『1941』:1979、アメリカ

1941年12月7日、日本艦隊が真珠湾を攻撃した。米国民は激怒し、西海岸の人々は次の標的になることを懸念した。南カリフォルニア防衛の任務に就いたのは、第3軍司令官のスティルウェル将軍である。陸軍と海兵隊だけでなく、市民も防衛作戦に参加した。13日朝、日本海軍の潜水艦は進路を見失い、カリフォルニア海岸に浮上した。艦長のミタムラ司令官は、同乗しているドイツ海軍のクラインシュミット大佐から引き返すよう促される。しかしミタムラは、「見学者に渡しの命令を覆す権限は無い」と突っぱねた。ミタムラの潜水艦は、アメリカ本土の重要な軍事施設を破壊する任務を帯びていた。ミタムラはハリウッドを攻撃してアメリカ人の戦闘意欲を失わせようと考え、航海長にロサンゼルスへ向かうよう指示した。
ダイナーで働くウォーリーは、早く仕事を終えてジルバ・コンテストに出掛けたいと思っていた。派手なシャツを来て浮かれている彼を見て、客として来ていたシタースキー兵曹は怒りを覚えた。シタースキーはウォーリーに難癖を付けて殴り掛かるが、上官のトゥリー軍曹が注意した。ケルソー大尉はPー40で田舎のガソリンスタンドに着陸し、「昨日、シカゴが空襲を受けた」と苛立つ。客が「デマだぞ。ラジオで言ってた」と指摘すると、ケルソーは威嚇発砲した。Pー40が動き出したので、彼は慌てて追い掛けた。
スティルウェル将軍は、「部下が愚か者ばかりだ」と苛立ちながら空港へ向かっていた。マドックス大佐から援軍要請が届くが、「砂漠の真ん中の射撃場に、なぜ援軍が必要なんだ」と呆れ果てた。女好きのバークヘッド大尉は将軍秘書のドナを見て、彼女を落とそうと決めた。バークヘッドはドナの幼馴染であり、過去に関係を持ったことがある。飛行機に性欲を感じるドナに対し、バークヘッドは自分を飛行機になぞらえて口説き落とそうとする。しかしドナは彼のセックスに幻滅しており、テクニックの無さを罵った。
ドナはバークヘッドが「戦闘機を操縦できる」と言うと態度を変え、彼に誘われてB−17に乗り込んだ。バークヘッドはドナを操縦席に座らせて興奮させ、服を脱がそうとする。しかしドナが我に返ったため、作戦は失敗に終わった。バークヘッドは誤って爆弾を落としてしまい、飛行場で大爆発が起きた。ウォーリーの恋人のベティーは、彼とコンテストに出る予定だった。しかし友人のマキシーンは、兵隊と踊ることを強引に勧める。ウォーリーはベティーの家へ行くが、父親のウォードが出て来たので慌てて隠れた。ベティーの弟メイシーは、姉とマキシーンを落とし穴に落とした。
トゥリー軍曹の部隊はウォードの元を訪れ、沿岸警備隊の司令官が庭を高射砲の陣地に決定したことを伝えた。シタースキーはベティーを口説き、ウォーリーはトラックに乗せられて追い払われた。ミタムラは潜水艦の計器が全て狂っていることを部下に知らされ、それを売り付けたドイツへの怒りを示す。クラインシュミットは「計器は精巧だ。問題は乗組員にある。後はドイツに任せろ」と馬鹿にする。しかしミタムラは「アメリカ本土を攻撃するまでは日本に帰らん」と言い切った。
本土に上陸したミタムラの部下たちは、ホリー・ウッドという男を捕まえて潜水艦へ連行した。ミタムラはハリウッドの場所を教えるよう要求するが、ウッドは協力を拒否した。彼の持っているコンパスを発見したミタムラは、「これでハリウッドに行けるぞ」と口にした。日本兵たちが喜んでいると、ウッドはコンパスを奪って飲み込んでしまった。ミタムラは部下に命じ、ウッドに下剤を飲ませた。
クラムとハービーは、観覧車に乗って敵の戦闘機を発見する民間防衛の仕事を命じられた。高所恐怖症のクラムは怯えるが、オツムの弱いハービーは能天気だった。ウッドは排便したと見せ掛けて見張りの兵士たちを油断させ、逃亡を図った。しかしウッドが脱出した直後、潜水艦は潜航を開始した。スティルウェルはドナとバークヘッドを伴い、映画『ダンボ』の鑑賞に出掛けた。そこへマドックスからの救援要請が届くが、スティルウェルは無視しようとする。バークヘッドはドナを落とすのに利用できると考え、自分が行くことを申し出た。「あそこには戦闘機がある」と彼が口にしたので、ドナは同行することにした。
スタースキーは恋人を取り返しに来たウォーリーを殴り倒し、ベティーを連れてハリウッドのダンスホールに入った。ウッドの持っていたラジオからダンスホールの歌が聞こえて来たので、ミタムラは「その波長に合わせておけ」と部下に命じた。店のオーナーであるラウル・・リプシッツは、コンテストの開会を宣言した。審査員を務めるRKO映画社のミシュキンは、優勝者と契約することを説明した。
ウォーリーが海兵隊の制服を奪ってダンスクラブに乗り込むと、スタースキーが追い掛け回した。ウォーリーは逃げ回りながらベティーと踊るが、スタースキーのパンチを食らった。店に来ていた海兵隊員と陸軍兵士たちの間で、大規模な喧嘩が勃発した。射撃場に到着したバークヘッドは、マドックスたちの発砲を受けた。マドックスはバークヘッドが日本人ではないと確認した上で歓迎したが、援軍が来ないと知って「あの丘まで敵が来ているのに」と腹を立てた。
練習機があることを知ったバークヘッドは、マドックスに「実は偵察に適した人物がいます。情報局の者です。敵の飛行場を偵察したい」と嘘をつき、ドナを連れて練習機に乗り込んだ。練習機が飛び立った直後、ケルソーの戦闘機が着陸した。「芋畑に敵の秘密基地がある」とマドックスから聞いたケルソーは、すぐに飛び立った。ダンスホールの騒動は大通りへ移動するが、駆け付けたトゥリーが機銃を連射して鎮静化させた。練習機を敵機と誤解した司令部は、ロサンゼルスに空襲警報を発令した。バークヘッドとドナは練習機の中でセックスを始めようとするが、ケルソーの攻撃を受けた。練習機を撃ち落としたケルソーだが、地上からの激しい掃射を浴びる…。

