組員はオラムの命令に従わずジェイクを弔っているが、なぜ船長就任には誰も反対しなかったのか。
「副長が船長になるのは規定だから」ってことだとしても、誰も不満を抱かないのは何故なのか。

近くに惑星を発見した時、オラムは何の迷いもなく行き先を変更する。
乗組員も「もう睡眠装置に戻りたくない」ってことで賛同し、反対するのはダニエルズだけ。
ダニエルズは「10年掛けてオリエガ-6を見つけ、シミュレーションを重ねて地形図を作成し、訓練を重ねた。その全てを放棄し、謎の信号を追う?急に出現した星が理想的だなんて、出来すぎです」と語るが、全面的に賛同できる意見だ。
それに対するオラムの主張は、ほぼ中身が無い。

まだ乗組員だけなら、好奇心で危険な調査にチャレンジするのもいいかもしれない。
しかしオラムたちは、2千人の入植者の命を預かっているのだ。
「2千人の入植者を守るのが我々の責任です」というダニエルズの意見も、これまた全面的に賛同できる。
その責任を、オラムと乗組員は完全に放棄しているのだ。こいつらは頭が良くて経験値もあるプロ集団のはずなのに、浮かれポンチな学生ノリの連中みたいになっているのだ。

未知の惑星に降り立つ際、オラムたちは普通の服装で外へ出る。大気組成は確認しているものの、あまりにも不用意に感じる。
そもそも、防護服やガスマスクなど、危険な物質から体を守るため装備を何も持参していないしね。
そして彼らは毒やウイルスの危険性を何も考えず、色んな場所へ行って色んな物を触りまくる。
レドワードの具合が悪くなり、ようやく警戒心や危機感が生じる。でもファリスはパニックに陥って冷静な判断力を失い、血で足を滑らせるわ、ランダーを爆発させる話と、ボンクラ満開になっている。

ボンクラなのはファリスだけじゃなくて、他の面々も似たようなモンだ。
オラムは船長だが、他の面々より注意深いとか頭がキレるというわけではない。むしろ前述のように、理性的な判断を下せないボンクラだ。
こいつはデヴィッドからヤバさ爆裂の遺伝子実験をしていた施設を見せられても、まるで警戒心を持たない。そしてエイリアンエッグに顔を近付けるよう促さると、何の疑いも持たずに従う。
なのでフェイスハガーに襲われるのは、「そりゃあ、そうなるだろ」としか思えない。

かつての『エイリアン』シリーズにはリプリーという「戦うヒロイン」がいて、彼女は他の面々が呑気でも、危機感を持って慎重に行動し、周囲に警告するような役回りだった。
しかし今回は、全員が揃いも揃って不用意なのだ。
ヒロインであるダニエルズにしても、未知なる惑星へ降り立つことに関しては反対したけど、いざ到着すると他の連中と何ら変わらないボンクラっぷりを露呈する。
『13日の金曜日』シリーズでクリスタル・レイクのキャンプ場にやって来る若者グループに匹敵するぐらい、全員の行動が不用意でバカ満開になっている。
「お前らは出演作を間違えているんじゃないか」と言いたくなるぐらい、ボンクラの極みになっている。

ザックリ言うと、今回の話は「卑劣なデヴィッドがダニエルズたちを騙し、恐ろしい計画を実行に移す」という内容である。
その結果として、「本当に恐ろしいのはエイリアンではなくアンドロイドだった」ってのがメッセージとして発信される形となっている。
リドリー・スコットの関心がエイリアンよりもアンドロイドにあったのかもしれないけど、このシリーズに持ち込んじゃダメだろ。
そういうのは、『ブレードランナー』のシリーズでやってくれ。

『エイリアン』シリーズはジェームズ・キャメロンが手掛けた第2作がヒットしたが、別の監督が撮った3作目と4作目はどんどん評価を下げていった。
しかし困ったことに、1作目を撮ったリドリーが復活して手掛けた『プロメテウス』と本作品をの方が、3作目と4作目よりさらに落ちるという結果になっている。
普通はオリジネイターが復帰すれば立て直せそうなモノだけど、これは「リドリー・スコットが生みの親じゃなくて、所詮は雇われ監督だった」ってことの証明なのかもしれない。

今さらだけど、『プロメテウス』の監督からジェームズ・キャメロンが降板したのは痛かったなあ。
『エイリアン』シリーズの1作目を撮ったのはリドリー・スコットだけど、アイデアはダン・オバノンだし、ここまで続くシリーズに成長させたのはジェームズ・キャメロンの力が大きいんだよね。
っていうか、シリーズを復活させたりリブートしたりするのなら、そりゃあリドリー・スコットよりジェームズ・キャメロンの方が向いているはず。
ひょっとしたら、ジェームズ・キャメロン監督なら何らかの形でリプリー(シガニー・ウィーヴァー)を登場させたかもしれないし。
ジェームズ・キャメロンはオタク魂への理解がある人だけど、リドリー・スコットって芸術性や作家性をアピールしたがる悪癖があるんだよなあ。

そもそも『エイリアン』ってのは、純然たるSFホラー映画だったはずで。
そこに「我々はどこから来たのか」「創造主は誰なのか」という壮大なテーマを持ち込んで「重厚さのある格調高い映画」にしようと目論んでいること自体、なんか違うんじゃないかと。
しかも、そんなテーマを持ち込んでおいて、用意したのが「エイリアンを生み出したのはアンドロイドだった」という着地。
エイリアンをすっかり矮小化させてしまい、話のスケールも小さくなっているんだから、何もいいことが無いのである。

(観賞日:2019年8月28日)


2017年度 HIHOはくさいアワード:第3位

 

*ポンコツ映画愛護協会