「relativity」は「関連性」という意味である

 「相対性理論」、この用語はもちろん「Theory of relativity」の訳語である。ただしこの「relativity」という語には「相対性」だけではなくもう一つ「関連性」(互いに関係があること)という意味があるのである。そして、「Theory of relativity」(相対性理論)の「relativity」という語の意味は実は「相対性」というよりも「関連性」なのである。したがって、この用語は「相対性理論」よりもむしろ「関連性理論」と訳したほうが適切なのである。

 この理由は、「相対性理論」はそれまで別個のものだと考えられてきた「時間」と「空間」を融合する理論だからである。すなわち、「時間」と「空間」はそれぞれ独立したものではなく、互いに関連しあっているものと考える理論が他ならぬ「相対性理論」なのである。

 したがって、「相対性理論」では「時間」と「空間」を共通の単位で表すことを要求しているのである。そして「時間」と「空間」それぞれの「大きさ」の間の換算係数が言うまでもなく光速度cなのである。

「絶対性」と「相対性」の融合…相対性理論

 「相対性理論」は、その名称に反して、この物質界で最も「絶対的」なものを定義する理論なのである。この「絶対的」なものは言うまでもなく「光速度」のことである。つまり、「光速度」というのはすべての「もの」が到達できる上限の速度であり、物理学において最も重要な基本定数だからである。

 また、「相対性理論」は「時間」と「空間」それぞれの大きさをを共通の単位で表すことだけではなく、「時間」や「長さ」の替わりに「速度」を基本単位にすることを要求している。なぜなら、従来の物理学では「時間」と「空間」それぞれの大きさの比として「速度」が定義されていたが、「相対性理論」ではミンコフスキ−空間におけるある角の三角比として「速度」が定義されている。したがって、言うまでもなく「相対性理論」では「時間」や「長さ」に代わって「速度」が主役になってているのである。

 それだけではなく、「相対性理論」は「時間」と「長さ」の関係のみならず「速度」という物理量を乗除すれば得られる物理量を互いに「同次元」の物理量とみなすことを要求しているのである。例えば、相対性理論では「質量」と「エネルギ−」が同一の物理量であること(「物質(「質量」ともいう)」と「エネルギ−」の等価性)は先述のとおりだが、実はこの「エネルギ−(=質量)」は運動量ベクトル(速度ベクトルにその速度で運動している物体の質量をかけたもの)の第4(時間方向)の成分なのである。

 ところで、この理論が「相対性理論」と呼ばれている理由は、「時間」や「空間」が不変のものではなく延び縮みすることと、観測する立場によって2つの事象の前後関係が変化すること(「同時刻の相対性」という)が当時としてはあまりにも理解し難い事実だったからである。

 しかし、このような「時間」や「空間」の伸び縮みや前後関係の変化には実はちゃんとした法則性が存在するのである。特に、2つの事象の前後関係が変化するケースはもともと2つの事象の間に因果関係が存在しない場合だけである、という事実はきわめて重要である。この理由は、「相対性理論」では光速でもたどり着けない領域との間には絶対に因果関係が存在しないことと、「相対性理論」をもってしても決して「過去」へは行けないことである。

 しかも、「相対性理論」が「光速度」というこの物質界で最も「絶対的」なものを定義している理由は、「量子物理学」が「プランク定数」というこの物質界で「確定的」なものを定義している理由とまったく同じなのである。すなわち、先述のとおりすべての物理量は決して互いに独立したものではなく関係式を通じて互いに結び付いていることと、この物質界には「物理定数」という特別な物理量が存在し、この「物理定数」と同次元の物理量は勝手な値をとることが許されないからである。

時間にも空間にも「最小の大きさ」がある

 ところで、厳密に言うと、実は「時間」も「長さ」も勝手な値をとることが許されないのである。なぜなら、「不確定性原理」により「時間」や「長さ」にはそれらを測定し得る最小の「大きさ」たるものが存在するからである。

 ところで、実は「密度」にもその物体の質量によって決まる最大値が存在するのである。しかもこの「最大値」は「一般相対性理論」によるものと「量子物理学」によるものの2種類が存在しているのである。

 そのうち「一般相対性理論」によるものは「シュワルツシルト半径」と密接な関係にある。この「シュワルツシルト半径」はRs=2GMc^-2(G:万有重力定数、c:光速度)という式で表され、この値が質量Mの物体が取り得る最小の「半径」となるのである。一方、「一般相対性理論」によるものはその物体の位置の不確実さ(「長さ」の次元をもつ)であり、この値はΔx=h/(Mc^2)(h:プランク定数、c:光速度)という式で表され、この値が質量Mの物体の「分布半径」(位置の「分散」の平方根のこと)となるのである。

 この2つの「半径」は物体の質量Mがある値のときに一致する。このときの「半径」のことを「プランク長さ」、このときの物体の質量を「プランク質量」という。この「プランク長さ」、「プランク質量」の値はそれぞれ約10^-35m、10^-8kgである。また、「プランク長さ」を光速度で割ったものを「プランク時間」、「プランク質量」に光速度を2回かけたものを「プランクエネルギー」と言い、それらの値はそれぞれ約10^-44秒、10^9Jである。また、「プランク長さ」を3乗したものを「プランク体積」、「プランク質量」をこの「プランク体積」で割ったものを「プランク密度」と言い、それらの値はそれぞれ約10^-106m^3、10^98kg/m^3である。

 これらの「プランク長さ」、「プランク時間」がわれわれが観測できる最小の「空間」、「時間」の大きさなのである。なお、このように「時間」や「長さ」にそれらを測定しうる最小の大きさが存在する理由は文字通り「不確定性原理」に基づく原理的なものなので将来いくら計測技術が進歩しても「プランク長さ」、「プランク時間」よりも短い「長さ」、「時間」の測定は絶対に不可能なのである。

 なお、このように「光速度」(2.9979*10^8m/s)、「万有重力定数」(6.6726*10^-11kg^-1*m^3*s^-2)、「プランク定数」(正確にはその1/2π倍。h(プランク定数)=6.626*10^-34kg*m^2/s、h/2π=1.0546*10^-34kg*m^2/s)という3つの物理定数を基本単位として選んだ単位系を「プランク単位系」と呼ぶ。ところで、この単位系で用いられている3つの物理定数、「光速度」、「万有重力定数」、「プランク定数」はそれぞれ「特殊相対性理論」、「一般相対性理論」、「量子力学」という物理学の分野で定義され、また用いられているのである。したがって、「プランク単位系」は主に「万有重力の量子論」など「相対性理論」と「量子物理学」を融合する分野で用いられている。

 しかし、「プランク単位系」は「物理定数」だけで構成された単位系なので理論物理学で用いるには最適であるが、この単位系を使うと「長さ」、「時間」、「体積」、「密度」などのわれわれが日常生活で頻繁に使う物理量が非常に大きいかまたは小さい数で表されるため、この「プランク単位系」は通常の物理学ではほとんど用いられていないのである。

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