『エアポート'80』:1979、アメリカ

パリを飛び立ったコンコルド208は、ワシントンのダレス空港へと向かっていた。フランス人機長のポール・メトランは、客室乗務員の イザベルに声を掛けた。かつて2人は恋人同士で、ポールは久しぶりにイザベルと再会したのだ。ダレス空港に着陸しようとした時、過激 な環境保護団体の気球が滑走路で妨害した。慌ててポールは回避し、妨害した面々は逮捕された。
夜のニュースでは、キャスターのマギー・ウィーランがコンコルド到着を伝えている。コンコルドは航空会社のFWAが購入したもので、 プレ・オリンピックの親善飛行として、翌日にパリ経由でモスクワへ行くことになっている。続いてマギーは、ハリソン産業が高度の軍事 機密計画を発表したニュースを伝えた。軍需企業であるハリソン産業は、コンピュータ誘導のミサイル“バザード”を開発してテスト中だ。 バザードはアメリカ空軍の最新兵器で、音速の2倍に達する。
次にマギーは、親善訪問中のソ連体操チームがメリーランド大学の体育館に現れたことを報じた。取材に行っているロバート・パーマーは 、金メダリストのアリシアと交際していた。FWAの熟練機長ジョー・パトローニは、翌日のフライトをポールと共に担当するため、空港 へやって来た。ポールはホテルの部屋にイザベルを呼び、ヨリを戻してベッドを共にした。
マギーの自宅に、ハリソン産業の販売副部長カール・パーカーが現れた。カールはマギーに、ハリソン産業が長年に渡って武器の違法な 輸出を続けてきた事実を明かした。信じないマギーに、カールは「証拠書類が別の場所にある。鍵は妻に預けてある」と告げる。そこへ 殺し屋が現れ、カールを射殺した。マギーは慌てて逃げ出し、屋根に上った。たまたま通り掛かった婦人が火災警報器を鳴らしたため、 殺し屋は逃亡した。
翌朝、マギーは恋人であるハリソンに会い、「貴方は違法なことをやっていたの?」と尋ねた。ハリソンは否定し、「社内に自分を強請る 連中がいる」と告げた。マギーは話を信用したが、ハリソンの言葉は嘘だった。彼は設計主任のウィリー・ハルパーンと会い、書類が回収 できなかったことを語った。ハリソンはウィリーに、テスト・プログラムの変更を依頼した。
体操チームのコーチを務めるマーコフは、聾唖の娘イリーナや選手たちと共にバスに乗り込み、コンコルドに乗るため空港へ向かった。 ハリソンはコンコルドに乗り込むマギーを見送るため、空港に現れた。ハリソンはマギーが書類を持っていないと確認し、搭乗口へ向かう 彼女を見送った。だが、カールの妻が直前に荷物を渡し、そのままマギーは飛行機に乗り込んだ。マギーが荷物の中にある証拠書類を チェックしている様子を、ハリソンはロビーから冷徹な表情で見つめていた。
マギーとロバート、ソ連の体操選手チーム、歌手グレッチェンや同行のサックス奏者ボイジー、息子の移植手術に立ち会う母親エレインと 移植用心臓を運ぶ医師ストーン、トイレが近い婦人ロレッタ、FWAの社長イーライ・サンズと4番目の妻エイミーら、乗客が乗り込んだ。 コクピットには、ポールとパトローニ、そして機関士ピーター・オニールが乗り込んだ。
マギーはコクピットで顔馴染みのパトローニに挨拶し、電話を借りた。彼女はハリソンに電話を掛け、「テレビ局に全て明かすつもり」と 告げた。コンコルドが離陸した後、ハリソンはハザードのテストに立ち会った。ウィリーはトラブルに見せ掛け、ハザードにコンコルドを 狙わせた。操縦桿を握るパトローニは、コンコルドを巧みに操縦してハザードを避けた。アメリカ空軍のF-15戦闘機によって、ハザードは 撃墜された。
ハリソンはパリにいる腹心ロベールに連絡を取り、事情を伝えた。ハリソンは自家用飛行機を飛ばし、パリへ向かう。ロベールは戦闘機 スカイホークを出撃させ、コンコルドを狙った。ポールはコンコルドを操縦し、攻撃を回避する。パトローニは照明弾を発射して熱源を別 の場所に作り、そちらにスカイホークのミサイルを被弾させた。
ポールは熱源となるエンジンを切ることで、残る2発のミサイルの被弾を防いだ。スカイホークはフランス空軍の戦闘機に撃墜された。 コンコルドが再びエンジンに点火しようとすると、全く反応が無い。何とか第一エンジンが点火し、続いて別のエンジンも点火した。 しかしコンコルドには、ブレーキの故障という問題も発生していた。バリアーネットと緊急ブレーキを使用することで、コンコルドは無事 に空港へと着陸することが出来た。
パリで手術があるため、エレインとストーンは病院へ急いだ。それ以外の乗客は、翌日のモスクワ行きに向けて宿泊することになった。 マギーとハリソンと会い、「モスクワに到着したら書類のことを放送する」と告げた。ロベールは整備士フロリッヒに命じ、コンコルドに 細工させた。離陸してから荷物室のドアが開き、気圧の変化によって飛行機が崩壊する仕掛けだ。
翌日、細工のことなど知らないまま、乗客と乗員はコンコルドに乗り込んだ。ハリソンはロベールから策略が上手く行ったことを聞き、 自家用飛行機でアメリカへ戻る。フロリッヒはロベールから金を受け取り、海外へ脱出しようとする。だが、空港警備員に呼び止められ、 動揺して逃げ出した。警備員に追われたフロリッヒは、離陸するコンコルドの近くを横切って倒れ込んだ。
荷物室のドアが開き、客席の床には少しずつ亀裂が生じていく。何人かの乗客は、飛行機の異変に気付いた。しかし生命の危機が迫って いることには、なかなか気付かない。ポールとパトローニは、どこかでドアの開くような音を耳にした。確認に行こうとしたポールは、 床の亀裂を発見した。このままフライトを続ければ機体は空中分解するが、モスクワまで到達することは不可能だった。そこでポールと パトローニは、インスブルック近郊の雪原にコンコルドを不時着させることにした…。

