『ABC・オブ・デス』:2012、アメリカ&ニュージーランド
[アポカリプス(黙示)]
ベッドで食事をする初老の夫に、出刃包丁をもっと妻が襲い掛かった。抵抗する夫の首を突き刺した妻は、フライパンで熱した油を頭から浴びせる。彼女はフライパンで何度も頭を殴り付けるが、それでも夫は死なない。窓の外からは、大混乱が生じている音が聞こえて来る。妻は食事に毒を混入し、ゆっくりと時間を掛けて殺害するつもりだった。しかし時間が無くなったため、仕方なく強引な手段に出たのだ。「知らせを受けて時間切れに」と釈明する女が夫の隣に座る中、窓が真っ赤に染まった。
[ビッグフット]
エリックが恋人のダルシーと自宅でセックスしようとしていると、幼い従妹のソチがやって来た。エリックは邪魔なソチを寝かし付けるため、「早く寝ないと雪男が来る」と脅す。ソチが「この辺りに雪は降らない」と言うと、ダルシーは「ずっと昔、雪が降り続いた。大勢の子供が家から消えて、死体で発見された。子供の心臓を食べた雪男は、夜の8時以降に起きている子供を獲物に出来る条件で外出を許可された」と作り話をした。セックスを始めようとしたエリックとダルシーは、清掃員に化けた殺人鬼の餌食となった。ソチは2人の作り話を信じてベッドに入っていたため、襲われずに済んだ。
[サイクル]
ブルーノは庭の芝生に血溜まりを発見し、夜になると同棲相手のアリシアから「物音がした」と言われる。ブルーノが様子を見にリビングへ行くと、何も異変は無い。翌朝、アリシアに呼ばれて庭へ出た彼は、植え込みの穴を見ている内に意識を失う。目を覚ました彼が寝室へ行くと、もう1人の自分がアリシアと寝ている。ブルーノが急いで隠れると、アリシアはもう1人の自分に「物音がした」と言う。翌朝、ブルーノはもう1人の自分が庭の穴に入って行く様子を目撃する。穴に近付いた彼は、さっきとは別の自分に襲われて殺される。その男は遺体を穴に捨て、庭の血溜まりを目にする。
[ドッグファイト]
ファイターの男は準備を整え、トレーナーを伴って賭け闘技場へと足を踏み入れた。彼はグローブを構え、鎖を持った闘犬のトレーナーと対峙する。トレーナーは闘犬を放ち、男を襲わせた。いきなり腕に噛み付かれ、男は倒れ込む。太腿を噛まれた男は、犬に噛み付いて反撃した。必死で戦う男だが、闘犬に倒されて喉笛を噛まれそうになる。しかし男が「バディー」と呼び掛けると、闘犬の動きが止まった。闘犬は男から離れ、トレーナーに襲い掛かった。
[駆除]
土曜日、書斎に入って来た男はパソコンを起動させ、作業を始めようとする。しかし壁を這う一匹の蜘蛛を発見したため、丸めた雑誌で叩き潰そうとする。しかし蜘蛛が首に乗ったので、男は慌てて振り落とした。日曜日、歯を磨いていた男は、首の後ろが腫れていることに気付いた。それから毎晩、男が就寝している間に蜘蛛は彼の顔や首を噛んだ。次の日曜日、ようやく男は蜘蛛を殺すことに成功した。その直後、耳に激痛が走り、大量の小さな蜘蛛が這い出した。
[おなら]
女子高生のヨシエは思い切り放屁するが、その様子を憧れの教師であるユミに目撃されてしまう。彼女は神様を信じておらず、自分を守ってくれるのはユミ先生だと信じていた。優しく穢れの無いユミでもオナラをするのかどうか、ヨシエは気になった。その直後に激しい揺れが発生し、鳥居の向こうで地面からガスが噴出した。ガスが充満する中、ヨシエとユミは慌てて校舎に逃げ込んだ。ヨシエは「あんなガスを吸って死にたくない。どうせ死ぬなら、先生のオナラ嗅ぎたい」と言い、ユミは快諾して放屁した。オナラを嗅いだヨシエは、尻の穴からユミの体内へと吸い込まれた。
[重力]
男は車を運転し、駐車場に到着した。彼は車のトランクを開け、リュックサックに煉瓦を詰め込んだ。サーフボードを取り出した男は、海へと向かった。準備を整えた彼は海に入り、サーフボードを漕いだ。しばらく進んだ彼は息を大きく吸い込み、海に潜った。その後には、サーフボードだけが残された。
[水電拡散]
チャーチル首相が「絶対に服従しない」とナチスへの戦いを宣言する中、ブルドッグのイギリス軍兵士がキャバレーに足を踏み入れた。ステージには猫の女性ダンサーが登場し、兵士を誘惑する。たちまち心を奪われた兵士がステージに上がると、ナチスが放った刺客だったダンサーは彼を殺そうとする。電気ショック装置やミニ戦車に攻撃された兵士のパーティーは窮地に陥るが、「絶対に服従するな」というチャーチルの言葉が心に響いた。彼は反撃し、ダンサーを始末した。
[内向]
