滞在記録・2 2月12日(水) 移動、女子ショート、ペアショート

関西空港で南ウィングからの出発は久しぶり。平日の午前便ということで、北京行きのゲートにはツアーに参加する年配の女性以外にスーツ姿でパソコンを持っている男性もいる。日常と非日常が共存する、これまでの海外観戦にはなかった光景。この中で一人旅の女というのは少々浮いているかもしれない。
そして乗る飛行機があなたJALですよ、JAL!アジア方面のチケットを取るときに時間の条件が一番いいものの値段が1万円くらい高く、バックパッカーには高嶺の花のあのJAL!(しまった興奮してしまった)
そのJALということで機内食も中華料理を期待していたのだが、機内食はおふくろの味系のバリバリの和食だった。さすがJALというか外国人優先のサービスというか、ターゲットはどの層なのだろう?まずくはないが、今一つ。お袋の味は自分で作った方がおいしいからなあ…

何度見ても飛行機の窓から見下ろす地上の景色は独特のものがある。都市は小学校で作った模型そのものだが、反射光があるのが決定的な違い。道路が血管のようで妙に生々しい。少し進むとすぐ緑の山になり、日本に山地が多いというのがよくわかる。
都会、山地、海を越えて緑の山。海外へ行く飛行機で地上の景色がこれだけ変わるのも珍しい。ソウル上空を通過する時にはアナウンスが入った。ソウル近辺の大都会、再び緑の山、再び海。
着陸の前になると緑の山が見えなくなり、茶色の土地にうっすら薄い色のものがかかっている。茶色の板の上に白いペンキを薄く塗り、下の色が透けて見える状態を想像していただければ近いだろう。雪は降るのだろうか。黄砂がすごいらしいが、その色なのだろうか。
飛行機に乗っている間はもう一つテンションが低かったのだが、独特の建物が見えてくるうちにだんだんわくわくしてきた。建物に書いてある中国語の表記を見てスイッチオン、着いた!
雪ちゃんと宏博兄さんの国。早く飛行機から降りたい、街を歩きたい。

しかしままならないのが入国審査。私の並んだ列で一人の人がかなり長い間引っかかっていた。係員が交替し、なんとかその人が終わってからも一人一人にかかる時間が他の列よりやたらに長い。並ぶ列を間違えたか(^^;)着いてすぐ女子ショートを見る予定だったので、結構なタイムロス。なんでこんなところで足止め食らうのよ、第3グループには間に合うかと思っていたのに!電光掲示板に「笑顔で迅速に対応します」と言っていそうなメッセージが定期的に流れているのが余計に腹立たしい。
ようやく出迎えのスタッフと合流し、ワゴン車でホテルまで送迎してもらう。車の中で添乗員はバスガイド状態。万里の長城や故宮博物館の案内からカラオケナイトツアーまで、いろいろなオプショナルツアーを勧めてくれるが、フリーツアーを利用するのは既に目的があるからなのだ。私以外の旅行者もみんなそんな状態。お姉さんごめんね(^^;)
適当な場所で車がいきなり建物の前の道に乗り上げる。そこ歩道だろうが!!と驚いている間に歩道を十数メートルつっきり、ホテルに到着した。


部屋についてからチケットの担当者がメールで教えてくれた所に電話をかけ、今からチケットを受け取りたいことを伝えるといつでもOKとのこと。それどころかわざわざ問い合わせすること自体が不思議そうだった。どうも受け取り時間の規定はないようなものらしい。それならはじめから書くなよ!
会場の首都体育館は北京動物園の近く。もよりの地下鉄の駅、西査門(しんちーめん)駅から北京動物園まではバスで行けるようなのだが、ガイドブックでは路線が今ひとつわからない。ホテルのフロントで訊いてみると地下鉄の駅から北京動物園まで行けるバスはないという。仕方がない、今日はタクシーか。相場の値段を教えてもらい、ホテルの前に停まっているタクシーに乗り込む。さっきバスがつっきった歩道と思っていた所は駐車用のスペースで、車が通っても問題はないようだ。

北京といえば密度が高くて渋滞が名物ということを聞いていたが、そうでもない。中心地だからなのか状況が変わったのかはわからないが、片道2車線3車線は当たり前、道路が広い!渋滞も全くなく、順調にスピードを飛ばしていく。この分だと女子ショートが見られるかもしれない。
首都体育館でタクシーを降り、歩道橋を渡って道路の反対側にあるオフィシャルホテルへ直行。ロビーの目立つ所に四大陸用のデスクがあり、スタッフの英語対応もバッチリ。チケットは一枚づつ個別にホッチキスでとめられている。チケット担当のお姉さんが話しやすい人だったので、ついでに西査門駅まで行くバスの番号を教えてもらった。なんだ、バス通ってるんじゃん。
首都体育館の前に通っている道路はこれまた片道3車線で歩道橋を走りきるのも楽ではない。ああせめてBit-Naちゃんと思音ちゃんがいる第4グループには間に合って〜!!