監督はスティーヴン・スピルバーグ、原案はロバート・ゼメキス&ボブ・ゲイル&ジョン・ミリアス、脚本はロバート・ゼメキス&ボブ・ゲイル、製作はバズ・フェイトシャンズ、製作協力はマイケル・カーン ジャネット・ヒーリー、製作総指揮はジョン・ミリアス、撮影はウィリアム・A・フレイカー、編集はマイケル・カーン、美術はディーン・エドワード・ミッツナー、衣装はデボラ・ナドールマン、音楽はジョン・ウィリアムズ。
出演はダン・エイクロイド、ネッド・ビーティー、ジョン・ベルーシ、ロレイン・ゲイリー、マーレイ・ハミルトン、クリストファー・リー、ティム・マシスン、三船敏郎、ウォーレン・オーツ、ロバート・スタック、トリート・ウィリアムズ、デヴィッド・ランダー、マイケル・マッキーン、ジョセフ・P・フラハティー、ナンシー・アレン、ルシール・ベンソン、ジョーダン・ブライアン、ジョン・キャンディー、エリシャ・クック、エディー・ディーゼン、ボビー・ディ・シッコ、ダイアン・ケイ、ペリー・ラング、パティー・ルポーン、J・パトリック・マクナマラ、フランク・マクレー、スティーヴン・モンド、スリム・ピケンズ、ウェンディー・ジョー・スパーバー、ライオネル・スタンダー、ダブ・テイラー、イグナティウス・ウルフィントン、クリスチャン・ジーカ他。


