9. 柳生焼
ここをでてバス停の方にいくと柳生焼の店がある。実はここの喫茶いコーナーに集まっていたのだ、奥さんの説明でコーヒーを飲みながら柳生焼の由来など聞く。資料から引用すると、「柳生十兵衛の祖母「春桃御前」が馬頭観音を焼いたのが始まりで、藩の性格上「お庭焼」の域だったが、明治に至り、長く中断していたこの窯を、井倉家先々代より再興と研究し、先代喜太郎の代に柳生焼と成した。」とある。
茶道・華道の器、道具類、さらに酒器・茶器用具その他食器等、生活日用品から美術品にいたるまで手作りの味わい深い、伝統の焼き物。土は柳生のきらら土で、釉薬も柳生の植物灰を使い、還元焔でじっくり焼いたもの。特色は辰砂の鮮やかなルビーをおもわす紅色と、柔らかな青磁色で、絵柄が柳生の野の草を表わした草花紋などの器が展示されていた。また、今の店所在地は元は造り酒屋「春の坂道」のあったところだそうで、酒屋さんは今は廃業になっているらしい。名前はよく聞いた酒だった。
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バス停はすぐのところにあり、時間がきて帰途につく、この時間を外すとまた1時間あまり待たねばならないのだ。春の桜シーズンには臨時バスもあるのだろうが。天気に恵まれていい散策日和だった。
8.旧家老屋敷
他にも見る場所もあるが、皆な疲れてきたのか三々五々とバラバラになる。帰りは柳生バス停から奈良駅に戻るが、時間もまだあるので思い思いに近辺を歩いたりすることになる。当方は折角きているので、次は家老屋敷を見学する。
旧柳生藩家老屋敷は、 かつての柳生藩家老で柳生藩の財政立て直しを行った小山田主鈴の隠居宅で、現在は奈良県指定文化財。 1964年に作家山岡荘八が所有し、柳生宗矩を主人公にした小説「春の坂道」(大河ドラマ化)の構想を練った屋敷であった。山岡氏没後に遺志により遺族から奈良市に寄贈され、庭園と塀、主屋を補修した後1981年から小山田主鈴と柳生藩および山岡荘八に関する資料館として公開された。
大規模な石垣は天保12年(1841)に尾張国の石工が築いたと刻まれている。石垣上の屋敷は弘化4年(1847)に着工し、嘉永元年(1848)6月に上棟された。入り口の「長屋門」説明文には「正門の両側に長屋があり、中間部屋としていた。明治になって茶づくり部屋に改造されていたが一部を残して両はしの部分が取りこわされた。」とある。
長屋門をくぐって建物を見ると、庭のあちこちに「米蔵」「納屋」「平門」「物置」などの看板が立っていて、その配置が分かるようになっている。建物の中には、古い一般家屋のような印象で資料のパネル展示や、ガラスケースが並べられたりしているので、古民家の風情も削がれてしまう感じ。山岡荘八は、ここで原作の構想を練り、昭和48年(1971)にNHK大河ドラマとなった「春の坂道」で柳生ブームを巻き起こしたようで懐かしい話でもある。主演の中村錦之助の大きなポスターが貼ってあった。
7.芳徳寺
巨岩群を見て坂おり途中から芳徳寺へ向かう。芳徳寺は臨済宗大徳寺派の寺院で、山号は神護山(じんごさん)。本尊は釈迦如来三尊がある。芳徳禅寺とも言われる。柳生藩主柳生氏の菩提寺で、柳生の地区を一望できる高台に位置し、門前の坂の途中に正木坂剣禅道場がある。
寛永15年(1638)大和国柳生藩主柳生宗矩の開基、沢庵宗彭の開山により創建されたと伝えられる。宗矩が父の石舟斎宗厳の菩提を弔うため、柳生城があったと伝えられている場所に建立した。宗矩の子列堂義仙が第一世住持となる。宝永8年(1711)の火災により全焼したが、正徳4年(1714年)に再建された。廃藩後は荒廃して山門や梵鐘も売却され、明治末期には無住の寺となる。
大正11年(1922)に柳生家の末裔である元台湾銀行頭取の柳生一義が資金を遺贈し、本堂が再建された。その後、大正15年(1926)に副住職として赴任した橋本定芳(昭和5年(1930)に住職)は、芳徳寺の再興に奔走。柳生新陰流の普及に努める。
正木坂剣禅道場も、昭和38年(1963)に橋本住職により開設された剣道と座禅の道場で、柳生三厳の正木坂道場に習って命名された。開設にまで40年もかかる一大事業で、宇垣一成、徳富蘇峰、犬養毅、長谷川伸、吉川英治ら数多くの政治家や文化人、経済人の賛同の元、全国から資金を集めて行われた。奈良地方裁判所として使用されていた興福寺別当一条院の建物を移築し、正面入口は京都所司代の玄関から移された。座禅と剣道を一体とした指導が行われており、全日本剣道連盟による全国指導者講習会や、県下の剣道大会の会場に利用されている。
今はひっそりと静かな道場だったが、練習時は熱気に溢れた人々で賑やかなことだろう。窓から覗いたが床もピカピカに磨かれていて伝統を思わせられる。剣道に座禅の心を取り入れた「剣禅一如」の柳生新陰流の精神にも通じる道場とかで、「相手を切らずに勝つ日本で唯一の古武道」といわれる同流派。座禅を組み心を無にすることが強くなる秘けつなのかもしれない。と感じるが、しょせんわが身には無理な話なのだ。