リンクには複数のスケーターがいてウォームアップ中、観客席は…ガラすき。
視覚の第一印象を押しやって会場の中を小走りしながら見た電光掲示板の一番上の表記はBit-Na Park!第4グループに間に合った!

Bit-Naちゃんは衣装と始まりのポーズから演目がわかる、かわいらしいカルメン。3ルッツ+2トウはきめたものの単独ジャンプのループに少し乱れ。ちょっとスピードが落ちたかもしれない。


この笑顔がいかにも!思音ちゃんが紹介される時に近くにいた4、5才くらいの女の子がいっしょにいる女性に「ちゅんぐぉ、ちゅんぐぉ!」と言っていた。「お母さん、中国の選手がいるよ!」というあたりだろうか。
演技が始まってからいきなり、助走がほとんどないダブルアクセルがびゅーてぃほー!サルコウ+2トウもしっかりきめている。アジア大会の成績でジャンプが戻ったのは見当がついていたが、本当に戻った!バンクーバーでも跳べず、ウィーンカップでも成績が悪かったのでこのまま消えてしまうんじゃないかと思っていただけにこれはうれしい。
最後の3トウをきめてからはずっと笑顔。体が少し丸くなってだいぶ大人っぽくなったけど、優雅なピアノ曲(Warsaw Concerto)をしっとり滑りながらこうやって笑うところはやっぱり思音ちゃんだわ〜。

しかしその衣装とメーク…ミシェルが好きなのは見当ついていたけど(実際にプロフィールで尊敬する人に挙げている)思音ちゃん、あなたすぐりんも好きでしょう(笑)!

アンバー・コーウィン(アメリカ)は出だしに3トウ+3トウのコンビネーションをきめていい出来だった。今まで彼女の演技は好きではなかったのだが、同じショートなのに京都NHK杯で見た時とも印象がまったく違う。これまでは陽気なアメリカ娘という印象だったが、しっとり大人の女性という要素が少し出ていたと思う。


ガラガラの観客席、観客層は小さい子供がいる家族連れといったところ。まあ平日の昼間だからこんなものか。ブロック大会みたいに身内だけかと思ったが、どうも反応が乏しい。選手が出てきた時と演技が終わった時には礼儀正しく拍手をしているところから察するに、スポーツ観戦というよりは発表会を見るノリに近いようだ。


Gladys Orozco(メキシコ)は長野世界選手権にも出場していた選手。その時はサンバのようなラテン系満開の演技だったが、今回は情熱的なタンゴの演技でこれまたラテン系。ダブルアクセルは引っかかりながらなんとかきめたものの、サルコウのコンビネーションを転倒、3トウも両足とあまり出来のいい演技ではなかったが、目の力が全く衰えていなかった。さすが国の一番手、そのあたりは強い。

Shirene Human(南アフリカ)は長年南アフリカの一番手として世界選手権に出場し続けているベテラン選手。だが年齢と共に力が落ちているのだろうか。上半身が氷と平行になりそうなあのレイバックスピンが見られなかったのが残念。
それにしても「Winter」をそのまま使うとは、度胸あるなあ。

Anastasia Gimazetdinova(ウズベキスタン)はマリニナと共に2000年ニース世界選手権に出場し、この時はきれいなスケーティングで予選を通過している。3年ですっかり大人の女性になった。地味なようで独特の華と艶があるタンゴの演技は四大陸というよりロシア選手の印象で、特にブティルスカヤを思い出させる。
出来の悪い演技で自分自身に腹を立て、得点が出てから早々にキス&クライを去る所もブティルスカヤを思い出させた。

スケートアメリカできっちりそのものの演技をしていたアン・パトリス・マクドノフ(アメリカ)はなぜかダブルアクセルをシングルにし、それ以外の点でも妙に精彩がなかった。それでも力が違うのは伝わるのか、演技中に少しだけ拍手が起こっていた。

