七曲り坂を上がるところから下千本になる景色が見られる。上の通りは車道でもあり、車が結構通るので広くない道を車がくるたびに避けねばならない。シーズンになると一般車は通れないところなのだ。そしてここは吉野に参る目抜き通りでもある。すぐにケーブルの山上駅がありケーブルで来た人は、ここからバスがあって、中千本や上千本に行けるのだ。

 ケーブル乗り場前の土産屋の並ぶあたりを通ってほどなく黒門(総門)がある。黒塗りの高麗門で、金峯山寺の総門である。現存する門は1985年の再興とある。その後で見上げるような鳥居があるところになる。階段を上るよりも横の道を通る方が楽だった。 銅版の文字が逆光もあって読めない。後で調べたら銅鳥居(重文)-銅鳥居と書いて「かねのとりい」と読むという。聖地への入口 、俗界と聖地の境界を象徴する建造物である。吉野から大峯山(山上ヶ岳)までの修行道には発心門、修行門、等覚門、妙覚門という、悟りへの4つの段階を象徴した門が設定されているが、そのうちの「発心門」にあたるのがこの鳥居である。鳥居の柱が蓮台 の上に立っているのは、神仏習合の名残りであり、現存するものは室町時代の再興である。という。

 土産物屋が並んでいる通りが賑やかになる。しかし、歩いている人は少ない。車がよく通る方が気になる。そのたびに軒下に避 けねばならない。地元の人の生活道路でもあるので、それは仕方ないが観光客は車でなく歩いて見ないといけないと思うのだが。 旅館もたくさんあり、そこへ来る人もいるようだ。有名な柿の葉寿司も本場で店がいくつも出ている。奈良に住んで普段から見慣れているので、あまり関心はないが。

  やがて、蔵王堂の仁王門がある。ここは帰りにゆっくり見ることにして、工事中の道を行く、石垣の修理をしていた。吉水神社へ行く急坂を左に見て、ここも時間があれば帰りに景色だけ見に寄るつもりで先を急ぐ。急ぐといっても先に用事がある訳でなく、昼 食をどうするかと探しながらなのであるが。勝手神社のところで分岐道になる。右が奥吉野まで伸びる道、左は如意輪寺方面であるが実際はすぐに合流もできる。

 紅葉の時期的には少し早いが時間があったので吉野まで紅葉を見に行った。吉野は、何回も行っているが意外と秋の紅葉の 頃は少ない、春の桜の方が有名過ぎてそちらの印象が強いこともある。歩く場所は広くて下千本から奥千本と言われるところまで
は大変なので、今回は上千本までだった。

 吉野とは、奈良県南部の別名で、吉野山から大峰山の山岳地帯をいい、狩りに適した良い野という意味であった。吉野は口吉野 と奥吉野に別れ、奥吉野は山々が連なる山岳地帯で、古くは大峰とよばれ、厳密には吉野に含まれなかった。大峰の山々は熊野まで連なる。我々の吉野の認識は口吉野一帯になる。

 また、サクラの名所としても知られるが、多くは吉野の名を冠したソメイヨシノではなく、ヤマザクラの類で、「 ソメイヨシノ」は東京が発祥地である。そして吉野杉は秋田杉や木曽桧と並んで日本三大美林一つとされ、日本有数の林業地帯となっている。 2004年には、吉野・大嶺を含む紀伊山地の霊場と参詣道が、ユネスコの世界遺産に登録された。

 まずは、近鉄電車の急行で行くが、実際は橿原神宮からは各停になるのだ。特急は少し早いだけだが特急料金もかかるし、急ぐ 旅でもないしとのんびり行くことにした。これが正解で空いた座席で読書し、天気のいい窓外の景色を見乍らのミニミニ旅行であっ
た。駅についても平日でシーズン外れ(まだ早い?)で、観光客は少ない。数名しかないようだが、天気もいいし歩いて登ることにする。
        
 ハイキング道は、ケーブル駅横を通過して階段の道を上がり、やがて自動車通路に出る、この道を行けば上まで行けるが、距離 的には曲がりくねった車道から、短絡的に行く歩行用の道がある。ところどころは階段になったり急な斜面もあるので、少しだけ山
歩きの気分になるところだ。

  木々はところどころ紅葉の兆しもあり、固まっていると望遠で撮って何となく紅葉と見えるが、目で見ている限りは紅葉はまだ、むしろくすんで枯れてきている木もある。紅葉は一斉になってくれればいいが、実際は太陽の当たるところと日陰になるところ、木 の高さによって種類によって様々なので、きれいな紅葉を、見るのは難しい、何度でも足を運ぶつもりでないと一度では無理なことだ。

  七曲りと言われる坂道を登っていると、ケーブルカーが見える。中間で上からのケーブルと交差して降りて行く方も見える。ここは紅葉をバックにと頭の中で思って撮ったが、絵にはでてこなかった。七曲りの道を登って、上の通路に出たところは、赤い欄干の大橋がある。その由来は看板があったので残した。川に架けた橋の役目ではなくて戦争のために作ったということらしい。吉野も歴史は古くそういう時代があったのだ。

吉野紅葉狩り散策 (上)