鐘楼からの風景1 9月3日(土)


 午後7時だったと思う。
 昨夜眠ったというか横になった時間が。
 少し眠ってまた起きて午前0時前まで起きたまま横になっていて朝8時20分までよく寝た。
 複雑だが、つまり寝たり起きたりしてたということだ。
 このところ頭にこびり着いて離れないある不安のせいだろうか。
 枕代わりにウィンドブレーカーを丸めてシーツの下へ入れていた。
 8時25分にベッドを出てトイレへ。
 そして8時半に階下へ降りたがまだcafeいやKaffeeは開いていなかった。
 シャッターも降りていた。
 で外へ出ると昨日チラとみた日本人風の人がいた。
 向こうから話しかけてきた。日本人ですかとギコチなく。彼は中国人だった。
 カナダのバンクーバー在住の学生で…学生とは言わんかったか?
 日本にも東大と同志社に来て学んだことがあるという。
 これからリクセンブルク(彼はこう発音した)へ行くのだという。
 そうこう話している内にカフェが開かれ、私達は食事を共にした。
 さすがバンクーバー氏は英語も流暢で周囲の人と気軽に挨拶を交わしていた。
 テーブルに座っても横の人に身振りよろしく実にうまく話しかけていた。
 私なんか半分も、いや1/4も理解できなかった。あぁ恥ずかし。
 食後、バンクーバー氏に教えてもらった洗面台−なんと2階にそんな場所があったのだ−で歯をみがき、彼と共にマルクト広場まで行く。
 彼の傘(アンブレラと発音したっけ)に一緒に入れてもらう。
 そう、また雨降りの天気だ。

 広場に行くと車の通行を規制しており一面に車を屋台にした市が立っていた。
 食い物あり服飾あり。
 鐘楼の向かって右脇へ入っていくと魚市場があった。
 ここを通りすぎるとジャンク(ガラクタ)市があった。
 大した規模ではなかったが、雨の中、私は風に吹き飛ばされそうなウィンド・ブレーカーの帽子をおさえて一通り見て回った。

 今晩、今宿泊しているドミトリーにもう一泊するのを、まだ頼んでなかったことを思い出し、宿へ戻った。宿帳を見ると私の名前が『MURIMASA MUGUCHI』になってたので訂正させた。
 また宿を出ると途端に話しかけてきた外人がいた。
 カサに入れと言い、英語を話せるかと言い、日本の東京に友達がいて彼は私にネクタイをくれたなどとペラペラと話しかけてくる。
 いやに慣れ慣れしいなと思って広場まで来ると、この町のガイドさんだったと判明。
 500BFで町を案内すると強引な押し売り。
 「私には金がない。ヘタをすると食う金もないんですよ」
と正直に言うと、学生なら400だ、いや300だと値段を下げて食い下がる。私はまたの機会に頼むといってSorryを連発。
 彼はガッカリしたらしく見えるが握手してBye!

鐘楼からの風景2  私は市の中へと入って行った。またクツに水が染みてきたぞ。
 この靴も一つっきりで、日本からずぅーっと履きっぱなしだ。
 元々白い靴のはずが泥のような色になっている。
 ベルフォールの鐘楼の後ろにある、レース物の店のウィンドゥを覗いてピンと来た私は、さんざん悩んだ末、レース編みの丸いのを3枚、そしてボトルエプロン、チョウチョ型のを買ってしまった。
 各々110x3, 150, 100BF。ちゃんとセパレートに包んでくれた。

 寒い! 少し早いがマクドナルドで昼食をと思い立ち、行く。
 下記の品を頼むとなぜか最初にコーラが来たので私がノー・コーラと言うとオーミステークと引っ込め、フィレオフィッシュはまだ少しかかるので上って待っていてくれと[17]番の札をもらって、上で食べていると持ってきた。
 この辺りのくだりは、世界共通だな。