監督はデヴィッド・ローウェル・リッチ、原案&製作はジェニングス・ラング、脚本はエリック・ロス、撮影はフィリップ・ラスロップ、 編集はドロシー・スペンサー、美術はヘンリー・バムステッド、音楽はラロ・シフリン。
出演はアラン・ドロン、スーザン・ブレイクリー、ロバート・ワグナー、シルヴィア・クリステル、ジョージ・ケネディー、エディー・ アルバート、ビビ・アンデショーン、キャロ、ジョン・デヴィッドソン、アンドレア・マルコヴィッチ、マーシャ・レイ、シシリー・ タイソン、デヴィッド・ワーナー、マーセデス・マッケンブリッジ、エイヴリー・シュレイバー、シビル・ダニング、モニカ・ルイス、 ニコラス・コスター、ロビン・ガメル他。


“エアポート”シリーズの第4作にして最終作。
ジョージ・ケネディー演じるパトローニというキャラクターは、シリーズ全作品に登場する。彼は第1作『大空港』で航空会社の保安係 主任、『エアポート’75』では副社長、『エアポート’77 バミューダからの脱出』ではジャンボ機製造会社の責任者という職業 だったが、最終作ではついにパイロットになった。
ポールをアラン・ドロン、マギーをスーザン・ブレイクリー、ハリソンをロバート・ワグナー、イザベルをシルヴィア・クリステル、 イーライをエディー・アルバート、フランス人売春婦フランシーヌをビビ・アンデショーン、チワワを持ち込もうとする婦人マルガリータ をキャロ、ロバートをジョン・デヴィッドソン、アリシアをアンドレア・マルコヴィッチ、ロレッタをマーシャ・レイ、ボイジーを シシリー・タイソン、ピーターをデヴィッド・ワーナーが演じている。

このシリーズは、ハリウッドの往年の盟友を揃えたオールスター映画になっていた。
しかし今回は往年の名優も底を付いたのか、それともオファーを受けてくれる人が少なかったのか、世界各国から役者を集めている。
ハリウッド映画なのに、主演をフランス人のアラン・ドロン、その恋人をシルヴィア・クリステルが演じているんだもんな。
他にもスウェーデンのビビ・アンデショーン、スペイン人歌手のキャロと国際色豊かになっているが、これはアメリカ市場より世界市場 での稼ぎを狙っての配役なのだろうか。

冒頭、ダレス空港へ向かうコンコルドのコックピットからポールが客席へ向かう時、ずっとドアは開けっ放し。
で、コックピットに戻り、離陸準備に入る。この時は、ドアが閉まっている。
しかし気球の妨害があるので右に機体を傾けると、ドアがパタンと開く。
つまり、ちゃんと閉まってなかったわけね。
まだ乗客を乗せていないとは言え、そんなルーズな感じでいいのかよ。

マギーの家に現れた殺し屋は、わざわざカールに呼び掛けてから狙撃するもんだから、その間にマギーに逃げられる。
いきなり射殺しておけば、逃げられずに済んだだろうに。
翌日、マギーはカールの死に涙しながら、ハリソンに「違法なことをやっていたの?」と聞く。
でもさ、カールが殺し屋に殺されているんだから、その時点で「ハリソンがやらせたんじゃないか」と怪しめよ。よく危機感を抱かず、 平然と会えたな。
キャスターにしては洞察力が乏しいが、「愛は盲目だから」というのが言い訳なのか。

マギーはハリソンに電話を掛け、「全て明かすつもり」と宣告する。
そんなこと、わざわざ言わない方がいいだろうに。
向こうから連絡があったのならまだしも、自分から連絡して宣言するかね。
パリでハリソンに会うのも阿呆としか思えない。既にハリソンを信用していないのに、わざわざ「モスクワで放送する」と言い放って いる。
ハリソンを信用していないのなら、もうそろそろ「自分もカールと同じように始末されるかもしれない」と気付けよ。

