『アジャストメント』:2011、アメリカ

ニューヨーク出身のデヴィッド・ノリスは上院選に出馬し、選挙参謀のチャーリー・トレイナーたちと共に選挙戦を戦っていた。8年前にバーで乱闘事件を起こして罰金刑を食らったデヴィッドだが、ブルックリンの下院議員として活動してきた。対立候補を大きくリードしたデヴィッドだが、懇親会で下半身を露出させたことが新聞で報じられる。一気に劣勢へと追い込まれる中で、彼は投票日を迎えた。調整の作業でデヴィッドを監視していたハリーと上司のリチャードソンたちは、軌道に戻すための行動を取ることにした。
デヴィッドは地元でも対立候補にリードを許し、敗北を確信した。彼がホテルのトイレで敗北宣言の内容を考えていると、エリースという女性が個室から出て来た。デヴィッドが「ここは男子用だ」と言うと、彼女は「警備員から隠れた。度胸試しで結婚式に潜入した」と説明した。エリースはデヴィッドが呟いていたコメントを聞いており、彼を励ました。しばらく会話を交わした2人は、キスをする。エリースはトイレを出ると、警備員を見つけて走り去った。デヴィッドはスピーチの内容を変更し、自分が本物ではなく勝利のために周囲の指示でイメージ戦略を凝らしていたことを語った。
デヴィッドの敗北宣言は高評価を受け、次の上院選で本命視される。彼はチャーリーが経営するRSRベンチャー・キャピタルの役員に就任し、初出勤することになった。その朝、ハリーが公園のベンチに座っているとリチャードソンが現れ、「7時5分にコーヒーをこぼす」と告げる。ハリーが「公園で実行します」と言うと、リチャードソンは絶対に失敗しないよう釘を刺した。しかしハリーがベンチで転寝している間に、デヴィッドはバスに乗り込んで会社へ向かった。
デヴィッドはバスでエリースと再会し、電話番号を交換した。彼が会社に着くと全社員の動きが停止しており、会議室では帽子の男たちが何か妙な作業を行っていた。リチャードソンは「再調整が許可された」などと話していたが、デヴィッドに気付く。デヴィッドは逃げ出すが、リチャードソンの部下たちに捕まって眠らされた。彼が目を覚ますと、広い空間で椅子に拘束されていた。リチャードソンは上司のバーデンスキーから、「作業を見られたのは君の責任だ。リセットできない。この男を騙せ」と指示される。リチャードソンは手帳を見せ、「彼は死ぬまで疑問を持ち続ける。我々は口外しないよう、永久に監視する」と述べた。
バーデンスキーはリチャードソンに、「40年前のトレスと同じだ。彼には真実を全て伝えた。彼にも話せ」と促した。リチャードソンはデヴィッドに、「我々は運命を遂行する調整員だが、君の調整に失敗した。君は公園でコーヒーをこぼしてバスに乗り遅れ、我々が消えてから会社に着くはずだった」と説明した。彼は「我々のことを暴露すれば、君の脳を削除してリセットする」と静かに脅し、エリースには二度と会わないよう命じた。デヴィッドが理由を尋ねても、リチャードソンは答えなかった。彼は部下たちに電話番号のメモを没収させ、デヴィッドの眼前で燃やした。
解放されたデヴィッドは、カフェでエリースの電話番号を思い出そうとする。そこへハリーが現れ、「思い出しても無駄だ。携帯を紛失させる」と告げる。デヴィッドがチャーリーの動きを停止させたことを責めると、ハリーは「再調整で意識を少し変えただけだ」と言う。ハリーはフェリーへ来るよう指示し、そこで質問に答えると約束した。デヴィッドはフェリーへ行き、ハリーと会う。ハリーは彼に、水があれば運命調整局の監視が及ばなくなることを教えた。
デヴィッドが「チャーリーに何をした?」と言うと、ハリーは「リスクへの警戒を減らし、会社の方向性を微妙にシフトさせた」と答える。「君たちは心が読めるのか」とデヴィッドが訊くと、彼は「心は読めない。我々が読むのは選択だ。それを見抜く」と告げる。「君は天使か?」という質問に対して、彼は「そう呼ばれる」と述べた。ハリーはエリースを見つけ出そうとするデヴィッドに対し、運命の書は絶対なので諦めるよう説いた。