『JAWS/ジョーズ』『未知との遭遇』と立て続けに大ヒットを飛ばして勢いに乗っていたスティーヴン・スピルバーグが初挑戦したコメディー映画。
トゥリーをダン・エイクロイド、ダグラスをネッド・ビーティー、ケルソーをジョン・ベルーシ、ジョアンをロレイン・ゲイリー、クラムをマーレイ・ハミルトン、クラインシュミットをクリストファー・リー、バークヘッドをティム・マシスン、ミタムラを三船敏郎、マドックスをウォーレン・オーツ、スティルウェルをロバート・スタック、シタースキーをトリート・ウィリアムズが演じている。
三船は『スター・ウォーズ』の出演依頼を断ったことを後悔していたようで、ジョージ・ルーカスの友人であるスピルバーグが監督を務めた本作品のオファーは受けている。
ところが、こっちは完全にコケた。
三船敏郎って、出演作を選ぶセンスは良くないのよね。

この映画が酷評を浴びて興行的に大失敗したため、それ以降のスピルバーグはコメディー作品に関しては製作に回り、監督は他の人間に任せるようになった。
ちなみに、久々に自ら監督を務めたコメディー作品『フック』では、また酷評を浴びて失敗することになるのであった。
スピルバーグは脚本を執筆したロバート・ゼメキスが監督すべきだと考えていたようだ。監督デビュー作『抱きしめたい』や第2作『ユーズド・カー』がコメディー映画だったことを考えても、その方が上手く行ったかもしれない。
しかし製作したユニバーサル映画とコロンビア映画からすれば、その時点では『抱きしめたい』しか撮ったことの無いゼメキスにビッグ・バジェットの監督を任せるってのはギャンブル性の高いことであり、スピルバーグに委ねることになったのだろう。

ロバート・ゼメキスは本作品について、「ブラック・コメディーを狙っていたが、スクリューボール・コメディーに仕上がった」という風にコメントしている。
この映画が失敗した原因を挙げるのに最も簡潔で分かりやすい説明が、そのコメントではないだろうか。
架空の戦争を描いているのであれば、まだ単純なスクリューボール・コメディーであっても、何とかなったかもしれない。しかし、実際にあった戦争、しかも第二次世界大戦という最近の戦争を扱った場合、やはり風刺を込めて喜劇化した方が良かったんじゃないか。
単純なドタバタ喜劇として作るのは、少々難しいモノがある。

冒頭に「女性が全裸になって海で泳いでいたら潜望鏡がニョキッと現れ、日本海軍の潜水艦が浮上する」というシーンがあるが、これは『ジョーズ』のパロディーだ。その女性を演じたスーザン・バックリニーは、『ジョーズ』の冒頭で鮫に食われる女性役だった人だ。
ただ、ぶっちゃけ、面白くないよね。
だって、「鮫だと思ったら潜水艦」って、何をどう笑えばいいのやら。
浮上したのが日本海軍の潜水艦だったら、それはそれで怖いでしょ。
そうなると、もはやパロディーとして成立しない。
前フリがあったり、天丼ネタの2発目や3発目に「今度は潜水艦」という形でやったりすれば、何とかなったかもしれないが。

しかも、そこからミタムラやクラインシュミットたちの会話シーンになるんだけど、その内容も喜劇になっていない。
「なぜかハリウッドを狙う」という部分ぐらいしか喜劇のネタは無いけど、そこさえも「アメリカ人の戦闘意欲を失わせることになる」とミタムラが考えてロスへ向かうよう命じる展開には、何の笑いも見つからない。
本来なら、そこは「バカバカしい考え、バカバカしい行動」として描かれているべきじゃないのか。

ダイナーでは、シタースキーがウォーリーに腹を立てて足を引っ掛け、難癖を付けて殴り掛かるという展開がある。
これまた、何をどう笑えばいいのかサッパリ分からない。
巻き添えを食らった奴が目の前にあったデカいケーキに頭を突っ込んで顔面がクリームまみれになっているけど、それを笑えってことなのか。
だったら、それは無理。
その後に店主のマルコームがタオルで彼の顔を拭くので、そこで何か笑いを用意しているのかと思ったけど、そういうのも無いんだよな。

ガソリンスタンドのシーンも、「ケルソーが発砲したらガソリンスタンドが爆発しました」というのをギャグとして描いているんだろうと思うけど、「金を掛けてるなあ、派手にやってるなあ」と感じるだけ。
そこは、幾つかの小さな破壊行動が繰り返された流れで最終的にデカい爆発があるとか、あるいはピタゴラスイッチ的な展開でガソリンスタンドの爆発がゴールとして待ち受けているとか、そういうことなら笑いになったかもしれない。
だけど爆破が単発で配置されていても、慌ただしいという印象しか受けない。

