久しぶりの韓国、四大陸選手権らしい四大陸選手権。

1 移動、オープニングセレモニー、ペアショート 2月16日(水) 
朝10時の飛行機に乗るために地元駅6時発の電車に乗り、セオリー通り8時過ぎにチェックイン。早々に出国手続きを済ませたところで、旅行会社のサービスで関西空港のラウンジ使用チケットがついていることを思い出す。ラッキー、コーヒー飲もう…と思いきや、このラウンジは2階の国内線出発ゲート。ぬかった。
搭乗ゲートで先に現地入りしているAさんのメールを確認すると、江陵は雪混じりの豪雨らしい。私防寒優先でロングブーツはいてるのに!冬季オリンピック招致を目指している江陵なのに、雪のことを考えていなかったのは迂闊だった。ぬかった…とりあえず売店で折り畳み傘を買う。

今回の飛行機はアシアナ航空で、10時のフライトだと軽食が出てくる。そばとロールパンにはさんだサンドイッチとフルーツだが……。ぶっちゃけた話まずかった。私にまずいと言わせるのだから相当なものである。
まあアシアナ航空だし。この安さでそこまで求めるのは酷というものだろう。

入国審査を待っている間に聞こえた携帯電話の呼び出し音は、中島美嘉「雪の華」のメロディー。実は韓国で男性ボーカルのカバーが出ているのだ。

ソウルから江陵までは高速バスでの移動が一番早い。空港から江南バスターミナル(高速バスターミナルと書いている場合も)へのバスが出ているのだが、案内板に「バスターミナル」の表記がない。内心焦ったが、チケット売り場で聞いてみると「江南」方面がそれにあたるのだそう。6番出口を出ると荷物整理のおっちゃんが「オディガセヨ?(どこ行くの?)」と待ち構えていたので、「かんなむこそっくぽすとぅみなる(ひらがな変換するとこんな感じ)」と言うと600番の表記がある停留所までキャリーを運んでくれた。ほぼ同時にバスが来たので運転手の真後ろの席に乗り込む。

仁川(インチョン)空港はソウル市内から少し離れた海に近いところにある。右手に海とゴルフ場、左手に平地を見ながらひたすらぶっ飛ばしていく。ゴルフ場を抜けると田んぼが広がっていたりする。ソウル地下鉄の沿線上にある金舗(キポ)空港から仁川空港への国際線の切り替えは、羽田から成田へのそれと似たようなことに思えていたのだが…何も風景まで似ることないじゃんか。
金舗空港までは高速道路をぶっ飛ばし、金舗空港を過ぎると街中に入る。ソウルの街は渋滞がひどいと聞いていたのだが、とくにつっかえることなくガイドブックどおり2時間弱で江南バスターミナルにたどりついた。


江南バスターミナルの配置はガイドブックにも載っているが、どうもそれがわかりにくい。野生の勘(?)で人の行く方向についていくと素直にチケット売り場にたどり着いた。デラックスバスで17200ウォン(約1700円)。発車5分前なので焦ったが、幸い行き先には漢字表記もあり、17番の発車ゲートに滑り込む。

高速バスは座席指定で切符に番号が書いてある。「えーとななじゃなくてチ、チ…」とべたべたな独り言を言っていたおかげで、横の席の人がぺらぺらの日本語で話しかけてきた。
彼は横浜の大学で都市工学の博士課程を修得中。古代(朝鮮半島が新羅と百済と高句麗に分かれていた時代)の状況からひらがな、ハングル、漢字の関係について展開していくというかなりのインテリ。みょ〜に言語学的な濃い話が1時間ほど続いた。おもしろいのだが、すみません私胃が気持ち悪いんで寝たいんです。
江陵へ里帰り中の彼に四大陸の話を振ると、見に行く人がいるのかどうか怪訝な様子。なんでも韓国人はスポーツをあまり見ないらしい。見るよりやる方が好きとのこと。
じゃあワールドカップの盛り上がりっぷりは?
「韓国ではサッカー人気ないですよ。ワールドカップは韓国の選手だから応援していたんです」
へえ〜。

途中で一度トイレ休憩。日本のドライブインにあるものよりきれいなトイレだった。食堂(シクタン)もカフェもあって食べ物も充実している。が、胃が気持ち悪いので買ったのはカフェオレとお茶。
彼は江陵名物のすいとんに似た物が入ったスープを食べていた。帰りのバスで食べよう。


高速バスターミナルに着き、建物を出るとさっそく四大陸選手権の大きな横断幕がかかっている。彼と別れてさくっと観光案内所に行こうと思いきや(観光案内所は日本語が通じる)、「泊まるホテルどこですか?」
いや、私観光案内所で相談して手配してもらうつもりなんですけど…と言うとえらく驚かれてしまった。会場のHPの地図を見せ、江陵駅近辺の旅館(ヨグァン)に泊まるつもりだと言うと、彼の浮かぬ顔度合いが倍増する。
「この地図間違ってますよ。」なに!?

HPの地図では会場は江陵駅から南の川を渡ったところにあるのだが、実際には江陵駅の北にあるらしい。江陵駅近辺から歩いて通える距離ではなく、むしろ少し北にある海水浴スポット、鏡浦(キョポ)と距離が変わらないのだそう。江陵駅近辺はお勧めできないし、鏡浦に宿がとった方がいい…と彼と地元のタクシーの運転手のおっちゃんとの間で話がどんどん進んでいく。
「なんで宿とるの?韓国流に家に泊めてあげたらいいのに。」とはタクシーのおっちゃんの弁。
いやちょっとそれは困るから!!

