海に行こうと友達のカップルが言い出した。4人で行こうと言う。
当たり前のことだが海に行くには水着を着なければならない。
この汚い体をさらけ出さなければならないのだ。知らない人ならまだいい。
何を言われてもそれっきりの見知らぬ人なのだから・・・だが、彼らは違う。
汚い体を見られた後も友達なのだ。 あとぴーではない彼らはわたしの体を
どう思うのだろうか・・・ とりあえず水着を持って海へ行った。 しかしわたしは
「風邪をひいてるから入るのやめとくよー」と着替えなかった。 彼女の水着姿が
うらやましかった。 海に入ると治るよって誰か言ってたけどしみて痛いだけだと思った。
わたしは一生ビキニも着れないんだろうなぁとふと悲しくなった。 その頃は
背中やお腹に茶色の掻いたあとがたくさんまだらに残っていたから。
アルバイトでパンの製造をするようになっていた。かなりの重労働だった。
朝8時すぎから夜10時すぎまで、ご飯は合間に交代で立ち食いするという忙しさ。
でも 楽しかった。 パンを作るのは手先の器用なわたしに向いていた。
そしてそこの重役さんの紹介で調理短期大学に入学することになった。
この頃には膝の裏のぐちゅぐちゅだけで太ももの分厚い皮もなくなっていた。
「あんた アトピーやなぁ・・・」 うっかりと膝の見えるスカートをはいた時に指摘された。
イヤだった。 他にも一目でアトピーをわかるような顔の子もいたがお互いに
そんなことは話題にもしなかった。 だが、あとぴーと無関係な人間に限ってそういう
言ってもしょうもないことを言う。 ( あとぴーであるから何? あんたに迷惑?
あんたが治してくれるの? ) そんなことは思っても言わなかったけど・・・
その頃はあとぴーっていうのは掻かなきゃ治ると思っていた。今までがそうだったから。
まぶたにできた時も 肘の内側にできた時も 太ももにできた時も 掻くことをガマンしたら
治っていたから。 あとぴーの彼と高校時代に行った有名なお医者さんも
「そんなにひどくないから、食べるものに気をつけてね」と言ってただけだったし・・・
そして学校で気になる人がいたわたしは今年の夏こそは絶対に掻かないように
しようと決心していた。 彼はとてもキレイな顔と白い肌だったから・・・
バカだけど、気持ち悪いとか思われたくなかった。ちょっとでも良く思われたかった。
そして半そでを着るといつも「これ どうしたん?!」と言われてたのに
努力のかいがあったのか少しカサカサしただけで夏のひどい時期が終わった。
好きな気持ちってすごい! やっぱり掻かなきゃいいんだ! そう実感した。