3年後。デヴィッドはエリースを諦め切れず、ずっと同じバスで通勤していた。ある日、彼は通りを歩くエリースを目撃し、急いで後を追った。彼は「メモを入れた財布を盗まれて連絡できなかった」と釈明し、エリースに許してもらった。2人は話しながらカフェへ向かい、エリースはシーダーレイク舞踊団に所属するダンサーだと語った。2人が再会したと知ったリチャードソンは、同僚のマクレディーから「美術監督とチャーリーを使って妨害させる」と言われて「1時間で別れさせろ」と指示した。マクレディーは「彼女が運命を逸脱している」と指摘し、手帳を見せて既に接触点が生じていることを知らせた。
デヴィッドとエリースはリチャードソンたちの動きを知らず、カフェで楽しく話す。マクレディーは舞踊団の稽古場所を17番桟橋へ変更し、カフェにチャーリーを向かわせた。チャーリーが「ブルックリン橋で出馬宣言を」と言うので、デヴィッドは後でエリースに会おうと考えた。リチャードソンは手帳に記されていたキスを阻止しようとするが、デヴィッドはエリースにキスをして去った。デヴィッドが出馬宣言をしている間に、マクレディーは再びエリースの稽古場所を変更した。
デヴィッドはリチャードソンとマクレディーの存在に気付き、何か仕掛けていると確信した。彼がエリースと再会するため動き出すと、リチャードソンたちが現れた。「彼女と会うのは禁じられてる。彼女とは別れる」とリチャードソンが告げると、デヴィッドは「なぜ引き離す?」と尋ねる。リチャードソンは「運命の書に記されている」と話すが、デヴィッドは「妨害しても諦めないぞ」と反発して去った。彼は舞踊団の稽古場所に辿り着き、エリースが踊る様子を目にした。
マクレディーはリチャードソンに、「2人を接触点で引き離したのに、再び結び付けてしまった。尋常ではない事態なので、ドナルドソンに調査を依頼した」と告げる。ドナルドソンは彼らに、「2人は結ばれるべくして結ばれた。80年代も90年代も、2人は結ばれていた。しかし2005年に変更があり、彼女の相手が変わった。古い運命の残骸が2人を駆り立てる。我々は引き離さねばならない」と説明した。リチャードソンはハリーに、「君の責任ではない。2人が会うのは古い運命の仕業だった」と教える。「なぜ運命は変更に?」とハリーが訊くと、彼は「我々の関知するところではない」と告げた。
ドナルドソンは前線に復帰するのかと尋ねる部下に、「上層部に託そう。トンプソンなら即座に2人を引き離し、今の運命に戻す」と話す。デヴィッドとエリースはデートに出掛け、肉体関係を持つ。2人が就寝する様子を、トンプソンが無言で見つめた。翌朝、エリースには元カレのエイドリアンから電話が入った。エリースは「ダメよ、迷惑だわ」と言い、すぐに電話を切った。彼女はデヴィッドに、4度も着信があったこと、エイドリアンとは婚約していたことを語った。3ヶ月前に彼と別れた理由について、エリースはデヴィッドのことが忘れられなかったのだと語った。
テレビ番組の仕事を終えたデヴィッドは、トンプソンによって閉じ込められる。トンプソンはデヴィッドに、「かつては人間の意志を尊重していたが、暗黒時代が続いて介入した。1910年には退いたが、人類が修復不能な過ちを犯したので再び介入することにした。君に自由意志は無い」と語る。「なぜ彼女と引き離す?」とデヴィッドが訊くと、彼は「3年前に君と彼女を会わせたのは我々だ。君の演説に影響を与え、次期上院選の有力候補にしたかった。上院選だけではない。君が世界を変えるのだ」と述べた。
トンプソンが「彼女と長くいては悪影響を及ぼす。大統領が悪影響を受けてはいけない」と言うと、デヴィッドは「運命は自分で切り開く。彼女への気持ちは変わらない。何があっても彼女を選ぶ」と強い口調で告げる。トンプソンに解放されたデヴィッドは、エリースの出演するダンス公演を観賞に行く。デヴィッドがエリースの踊りを見ていると、トンプソンが現れた。彼はデヴィッドに、「黙っていたが、君たちが結ばれると彼女の夢も破れる。彼女は有名なダンサーになり、世界的な振付師になる。だが君といると、幼児教室のダンス教師で終わる」と述べた…。

