『アルフィー』:2004、イギリス&アメリカ

イギリス生まれのアルフィーは、成功を掴んで世界中の美女と知り合うため、マンハッタンにやって来た。プレイボーイのアルフィーは、 どんな女性に対しても褒めることを忘れない。隣に住む小太りの中年女性ルー・シニットマンも、彼から褒められ、いい気分になる。 アルフィーにとって女性は楽しみのオプションであり、一人と付き合って結婚するようなことは全く念頭に無い。リムジンの運転手をして いる彼は、夫と半年もセックスレスだという人妻のドリーと車内で関係を持つ。ドリーとは何度もセックスしているが、彼女が今より深い 関係を求めてくる様子が見えたので、距離を置いた方がいいだろうとアルフィーは考える。
アルフィーはドリーを送った後、夜中にシングルマザーのジュリーが暮らす家へと赴いた。ジュリーが自分との結婚を望んでいると知って いるが、アルフィーは縛られたくない。ジュリーは長い付き合いだし、最高の女だと思っているが、それとは話が別だ。翌日、アルフィー は落ち込んでいる親友のマーロンを慰める。マーロンは恋人のロネットにフラれ、謝ったが許してもらえなかったという。アルフィーは マローンと金を溜め、いずれはウィンが営むリムジンの会社を買い取ろうと考えている。
アルフィーはマローンと一緒にロネットの働くクラブを訪れ、ビジネスの話をする。そこへ1人の女が来て挨拶するが、アルフィーは全く 思い出せない。「キャロルよ」と彼女が言うので、アルフィーは「ああ、キャロルか」と笑顔を取り繕った。アルフィーはジュリーの家に 行くが、ドアを開けてもらえず追い帰される。閉店後、アルフィーはロネットと2人になり、マローンとの関係修復を促す。だが、酒を 飲んで一緒にビリヤードを楽しんだアルフィーは、ロネットと関係を持った。
翌朝、マーロンから話し掛けられたアルフィーは、さすがに気まずくて彼を避けようとする。昨夜の出来事について問われたアルフィーは 、「飲みすぎて覚えてない」と嘘をつく。ところが、マローンはロネットから許してもらい、しかも結婚を決めていた。アルフィーは ジュリーの息子マックスへのプレゼントを購入し、2人の元へ行こうとする。だが、ジュリーは他の男や子供たちと一緒に、レストランで 盛り上がっていた。その様子を目撃したアルフィーは、店に入らずに立ち去った。
それが原因なのか、アルフィーはインポテンツになってしまった。彼はクラブでナンパした女性2人とセックスしようとするが、やはり 勃起しなかった。遊び相手の1人であるクラブ店員のユタからも、勃起障害のせいで冷たくされてしまう。アルフィーは病院へ行き、女性 のような名を持つ男性医師のミランダ・クルプに診察してもらう。ストレスについて訊かれたアルフィーは、ジュリーに「もう貴方とは 会わない。求める物が違う」と別れを告げられたことを思い出した。
クルプからペニスに腫瘍があると指摘され、組織検査を終えたアルフィーがアパートへ戻ると、ロネットが待っていた。彼女から妊娠を 告げられたアルフィーは、顔を引きつらせる。アルフィーは中絶するロネットを産婦人科まで送っていく。組織検査の結果を聞くために 病院を訪れたアルフィーは、トイレでジョーという老人に話し掛けられる。彼は亡くなった妻のことを語り、「愛する人を見つけ、いつも 今日が最後だと思って楽しめ」とアドバイスを送る。ジョーは「話し相手が欲しかったら連絡しろ」と名刺を渡して去った。
検査の結果は陰性で、アルフィーは女遊びへの気力が一気に回復した。彼はリムジンに乗せた美容界の大物リズに狙いを定め、それとなく アプローチしてみると、悪くない反応だった。アルフィーが会社に戻ると、マローンが手紙を残して辞めていた。アルフィーとの共同事業 よりも、ロネットと幸せに暮らすことを選んで引っ越したのだ。クリスマス・イヴの夜、仕事に出たアルフィーは酔っ払った若者たちから 停車を求められる。断ろうとしたアルフィーだが、その中にいたニッキーという女性が気に入ったので、全員を乗せてやった。アルフィー はニッキーからパーティーに誘われ、彼女と一緒に楽しんだ。
アルフィーはニッキーを口説いて関係を持ち、同棲を始める。すっかりニッキーの虜になったアルフィーだが、ニューイヤー・パーティー で泥酔した彼女のバカ笑いで、その気持ちは急激に冷めた。それ以来、些細な揉め事が絶えなくなり、アルフィーは情緒不安定なニッキー に振り回される。ニッキーは薬物にも手を出していたが、それでもアルフィーは同棲生活を続ける。その一方で、アルフィーはリズを 口説き落として関係を持った。
アパートに戻ったアルフィーは、ニッキーに別れを切り出そうとする。それを察したニッキーは、目を潤ませながら荷物をまとめて部屋を 出て行った。レストランでジュリーを見掛けたアルフィーは、彼女とヨリを戻そうと考える。だが、ジュリーは新しい恋人のアダムを アルフィーに紹介した。アルフィーはショックを受けながらも、明るく振る舞った。アルフィーはウィンに車を借り、マーロンとロネット が住む家を訪れた。マーロンは不在だった。赤ん坊の泣き声を聞いたアルフィーは、ロネットが出産していたと知って驚いた。赤ん坊を 見たアルフィーは、さらに衝撃を受けた。それは明らかに、マーロンではなく自分の子供だったからだ…。