 さすがドリンクなしだと味気なさにも拍車がかかる。
 食べ終って、この日記を書いていると若い婦人が驚いたようにこのノートをのぞき込んできた。
 そしてもう一人向いのテーブルの犬を連れた若い男が近づいてきて、
 「日本では左から右へ書くの?」
とたずねてきた。さらに彼は、
 「昔、アメリカでみた中国の新聞は右から左だったよ」
と言う。
 「今は日中にコンタクトあるのかい?」
とたずねてきたので、私は、
 「10年前にフレンドリィになった」
と説明し私のパスポートを見せ、今は世界中に行くことができるが北朝鮮だけは行けないと教えた。
 「日本でも今じゃ左→右に書くようになったんだ」
と私。帰りぎわに彼は、
 「Have a nice trip, bye bye」
と声を掛けてくれた。
 ヨーロッパでは飲食店へも連れて入れるほど犬のしつけがよろしい。いやしつけがいいから連れ込めるというべきかな。
 私は2時間近くマクドナルドでねばっていた。
 なにせ外は雨と風で寒いとくる。本当に9月初旬かいな。
 私は5BF払ってトイレを利用し、下で追加注文のコカコーラ・ノーマルサイズを飲んだ後、意を決して外に出て、すぐにインフォに駆け込んだ。
 しばらく座って『地球の歩き方』を見て時間のつぶし方を考える。
 横のテーブルにビニール袋を乗せていたところ、老婦人が来てここに座らせてと言ったので私は立ち上がり、テーブルにではなく、ベンチに掛けるようにと、
 「Sit down please!」
と声を掛けた。すると彼女は、
 「メルスィー・ボークー!」
と言った。これまでも「ありがとう」の意志を表示する時に、英語を話している人間でもフランス語でこう言う場面に何度か遭遇した。
 もしかしたら「サンキュー」よりも「メルスィー」の方が、強い感謝の意を表すことになるのかも知れない。

鐘楼からの風景3  外へ出ると陽が射していた。
 私はまたまたウィンドウ・ショッピングでグルグル。
 昨日昼食を食べたレストランのあるデパートの地下で、パンとジャムと缶詰サーモンを買った。

 こうやってのんびり空を眺めていると、ブルージュの空模様はとてもチェンジャブルだと思う。
 空の動きが恐ろしく速い。
 ブラブラとウィンドウ・ショッピング。
 横町を入った所にある小さな広場で簡単な劇が演じられていた。
 ウィンドウ内のテレビをのぞくと、自転車競走を放映していた。
 この夏のツール・ド・フランスの再放送だろうか。
 画面の中の応援もすごかった。
 ヨーロッパでは日本以上に自転車が愛されている。
 日本もそうなって欲しいものだ。
 再びマクドナルドへ立ち寄り、浜谷氏お奨めのソフトクリームを口にした。
 普通の味ではあった。
 マルドナルド前の小さな公園で食べていると2匹のスズメがやってきて片方がもう一方にエサをやっているのを見ることができた。
 もらう方がエサをねだる時、羽根を小さく震わせるのが可愛らしかった。





《データ》
9月3日 土曜日
天候雨のち曇ったり晴れたり
訪問地Brugge
宿泊先Snuffel Kafee/sleep-in(Ezelstraat 49)
宿泊料210BF
食事宿にて丸パン2個, ジャム一コ, バター一コ, コーヒー2杯
マクドナルドハンバーガー, チーズバーガー, フィレオ・フィッシュ, フライドポテト小
宿のベッド上にてパン(ミュンヘンで買った残り), ジャム, マヨネーズ
出費レース製品580BF(2,900円)
マクドナルド+コーラ0.4リットル122+33BF (775円)
デパートSAMRAで買物139BF (695円)
マクドナルドのソフトクリーム15BF (75円)
ビールとフライドポテト小61BF (305円)
宿泊料210DM (1,050円)
合計1,160BF (5,800円) ←土産物が痛かった