手袋をして注射器を持った男が便器に座り、思い詰めた表情を浮かべていた。立ち上がった彼はバスタブに近付き、シャワーカーテンを開けた。そこには妻が拘束されており、男が襲い掛かると必死に抵抗する。しかし男は妻の首筋に注射を打ち、その場から逃げ出した。妻は苦悶して体を引っ掻き、嘔吐して死んだ。
[時代劇]
日の丸の鉢巻を巻いた侍が、白装束で切腹しようとしていた。男は刀を腹に突き刺し、苦悶の表情を浮かべる。ところが介錯人が構えていると、なぜか侍は笑い出してしまう。介錯人は困惑しながら、気持ちを落ち着かせようとする。しかし笑い続けた侍の顔は極度に変形し、異様な状態になってしまう。介錯人が見る度に状態が変わるので、彼は汗まみれになってしまう。何とか介錯すると生首の顔が歌舞伎の隈取になっており、介錯人は思わず吹き出した。
[不器用]
トイレに入った女性は下腹部に力を入れ、思い切り排便した。ウンコを済ませた彼女が水を流すと、便器から謎の声がした。彼女が便器を除くと、ウンコは残っていた。どれだけ水を使っても、ウンコは全く流れてくれない。大量のトイレットペーパーを丸めて便器に突っ込み、改めて水を流すが、それでもウンコは残ってしまう。ついには便器から飛び出し、動き出してしまう。女はウンコを便器に放り込み、トイレを出ようとする。声がしたので便器を覗き込むと、ウンコは天井に張り付いていた。ウンコは天井から落下し、女の尻に突っ込んだ。女は血を吐いて倒れ、命を落とした。
[性欲]
男が意識を取り戻すとパンツ一丁で椅子に縛られ、仮面で顔を隠した観客に囲まれていた。隣には同じ格好の男がいて、目の前には裸の女が現れた。隣の男が慌ててオナニーを始めると、椅子に座っている女が男にも同様の行動を促した。先に射精した男はステージ1に勝利し、負けた対戦相手は殺された。その後も難易度が上がる中で勝ち進んだ男だが、ステージ13で敗北して惨殺された。
[流産] 女は自宅のトイレに入り、便器に水を流す。便器が詰まってしまったのでトイレを出た彼女は、ラバーカップを持って戻る。彼女が便器を覗き込むと水は真っ赤に染まっており、その中には胎児が沈んでいた。
[結婚]
シェーンは購入したインコを自慢するが、同棲相手のアンは仏頂面で文句を言う。シェーンはインコに言葉を覚えさせており、「アンは美人だ」と言わせる。アンが喜ぶと、シェーンは婚約指輪を取り出した。するとインコは指輪を彼女に渡し、「僕と結婚してくれる?」と告げる。アンは感動し、シェーンりプロポーズをOKする。しかしインコは、シェーンが浮気相手に喋った言葉まで言ってしまう。激怒したアンは、包丁でシェーンを殺害した。
[オーガズム]
全裸の女は煙草の火を体に押し付けられ、喘ぎ声を上げる。革手袋の男に体をまさぐられ、大量のシャボン玉を口から吐く。革ベルトで首を絞められた女は、絶頂に達しながら死んだ。
[重圧]
3人の娘を持つ女は、長女のシンディーが欲しがってる自転車を誕生日にプレゼントしたいと考える。何度も店に足を運んだ彼女は値段を確認するが、お金が足りなかった。彼女は売春で稼ぐが、貯めていた金を恋人が持ち去ってしまった。ある男に呼び出された彼女は、子猫を踏み潰す映像を撮らせてくれたら金を払うと持ち掛けられた。彼女は承諾して子猫を踏み潰し、金を受け取った。自転車をプレゼントされたシンディーは喜び、その様子を彼女は嬉しそうに眺めた。
[アヒル]
監督のアダム・ウィンガードや脚本家のサイモン・バレットは、「Q」のテーマに合うような作品が撮れずに苦悩していた。そこで彼らは本物の死を撮影しようと考え、アヒルを使うことにした。しかし捕まえたアヒルを拳銃で撃とうとしたアダムは、怖じ気付いてしまう。サイモンが撃とうとするが、安全装置の外そうとしてアダムを誤射してしまう。その弾みでアダムもサイモンを撃ってしまい、2人は死亡した。録音担当のフアン・カルロス・バグネルは、慌てて現場から逃亡した。
[切除]
医者が大火傷を負った患者の皮膚を切除し、それを現像液に付けるとフィルムに変化した。医者は檻に閉じ込めた患者に向けてカメラのフラッシュを焚かせ、女性ファンが群がるよう仕向ける。また医者は皮膚を切り取るが、今度はフィルムに変化しない。医者は患者を毒殺しようとするが、返り討ちに遭ってしまう。患者が自分の皮膚を切り取り、現像液に付けて弾丸を作る。彼は看護師や黒服の男たちを抹殺して病院から逃走するが、列車の格納庫で息絶えた。
[スピード]