監督はジョージ・ノルフィー、原作はフィリップ・K・ディック、脚本はジョージ・ノルフィー、製作はマイケル・ハケット&ジョージ・ノルフィー&ビル・カラッロ&クリス・ムーア、製作総指揮はジョナサン・ゴードン&イサ・ディック・ハケット、共同製作はジョエル・ヴィアテル、製作協力はエリック・クリプキ、撮影はジョン・トール、美術はケヴィン・トンプソン、編集はジェイ・ラビノウィッツ、衣装はカシア・ワリッカ=メイモン、視覚効果監修はマーク・ラッセル、音楽はトーマス・ニューマン。
主演はマット・デイモン、共演はエミリー・ブラント、アンソニー・マッキー、テレンス・スタンプ、ジョン・スラッテリー、マイケル・ケリー、ドニー・ケシュウォーズ、アンソニー・ルイヴィヴァー、デヴィッド・ビシンズ、シェーン・マクレー、ジェシカ・リー・ケラー、クリスティン・マクレイン、ブライアン・ヘイリー、メイヤー・マイケル・R・ブルームバーグ、チャック・スカボロー、ジョン・スチュワート、ジェームズ・カーヴィル、メアリー・マタリン、ベティー・リュー、ダニエル・バジル他。


フィリップ・K・ディックの短編小説『調整班』を基にした作品。
『オーシャンズ12』や『ボーン・アルティメイタム』の脚本家であるジョージ・ノルフィーが、初監督を務めている。
デヴィッドをマット・デイモン、エリースをエミリー・ブラント、ハリーをアンソニー・マッキー、トンプソンをテレンス・スタンプ、リチャードソンをジョン・スラッテリー、チャーリーをマイケル・ケリー、ドナルドソンをドニー・ケシュウォーズ、マクレディーをアンソニー・ルイヴィヴァー、バーデンスキーをデヴィッド・ビシンズが演じている。

デヴィッドはバーの乱闘騒ぎで罰金刑を食らっているのに、下院議員に当選している。どうしてなのか、良く分からない。
彼は上院選でも大きくリードするが、その要因も良く分からない。
なぜ懇親会で下半身を露出するようなバカをやらかしたのか、それも分からない。
バーの乱闘は全く影響せずに議員として市民からの評価も高かったのに、その騒ぎでは一気に形勢が逆転するってのも、ちょっと解せない。乱闘の原因でも説明されてりゃ納得できたのかもしれないけど、何も無いからね。

デヴィッドはトイレの個室からエリースが出て来ると、その瞬間は少しだけ驚く。
しかし、あっという間に親しくなり、それどころかキスをして「忘れられない相手」になる。
上院選の敗北が確定的になってショックも大きい状況だろうに、よく女とイチャつく気になれたな。
これが「奥さんや恋人に慰めてもらう」ってことなら分かるけど、出会ったばかりの相手だぞ。しかも男性用トイレの個室から出て来て、「警備員から隠れてる。度胸試しで結婚式に潜入した」とかいうヤバい女だぞ。

投票日にハリーやリチャードソンたちが4人で集まり、調整に取り掛かろうとする様子が写し出される。しかし具体的な行動は描かれないまま、そのシーンは終わっている。
後でトンプソンが軽く触れているが、「デヴィッドをエリースと会わせて、彼女の言葉にヒントを得てスピーチ内容を変更し、次の上院選で本命視されるようにする」ってのが彼らのやった調整作業だ。
だけど、なぜデヴィッドがエリースと話してスピーチの内容を変更したのか、そこが分かりにくい。
エリースは会話の流れで「正直な政治家は好き」と言っただけで、そんなの助言でも何でもないでしょ。
また、どうやってハリーたちが「デヴィッドがトイレに来るタイミングで、エリースが個室に隠れる」という状況を作り出したのか、それがサッパリ分からない。