監督はチャールズ・シャイア、原作戯曲はビル・ノートン、オリジナル脚本はビル・ノートン、脚本はエレイン・ポープ&チャールズ・ シャイア、製作はチャールズ・シャイア&エレイン・ポープ、製作総指揮はダイアナ・フィリップス&ショーン・ダニエル、撮影は アシュレイ・ロウ、編集はパドレイク・マッキンリー、美術はソフィー・ベッチャー、衣装はベアトリス・アルナ・パッツアー、 オリジナル・ソング歌唱はミック・ジャガー&、音楽はミック・ジャガー&デヴィッド・A・スチュワート&ジョン・パウエル、 音楽製作総指揮はデヴィッド・A・スチュワート&ミック・ジャガー。
出演はジュード・ロウ、マリサ・トメイ、スーザン・サランドン、オマー・エップス、ニア・ロング、ジェーン・クラコウスキー、シエナ ・ミラー、ルネ・テイラー、ディック・ラテッサ、ジェファーソン・メイズ、ゲディー・ワタナベ、 タラ・サマーズ、ケヴィン・ラーム、キャサリン・ラナサ、スティーヴン・ギャガン、ポール・ブルック、マックス・モリス、 アヌーシュカ・デ・ジョルジオ、、アナスタシア・グリフィス、グレイドン・カーター、ソンドラ・ジェームズ、ギル・ウィリアムズ、 ヴェロニカ・クリフォード、サイダー・アーリカ・エクローナ、ジョー・ヤン、デボラ・リン=シャイアー他。


人気の舞台劇を基にして1966年に製作された同名映画のリメイク。
1966年版でマイケル・ケインが演じたアルフィーを、今回はジュード・ロウが演じている。
監督は『花嫁のパパ』『アイ・ラブ・トラブル』のチャールズ・シャイア。
ジュリーをマリサ・トメイ、リズをスーザン・サランドン、マーロンをオマー・エップス、ロネットをニア・ロング、ドリーをジェーン・ クラコウスキー、ニッキーをシエナ・ミラー、シニットマンをルネ・テイラー、ジョーをディック・ラテッサ、クルプをジェファーソン・ メイズ、ウィンをゲディー・ワタナベが演じている。
オリジナル版はロンドンが舞台だったが、今回はニューヨークに変更されている。

ひょっとするとオリジナル版の『アルフィー』は、1966年という時代だったからこそ観客に受けたのではないだろうか。
つまり、流行歌ならぬ、流行映画だったのではないだろうか。
アルフィーのキャラクターは、当時としては最先端を行っていたのかもしれない。
主人公がカメラに向かって(つまり観客に向かって)語り掛けるという手法は、当時としては斬新だったのかもしれない。
しかし2004年という時代においては、もはや目新しさなど何も感じないモノになっている。

リメイクする際に、アルフィーのキャラクター造形やストーリー展開などに手を加え、現代的にアレンジするという考え方もあっただろう 。
しかし本作品は、時代設定こそ2004年になっているが、時代の移り変わりに合わせて改変しているようには感じられない。むしろ、1966年 という時代を思わせるノスタルジーの中で作業をしているんじゃないかとさえ感じられる。
時代が変化しても変わらないモノだって、世の中には幾らだってある。
しかし本作品の場合、オリジナル版が「時代に影響されない普遍的な魅力を持った作品」なのかどうかを考えた時に、ちょっと違うんじゃ ないかと思えるのだ。

