『エアフォース・ワン』:1997、アメリカ&ドイツ

アメリカ合衆国とロシアとの共同作戦により、カザフスタンの軍事政権指導者イワン・ラデク将軍が逮捕された。新生ロシアのイワン・ぺトロフ大統領による協力要請を受け、アメリカ合衆国大統領ジェームズ・マーシャルが送った特殊部隊の活躍も大きかった。
マーシャルはモスクワのクレムリンでの公式レセプションで「我々はいかなる状況においてもテロリズムに屈しない」と演説し、喝采を浴びる。彼は公務を終え、大統領専用機“エアフォース・ワン”で帰路に就くことにした。妻グレースや12才の娘アリスも一緒だ。
エアフォース・ワンには大統領一行の他、取材のために6人のロシアのテレビ・クルーも同乗。しかし離陸した機内で彼らは行動に出る。実は彼らはラデクを信奉するテロリスト達だったのだ。コルシュノフをリーダーとする彼らは、機内に装備された武器でエアフォース・ワンを占拠する。
最も重要なのは、大統領の安全を確保すること。シークレットサービスはカプセルで大統領を脱出させる。一方、大統領を除く全員を人質にしたコルシュノフはホワイトハウスに連絡し、ラデク将軍の釈放を要求。それが出来なければ30分ごとに一人づつ人質を処刑すると脅迫する。
ホワイトハウスでは副大統領キャサリン・べネットを中心として緊急会議が開かれる。ラデクを釈放すればぺトロフ政権は崩壊する。しかし乗員の命も大切だ。そんな中、発見されたカプセルに大統領が乗っていなかったという連絡が入る。
家族やスタッフを残して自分だけが脱出できないと考えたマーシャルは、密かにエアフォース・ワンに残っていたのだ。彼はベトナム戦争でも活躍した男。2人のテロリストを倒し、ホワイトハウスとの連絡に成功。しかしコルシュノフは、アリスの命と引き換えにラデク解放を要求してきた…。

監督はウォルフガング・ペーターゼン、脚本はアンドリュー・W・マーロウ、製作はウォルフガング・ベーターゼン&ゲイル・カッツ&アームヤン・バーンステイン&ジョン・シースタック、製作総指揮はトーマス・A・ブリス&マーク・エイブラハム&デヴィッド・レスター、撮影はミヒャエル・バルハウス、美術はウィリアム・サンデル、編集はリチャード・フランシス=ブルース、衣装デザインはエリカ・エデル・フィリップス、音楽はジョン・ウィリアムス。
主演はハリソン・フォード、共演はゲイリー・オールドマン、グレン・クローズ、ウェンディー・クルーソン、リーゼル・マシューズ、ポール・ギルフォイル、サンダー・バークレイ、ウィリアム・H・メイシー、ディーン・ストックウェル、トム・エヴェレット、ユルゲン・プロホノフ、ドナ・ブロック、マイケル・レイ・ミラー、カール・ワイントローブ、エレスター・レイサム他。他。


戦うアメリカ大統領。いかにもアメリカで受けそうな映画。
そういえば、『インディペンデンス・デイ』でも、ベトナム戦争で従軍経験のある大統領が活躍した。あの作品の監督ローランド・エメリッヒも、この映画の監督ペーターゼンと同じくドイツ出身。なんだか妙な偶然だ。

ペーターゼン監督は(少なくとも今作品においては)迫力の演出が上手い。スリルとサスペンスを持続させ、ノンストップ・アクションの醍醐味をこれでもかと見せつける。
機内でのアクションだけでなく、ホワイトハウスでのテロリストとの駆け引きにも、緊張感を持たせることに成功している。

ただし、シナリオの出来映えはヘロヘロである。何より、アメリカ政府が言うところの「ラデクを釈放すればぺトロフ政権は崩壊する」という部分が良く分からない。
そのラデク釈放とペトロフ政権との繋がりに関する説明が不足しているし、だから説得力が薄いのだ。

大統領の行動もメチャクチャ。自分の身勝手で脱出せずに機内に残るってのもダメだが、1人でテロリストに立ち向かうのもバカ。しかもアンタの余計な行動のせいで、無駄に犠牲者が出てるじゃん。
そのくせ、娘を人質にされたらテロリストの要求に応じてしまう。それって大統領としては失格でしょ。

何気にすごいのが、燃料を捨てるために機内の配線を切断する場面。何色もの配線の内、どれを切ればいいのか分からなくて、取った方法が「アメリカの国旗の色は切らない」というやり方。
そんなデタラメなギャンブルでいいのか。
失敗したらどうする気だったんだろう。

コルシュノフを演じるゲイリー・オールドマン、今回はちょっと外れかも。見た目は狂信的テロリストというより、イカレたサラリーマンみたい。
CG技術がショボショボなのも気になった。合成とかもバレバレなんだもん。そういう部分には金を掛けましょうよ。せっかく派手なアクション映画なのに。

コルシュノフが死んだ後も話がしばらく続くが、蛇足だと思える。特に「味方の中のスパイが誰か」なんて、前半でバレバレなんだから、最後まで引っ張る必要は無かった。
ラデク役のユルゲン・プロホノフもあっさりマヌケに死んじゃうし。勿体無い使い方するなあ。

 

*ポンコツ映画愛護協会