そこに限らず、運命調整局の連中が「調整」のために取る行動の大半は、まるで腑に落ちないことだ。
自ら何かを動かすとか、機械や装置に細工を施すとか、そういうことなら分かるのよ。だけど、エリースの稽古場所を変更するとか、チャーリーをカフェへ向かわせるとか、そういうのって「具体的にどうやったのか」が気になるのよ。
例えば稽古場所は、単純に「場所が変更された」とメールを送るだけじゃなくて、ホントに変更されてるんでしょ。つまり、美術監督が何らかの理由で場所を変更すると決めるように仕向けなきゃいけないわけで。どうやるんだよ、それって。
チャーリーの行動にしても、本人が「チャーリーはカフェにいる」と知った上で、そこへ向かわせるよう仕向けなきゃいけないわけで。
マクレディーたちが具体的にどうやっているのかサッパリ分からないので、何でもアリのデタラメな設定にしか思えないのだ。

デヴィッドがトイレでエリースと出会ったのは、運命調整局の調整作業によるものだ。だけど、その後で運命調整局の連中は、2人が再会するのを阻止しようと奔走する羽目になっている。
だったら、最初から2人を会わせなきゃ良かっただろ。
自分たちの調整で強引に対面させておいて、そのくせ「再会は許さない」って、どういうことなのかと。
デヴィッドのスピーチ内容に影響を与える相手を、エリースじゃなくて別の誰かに任せりゃ済んだ話でしょ。

リチャードソンはデヴィッドに、「運命を調整している」と説明する。
だけど、それが運命なら、わざわざ天使が出張らなくても、その人間が勝手に行動してくれるはずでしょ。それが定められた運命のはずでしょ。
それを調整しなきゃいけないってのは、どうにも解せない。
これが「天使サイドのミスがあって運命が変わりそうになったので、調整の必要がある」ってことなら分かるのよ。だけど、そうじゃないからね。
だったら、その人間の行動こそが、そいつの運命なんじゃないのかと。

運命調整局の連中が、ものすごく些細なことに必死でこだわっているように見える。デヴィッドをエリースと再会させないために複数の天使が必死で奔走するけど、それは妙な感じだ。
これがコメディーであれば、「スケールの大きい話のはずなのに、チンケなことをやっている」ってのも笑いに繋がるだろう。しかしシリアスなテイストで描いているので、ただ陳腐なだけなのだ。
しかもシリアスに描いているのに天使たちがボンクラすぎて、そこも陳腐になっている。
なので見終わって真っ先に思ったのは、「コメディーだったら良かったのにね。っていうか、コメディーじゃないとマトモに成立しない映画じゃないのかね」ってことだ。

ハリーはベンチで転寝し、デヴィッドがバスに乗るのを見過ごしてしまう。予定より早くデヴィッドが到着したので、リチャードソンたちは調整作業を見られてしまう。
ハリーが連絡すれば済むだけなのに、なぜ知らせなかったのか。
リチャードソンにしても、「会社に入った人間は、その時点で動きを停止させる」ってことにでもしておけば良かっただろ。
デヴィッドだけじゃなくて、他の誰かが会社へ来ることだって考えられるんだし。

デヴィッドに調整作業を目撃された時だって、「作業を目撃した記憶だけを抹消して解放する」ってことにすれば、何の問題も無かったはずでしょ。
それなのに、「真実を全て説明した上で、死ぬまで監視する。暴露したら脳をリセットすると脅す」という方法を取るのが、アホにしか見えない。
そもそも、「天使に何が出来て、何が出来ないのか」というルールが全く分からないのよね。
そのせいで、色んなトコで引っ掛かるし、その場その場で都合の良さが露呈しているように感じるわ。

デヴィッドが禁止事項を無視してエリースに会おうとすると、リチャードソンたちは周囲の電話を全て使えなくしたり、タクシーが停止しないようにして妨害するだけ。
もっと荒っぽい手を使えばいいでしょ。いっそのこと、デヴィッドを捕まえて動きを封じたっていいし。
命令に従わないのに強硬手段を取らず、説得だけで済ませようとか、甘すぎるわ。ちっとも恋愛の障害としての脅威になってねえぞ。
っていうか、どうしても2人を再会させたくないのなら、エリースを遥か遠方へでも飛ばしておけば良かったでしょ。同じニューヨークで生活させておくから、再会のチャンスが生じているわけで。
っていうかさ、「3年後にデヴィッドがエリースを目撃する」ってのも、彼らがちゃんと監視していれば絶対に起きなかったはずで。そこもボンクラ極まりないわ。