ロクサーヌはルルに拳銃を突き付け、荒野の家から飛び出した。追って来る黒いフードの男に発砲したロクサーヌは、ルルを車のトランクに押し込んだ。彼女は火炎放射器で男を攻撃し、車を発進させる。男が追って来たので、ロクサーヌは車を降りて助命を嘆願する。「もう逃げられん」と言う男の手を握った途端、ロクサーヌは幻覚から醒めた。彼女はドラッグの過剰摂取で死亡し、傍らにいたルルがドラッグを注射した。
[トイレ]
少年は両親に付き添われ、トイレへ行く。父親は「便器で死ぬこともある」と冗談めかして言い、母親がたしなめる。便器がモンスター化して暴れ出し、少年の眼前で両親を惨殺した。そんな夢を見た少年は夜中に目を覚まし、便意を催してトイレヘ行く。すると頭上のタンクのネジが緩み、鎖が外れたので少年は悲鳴を上げる。慌てて便器から落ちた少年は蓋に頭を挟まれる。悲鳴を耳にした父はトイレヘ駆け込み、息子の姿を見て笑う。その直後、タンクが頭部に落下し、少年は死んでしまった。
[発掘]
発掘作業をしていたスキャンロン卿やトム神父たちは、突如として襲撃を受けた。作業員のアンは噛み付かれ、洞窟から脱出した他の面々は警戒する。襲撃者は火の矢に体を射抜かれて倒れ、スキャンロン卿が牙を抜き取った。トムが木の杭を打ち込み、作業員のジェフが何度も斧で突き刺し、襲撃者を殺害した。
[産声]
2035年のニューバンクーバー。ある建物に繁殖管理局のレイニーとロボットのネズビットが乗り込み、武装して抵抗する男たちを始末した。レイニーは隠れている夫婦と赤ん坊のケイシーを発見し、銃を向ける。世界を救うために繁殖行為は禁じられていたが、受胎許可を取ることは認められていた。その許可を得るための近道として、レイニーは繁殖管理局に入局していた。レイニーが赤ん坊の引き渡しを要求すると、夫婦は「誤解している。許可証は見せた。違反者は逃げた」と言う。
ネズビットが夫婦と赤ん坊を攻撃したので、レイニーは批判する。そこへ隊長のストーカーが現れ、テレパシーや洗脳の力を持つ異能者を始末したのだと告げる。ストーカーは蘇生させて脳を徹底的に調査し、異能者の教祖が潜む場所を突き止めようと考えていた。レイニーは勤続10年で受胎が許可されたが、不妊症だと判明していた。彼女はストーカーに銃を向けるが銃弾を浴びて倒れた。瀕死の状態となっている夫は、レイニーに「あの子が教祖だ」と教えた。頭部だけになったケイシーは能力を解放し、ストーカーたちを始末した。
[カオス]
「W」から始まる作品として残酷描写のあるアニメを製作していたジョン・シュネップ監督の部屋に、製作スタッフのトミーがやって来た。巨大セイウチが街を破壊する作品や、女戦士が怪物を退治する作品など、様々なアイデアを考えたが、どれも実現には至らなかった。そんな中、テレビのニュースでハリウッドの事件が報じられ、ジョンは空に着色ガスでWの文字が浮かんでいるのに気付いた。ピエロのゾンビが徘徊するニュース映像の際には、トミーがWの文字に気付いた。ゾンビ軍団は事務所にも押し寄せ、ジョンたちは襲われる。さらに怪物や女戦士たちも出現し、スタッフは次々に殺されていった。
[ダブルエックスエル]
肥満体のガートルードは地下鉄に乗り込み、隣に座った男に「最低だ、デブ女め」と罵られる。街を歩いていると、彼女は通り掛かった人々からバカにされた。ガートルードは広告のビキニ美女のように痩せたいと思っていたが、過剰な食欲を抑制することは出来なかった。帰宅した彼女はバスルームへ行きねナイフや電動ノコギリで体の脂肪を切断していく。血まみれになったガートルードはスリムに変貌するが、瀕死の状態で倒れた。
[ティーンエイジャー]
ホープタウン中学校の用務員は、若い男子学生たちを見て喜びを感じる。体育館を覗いていた彼は生徒たちが去った後、汗で濡れたベンチを舐める。そんな彼は、少年を鹿狩りへ連れて行く妄想を膨らませた。鹿を捕まえて頭部を切断した用務員は、ズボンを脱いだ。そこまで妄想した時、用務員は鹿の剥製を持った男子生徒に襲われた。生徒は剥製の角で、用務員の顔を突き刺した。用務員の頭部が切断され、体育館の床に転がった。
[絶滅]
3月11日、放射能物質が日本を覆い尽くし、セシウムまみれとなった。政府高官は事実を隠蔽し、日本人のDNAは劇的に変異するが国民は歓迎した。女刑事は建物に潜入し、巨大ペニスを持った女戦士と戦った。しかし巨大ペニスを切断した刑事は、戦士とレズ行為を始めた。政府の広報担当者は博士の傍らで核エネルギーを売り込み、分裂培養電気に呼び方を変えると言う。カレーと寿司が用意され、全裸の男女と博士が一斉に食べ始めた…。原案はアント・ティンプソン、製作はアント・ティンプソン&ティム・リーグ、製作協力はトッド・ブラウン&マーク・ウォルコウ、 製作総指揮はトム・クイン。
