『エイリアン4』:1997、アメリカ

冥王星の軌道付近に浮かぶ、国連医療研究用宇宙船オーリガ号。ペレズ将軍の指揮の下、200年前にエイリアン・クイーンの幼生を身篭ったまま自害したエレン・リプリーのクローンが作られようとしていた。ペレズ将軍はエイリアンの軍事利用を目論んでいたのだ。
レン博士を中心とした科学者グループは、冷凍保存されていた血液からリプリーのクローンを作り出すことに成功。生前の姿になったクローン・リプリーの腹の中から、エイリアンの幼虫チェストバスターが取り出された。クローン・リプリーは研究対象として軟禁されることになった。
貨物輸送船ベティ号がオーリガ号に到着した。ペレズの依頼した実験用の被験者を運んできたのだ。その人体にはエイリアンの卵が注入され、生まれたエイリアンは飼育されて成長する。しかしエイリアンが暴れ始め、ついに檻から逃げ出してしまう。
オリガ号の乗組員は、エイリアンによって皆殺しにされた。ベティ号の乗組員は、エイリアンに追い詰められて行き場を失う。そこへ、クローン・リプリーが姿を現した。8番目のクローンである彼女と共に、ベティ号の乗組員はエイリアンから逃げ延びようとする…。

監督はジャン=ピエール・ジュネ、キャラクター原案はダン・オバノン&ロナルド・シュゼット、脚本はジョス・ウェードン、製作はゴードン・キャロル&デヴィッド・ガイラー&ウォルター・ヒル&ビル・バダラート、共同製作はシガニー・ウィーヴァー、撮影はダリアス・コンジ、編集はハーヴ・シネイド、美術はナイジェル・フェルプス、衣装はボブ・リングウッド、エイリアン効果デザイン&創作はアレック・ギリス&トム・ウッドラフJr.、視覚効果監修はピトフ&エリック・ヘンリー、音楽はジョン・フリーゼル。
主演はシガーニー・ウィーヴァー、共演はウィノナ・ライダー、ロン・パールマン、ドミニク・ピノン、ダン・ヘダヤ、J・E・フリーマン、ブラッド・ダーリフ、レイモンド・クルツ、キム・フラワーズ、ゲイリー・ドゥアダン、リーランド・オーサー、マイケル・ウィンコット 、キャロリン・キャンベル、マーリン・ブッシュ他。


第3作目でリプリーが死んで“エイリアン”シリーズも終了かと思ったら、なんとクローンでリプリーが復活するという荒業を使って4作目に突入した。
別にリプリーが登場しなくても、4作目を作ることは可能といえば可能なのだが、シリーズも続くし、リプリーも登場し続けるという次第である。

監督はフランス人のジャン・ピエール・ジュネ。
フレンチの鉄人がハリウッドというアウェイで、自分色にエイリアンを染めようとする。もはや、このシリーズは、エイリアン・ワールドを使って様々な映画監督の腕試しをさせるという形態になったのか。

硬質で薄暗い色彩や装飾はイイ。鋭敏で大胆なカメラワークもイイ。ネバネバグチョグチョのグロテスクな部分が存分に表現されるのもイイ。
特に、失敗作である7番目までのクローン・リプリーが並ぶラボの場面などは、悪趣味が爆発していて、ちょっと嬉しくなってしまう。

ただ、世界設定に新鮮味が感じられないのは残念だ。前作から200年も経過しているのだから、もっと未来的な特徴が見られる世界を作り上げて欲しかった。
また、リプリー達が動き回る宇宙船の全体像が見えてこないのも残念。
これは見せ方の問題だろう。

主人公リプリーは冷凍保存された血液から培養されたクローンだ。
つまりリプリーであってリプリーでは無いという、アイデンティティを喪失した主人公だ。そんな彼女が自己存在の確立に苦しむ姿は、もう少しキッチリ処理してほしかった。

エイリアンはクローン・リプリーの遺伝子を持っているわけだから、つまりリプリーとエイリアンの対決は、母と子の戦いということになる。
ここでは複雑な母性愛という問題があるわけだ。
しかし、こちらもアイデンティティ問題と同じく、キッチリ処理されていない。

せっかく見た目からしてクセの強いキャラクターを多く配しているのに、その個性を全く生かし切れていない。フリークスvsエイリアンという異形の対決は、描き方によっては非常にクレイジーな面白さを生み出したように思えてならないだけに、残念だ。

ロン・パールマンは頑張ってワイルドっぷりを発揮しているが、他の登場人物は見た目ほどの面白さを発揮できず、凡庸なキャラクターとして終わっている。
ウィノナ・ライダー演じるコールにしても、重要な役割は持っているが、別に出てこなくても構わないと思える程度の活躍しかしていない。

倒錯的なエロティシズムとグロテスク趣味。
“ENR”という特殊なフィルム現像法を使用した独特の映像美。
恐怖映画としての味わいは無いが、ビジュアル的には質が高い。
ただし、シナリオは悪い意味でB級映画っぽい出来上がり。
まあ、「3作目よりは遥かにマシ」ということは断言できるのだが。


第20回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の主演女優】部門[シガーニー・ウィーヴァー]
ノミネート:【最悪の助演女優】部門[ウィノナ・ライダー]
ノミネート:【最悪の続編】部門
ノミネート:【誰も要求していなかった続編】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会