滞在記録・1 手配
四大陸選手権は心惹かれるものは大いにあるが、いろいろな要素を考えるとなかなか手が回らないという試合。2003年の北京四大陸は中国でおそらく初のシニアの国際試合(ジュニアGPは何度も開催している)。決定した時点でかなり魅力的なものは感じていたが、ソルトレークシティーオリンピックの次のシーズンというのがネックだった。いくらアジアン応援人を名乗る私でも、エルビスも雪ちゃん達もいない海外観戦をするパワーはさすがにない。
それに加えて02年長野世界選手権が終わってから精神的にかなり低迷した時期があり、北京四大陸を見に行くことを決めたのは02年京都NHK杯が終わった後だった。

で、恒例の手配話なのだが。


その(1) チケット
今までの海外観戦は何ヶ月も前からチケットを手配していたが、今回は2002年の終わりになっても中国連盟の公式ページに情報が出なかった。まあ日本でも2000年大阪四大陸のチケット発売は年が明けてからだったのだから焦ることはない。「売り切れる心配しなくていいんだから当日とび込みでオールイベントチケット買えばいいわ。中国だったら物価もそんなに高くないだろうし。」と、極めてのほほんモード。
2003年に入ってようやく四大陸選手権の公式ページが動きだし、チケットの値段と連絡先が発表される。オールイベントチケットの一番いい席の値段が…3000元(約45000円)!?ガイドブックによると水族館の入場料が60元。中国の物価を甘く見ていた、一般娯楽との比較を考えると日本なみの高さですな……。
メールで問い合わせてから、Wordのファイルで申し込み用紙を送ってもらい、プリントアウトしてファックスで申し込む。カード払いか現金払い、人民元と米ドルのどちらかで払えるようになっている。整理番号らしい数字とアルファベットの羅列が返信され、チケットの受け取りは試合が始まる前日、2月11日の午前中にオフィシャルホテルで引渡しをするという。
ちょっと待て、私12日の午後に北京に着くのに!土日だけ観戦する人もいるのに、そんな設定されてもチケット受け取れるわけないでしょうが!そのあたりのことをメールすると「着いたら連絡入れてください」と電話番号をメールしてもらう。やれやれ。

このチケット取りに関するメールのやり取りは結構楽しかった。担当者も気合が入っていたのかレスは早いしわかりやすい文章で、いつもメールの最後についていた「If you have question, please do not hesitate to ask us.(疑問に思われる点があったら遠慮せずにご質問ください)」という文は、ビジネス用語なのだろうが大いに心がなごんだ。国際試合を開催することがどういうことなのか、向こうにもよくわかったことだろう。GPSや世界選手権を開催する時に生かしてくれるといいのだが。
大阪四大陸を見に行きたいと思っていた外国在住の外国人はどうしていたのだろうか。この時は日本スケート連盟の公式ページはまだなかったと思うのだが…(四大陸の公式ページはあった)

しかし中国連盟、一つポカをやってくれた。
チケットの手配をしている頃、何かの偶然で公式ポスターと思われる画像を見たのだが(URLは覚えていません)、これが……。
他国のスケート連盟オフィシャルカメラマンが撮り、雑誌に載せている写真と全く同じポーズや表情の写真…ぶっちゃけた話見たことがある写真ばかりを使っているのだ。著作権大丈夫なのか、日本スケ連クレームつけなくていいのか!?
しかもポスターに載っているメンバーが完全にJARO物。アメリカ女子上位3人+ワイスは結果的に出なかっただけなので仕方がないが、なんで四大陸選手権出場資格のないアニシナ組やドロビアツコ組の写真があるわけ!?
いろいろなスケーターの写真が使われているにもかかわらず、本当に出場したのは一組(雪ちゃん&宏博兄さん)だけという謎の公式ポスター……。


その(2) 飛行機+宿
北京ほどのメジャーな場所になると、宿と飛行機がセットになったフリーツアーが一番便利。日本の航空会社を利用するにしても、格安チケットを単独で買うより一人旅+1泊延長の追加料金を取られてもフリーツアーを利用した方が安くつく。もっと安くつかせたいなら中国系航空会社の格安チケットをとって現地で安宿を探して泊まるという手はあるのだが、その飛行機だと着く時間が遅いし、中国語ができないのにそんな超高級テクニックにトライする度胸はない。
ただ一つの不満は空港とホテルの往復が添乗員つきだということ。(旅行会社としてはサービスなのだが)言語が違う外国人向けにいろいろな対応がなされている、いわば安全地帯の空港を離れて街へ出るために、公共の交通機関の乗り場を探して乗るというのは海外旅行で自力でする初めての行動。あのどきどき感が体験できないのは物足りないのだが…まあ安さと時間には代えられない。



こういう感じで手配はあっさり進んでいったのだが、実はかなり心配な点があった。
かつてハルビンで開催されたジュニアグランプリでは日本人選手が転倒した時に笑い声や転倒したことを歓迎する意味での拍手が起こったという。指定席をとっても先に座った者の勝ち、座席番号を見せて交渉しても譲ってくれなかったという……。


過去がもたらした負の影響は黙って受けとめるしかない。


だがいくら中国応援人を名乗る私でも、会場で日本人選手がコケにされて頭に血が上らないはずがない。指定席を交渉しても譲ってくれないなんて、常識…というか日本の常識が全く通らないんじゃないだろうか。フィギュアスケートの観戦も慣れていないだろう。もしマナーが悪くてカメラのフラッシュをバシバシたくような観客だったら……!
あまりのフラッシュの多さに小さいカメラを持っている観客が全員信じられなくなり、ほとんど観戦を楽しめなかった長野世界選手権のような思いをするのは二度とごめんだ。それに雪ちゃん達の国の観客にマイナスイメージを持つことになる事も怖い。


結構小心者の私。何度海外旅行をしても行く前は不安になり、神経のどこかが常に尖っている。しかしアメリカやカナダに行く時より不安が大きいというのはどういうことだろう。これだけナーバスになったのは四年前、ヘルシンキ以来だ。アジアン応援人を名乗っておきながら、実際に中国に行くことになると身構えてしまうというこの矛盾は何なのか…今さら問いかけることではない、答えは自分の中でもう出ている。それと正面きって向き合うのが怖いだけなのだ。
ガイドブックには載っていない情報を仕入れておこうと中国に滞在している方の生活記を読んだら、逆に不安が大きくなった。それ以外の根本的な所で弱っているようで、なかなかテンションが上がらない。



不安にきりはないが、とにかく今回の四大陸は北京なのだ、北京。
フィギュアスケートの新興勢力になりつつあるのに情報がほとんど伝わらない謎の国、中国での国際試合。しかも雪ちゃん達が普段練習して暮らしている所。この私が行かずしてどうする!
行くわっ、北京(べいじん)!雪ちゃん宏博兄さん待っててね!(←おいおい)



続く


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