[アポカリプス(黙示)]
脚本&監督はナチョ・ヴィガロンド、製作はナイカリ・イピニャ&ナチョ・ヴィガロンド、撮影&編集はジョン・D・ドミンゲス、美術はイドイア・エステバン、衣装はアナ・ホルグエラス。
出演はエヴァ・ロラック、ミケル・インスア。 [ビッグフット]
脚本&監督はアドリアン・ガルシア・ボグリアーノ、製作はアンドレア・キロス・エルナンデス、撮影はエルネスト・エレーラ、編集はアドリアン・ガルシア・ボグリアーノ、音楽はフリオ・ピラード。
出演はアレハンドラ・ウルディアイン、ハロルド・トーレス、グレタ・マルティネス、パブロ・グイザ・コスティンガー。 [サイクル]
脚本&監督&編集はエルネスト・ディアス・エスピノーサ、製作はマルレーヌ・ヴァルガス・ブレベス、撮影はパブロ・モンサルヴェ、音楽はロッコ、美術はマリッチ・パラシオス。
出演はマティアス・オヴィエド、フアニータ・リンゲリング。 [ドッグファイト]
脚本&監督はマルセル・サーミエント、製作はクリストファー・ホワイト、製作総指揮はエド・ドハーティー&クリス・ホワイト、撮影はハリス・チャラランブース、編集&音楽はフィリップ・ブラックフォード、美術はイーライ・ザンドリック。
出演はスティーヴ・ベレンズ、クリス・ハンプトン、ジョージ・マルケス、エリック・オード、リサ・リンチ他。 [駆除]
監督はアンジェラ・ベティス、原案はブレント・ハンリー、撮影はケヴィン・フォード、音楽はジャム・ラケット。
出演はブレンデン・J・マクヴェイ。 [おなら]
脚本&監督は井口昇、製作はマーク・ウォルコウ&西村喜廣、撮影は長野泰隆、美術は福田宣、衣装はヨシダミホ、音楽は福田裕彦。
出演は中村有沙、村田唯、山田帆風、村上穂乃佳、菅井知美。 [重力]
脚本&監督はアンドリュー・トラウキ、撮影はアンドリュー・トラウキ&ラリー・グレイ、編集はグレッグ・フェリス、音楽はアンドリュー・トラウキ&グレッグ・フェリス。 [水電拡散]
脚本&監督はトーマス・カッペリン・マーリング、製作はヒューゴ・ハーゲマン・フォスカー、共同製作はクリストファー・ヨルゲンセン、美術はカロリーヌ・クラーヴェネス、衣装はハンネ・アスペルンド&マリア・ブリンチ、編集はオーヴ・ケネス・ニルセン、音楽はヨハンネ・リンゲン。
出演はマルチーヌ・アルネス・ソーレンセン、ヨハンネ・アイラーツェン。
声の出演はイングリッド・ボルソ・ベルダル、ジョン・オイガーデン、マーク・スタイナー、トルニー・ゲルハルト・アーンデラー。 [内攻]
脚本&監督はホルヘ・ミッチェル・グラウ、原案はマルタ・ポリー・R・メンディヴィル&ホルヘ・ミッチェル・グラウ、製作はメイラ・エスピノーサ・カストロ、撮影はアルベルト・アナヤ・アダリド、編集はロドリゴ・リオス・レガスピ、美術はアレハンドロ・ガルシア、衣装はエマ・エレラ、音楽はウーゴ・ケサダ・モンロイ。
出演はアドリアン・パス、オクタヴィオ・ミッチェル。 [時代劇]
脚本&監督は山口雄大、製作はマーク・ウォルコウ&西村喜廣、撮影はShu G. 百瀬、美術は福田宣、編集は山口雄大、音楽は福田裕彦。
出演は佐々木大輔、仁科貴。 [不器用]
脚本&監督はアナス・モルゲンターレル、アニメーション監督はスティーネ・マリー・ブンル、製作総指揮はサリタ・クリステンセン、編集はマルティン・ウィッチマン、音楽はモルテン・ダルスゴーア。 [性欲]
脚本&監督はティモ・ジャイアント、撮影&照明はアガ・ワーユディー、衣装はヴィクトリア・アナスタシア、編集はボビー・ブラボウォ&アルベルト、音楽はファジャー・ユスケマル&アリア・プラヨギ。
出演はポール・フォスター、ケリー・タンディオノ、トゥグー・レオ・イルハム・ラマンダ、ゲイリー・イスカク、エピー・クスナンダー他。 [流産]
脚本&監督はタイ・ウェスト、製作はピーター・ポーク&タイ・ウェスト、 製作協力はジョン・ノリス&マット・バーガーホフ、編集は タイ・ウェスト、音楽はグレアム・レズニク。
出演はティッパー・ニュートン。 [結婚]
監督はバンジョン・ピサヤタナクーン、脚本はバンジョン・ピサヤタナクーン&ノントラ・クームヴォング、撮影はナルフォル・チョカナピタク、編集はタマラート・スメスパチョク、音楽はパラワット・ウィウィタヤ。
出演はワイワット・コングラスリ、オーン=アーニン・ピーラチャカホルンパット。 [オーガズム]
脚本&監督はエレーヌ・カッテ&ブルーノ・フォルツァーニ、撮影はマヌー・ダコッセ、編集はベルナルド・ビーツ。
出演はマノン・ブーチョ、シャビエル・マゴット。 [重圧]
