科学法則の意外なる共通点

 ところで、本書で取り上げている科学法則(ケプラー、ニュートンの力学、熱力学、メンデルの遺伝)を見ると意外なところに共通点があることにすぐに気付くであろう。この意外な共通点とは、言うまでもなく4つの法則群がいずれも3つの法則からなることと、その法則群のメンバーの中で2番目の法則が飛びぬけて重要であるということである。

 この中で、言うまでもなく法則群のメンバーの数については何も正しい法則や独立した法則の数のことではなく、学者が発表した法則群中のメンバーの数のことである。なお、この中で「熱力学の法則」は4つの法則からなっているが、正式にはこのうち「熱力学第〇法則」はこの法則群のメンバーから除外するのでやはり3つの法則からなっていると見なされている。

 また、法則群のメンバー中で2番目の法則が飛びぬけて重要であるということに関しては、ただそれのみならず「運動の法則」、「熱力学の法則」、「遺伝の法則」などは法則群の名称ではあるがその名称が単にそれだけではなくそのメンバー中の2番目の法則なる意味にも使われていることが多いのである。また、「ケプラーの法則」についてもこの各メンバーの重要度は同じくらいであるが、この2番目の法則と見なされている「面積速度一定の法則」だけは他の法則とは違って中心力がどんな距離の関数であっても成り立つのでこの法則群の他のメンバーよりもはるかに一般的な法則なのである。

 これらのことに関しては、学者にはつぎのような癖があると考えるしか説明が不可能なのである。つまり、学者には3つの法則をまとめて1つの法則群にしたがる癖およびそのメンバーのうち最も重要なものを2番目に持ってくるという癖が存在すると考えれるのである。

 このうち、学者が3つの法則からなる法則群にこだわる理由は、ことわざなどで「3」という数を用いることが多いのとまったく同じである。つまり、われわれ人類は太古から「3」という数を好んで用いる癖があったのである。この理由は、「3」なる数がわれわれ人類の知能のレベルからして最も数えやすい数だからである。

学者の「癖」は万物共通の「癖」である

 また、学者には最も重要なものを2番目に持ってくる癖があるのは、ドラマでも最も重要なところがそのドラマの真ん中付近に来ることが多いのとまったく同じ理由で説明できるのである。つまり、ドラマは普通「起」、「承」、「転」、「結」という4つの部分から構成されているが、そのうち「起」および「結」の部分はほんのわずかしかなく、その大部分は「承」および「転」の部分からなっているのである。

 ここで、「起」や「結」の担っている役割について考えると、ちょうど入口や出口の役割と同じであることがわかる。つまり、「起」は登場人物の紹介、「結」はそのドラマのまとめがそれぞれ役目なので当然ながら「起」、「結」はそれぞれドラマの最初、最後にある必要があり、また「承」や「転」よりもはるかに短くてすむのである。

 このように学者にかぎらずわれわれ人類には最も重要なものを中央付近に持ってくる癖が存在しているのである。というよりも法則群中での科学法則を並べる順番を決める学者の考え方もやはりドラマの作者の考え方と同じである、という表現のほうが正確である。なぜなら、本書で述べたとおり法則群中でそのメンバーを並べる順番には何の科学的根拠も存在しないからである。

 このことは相対性理論の2つの原理(「相対性原理」および「光速度不変の原理」)を見ても明らかである。つまり、この2つの原理のうち「光速度不変の原理」のほうがはるかに重要である。また、言うまでもなくこの「光速度不変の原理」は「光速度」なるものを特別な速度てあると見なし、したがってこの原理はニュートン力学からの決別を意味しているのである。

 このように、2番目の原理や法則にはこれまでの常識をくつがえす事実が述べられていることが多く、このことが法則群においてその2番目の法則がずば抜けて重要な理由なのである。したがって、法則群の名称をその2番目のメンバーの意味に用いることが多いのもごく当然のことなのである。

 では一方「相対性原理」は何を意味しているのかと言うと、ガリレイの相対性原理の一般化なのである。つまり、ガリレイの「相対性原理」はその範囲を力学のみに限定しているが、相対性理論における「相対性原理」ではその範囲を物理学全体にまで広げたのである。

 また、法則群のメンバーの中の3番目の法則(本書で述べた「ケプラーの法則」、「ニュートンの力学の法則」、「メンデルの遺伝の法則」などがそうである。)には複数の物事を結びつける法則が多いのはドラマにおいて「結」の部分が文字通りこれまでの内容を結びつける役目をしていることとまったく同じ理由である。なぜなら、当然ではあるが複数の物事を結びつける法則が存在するためにはまずその法則によって結びつけられる法則が存在する必要があるからでらる。このことはちょうど企業がある程度国内業務で成功してから海外業務に進出することと同じなのである。

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