「金色夜叉」的人間


 天谷直弘のいう「町人国家」という概念は周知のように、経済価値の追求、つまり金儲けに専心して生きる国のことを言う。

 日本が高度経済成長期にあった196070年代の天谷氏は、日本の国家イメージをこの町人国家においていた。そして述べている。

 「人が腹いっぱい食べられるようになった段階で、なお食べることしか考えないとしたら、その人は豚と大差がない。

 人間が貧しいときに一生懸命金儲けしようとするのは、極めて正常な人間の行為である。

 ところが、相当の金持ちになっても、なお金儲けだけしか考えないとすれば、その人は「金色夜叉」的人間だ」