脚本&監督はサイモン・ラムリー、撮影はミルトン・カム、編集はロブ・ホール。
出演はイヴァンナ・ヒルトン、シェーラ・セドニー、シェリッサ・セドニー、シェネヴィーヴ・フイスデン他。 [アヒル]
脚本&監督はアダム・ウィンガード、脚本はサイモン・バレット、原案はキース・カルダー、製作はリノ・スタヴォール、共同製作はアダム・ウィンガード&サイモン・バレット、撮影はクリス・ヒルケ。
出演はアダム・ウィンガード、サイモン・バレット、リズ・ハーヴェイ、フアン・カルロス・バグネル。 [切除]
監督はスルジャン・スパソイェヴィッチ、脚本はディミトリ・ヴァイノフ&スルジャン・スパソイェヴィッチ、製作はスルジャン・スパソイェヴィッチ&ドラガナ・ヨハノヴィッチ、撮影はネマニャ・ヨハノフ、編集はナターシャ・ダムニャノヴィッチ、美術はサネラ・スパイッチ、衣装はセンカ・クルニャキッチ、音楽はネナド・マルコヴィッチ。
出演はスロボダン・ベスティッチ、リュビミル・トドロヴィッチ、マリナ・サヴィッチ、グレッグ・ドゥ・キュイール他。 [スピード]
脚本&編集&撮影&監督はジェイク・ウエスト、製作はフランシス・オトゥール&サイモン・ボスウェル&ジェイク・ウエスト、美術&特殊メイクアップはロリー・ストーン、音楽はサイモン・ボスウェル。
出演はダレンジア・エリザベス、ルーシー・クレメンツ、ピーター・ペドレロ。 [トイレ]
脚本&アニメーション&監督はリー・ハードキャッスル、製作総指揮はハミッシュ・モズレー&リー・ケルハー&アンドリュー・テイラー&ジェームズ・G・ウォール。
出演はキム・リチャードソン、リー・ハードキャッスル。 [発掘]
監督はベン・ウィートリー、脚本はベン・ウィートリー&アンディー・スターク、製作はクレア・ジョーンズ&アンディー・スターク、撮影はローリー・ローズ、編集はベン・ウィートリー、衣装はジョン・レヴェル。
出演はニール・マスケル、マイケル・スマイリー、ロビン・ホール、サイモン・スミス、ティリー・ガウント、ローリー・ローズ。 [産声]
脚本&監督はカーレ・アンドリュース、製作はクリス・ファーグソン、製作総指揮はオリヴァー・リンズレー、撮影はチェイス・アーヴィン、編集はグレッグ・ン、美術はエリック・ノーリン、音楽はケヴィン・リープル。
出演はカイラ・ザゴースキー、フレイザー・コーベット、マイケル・ロジャース、ダニエル・ベイコン、エリザベス・ローゼン他。 [カオス]
脚本&製作&撮影&監督はジョン・シュネップ、編集はティム・コルート&ジョン・シュネップ、音楽はトラヴィス・サイモン&ジョン・シュネップ。
出演はディンク・オニール、ジョン・シュネップ、トミー・ブラチャ他。 [ダブルエックスエル]
脚本&監督はザヴィエ・ジャン、製作はマイケル・タイシャー&カミラ・メンデス、撮影はアントワーヌ・マルトー、美術はクロエ・カンブルナク、編集はゾハー・ミシェル。
出演はシシー・デュパルク、ヤスミン・メドー、パトリック・リガルデス他。 [ティーンエイジャー]
脚本&監督&編集はジェイソン・アイズナー、製作はロバート・コッターリル、撮影はカリム・フセイン、衣装はラ・ダンズワース。
出演はティム・ダン、ライアン・ローガン他。 [絶滅]
脚本&監督&編集は西村喜廣、製作はマーク・ウォルコウ&西村喜廣、撮影はShu G. 百瀬、美術は福田宣、アクション監督はカラサワイワオ、音楽は中川孝。
出演はジェシカ、屋敷紘子、村杉蝉之介、山中アラタら。
世界の15ヶ国から集められた26人の監督が、与えられたアルファベット1文字のキーワードから「死」をテーマにした5分の短編を競作するホラー・アンソロジー・プロジェクト。
ニュージーランドの映画プロデューサーである『JOKERS THE MOVIE 俺たちロケットスタートマン!』のアント・ティンプソンが企画し、アメリカの映画会社「Magnet Releasing」と組んで製作している。
既に1作目を製作している段階から続編の企画がスタートしており、2014年には『ABC・オブ・デス 2』が製作された。1つのエピソードは約5分だが、それが26も集められているので、トータルとしての尺は長くなる。上映時間は129分で、エンドロールを除いても約2時間だ。
長編映画としてはごく普通の尺だが、「長すぎる」と感じる。
短編集ってことで、通常の長編よりも長く感じるということはあるだろう。
