『エイリアン3』:1992、アメリカ

地球への帰途に就いたはずのスコラ号だったが、事故が発生したためにリプリー達は脱出ポッドに乗り込んだ。しかし脱出ポッドは惑星フィオリーナ161の海に激突し、リプリー以外のメンバーは全て死亡してしまった。
そこはウェイランド・ユタニ社の労働刑務所がある惑星であり、規模が縮小された後も凶悪犯25人が溶鉱炉の管理者という形で残留していた。刑務所に運び込まれたリプリーは、医療責任者クレメンスの処置もあり、負傷から回復する。
だが、所長のアンドリュースは彼女が自由に刑務所内を動き回ることを抑えようとする。全ての囚人達は宗教によって禁欲的な生活を送っており、それが乱されることを恐れたのだ。囚人のリーダー格であるディロンも同じ考えだった。
リプリーは死んだ仲間の体内にエイリアンが寄生した可能性を考え、クレメンスに解剖を依頼するが、異常は発見されなかった。しかし、エイリアンは既に刑務所内で動き始めていた。囚人達が次々と無残な死を遂げていく。
エイリアンについて説明するリプリーだが、アンドリュースは全く相手にしない。しかしクレメンスが殺され、アンドリュースも殺された。エイリアンの存在に気付いた囚人達はリプリーと共に撃退作戦を立てる。そんな中、リプリーは自分の体内にエイリアンが寄生していることを知る…。

監督はデヴィッド・フィンチャー、キャラクター原案はダン・オバノン&ロナルド・シャセット、原案はヴィンセント・ウォード、脚本はデヴィッド・ガイラー&ウォルター・ヒル&ラリー・ファーガソン、製作はゴードン・キャロル&デヴィッド・ガイラー&ウォルター・ヒル、共同製作はシガニー・ウィーバー、製作総指揮はエズラ・スワードロウ、撮影はアレックス・トムソン、編集はテリー・ローリングス、美術はノーマン・レイノルズ、衣装はデヴィッド・ペリー&ボブ・リングウッド、特殊効果監督はジョージ・ギブス、視覚効果監督はリチャード・エドランド、エイリアン特殊効果はアレック・ギリス&トム・ウッドラフJr.、特殊効果はボス・フィルム・スタジオ、音楽はエリオット・ゴールデンサール。
主演はシガニー・ウィーヴァー、共演はチャールズ・S・ダットン、チャールズ・ダンス、ポール・マッギャン、ブライアン・グローヴァー、ラルフ・ブラウン、ダニエル・ウェッブ、ランス・ヘンリクセン、ピート・ポスルスウェイト他。


当初はサイバーパンクSF作家のウィリアム・ギブソンが脚本を担当するはずであったが、諸事情によって彼が製作から外れてしまった。
やがて3人の監督と8人の脚本家(ギブソン含む)を経て生まれた最終稿は、ギブソンが執筆していたシナリオとは全く別の内容になっていたらしい。

まず脚本がエイリアンの怖さや凄味を打ち出すことを忘れ、ホラーとしてもアクションとしても情けない状態を生み出した。キャラクターも総じて特徴が薄いので、みんな同じように見えてしまう。
前半でダラダラした分、後半で巻き返すかと思ったら、後半もダラダラしてるし。

エイリアンを殺すために一つの部屋に追い込む作戦が考え出され、そのために自分たちがオトリになってエイリアンをおびき寄せる。
で、後半部分で延々と追いかけっこが展開されるが、何ともマヌケで緊張感に欠ける。いったい何がやりたいんだか。

リプリーがエイリアンに寄生されていることは、このシリーズを見ている人なら序盤で気付く。で、寄生されているはずなのに、どうして長い間、元気に動き続けることが出来るのだろうか。寄生されてからエイリアンが生まれてくるまでの期間って、もっと早かったような気がするんだけど。

アンドリュースの言葉を無視し、勝手に刑務所内を動き回るリプリー。どうして彼女がわざわざ囚人を挑発するような行動を取るのか、さっぱり分からない。
リプリーがクレメンスとセックスしたがる理由も不明。単に性欲が溜まっていたということなのか。

囚人達の禁欲を「宗教」というキーワードだけで済ませるのだが、その宗教についての詳しい説明は無い。
凶悪犯が全て同じ宗教を信奉するようになるってのは不自然なんだから、それを隠すために怪しげな宗教としての演出を入れた方が良かったように思える。

アーティスティックな面白さはある(シャッターに漢字で「鉄」と書いてあるのは苦笑ものだが)。しかし、舞台美術にエイリアンが負けている。エイリアンではなく、敵が人間だったら怖かったのかも。
ある意味、エイリアンよりシガニー・ウィーバーの方が怖いと感じてしまった。

 

*ポンコツ映画愛護協会