アメリカ村
アメリカ村は、今から約10年前にできはじめた。ぼく自身も、6年前にアメリカ村に中古レコードの専門店を開き、現在に至っている。
この町に住んで6年間、ぼくは大いに仕事をした、と言うよりは、大いに遊んだと言った方がいい。実によく遊んだものだ。
近くのパブや、小会場を借りては、ホラー映画会をやったり、ディスコでの映像ショーや、デパート屋上を占領しての夏の夜のレゲエパーティーなど。「アメリカ村ユニオン」を作ってからは、他のメンバー達と一緒になって、町全体で遊んだ。「アメリカ村ユニオン」のことはあとで書くとして。ユニオンはこの町で、公園でのイベントやパーティー、野外映画や、バザール、会場を借りてのニューアート展覧会をやったり、ミニ放送局も作った。
これらはみな、町全体でやったイベントだから、思えばこの町の人達も実によく遊んだものだ。
ぼくは、本当にこの町が大好きだ。
この町の店々は、それぞれ遊び心とともに強烈な個性と主張を持っている。そしてその個性は、むしろ排他的でもある。そのため、アメリカ村では商店会的な組織はできにくい。町全体でのバーゲンセールなどあり得ないのだ。
個性的な店には、個性的な若者が集まる。彼らは時代に敏感だ。他人のマネはしたがらない。アメリカ村に古着屋が多いのもそのためだろう。他人がみな着ているものは過去のものとして、自分なりのものを実につけて、自分なりの着こなしをしようとしている。それがまた、新しいファッションを生み出して、全国のファッション雑誌が注目する。
アメリカ村にいると、いつも若者雑誌やファッション雑誌に監視されているような気になる。
ぼくの中古レコード店が受け入れられたのも、そんな若者のおかげだろう。また、ぼくが1年半前に開けたアジアのポップスを集めた専門レコード店が、実に珍しく変わった店で、ビルの5階にありながらも続けていられるのも、アメリカ村ならではのものだろう。
町が個性、主張を持っているから、個性、主張を持った若者が集まる。
若者文化はこうして生まれるのである。
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