1つ1つの短編の質が高ければ退屈せずに引き込まれたかもしれないが、複数の監督が撮ったオムニバス映画だと、どうしても玉石混交になってしまう。そして本作品の場合は大半が石なので、途中で「まだ続くのか」と感じてしまう。5分という短編っていうか掌編の尺しか無いので、どうしてもワン・アイデアでオチ勝負という構成が多くなってしまう。
前述したように「死」をテーマにしているため、おのずとオチの枠も狭くなってしまう。
また、5分という短さの中で自分の色をアピールする必要があるため、分かりやすい見た目のインパクトに走りがちだ。
っていうか、どうやら「5分以内」という条件だったようで、それより短い作品も少なくない。最初のエピソードからして、3分ぐらいで終わっている。タイトルでネタバレすることを避けたかったのか、1つのエピソードが終了したところでタイトルが表示される。つまり、通常とは順番が逆になっているわけだ。
この構成は明らかに失敗であり、次のエピソードが始まっても気持ちが集中できなくなってしまう。
ぶっちゃけ、タイトルが先に表示されても、それでネタバレするリスクなんて大して高くないと思うのよね(まあタイトル表示を最後に回した理由がそれかどうかは分からないけど)。
なので、普通にタイトルから始める構成の方がいいわ。では個々のエピソードに触れていこう。
[アポカリプス(黙示)]は『TIME CRIMES タイム クライムス』のナチョ・ビガロンドが監督。
何しろ最初の作品なので、全てのエピソードの中で最も重要だと言っていい。ここで観客を掴まないと、その後が厳しくなってしまう。
そういう難しい役割を任せられたナチョ・ビガロンドだが、上手く任務を遂行していると言っていいだろう。
インパクトのある「死」を描いた上で、ちゃんと意外性のあるオチも付けている。[ビッグフット]は『ザ・ヘル ネクストステージ』のアドリアン・ガルシア・ボグリアーノが監督。
もうカップルが作り話を始めた時点で、大半の人はザックリとしたオチが読めるだろう。
ただ、そこはベタであろうと、「本物の雪男が現れて」という形じゃないと、オチとしては成立しないんじゃないか。「何だか良く分からない殺人鬼が現れて」ってことになると、オチがボヤけてしまう。
そんな奴を登場させるぐらいなら、最初から作り話の内容も雪男じゃなくて殺人鬼でいいわけでね。[サイクル]の監督は『ミラージュ』のエルネスト・ディアス=エスピノーサ。
趣向は凝らしているが、「そもそもブルーノが別の自分を殺す動機が薄弱」という大きな欠点がある。
このエピソードは途中で「複数の主人公が同じことを繰り返している」という構成が判明し、オチが訪れると最後に表記されるタイトルの意味は理解できるようになっている。
でも、ここまでの3つのエピソードでも明らかなように、最初にタイトルが表示されても、それがマイナスに作用することなんて無いと思うのよね。[ドッグファイト]の監督は『チャーリー 世界一かわいい犬と僕が伝えたいこと』のマルセル・サーミエント。
飼い主と犬の関係を描く内容にしたのは、自分の過去作を意識したのだろうか。
このエピソードは短い中でも、キッチリと伏線を張って回収する構成になっている。冒頭シーンでは「バディーを見つけたら連絡を」と刻まれた男のタグが写るし、壁には迷い犬のポスターが貼ってある。男は犬を殴り付ける直前、辛そうな表情で迷いを見せる。
ただ、根本的な問題として「そもそも戦う前にバディーと呼び掛ければ済んだ話じゃないか」という疑問が拭えない。[駆除]は『MAY -メイ-』や『ツールボックス・マーダー』の主演女優であるアンジェラ・ベティスが撮った作品。
何となくジョージ・A・ロメロ監督が手掛けた『クリープショー』の[第5話:奴らが忍び寄ってくる!]を連想させる。
で、それを連想してしまうと、時間が短いし予算も少ないという事情はあるが、インパクトは弱いと感じる。
最後の「小さな蜘蛛が耳から這い出す」というシーンだけに全てが懸かっているような作品なのだが、そこの力が足りないのよね。[おなら]の監督は『富江 アンリミテッド』『ゾンビアス』の井口昇。
このオムニバスで、わざわざ「おなら」という題材を選ぶとは、いかにも井口監督らしい趣向と言えよう(この人は映画監督になる以前、スカトロ物のAVを手掛けていたのだ)。
だから井口監督の熱烈なファンであれば歓迎できるかもしれないが、このオムニバスの1編としては最低の部類に入る。
そもそも、これってホラーじゃないしね。まあ極端に言ってしまえば、ただの悪ふざけだわな。
井口監督は「東日本大震災と原発事故へのオマージュ」として撮ったらしいけど、それを聞いてしまうと、ますますダメな作品という印象が強くなるわ。[重力]は『ブラック・ウォーター』のアンドリュー・トラウキが撮った作品。サーファー視点でカメラが映像を写し出すPOV方式で撮影されている。