とは言え、では2004年という時代に合わせてアルフィーのキャラクター造形やストーリー展開を変更したら良かったのかというと、そこが 難しいところなのだ。
そこに手を加えて作り変えてしまったら、それはもはや『アルフィー』とは呼べないシロモノになるような気がする。
アルフィーのキャラクターを変えてしまうぐらいなら、現代版の『アルフィー』というイメージで、リメイクではないオリジナル作品を 企画した方がいいんじゃないかと思うのだ。
そういうことを考えるにつれ、そもそも『アルフィー』をリメイクしようという企画の段階で、失敗だったのではないかと思えてきた。

アルフィーのように、オシャレに気を遣って、口が上手くて、責任を負うことは嫌い、複数の女性たちと遊び感覚で付き合うけれど、でも 女性たちを邪険に扱うわけではなく、手厚いサービス精神で接し、邪魔になっても冷たくするわけでもなく、徹底して優しくするという男 は、2004年という時代には、そう珍しい人種ではない。
っていうか、まんま一流のホストだよね。
だから、結構見慣れてるのよ。いや、私の身の周りにホストがいるわけじゃないけど、ドラマだったり、ドキュメンタリー系の番組 だったりで、ホストについては広く知られているでしょ。
そういう形で得た情報があるので、アルフィーって一流のホストと同質のモノを感じる。
ただし、ホストみたいに多くの金品を貰っているわけじゃないから、むしろ女性からするとホストより嬉しい存在でしょ。まあロネットと 避妊もせずに関係を持ったのは、完全にアウトだけど。

アルフィーは女性に対して手厚いサービス精神を発揮しているし、ある意味では「いい奴」だ。
色んな女と遊びまくっているプレイボーイだけど、女性にとって「都合のいい男」とも言えるしね。
本気でメロメロになっちゃう女からすると「自分だけを見てくれない男」だけど、いい男と遊びたいと思っている女からすれば、何も要求 せず、一緒にいる間は優しく接してくれて、楽しい時間を与えてくれるわけだから、こんなに都合のいい男はいないでしょ。

ただし、アルフィーはプレイボーイにも関わらず不愉快な印象は少ないけど、かなり軽薄な男にしか見えない。
で、「そんな軽薄な男が、色んな女と次々に関係を持つ」という軽薄な話を、ずっと見せられているように感じられてしまう。
コメディーとして笑えるわけではないから(そもそもコメディーとして作られているわけじゃないし)、そこにドラマとしての面白さを 見出そうとするのだが、特にこれといって見つからない。
だから観賞中のストレスは少ないが、良い意味で後に残る物も無い。

アルフィーがジュリーに新しい恋人がいるのを知ってショックを受けても、ロネットの赤ん坊を見てショックを受けても、マーロンに 謝って去った後に涙をこぼしても、リズが若いツバメと楽しんでいるのを見てショックを受けても、これっぽっちも同情心が沸かないし、 共感も出来ない。
全ては自業自得だしね。
まあ自業自得であっても、上手く描いていれば同情心が沸いたのかもしれんけど、ちっとも沸かないんだから、そういうことだよ。
あと、「自由気ままに女遊びを楽しんでいたアルフィーだが、全ての女に捨てられ、心が空っぽになりました」という着地になるんだけど 、そこから伝わって来るべき彼の寂しさや悲哀も弱いし。

ジュリーの扱いが弱いのも、ちょっと引っ掛かるんだよなあ。
アルフィーが関係を持つ女性の中で、彼女は特に長く交際しており、結婚への願望をハッキリと口に出す唯一の相手だ。それが原因で 別れたアルフィーだが、安らぎを求めてジュリーと元サヤに戻りたいと考える。
そんな流れがあるのだから、「ジュリーの新恋人を知ってショックを受ける」というところで、アルフィーが自由気ままな生活の代償を 痛感させられるという着地になるべきじゃないかと思うのよ。
ところが実際には、ジュリーの新恋人を知るのは通過点に過ぎず、その後に用意されている「ロネットの赤ん坊を見る」&「マーロンと 話す」という出来事の方が、アルフィーの心に強い衝撃を与えているのだ。
そりゃあ当然っちゃあ当然なんだけど、そもそもロネットと関係を持ち、彼女がアルフィーの子供を出産するという展開そのものが、 あまりにもシリアスになりすぎていることも含めて、要らないんじゃないかと思ったりするのだが。

(観賞日:2013年3月29日)


第27回スティンカーズ最悪映画賞(2004年)

ノミネート:【最も嬉しくないリメイク】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会