『エイト・ヘッズ』:1997、アメリカ&イギリス

トミー・スピネリは組織の殺し屋だ。組織の縄張りを荒らして仲間を殺したヒューゴ一味8名の首を、明日の昼までにボスに届けなければいけない。彼は8つの生首をダッフル・バッグに詰め込み、飛行機に乗り込んだ。
ところが、トミーは空港でチャーリー・プリチェットという若者のバッグと荷物を取り違えてしまう。トミーはチャーリーの通う大学に向かい、学生寮にいたスティーヴとアーニーを捕まえてチャーリーの居所を聞き出そうとする。
そのチャーリーは、メキシコを訪れていた。恋人ローリー・ベネットや彼女の両親ディック&アネットとバカンスを楽しむためだ。バッグの中身が生首だと知ったチャーリーとローリーは、慌てて処分しようとするが失敗ばかり。
トミーはチャーリーからスティーヴへの電話で、彼の居所を知る。サンディエゴ空港へ首を持って来るように言われたチャーリーだが、途中で首を次々と紛失する。しかも、ディックの荷物から生首が発見され、彼は死刑判決を受けてしまう。
首の紛失を知らされたトミーは、大学で冷凍状態にあった死体からヒューゴ一味に似ている人物の首を切断する。一方、組織のベニーとリコは首の到着が遅れていることでボスから叱責を受け、トミーを追って来た…。

監督&脚本はトム・シュルマン、製作はブラッド・クレヴォイ&スティーヴ・ステイブラー&ジョン・バートッリ、共同製作はティム・フォスター、製作総指揮はジェフリー・D・アイヴァース、撮影はアダム・ホレンダー、編集はデヴィッド・ホールデン、美術はポール・ピーターズ、衣装はサーニャ・ミルコヴィッチ・ヘイズ、特殊メイクアップ効果はグレッグ・キャノン、音楽はアンドリュー・グロス、音楽監修はハッピー・ウォルターズ。
主演はジョー・ペシ、共演はアンディ・コミュー、クリスティ・スワンソン、トッド・ルイーゾ、ジョージ・ハミルトン、ダイアン・キャノン、デヴィッド・スペード、アンソニー・マンガノ、ジョー・ベイジル、アーネスティン・マーサー、フランク・ローマン、ハワード・ジョージ他。


トム・シュルマンが初監督を務めたブラック・コメディ。トミーをジョー・ペシ、チャーリーをアンディ・コミュー、ローリーをクリスティ・スワンソン、彼女の両親ディック&アネットをジョージ・ハミルトンとダイアン・キャノンが演じている。

作品の中心となるポイントはハッキリしないし、展開もコロコロと変わってしまう。生首を巡ってトミーがチャーリーを追い掛ける展開が、チャーリーは紛失した生首を探し、トミーは新しい生首を作るという展開に。終盤になってトミーが追い掛ける側から追われる側になったり、トミーとチャーリーが協力することになったり。

前半、トミーはチャーリーに近付くことが全く無い。スティーヴ&アーニーと部屋でウダウダとやってるだけ。後半に入ってもしばらくは3人でウダウダを続け、ようやく重い腰を上げてチャーリーの元へと向かう。かなり長い間、完全に話が2つに分かれている。

チャーリーが生首を処分しようとする辺りではドタバタ劇を作ろうという意識が見られるが、それは結果には上手く結び付いていない。畳み掛けるような勢いを、わざわざ余計な息継ぎで殺してしまう。そもそもドタバタをやっているのはほとんどチャーリーとアネットに限られているし、時間もそれほど長くない。

たくさんのキャラクターを登場させて、それら全てをフォローしようとして、全てが中途半端になっている。ローリーの両親は、もっと見せ場を作るべきだろう。特にアネットは「アル中で錯乱してしまう」という使えるキャラ設定なのだし。

トミーの周囲に関しては、笑いを生み出す要素が全く見えてこない。冷凍の死体から生首を切断したり、老婆を車から崖下に突き落として殺害したりするのだが、それをものすごく普通に描いてしまう。ブラックかもしれないが、笑いには結び付かない。

トミーのキャラクター設定は失敗だろう。他人の荷物を勝手に移動させ、手術用の臓器が入った箱を蹴り飛ばし、何の意味も無いのにチャーリーの衣服を踏み付けながら電話を掛け、順番待ちの人に受話器を引きちぎって渡す。

スティーヴとアーニーを捕まえたトミーは、2人を拷問してチャーリーの居所を聞き出そうとする。ここは拷問の方法で笑いを生むチャンスなのだが、普通に描いてしまう。拷問の内容をマヌケなものにすれば良かったのに。

このトミーという男、ずっと不機嫌そうな顔で悪態をつきまくる。表情や台詞回しで「乱暴だけど憎めない」というキャラクターを表現すれば許せるのだが、それは全く無い。
もっと愛敬のあるマヌケな悪党にすれば良かったのに。そして周囲に迷惑を掛けるのではなく、逆に迷惑を掛けられて予定が狂うという展開にすれば良かったのに。


第20回スティンカーズ最悪映画賞

受賞:【最も痛々しくて笑えないコメディ】部門

 

*ポンコツ映画愛護協会