レポを書いていない選手達の写真はこちらをご覧ください。


首都体育館はいかにも体育館という外見。中は常設らしい店はあってポップコーンやフランクフルトなどのスナックは売っているが、パンフレットは売っていない。時間つぶしと食料の買い出しをかねて外へ出る。
会場から少し行ったところにフランス系の大型スーパー、カレフールがあった。へえ、おもしろ〜い。中は外資系の大型店によくあるつくりで倉庫みたいになっている。家電や日用雑貨が区画分けしておいてあり、種類は少ないが投げ物サイズのぬいぐるみも買える。正面入り口近くにはチョコレートの特設(?)コーナーがあった。中国にもあるのね、バレンタインデー(笑)。
肝心の食べ物が見つからず、外へ出るとケンタッキーがあった。海外旅行の食事で多国籍企業のファーストフードはなるべく避けたいのだが、近くに店が見つからない以上そんなことは言ってられない。ツイスターのセット、コーラをオレンジジュースに気合で替えてもらって注文する。
人ごみをかき分けてなんとか席を見つけ、食べると歯ごたえがすごい。中を見ると短く切っただけのきゅうりと長ねぎが入っていた。なるほどドラゴンツイスターだから中華風ということか。日本のファーストフードだったらもう少し細く切っているところなのだろうが、さすが中国(笑)、ファーストフードも違う。長ねぎが丸ごと入り、ソースも手抜きなしに辛いので結構強烈な味。私は好きだが辛い人には辛いかもしれない。


会場に戻ると中からざわめきが聞こえてくる。中に入って席を見下ろすと、ぎっしり人で埋まっている。人いっぱいいるんですけど!!前の方は満席、後ろも6、7割ぐらい埋まっている。なんだなんだ!?昼とはえらい違い。
オープニングセレモニーでは照明が落ちて、一気に大きな大会らしくなった。パフォーマンスは青緑色の衣装を着た中国風天女の舞。ISUのお偉いさんの女性が開会宣言(?)の始めに中国語であいさつをしたのか、観客が盛り上がる。


玲奈ちゃん達は青い衣装の成果カルメンには見えないカルメンで、シャープな印象の振り付け。玲奈ちゃんの身のこなしにシングル時代の面影がほのかにうかがえる。ツイストリフトが低く、ソロジャンプでボールドウィンさんがお手つきと少々もたついた印象だった。

ラリビエール組(カナダ)はペアには珍しく男性の方がキャラが目立つペア。どこか退廃的でキザな世界の凝ったプログラムなのだが、ソロジャンプで女性が転倒。ソロスピンでも回転がずれてしまい、ミスが多かったのが残念。

パンちゃん達はシークレット・ガーデンのようなしっとりした曲。トン君がソロジャンプをダブルにしたかもしれないが、ノーミスのきれいな演技。そろそろ雪ちゃん達との勝負を気にさせる状態になってほしいものである。


さて雪ちゃん達がいる第2グループである。パンちゃん達がいる第1グループの時のそれなりに盛り上がっていたが、ウォームアップ開始で二人が出てきた時の盛り上がりはなかなかすごい。演技開始で紹介された時の盛り上がりはもっとすごい。昼間とえらい違いじゃん!
雪ちゃん達が位置について拍手が収まりかけた頃に「じゃ―――よう!」という子供の声。「がんばれ〜〜〜!」と叫んでいるようなものだろう。可愛いなあ。

この雪ちゃんの笑顔!ソロジャンプで雪ちゃんに少し乱れ。何かちぐはぐな印象がぬぐえないのは調子が悪いのかプログラムが合っていないのか…ペアスピンをはじめ、いつも以上に宏博兄さんが雪ちゃんをフォローする動作が目についた。そこそこの出来というところだろうか。パンちゃん達の方が出来はよかったと思う。
今シーズンに入っていいと思える二人の演技をまだ見ていない。確かに勝負に勝つためのことはしているのだが、シーズン後半戦に向けて考えるとどうも不安だ…。


微妙な心境のディープなファンをよそに、ノーミスの演技に観客は大喜び。チャイニーズ、熱い!人数をそろえたらカナディアンのエルビスに対する盛り上がりといい勝負になるだろう。欧米だったらスタンディングオベーションが起こっている盛り上がりっぷりだが、その習慣はないらしい。
そして観客に応える雪ちゃんの笑顔が弾けている。演技の間もずっと笑顔だったし、この辺はやっぱり地元だね。

この雪ちゃん達の後に滑る羽目になったついてないペアは悠子ちゃん達。しかし二人ともソロジャンプをなんとかこらえてノーミス!二人の間の空気が和らいだようで一安心。モスクビナコーチが来ていたのには驚いた。


ラングロワ組はツイストリフトが少しおかしかったような気がする。ソロジャンプで二人とも手をついてしまい、どうも冴えない演技。いかにも旧ソビエト人の振付師に頼みました!という振り付けだが、本人達に合っていないのか調子が悪いのかは微妙なところのような気がする。
(モロゾフの国籍はロシアじゃないですよね?)