だが、POV方式を採用している意味を感じないし、サーフボードを使う意味も感じない。予算は安く済んだだろうなと、それぐらいしか感想の出て来ない作品。
続く[水電拡散]は、『ニンジャ:インポッシブル』のトーマス・カッペリン・マーリングが監督。
擬人化されたブルドッグの軍人とダンサーの猫が登場する。ダンサーに惚れた兵士の目が飛び出したり、体ごと突っ込んだりという誇張した表現が持ち込まれている。
これも[おなら]と同様、ホラーじゃなくてコメディーだね。特にオチがあるわけでもなく、「だから何なのか」としか感じない作品だった。[内向]は『猟奇的な家族』のホルヘ・ミッチェル・グラウが監督。
最初に男の指輪がアップで写るので、拘束されているのが妻なのは簡単に分かってしまう。幾ら女のモノローグで「私は強盗じゃない」などと喋っても、まるで効果は無い。
「実は夫婦」という仕掛けだけが武器なので、そこが最初から分かってしまう時点でダメだわな。
女が死んだ直後、カメラが彼女の指輪を捉えるので、そこで真相が判明する仕掛けにしたかったんだろうけど、失敗している。次の[時代劇]は『赤んぼ少女』『極道兵器』の山口雄大が監督。これはホラーじゃなくてコメディー。
もうね、全てホラーかと思ったらコメディー作品も混じるので、「統一感が無いなあ」と感じるわ。一応は「死」というテーマに沿っているけど、そこは「ホラーで」という条件も徹底した方が良かったんじゃないかと。
そんで、このエピソードだけど、「笑っちゃいけないトコで笑いたくなることが起きて必死に我慢する」というネタなのだが、そもそも侍が笑い出しちゃってるからね。
そうじゃなくて、「本人は真剣に切腹しようとしているけど、何かのアクシデントで面白いことが起きちゃう」とか、「介錯人が変な想像を膨らませて面白くなっちゃう」とか、そういうことにしておかないとダメでしょ。介錯人を笑わせに行ったらダメよ。[不器用]はデンマークで活動するアナス・モルゲンターレルが手掛けている。セル画のアニメーション作品で、これまたコメディーのノリになっている。
まあ最終的には女が死ぬからテーマには沿っているけど、「なんじゃそりゃ」と言いたくなった。
次の『性欲』を監督したのは、『マカブル 永遠の血族』のティモ・ジャイアン。
いわゆるデス・ゲームにエロの要素を加えているんだけど、それによってバカバカしさ満開となっている。一応はシリアスなテイストで描いているけど、まるで恐怖や緊張感は無い。
ただ、じゃあコメディーとして楽しめるのかというと、そうでもないので、どういう気持ちで見ればいいのか困ってしまう。[流産]の監督は『キャビン・フィーバー2』のタイ・ウェスト。
2分にも満たないエピソードだが、ワン・アイデアだから、それでも成立するっちゃあ成立する。どのみちオチだけの一発勝負なので、5分で作ったとしても、そこまでの女の行動で尺を引き延ばすだけになることは確実だからね。
とは言え、「手抜きしてねえか」とは感じるぞ。
続く[結婚]は『心霊写真』のバンジョン・ピサヤタナクーンが監督。
「インコが余計なことまで言って浮気がバレる」という仕掛け自体は面白いんだけど、「怒った女が男を殺す」というのは無理が有り過ぎるわ。コメディーとしてのネタなら良かったけど、テーマに合わせようとしてダメになったという感じだね。[オーガズム]は『煽情』のブルーノ・フォルツァーニ&エレーヌ・カッテが共同で監督。
真っ黒の背景の中、女の様子を極度のアップで捉える映像が写し出される。断片的な短いカットか幾つも挿入され、実験映像のようなシーンが延々と続く。
タイトルの通り、オーガズムに達するまでを描いているんだけど、何の面白さも無い。
次の[重圧]は『THE ROOM 閉ざされた森』のサイモン・ラムリーによる作品。
これはホラーじゃなくて、虚しさと切なさの残るドラマだね。ホラーじゃないからオムニバスの一篇としての評価は下がるけど、単独で見た場合は、かなり質のいい短編だと思う。[アヒル]は『サプライズ』のアダム・ウィンガードが監督で、メタ・フィクションになっている。
サイモン・バレットがウィンガードに、「お前がナメられてるからQにされた」とか「5千ドルで映画が作れるもんか」と言ったりする。
でも楽屋落ちだけで上手くホラーとして成立させるのかと思ったら「アヒルを殺そうとして死ぬ」というネタに移ってしまう。