タクシーで一度会場の場所を確認したあと鏡浦のモーテルに直行。彼がモーテルのおっちゃんに交渉し、あっという間に話が決まってしまった。4泊で10万ウォン。宿代を払い、部屋の鍵をもらったところで彼は実家に帰っていく。
日本の家庭で年越しを過ごすことができたのがうれしかったので、何か機会があったら日本人に親切にしたいのだと言っていた彼。ありがたかったのだが…………いやそのごにょごにょと。

……っていうか、このモーテルの名前わからないんですけど。

部屋は広くてオンドルが効いていて暖かくて大きなテレビも化粧台もあるが、ルームサービスはもちろんフロントへの電話番号案内もない。トイレの便器に巻いてある「消毒済」の紙をフロントのおっちゃんに見せてモーテルの名前を確認し、タクシーを呼んでもらって会場へ。

……帰りどうしよう。まあ、Aさんと合流してタクシー相乗りすれば何とかなるか。


会場に着いたのは開会式直前の7時前。車があちらこちらに路上駐車している。これはひょっとして、地元の人達の車?入り口は人でごった返していたが、予想通りに入場料は無料。単独行動が幸いし、ジャッジ側の3階席に滑り込む。
反対側にバナーがあるのは確認したが、こんな人ごみの中で日本人を探し出すのは絶対に無理。わーん、帰りどうしようー(泣)!!


江陵市の市長、韓国スケ連のたぶん会長、ISUに入っている韓国人の人もいました。臙脂色を貴重にデコレーションされた一角は舞台のように見えるが、後でキス&クライに変わるのだろう。なかなか豪華。
なみはやドームクラスのなかなか大きい会場だが、9割がた席が埋まっている。いや、9割がた埋まっているというのは私が入った直後の話で、開会式を控えてどんどん人が増えてくる。階段に座るわ立ち見の人で通路が完全にふさがってしまっているのだ。
開会式は江陵市の市長と韓国スケート連盟会長のオリンピック招致を絡めたスピーチ、そしてISU副会長のDavid Doreの開会宣言。あいさつの一言ぐらい韓国語で言うぐらいのサービスをしてもいいんじゃないか、David Dore。(北京四大陸に来ていた女性役員の「ニィハオ」は観客に通じて拍手をもらっていた。)

で、この人達がペアショート第一グループのウォームアップをどう見るかというと。

おお〜!(すっげー、足あげて滑ってるー!)←スパイラルシークエンスの一部
おお〜!(すっげー、回ってるー!)←つれづれモードのソロスピン
おお〜!(すっげー、跳んでるー!)←注:シングルジャンプ
おお〜!(すっげー、持ち上げてるー!)←リフト
おお―――!!!(投げてるよ――!!)
↑注:確認するようなスロージャンプ(シングル)

何なんだノリのよさを通り越したこのテンションは――!
雪ちゃん達が来ていたら、どうなっていたんだろう。

観客のあまりのノリに押されて、この日のペアショートは競技としての印象がほとんどない。いや、ノリはいいのだがまったりしていて、競技とは思えない空気なのだ。「競技」を見ている私、そのテンションの差に気疲れもしている。
彼らの目にはフィギュアスケートは競技でなく、ある意味曲芸の要素をもつ舞台のように映っているのかもしれない。ただ上位4組の演技に対しては「跳んでる!投げてる!」から一歩進んだ、演技のすごさに対する反応もあったのは間違いない。
ノーミス対決で丹ちゃん達がパンちゃん達を抜いたのが少し意外だったが、パンちゃん達は精彩がなかったのでソロジャンプのサルコウとトウループが結果を分けたのだろう。
韓国選手が演技をする時の会場の反応のすごさは明日知ることになる。


さて。
自家用車でどんどん帰っていくので辺りがどんどん寂しくなっていく。市内バスは通っているのだが、鏡浦へは行かない。あちらこちら歩き回り、運動の汗が冷や汗に変わりかけたところで奇跡的にタクシーをゲット。
乗り込んでハングルを見せて目的地をわかってもらい、車を進めるなり運転手のおっちゃんが「ホンジャ?」と訊いてくる。が、何のことかわからない。
タクシーの運転手によくいる話し好きなタイプで、こちらが日本人で韓国語がほとんどわからないのを知りつつもいろいろ話しかけてくる。「きょんぎじゃん、ぴきょすけいとぅ(競技場、フィギュアスケート)」ということはわかってもらえたが、それ以外のことはお互い全くわからず苦笑い。ハングル続けてたらよかったなあ。おっちゃん、ごめんよ〜。


モーテルに帰り着いた時はもう10時前だったのだが、近くにある食堂はまだ空いていた。久々の韓国料理〜♪カルビタンを注文する。
ごはんといっしょに出てくる付けあわせはキムチが2種類、酢の物が2種類とあと干物をコチュジャンであえたような物。赤色と辛さの度合いがまったく違う久しぶりの韓国キムチ、カルビタンに厚めの小口切りの長ネギがたっぷり入っているのがうれしい。
私以外に客がなく、ご夫婦でテレビを見ながらのまったりモードだったのだが、おばちゃんが話好きだった。日本の温泉地に友達がいることや、3万ウォンは日本円で何円とか、「ヨン様」ネタなど、単語帳を片手に妙にコミュニケーションが取れてしまう。ちなみにシンガポールでも韓流ドラマがブレイクし、おばさん達がツアーで韓国に来ているそうだ。
ちなみにこの時お二人が見ていたテレビは大河ドラマのような歴史物ドラマ。チェ・ジウも出ていた。


(続く)