なぜハリーがデヴィッドに自分たちのことを詳しく教え、協力するのかが全く分からない。
彼が調整局に疑問を抱いたり、デヴィッドに同情したりするようなきっかけなんて、何も無かったでしょ。
「最初は上の指示に従って忠実に動いていたが、自分たちには調整できない強い力があるのではないかと考え、デヴィッドに協力するようになる」という流れでもあれば、それは乗れるのよ。
だけどハリーは、最初からデヴィッドに協力的だからね。そりゃ不自然に感じても仕方がないでしょ。

トンプソンはデヴィッドに「君が世界を変えるのだ」と言う。
だけど運命調整局の連中が本に書かれた内容に合わせて、人間の行動を調整しているんでしょ。
だったら世界を変えるのはデヴィッドじゃなくて、天使たちってことになっちゃうでしょ。
自分たちが本に書かれた通りに人間を動かすため介入していることを明かしておいて、「君が世界を変えるんだから、エリースと別れろ」と要求しても、その言葉に何の説得力も無いぞ。

っていうか、どうせ天使たちが人間を操って世界を動かすんだから、デヴィッドじゃなくて他の奴でもいいんじゃないかと思っちゃうのよ。
「天使は本に記された内容を実現させるために動いているのであって、自分たちのやりたいようにやっているわけではない」ってのは分かるけど、そこのシステムがボンヤリしているんだよね。
仮に本の内容が実現しなかったら何が起きるのか、天使に大きなペナルティーがあるのか、あるいは地球や人類にとって大きな問題が起きるのか、その辺りもサッパリ分からないし。

トンプソンはカッとなったデヴィッドに殴られると、「本性が出たな。初当選後にバーでやったことと同じだ。露出写真もそうだ。またとない機会を与えてるのに、君は衝動的にブチ壊す」と批判する。
だったら、そんな奴に世界を変える仕事を任せなきゃいいでしょ。
天界の方で、明らかに不適格と思えるデヴィッドを選んでおいて、無理に操ろうとするから色々と問題が起きているわけで。
そんな議長(つまり神様ね)が、どうしようもない阿呆にしか思えないのよ。

ドナルドソンはリチャードソンたちに、「エリースはデヴィッドと結ばれる運命だったが、2005年に相手が変更された」と説明する。
だが、なぜ2005年に変更があったのかは最後まで説明されない。
長きに渡って結ばれる運命だったのに変更されるからには、余程の出来事があったはずでしょ。そこを無造作に放置するって、どういうつもりだよ。
あと、デヴィッドとエリースが結ばれたら具体的に何が起きて、それが人類にとってどれほどマズい事態なのかも全く教えてくれないし。

終盤、ハリーはトンプソンの言った「2人が結び付くとエリースの運命も変わる」ってのが嘘だとデヴィッドに教え、2人が再会するための手助けを買って出る。
かなり強引なキャラの動かし方だとは思うが、まあ受け入れよう。
「あと1時間は雨が降る。その間は彼らに察知されない」という都合の良さも、まあ良しとしよう。
そもそも「水があれば運命調整局に察知されない」という設定が御都合主義だが、前半にハリーがフェリーでデヴィッドと会う時「水が運命の書を読めなくする」と言っていたし、ちょっと伝わりにくいけど一応は説明していたったことで受け入れよう。

だが、それ以外でも引っ掛かることが幾つかある。
「回路が層を成していて、無数のドアで繋がれている。ドアを通る度に運命の書は痕跡を失う」ってのは、そこが初耳だぞ。「帽子が運命調整局の力を制限してる」ってのも、これまた初耳だ。
そういうのは、後付けの設定じゃないかと言いたくなる。
あと、一緒に逃げたデヴィッドとエリースが追い詰められてキスをすると、「議長が感動して運命の書を書き換える」という展開が訪れるのだが、脱力感が半端無いわ。
そりゃあ、他に上手い解決法が無かったんだろうと思うけど、安易で陳腐な道を選んじゃったなあと。

(観賞日:2018年5月18日)

 

*ポンコツ映画愛護協会