ハリソンはコンコルドをハザードで撃墜しようとするのだが、それで証拠は隠滅できるかもしれんが、ハリソン産業はオシマイじゃないの。
幾らトラブル発生に見せ掛けても、それでコンコルドを撃墜しているわけだから、会社の信用はゼロで大打撃でしょ。
ハザードによる撃墜が失敗に終わった後、ハリソンは次に戦闘機による撃墜を狙う。
いやいや、もう国家レベルの問題になるぞ。証拠は破棄できても、もっとヤバいことになるぞ。
コンコルドを撃墜したら国家機関の調査が入るのは必至で、また別の危険があるでしょ。そこまでリスクを負って、証拠隠滅のために コンコルドを狙うかね。それより、パリでコンコルドから降りたマギーをどこかで捕まえ、始末した方がいいんじゃないの。
で、パリでハリソンはマギーと会ってるのよね。だったら、その時に行動を起こせよ。なぜ、そこは何もせず帰らせるのよ。

マギーが伝えるニュースの中で、ハザードはテスト用のダミー戦闘機を撃墜し、「コンピュータ誘導で命中率は100パーセントに近い」と 報じられている。
ところが、パトローニによって回避されてしまう。
戦闘機を撃墜するためのミサイルなのに、民間機も撃ち落とせないようではダメだろ。
で、F-15戦闘機がハザードを撃ち落とす際、ポールが「この距離だと巻き込まれそうだ」と言っているが、コンコルドには何の影響も 出ない。
どうなっているんだ。

スカイホークに襲われた時、パトローニは平然とコックピットの窓を開けて信号弾を撃つ。
それもスゴいんだが、その後、2発目を撃とうとして誤ってコックピット内で暴発し、慌てて消化するという展開には、たまげた。
そのタイミングで、そんなショボいパニックを起こすセンスって何なのよ。
その後、ポールは一度切ったエンジンを点火しようとするが、動かない。
ミサイルに被弾したわけでもないのに、なぜ故障するのよ。
さらにブレーキも故障しているけど、えらくボロいんだな、コンコルドって。

ミサイルを回避するためのアクロバット飛行で激しく機体が動いたのに、その後、乗客は騒ぐことも抗議することも無く、平穏に乗って いる。
物分かりのいい客ばかりだな。
その後、今度は国籍不明の戦闘機に狙われているのに、翌日になると、また呑気な様子でコンコルドに乗り込むし。
あんなに怖い目に遭ったのに、なんて物分かりがいいんだ。
もしくは底抜けの阿呆ばかりなのか。

ポールもパトローニも、コンコルドが狙われたことに何の危機感も感じていない。ポールはイザベルと寝ることしか考えていないし、 パトローニも似たようなモンだが、もっと何も考えていない。
コンコルドが狙われたことを重く受け止めたり、調査しようとする者は皆無。
国籍不明の戦闘機がコンコルドを襲ったのに、国家組織や警察機関が動き出している気配も無い。

ハリソンの3つ目の計画は、整備士がコンコルドに細工を施し、翌日のフライトで空中分解させるというもの。
で、少しずつ機体に亀裂が生じていくんだが、荷物室のドアが開いただけで、そんな風になっちゃうのかよ。
最終的に不時着して脱出し、直後に機体は爆発するが、確かロベールが「爆弾だと失敗の危険性があるからドアの細工にした」と言ってた はず。
なぜ爆発するのよ。

アメリカ人記者とソ連の体操選手のロマンスとか、帰郷する歌手とか、聾唖の少女と父親とか、そういったキャラ設定の全ては、パニック において何の意味も持たない。
物語に厚みを加えるわけでもなく、その設定がスリルを増す仕掛けになったり、特技を活かして活躍したりすることも無い。
ポールとイザベルのロマンスでさえ、何の意味も持たないものと化している。

ジェニングス・ラングは2作目と3作目の失敗に懲りていなかったのか、失敗したことを理解していなかったのか、この4作目を作って しまった。
「今度こそ当てよう」という負けが込んでいるギャンブラーみたいな気持ちになっていたのか、気合を入れて原案まで担当して いる。
「パニックシーンを増やせば客に受けるだろ」と安易に考えたのかもしれんが、パニックシーンの多さがスリルや迫力ではなく、 安っぽさ、陳腐さにしか繋がっていない。
畳み掛けているわけでもないしね。

(観賞日:2008年11月19日)


第2回スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:作品賞


1979年スティンカーズ最悪映画賞

受賞:【最悪の続編】部門
受賞:【チンケな“特別の”特殊効果】部門

ノミネート:【最悪の作品】部門
ノミネート:【最悪の演出センス】部門[デヴィッド・ローウェル・リッチ]
ノミネート:【最悪の脚本】部門
ノミネート:【最も苛立たしいグループ】部門[迷惑な乗客]

 

*ポンコツ映画愛護協会