物質界の「4種類(?)」の「力」
みなさんもご存知のとおり、われわれが住んでいる物質界には4種類の「力」(ここでいう「力」とは物質間の相互作用を指す)が存在していると考えられている。この4種類の「力」とはもちろん「電磁気力」、「強い力」、「弱い力」、「万有重力(『万有引力』あるいは単に『重力』ともいう)」のことである。
ところで、この4種類の「力」のうちその性質が最もよく解明されているものと言えば、もちろんダントツで「電磁気力」である。なぜなら、「電磁気力」という「力」は主に化学エネルギーを通じて「生命」と密接に関わっているからである。しかも、この「電磁気力」は情報通信やコンピュータなどを見ればわかるとおり、われわれの作った「文明」は「電磁気力」によってできているといっても決して過言ではないのである。
一方、「強い力」や「弱い力」はわれわれの五感ではまったく感知できないが、実はこれらの「力」はわれわれの生存に必要不可欠な「太陽」などの「恒星」のエネルギー源として必要不可欠なのである。また、われわれの身のまわりにある物質はすべて原子核からできているが、この「原子核」をつくっている陽子や中性子同志を結びつけているのもやはり「強い力」である。
一方、「万有重力」はこれらの4つの「力」の中では飛びぬけて弱い「力」であるが、この「力」は常に「引力」として働くという性質のため、「生物」や「天体」など巨視的なスケールではむしろ最も支配的な「力」になっているのである。すなわち、われわれ生物を「地球」なる天体にへばりつかせているのは他ならぬ「万有重力」である。
また、これらの「力」にはすべてそれを担う「素粒子」なるものが存在するのである。例えば、「電磁気力」に対しては「光子」がそれに対応し、「万有重力」に対してはそれに対応する粒子はまだ発見されていないが「重力子」という粒子の存在が考えられている。また、「強い力」や「弱い力」についても「グルーオン」や「ウィークボゾン」などそれを担う粒子の存在が確認されている。
解説・・・「万有重力」は通常「万有引力」や「重力」と呼ばれているが、この力の呼称としては「万有引力」や「重力」よりもはるかに「万有重力」のほうが適切である。この理由は、まず「万有重力」なる語は「universal gravitation」を直訳したものに他ならないからである。(「universal」→万有、「gravitation」→重力)
その他の理由は、「重力」なる力は「物体がその近くにある天体などそれよりもずっと大きい物体に向かって働く加速度および力」と定義されており、したがって遠心力など万有重力以外にも重力の原因となる力が存在しているのである。そして、「引力」にいたっては「物体が他の物体の方向に互いに働きあう力」と定義されており(したがってその対義語は「斥力」)、したがってたまたまこの「万有重力」が「引力」だったから「万有引力」と命名されたのにすぎないのである。
さらに言うと、この力が「”万有”重力」と呼ばれている理由は、言うまでもなくこの力がすべての物質の間で働きあう力であるからである。以上のことから、この力は「万有引力」や「重力」ではなく「万有重力」と呼ぶべきであり、したがって本書でもこの表記を「万有重力」に統一している。
物質界5番目の「力」?…生命
ところで、「魂」が「生命」を担う一種の素粒子であるとすればこの「生命」は物質界で5番目(後で述べるとおり、この表現は不適切な表現ではあるが)の「力」であると考えられないだろうか。つまり、「素粒子」というものはもちろん物理学的な存在なので、もし「魂」が存在するならばこの「魂」という素粒子が担っている「生命」も物理学的な存在だということになるのである。
なお、現在では「生命現象」は一種の電磁気学的現象であるという考えが主流になっている。すなわち、「生命現象」なるものの正体は「脳」や「神経」などの内部の電気信号および生物体内で起こる化学反応であり、これら2つの現象はいずれも電磁気学的な現象なので「生命」とは「電磁気力」の例の一つにすぎないのである、という考え方が今のところ大勢を占めているのである。
しかし、よく考えてみると「意志」や「精神」(これらは本書の定義では「生命」の一部である)は生物体内で起こる電磁気学的な現象とはまったく独立していることが直ちにわかる。すなわち、「電磁気力」は単に生物が「運動」や「情報処理」などその生物が生きてゆくために必要としているエネルギーを供給しているにすぎず、決して「電磁気力」は「生命」そのものを形成していないからである。したがって、もし「魂」が存在するとすれば「生命」は「電磁気力」とは独立した物質界第五の「力」なのである。
しかし、やはり「生命」は「電磁気力」の助けを借りてはじめて存在しうる「力」であり、したがって「生命」は完全には「電磁気力」とは独立していないのもまた事実である。そして、実はこの「生命」と「電磁気力」のみならず「電磁気力」、「強い力」、「弱い力」、「万有重力」もまた互いに独立していないのである。このように、自然界にはすべての物事が互いに関係しあっているので同じものが1つのものに見えたり複数のものに見えたりするという奇妙な性質が存在するのである。
そして、この自然界の好ましくない性質に対してわれわれが唯一対処できることは物事に対して固定観念をもたないことである。しかし、われわれ生物の脳の宿命として一度植えつけられた固定観念を変えるのはきわめて困難であり、このことが科学の発展を妨げる原因の一つとなっているのである。