蓮ダム周辺を探索

〜「廃」な方にも〜




何の気なしに訪れた蓮ダム
単なる自転車ツーリング
だけでなくナニかが・・

2005.11.18
さて、念願だった江馬小屋林道も走破し、加杖坂旧道へ向かう。
途中、ダムのために集団移転したという、青田の集落を見てみたいという気持ちもあった。
3.ダム湖から青田の集落跡へ
ダム湖を今度は西進する。今度は追い風だし、単調な道はすることもなく、写真を撮ったりして遊ぶ。
ほとんど交通量はない。たまに工事車両が通るくらいである。
辻堂橋を渡る。渡った正面の突き当たりを左折。
一応、左折奈良という看板が出ている。
わざわざ加杖坂を迂回させなくても、R166への案内板を出した方が親切かとは思うが。

単調そうな道が続いている。
民有林林道 上前不殿線 全延長約2km ダム湖に沿って淡々と走っていると、林道看板がいざなうようにあちこちに立っている。林道ファンにとっては、どんな広告看板やネオンよりも魅力的な看板。ついふらふらっと寄ってしまいそうであるが、ここは心をオニにして、先を急ぐ。 林道 笹ヶ谷線こちらは市道でしょうか?
辻堂橋から約10分。
左側に半分アスファルト舗装の広場が見える。

これが蓮ダムにより移転を余儀なくされた村の記念碑である。
茶色い東屋は休憩所になっている。

どんなことが書いてあるのか、近寄ってみる。
「想」というタイトルで、青田地区が蓮ダムによって、集団移転をしなければならないことになった経緯が刻まれている。

これは、ぜひとも現地でナマで見て、一文字ずつ読んでいただきたい。

どんな想いで、ここの住民達が先祖伝来の土地を離れたかがつづられている。読んでいて、胸が熱くなるのを感じた。
今、写真に撮った碑文を読み直しても、なんとも言えない無念の気持ちが伝わってくる。

磨かれた碑石に、たぶん当時と変わらない故郷の山々が反射している・・・
いささか、センチになったなぁと思いつつも、ゆっくり坂を登っていくと、一軒のログハウスがあり、それに気をとられていると突然荒れ果てた廃屋が眼に入り、またKOされそうになる。

この地区の相当な旧家の門だと思われる。まだまだしっかりした建物である。
他にほとんど建物のない地区で、これだけがいまだに取り壊されずに残されている意図はわからない。


近づいてみると、物置部分にはまだ何か残されているようにも見える。

京都の廃村八丁のシンボルがあの白壁の土蔵だったように、これもそうなっていくのかもしれない。
廃屋の周辺は、いくつかの小屋のほかは、こうした空き地になっている。
片隅に廃材が積まれている。

ワタシが立っているこの位置も、おそらくは、どこかの家の門のところである。

広さが寂寥感をあおる。
4.いよいよ登るヨ
意外な展開にドキドキしながらも、先を急ぐ。
ここで、分岐。
加杖坂へは右の道をとる。

左へ行くと地図では木屋谷川に沿ってまだ奥に集落があるようである。この分岐あたりにも数軒の集落がある。

右折していくと、養魚場があり、周辺は植林に変わる。
これとともに、勾配がついてくる。
集落周辺は山村の好ましい雰囲気である。また、奥へ進む道は 林道 木屋谷線 らしい。

昔ながらの山村と、最近越してきたのであろうか、ログハウス風の新しい家もある。
植林と自然林の入り混じった中を、じわじわと高度を稼いで行く。フロントセンターでイケるので、たいした勾配ではないはずである。

この登りそのものは、まだまだ続くが、ワタシは別の要因で、この坂との戦いをペンディングとした。
5.突然の衝撃 「廃」テンションがさらにヒートアップ
フロントギアをインナーに落とそうかな、いや、もう少しと粘っていたら、右手に「青田の大カシ」という青い看板が目に付いた。
見ると、ケーブルカー並みの斜度の激坂がある。

信じられないような角度で車道がついている。
クルマの観光客のためといいながらも、この急坂では4駆でないときついのではと思いつつも、巨木というのも、一応興味の対象となっているので、向きを反転しする。同時に、ギアをインナー×ローに切り換えながら、時々フロントをリフトさせながら、登っていく。

写真は登りきって振り返ったところ。
登りきった角でまず出迎えてくれたホンダTN360-V。
1972年、軽トラ初の4灯式ヘッドライトを備えたモデルである。
我が家にも、コイツの同期生がいた。
静かに、自然と同化するその時を待っていた。

そして、この写真である。
このクルマは、ニッサンサニーの2代目、B110である。
詳しくはわからないが、1970年から1972年にかけて製造されたクルマである。

この自然な感じはどうだ。
今にも小屋から人が出てきて、運転して出て行きそうではないか。


先ほどのTN360とほぼ同時代の車である。
どういう状況で、ここにこの車が放置されたのか。後から持ち込まれたものにしては、きちんとし過ぎている。
廃屋の中でも一番大きなモノ。
すべての戸板が取り外され柱と壁だけになっている。
炭焼き用のかま?
いろいろなガラクタが詰め込まれている。
集落の最後の建物。
厳重に打ち付けられている。
そして、肝心の大カシ。
廃屋のすぐ裏の斜面に立っている。

樹齢は不明、幹周り7m。
胴の周りは洞になっているが、木そのものには勢いがあり、元気そうである。

廃屋のすぐ裏の斜面に立っている。
ちょうど、廃屋をかばうように枝を伸ばしている。
たぶん、この地に人が来て、住み着いて、そして出て行ったのを見てたのだろう。


コナンドイルの小説「失われた世界」をご存知だろうか。南米のギアナ高地のテーブルマウンテンをモデルに、外界と断絶された高地に恐竜が生き残っているという粗筋だ。
大層かもしれないが、そんなことが頭に浮かんだ。
加杖坂への登りを一方的に離脱したワタシは、タイムスリップしたかのような空間で、本当に時を忘れた。
生活の痕跡が生々しく残る中で、人の気配のない寂寥感とあいまって、しばし、現実遊離していたようだ。
さて、加杖坂とのガチンコ勝負はこれからだっ!
HOME NEXT