丹ちゃん達(張組)はガンガン飛ばして勢いで突っ走る演技はよくも悪くも昔の雪ちゃん達にそっくり。演技自体は去年からあまり変わっていないような気がするのだが、丹(ダン)ちゃん、あんなにでかかった!?
ラリックの放映をみて薄々思っていたが、子供子供していた去年からえらく大きくなっちゃって!ハオ君との身長差が雪ちゃんと宏博兄さんぐらいになっている。トトミアニナくらいあるんじゃないだろうか。

Elizabeth Pitnam & Sean Wirtz(カナダ)
女性の金髪がかぶってしまって…(^^;)男性はカナダのペアスケーター、クリス・ワーツの甥。シングルもやっていて、かつてシングルでナショナルチーム入りし、グランプリシリーズに派遣された事もある。女性もシングルと二足のわらじで今期のカナダジュニア選手権で表彰台に乗っている。
出だしを聞いてぶっ飛んだ。タイス(の瞑想曲)!度胸あるなあ。
ソロジャンプでサルコウをきめたのはさすがシングルと掛けもちしているだけのことはある。なのにスロージャンプで転倒したのがもったいない。上位勢より点数は落ちるが自分達なりに解釈して演じているのがわかる演技。それより何よりユニゾンがものすごくいい。二人で動く時に違和感やぎこちなさがなくて、組んで1年目とはとても思えないほど。
しかしこの男性がぐるぐる回りながらやるデススパイラルは、カナダのペアで流行っているのだろうか(笑)。サレー組、ラングロワ組とはコーチが違うのだが。



レポを書いていないペアの写真はこちらをご覧ください。


会場に滑走順の表示は何もないが、オフィシャルホテルで用紙をもらう事はできた。おお、ニースより対応がいい。

さて、帰るぞ。と気合を入れつつ結構びびっていたりする。
実は言葉が通じない海外旅行で一人でバスに乗るのは初めてなのだ。しかも状況をまったく把握していない初日。びびるくらいならタクシー使えよというところなのだが、バスと地下鉄なら4元で帰れるのにタクシーで45元も使うのは嫌。

チケット受付のお姉さんは15番のバスで西査門駅まで行けると教えてくれたが、停留所の時刻表に15番の路線がない。そして時刻表が載っている路線にはどれも西査門駅の表示がない。しかも終バスは9時半ごろ、現在8時半をまわっている。ちょっとやばいかも。顔から血の気が引いてきた。
片道3車線ある通りなのでバスはしょっちゅう来る。バスの入り口付近に停留所の名前が書いてあるのでそれを見て適当なのに乗ればいいようなのだが、「西査門駅」の表示がない。そもそも全部の停留所の名前が書いてあるとは限らないし、ひょっとしたら駅の近くにまったく違う名前の停留所があるのかもしれない。地図では東への一本道で曲がる所はなさそうなので、どれかに乗れば駅の近くに着くとは思うのだが、海外で夜の単独行動でそれをする度胸はない。どっ…どーしよー!!
待っていても15番のバスは来ない。何台かバスを見過ごしてブチ切れた。こーなったら地元の人に訊いて適当なバスに乗ってやる!ということで若い女性二人組に地図を見せながらアプローチ。
ラッキーなことに片方の人が少しだけ英語が通じる人だった。地下鉄西査門駅に行きたがっていることが何とか通じ、幸い彼女達の乗るバスも同じだったようで、一緒に乗り込む。二つ目の停留所が目的地。運賃(1元)をおごってもらってしまい、「謝謝」と「再見」を連発してバスを降りる。

のはいいが。
駅の入り口が見当たらないんですけど!!!

それらしき建物がまったく見えないのだ。左側に道路と高架、右側にオフィスビルらしき建物。周りに駅の場所を示していそうな表示も地図もない。バスを降りたのは私だけで人について行くこともできない。こうなると勘の世界。右の建物へ向かうか、左の道路を渡って高架の向こう側へ行くか……!
駅といえば人や車が集まる場所。建物の周りは人がいない。それにこの高架は確か行きのタクシーで通り、高架の駅があるのをチェックした覚えがある。車の流れは左よりだし、心なしか左側の方が明るい気がする。よし、左側へ行こう。信号のない道路を渡り、明るい方へと道を選んで歩いていって、なんとか地下鉄の入り口にたどり着いた。

地下鉄は切符も改札も自動ではなく、すんなりホームに入る。しかしどっちの方面に乗ったらいいのだ!?片方の電車が発車直前で、アナウンスに条件反射で慌ててしまう。慌てながらも行き先方面の表示に見覚えのある駅の名前を見つけ、発車直前に走りこんだ。

ふう、やれやれ。
この旅行、結構手ごろなサバイバルかもしれない。

(続く)

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