飛行場の大爆発も、似たようなモンだ。
その前に一応、「ドナが操縦桿やレバーを操作して翼が動き、掃除していた隊員が転落する」というネタが2つ入っているけど、そこからの流れが悪い。
そのままの流れでドナが爆弾を投下してしまうんじゃなくて、「隊員に注意を受けてバークヘッドの作戦が失敗に終わり、ドナに殴られたバークヘッドが倒れ込んだ弾みでレバーを動かして爆弾を投下してしまう」という展開なのよね。
それだとテンポも流れも悪い。

日本海軍がホリー・ウッドという男を捕まえるエピソードも、「ハリウッド」と「ホリー・ウッド」が似ていることを使って言葉遊びをやろうとしているのは分かるけど、完全にコントの中身を間違えている。
ミタムラが「ハリウッドは?」と訊いてウッドが「俺だよ」と答えるというやり取りなんて、ホリー・ウッドが捕まった時点で予想できるし、それ以上のモノは無い。
ミタムラの発音の悪さをネタにして笑いを作ろうとしているが、笑いは生まれていない。
そこは例えば、「ハリウッドが何なのかをミタムラたちが知らず、ホリー・ウッドという男が標的だと誤解する」とか、そんな感じのネタにでもすれば良かったんじゃないか。

ウォーリーがウォードに見つからないように隠れたり転落して見つかったりするとか、クラムが停止した観覧車で怯えたり腹話術の人形で喋るハービーに苛立ったりするとか、そういうのは戦争が題材じゃなくても出来るネタだ。ダンスホールの騒動がドタバタ喜劇としては最もスウィングしているけど、それも戦争とは無関係。
それらのシーンは決して素晴らしいとは言えないが、少なくとも「喜劇として腑に落ちる」という意味では他の部分よりはマシだ。
ようするに、戦争と無関係なポイントじゃないと、なかなか喜劇を構築することが出来ていないってことだ。
終盤には色んな物を壊しまくる派手なドタバタがあるが、「無駄に金を掛けてるなあ」としか感じない。俳優たちの喜劇芝居は空回りし、寒々しいことになっている。

「軸になる人物が定まっていない」というのは、かなり大きなマイナスになっている。
もちろん「主人公の存在感が乏しい」とか、「軸になる人物が長く消えている」とか、そういうことではなくて、最初から主人公を1名に決めておらず、群像劇としてやっていることは分かる。
でも、それが失敗だったと感じる。
誰か中心になる人物を決めて、「主人公の周囲で巻き起こる出来事」「主人公が絡む人々」という描き方をした方が、話にまとまりが出ただろう。

「マトモな人間がいない」というのも、この映画が抱えている問題点の1つではないだろうか。
誰もがおかしな考え方をしたり珍妙な行動を取ったりするのだが、そういうバカな奴らを活かすためのマトモなキャラがいない。
マトモな奴が近くにいて、バカの行動を否定したり、ツッコミを入れたりすれば、少しは笑いに繋がったかもしれない。
ただ、アメリカには「ツッコミ」という文化が無いんだよな。

ちなみに、2012年の映画『リンカーン』が公開された際、アメリカの雑誌『Vulture』がスティーヴン・スピルバーグの監督した全28作品のランキングを発表したのだが、この作品は第26位だった。
つまり、これが最下位ではなく、それより評価の低い映画が2本もあるということである。
ちなみに、第27位は『フック』、そして最下位は『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』だった。

(観賞日:2014年2月21日)


1979年スティンカーズ最悪映画賞

ノミネート:【最悪の作品】部門
ノミネート:【最悪の助演男優】部門[ジョン・ベルーシ]
ノミネート:【最悪の脚本】部門
ノミネート:【最も痛々しくて笑えないコメディー】部門
ノミネート:【最も苛立たしいインチキな言葉づかい(女性)】部門[ペニー・マーシャル]

 

*ポンコツ映画愛護協会