『エアポート’77 バミューダからの脱出』:1977、アメリカ
大富豪フィリップ・スティーヴンスが、豪邸を美術館にすると発表した。彼は所有する自家用ジャンボ機に美術品のコレクションを積み込み、オープニング・セレモニーに招待した客をパーム・ビーチまで送迎することにした。ジャンボ機の機長はドン・ギャラガーで、彼の恋人イヴ・クレイトン、ジャンボ機の設計者スタン・バチェックも乗り込んだ。
他にも、金融業を営むニコラス・セント・ダウンズ三世、富豪のエミリー・リヴィングストンとメイドのドロシー、海洋学者マーティン・ウォレスと妻カレン、フィリップの娘リサと彼女の息子ベンジーなど、多くの招待客がジャンボ機に乗り込んだ。
美術品を狙う連中が、副操縦士やアシスタント・パーサーなどのスタッフとして、機内に乗り込んでいた。彼らはガスで乗務員と乗客を眠らせ、バミューダ海域の無人島へ向かう。そこで乗客を降ろし、美術品を持って南米へ逃げるつもりなのだ。
しかし、トラブルが発生し、ジャンボ機は海へと不時着する。衝撃で乗務員と乗客は目を覚ましたが、ジャンボ機は海中に沈んで行く。ギャラガーは犯人グループの中で唯一生き残った副操縦士から話を聞き、コースから300キロも離れていることを知る。
ジャンボ機が行方不明になったことから、海軍と沿岸警備隊による捜索が開始された。コントロール・センターでには、ジャンボ機製造会社の責任者ジョー・パトローニが駆け付けた。一方、ギャラガーは救命ボートを海上に出して、救難信号を送ろうとする…。監督はジェリー・ジェームソン、原案はH・A・L・クレイグ&チャールズ・クエンストル、脚本はマイケル・シェッフ&デヴィッド・スペクター、製作はウィリアム・フライ、製作総指揮はジェニングス・ラング、撮影はフィリップ・ラスロップ、編集はロバート・ワッツ&J・テリー・ウィリアムズ、美術はジョージ・C・ウェブ、衣装はエディス・ヘッド、音楽はジョン・カカヴァス。
出演はジャック・レモン、リー・グラント、ブレンダ・ヴァッカロ、ジョセフ・コットン、オリヴィア・デ・ハヴィランド、ジェームズ・スチュワート、ジョージ・ケネディー、ダーレン・マクギャヴィン、クリストファー・リー、ロバート・フォックスワース、ロバート・フックス、モンテ・マーカム、キャスリーン・クインラン、ギル・ジェラード、ジェームズ・ブース、モニカ・ルイス、メイディー・ノーマン、パメラ・ベルウッド、アーレン・ゴロンカ、トム・サリヴァン他。
『大空港』『エアポート’75』に続くシリーズ第3弾。パトローニを演じるジョージ・ケネディーは、前2作に続いての登場となる。他にギャラガーをジャック・レモン、カレンをリー・グラント、イヴをブレンダ・ヴァッカロ、ニコラスをジョセフ・コットンが演じている。
とにかく、登場する俳優の顔触れが、この映画の最大の(そして唯一の)セールスポイントだと言っていい。前述の面々に加えて、エミリー役のオリヴィア・デ・ハヴィランド、スティーヴンス役のジェームズ・スチュワート、バチェック役のダーレン・マクギャヴィン、ウォレス役のクリストファー・リーなど。
確かに、名前だけ見ると豪華である。ただし、豪華なのは間違い無いし、オールスター・キャストと言えなくも無いのだが、かつてハリウッド映画で主演を張っていたような人々ばかりだ。つまり、往年の名優ばかりを集めているのだ。バリバリの現役トップ俳優が主演し、スペシャルゲストとして過去のスター俳優が出演するわけではない。ほとんどが、往年のトップスター達なのだ。
そんなわけだから、出てくるのは、やたら年寄りが多い。そんな爺ちゃん婆ちゃんに、スピーディーで迫力のあるアクションを期待しても無駄だ。だから、モタモタした展開になるのも仕方が無い。いや、しかし、問題はそれだけではない。シナリオと演出が緩いので、例え現役バリバリの俳優を揃えても、それほど大差は無かったと思われる。序盤でキャラクターや人間関係を説明した後、ハイジャックに入る。犯人グループ、乗務員を気絶させようとしたら強く殴りすぎて殺してしまうという、マヌケな様子を見せる。犯人から病人がいると連絡を受け、ノコノコとコクピットを離れるギャラガーもマヌケっぽい。いや、病人が出たら問題かもしれんが、それって機長のアンタが行くことかねえ。
この映画、設定がアンビリーバボーだ。「ジャンボ機が海に墜落して、そのまま機体が大きく破損することも無く、浸水するだけで済みました」って、ものすごくラッキー。普通、真っ二つに機体が割れるとか、もっと大きな惨事になっているだろう。
機体が無事なのだから、もちろん乗客と乗務員も、ほとんどが助かっている。しかし、犯人グループは1人を残して死亡。墜落してから、どうやって犯人達が絡んでくるのかと思ったら、あっさり御陀仏。残った1人も、話に絡んでくるようなことはナッシング。シリーズも3作目ということで、「また空の上ではマンネリだよなあ」と思ったのだろう。今回は、飛行機を海に沈めている。『ポセイドン・アドベンチャー』のような話にしたかったのだろうか。しかし、海に沈めた時点で、飛行機を舞台にした意味が無いような気もしたりして。
そうそう、ちなみに、バミューダ海域に落ちた意味は特に無い。潜水艦なら、脱出のために艦内を動くということで、話を展開させることが出来るだろう。しかし、何しろ飛行機って、そんなに動き回るほどの場所も無いし、移動した所で何が出来るわけでもない。だから、救命ボートを外に出すぐらいで、後は救助が到着するのを待つだけ。それまでは、ひたすらボーッとしていることしか出来ない。
で、ボーッとしている間は、機内にいる連中の陰気な人間ドラマでも描くしかない。ここで中心になるのは、ギャーギャーとワガママに振る舞って邪魔をするオバチャンのカレン。しまいにはドアを開けようとするんだから、困ったものだ。で、彼女以外は、ほとんど目立たず。序盤で描いたキャラ設定や相関関係は、ほとんど生かされず。沿岸警備隊がジャンボ機を発見した後は、海軍の出番となる。スティーヴンスやパトローニは、デクノボーとしてボーッとしているだけ。スティーヴンスが人命より美術品を優先しようとするようなキャラなら、救助チームとの確執のドラマを作れる可能性もあるんだろうが、そんな役をジェームズ・スチュワートに演じさせるはずがない。
で、機内の人間も、救助されるのをボーッと待っているだけ。後は、海軍の活躍が描かれる。この救助チームの責任者に主要キャラの1人がいるべきだと思うのだが、そういうことは無い。
で、浸水はするものの、意外にあっさりと救助に成功し、映画は終わる。