メタ・フィクションを使うのは、ある意味では「逃げ」だけど、それは別にいいのよ。ただ、それなら最後まで機能させるべきなのに、その面白さはあっさりと捨てるのね。[切除]は『セルビアン・フィルム』のスルジャン・スパソイェヴィッチによる作品。
表面的な現象だけを見ていると、ただの「ワケが分からないエピソード」ってことで終わってしまう。
これは暗喩が込められた作品で、患者は映画監督を表している。
監督は出資者や映画プロデューサーから、新たな映画を求められる。本人が嫌がっても、プロデューサーは強引に映画を作らせる。そういうことだろうと思う。
やりたいことは分かるけど、「このオムニバスでやることじゃないよね」と言いたくなる。[スピード]の監督は『ゾンビハーレム』のジェイク・ウエスト。
いわゆる夢オチの作品だね。それは極端に言っちゃうと「何でも有り」の世界であり、オチまでの内容も大して引き付ける力があるわけではない。
続く「T」のエピソードは公募され、クレイアニメーション作家のリー・ハードキャッスルが起用された。
タイトルは[トイレ]で、いきなり夢オチが来たので「おいおい」と思ってしまう。「S」の内容を知らずに作っているから仕方が無いけど、順番が悪いよなあ。
そんで内容の方だけど、前半の夢オチって要るかね。そこが後の展開に向けた前フリになってないでしょ。[発掘]の監督は『キル・リスト』のベン・ウィートリー。
POV方式を採用しており、発掘作業員たちを襲撃する者の視点で撮影している。
劇中では明確に言及されていないが、登場人物の行動を見ていれば襲撃者が吸血鬼なのは明らかだ。
そんな吸血鬼が退治されるのでの様子をPOVで見せているのだが、「なんで吸血鬼がカメラを持ちながら人々を襲っているんだよ」というツッコミを入れたくなるぞ。そこは設定に無理があるだろ。次の[産声]を監督したのは『パニック・スカイ』のカーレ・アンドリュース。
SF設定にしたせいで、世界観の説明だけで手間と時間が必要になるという問題が生じている。
また、「赤ん坊は教祖に預けられるため運ばれていたのではなく、本人が教祖」というオチだけで勝負する作品であり、「レイニーは受胎許可が欲しくて繁殖管理局に入局したが不妊症だった」という設定は、ほぼ無意味となっている。
一応は「レイニーは子供が欲しかったのでストーカーに反抗する」という使い方をしているけど、大して効果は無いでしょ。[カオス]の監督は、アニメーション作品の演出やキャラクター・デザインを手掛けてきたジョン・シュネップ。原題の「WTF」は「WHAT THE FUCK」の略。
上述した粗筋を読んでも意味が分からないかもしれないが、それもそのはず、支離滅裂な内容だ。
一応は「映画を製作していたらピエロのゾンビや怪獣が出現して襲われ、そこに自分たちが思い付いた映画のアイデアのキャラも加わってグチャグチャに」という内容なのだが、ホントにグチャグチャなだけ。
少なくとも恐怖は喚起しないし、確かに邦題の「カオス」だなと。まるで面白くないタイプのカオスだけどね。[ダブルエックスエル]の監督は、『フロンティア』のザヴィエ・ジャン。
ガートルードがナイフを握った時点でオチは読めるし、その予想通りになる。ひたすら血がドバドバと溢れ出すスプラッター描写のみで勝負しているような作品だが、ある意味では潔いと言える。
次の[ティーンエイジャー]を監督したのは、『ホーボー・ウィズ・ショットガン』のジェイソン・アイズナー。
台詞は無く、ずっと軽快な音楽に乗せて映像が写し出される。ほぼMTVみたいなノリだね。
幻想シーンと現実シーンが並行して描かれるが、上手く融合しているとは思えない。現実シーンだけにして、用務員の気持ち悪さを強調した方が良かったんじゃないかと。最後を飾る[絶滅]の監督は、『東京残酷警察』『ヘルドライバー』の西村喜廣。
井口監督が「東日本大震災と原発事故へのオマージュ」として作品を撮っていたが、そんな彼と仲の良い西村監督も政治的な意味を持つテーマを持ち込んでいる。
全裸で寿司を握るオッサンたちがハーケンクロイツの帽子を被った半裸の金髪女に射殺されるとか、ハーケンクロイツが「米」の文字に変化するとか、米国産を売り込む男が現れるとか、抽象的な描写が連続するが、ようするに原発事故や日本とアメリカの関係などを揶揄したいんだろう。
でも、あまりにもボンヤリしすぎているし、この映画みたいな見せ方だと「適当にネタとして使っているだけで、本気で何か言う気なんて無いだろ」という印象になるぞ。
っていうか、たぶんホントに、マジで政治的なことを訴えるつもりは無いんだろうと思うし。(観賞日:2017年11月21日)