フェーズド・アレイ

フェーズド・アレイの利点欠点

40年以上の歴史のある技術ですが、非破壊への応用が広がったのは最近になってです。その理由は非破壊では医療と異なり、固体が主な対象の為にモード変換が大きく、粒界もあり、対象の材料、形状がまちまちであることによります。フェーズド・アレイの特徴で、且つ有益な機能は

1)ビームを振れる(単一振動子で機械的にビームを振るタイプが販売されていますが、フォーカス探触子の場合はSNが良いのですが、非フォーカス型では構造上SNが悪く、一般にアレイの方が有利です。)

2)フォーカスを掛けられ、そのフォーカス深さを変えられる。

3)多数の素子のアレイ探触子で一度に広い範囲をリニアスキャンする。

4)低感度、低検出能のアプリケーションで、電子走査により高速スキャンをする場合。(高感度高精度探傷には不向き。)

 

上記の機能がメリットになる場合は有益と考えられます。メリットは同時にデメリットになる場合もありますので注意必要です。

 20年前からは送信時に位相制御しない、開口合成型が販売されるようになり、この方がSNは良いと言う話も多く聞かれます。各振動子の励振時刻を遅らせる焦点に音を集めようとしても、音は真っすぐ進む性質があるので、送信の計算上のフォーカス点では大して音圧が上がりませんし、余分なBEDが発生するからです。

 

宣伝などでSNが高いとか、高速とか書かれている場合もありますが、諸条件を抜きに宣伝として書かれたもので、こう言ったメリットが出る場合は少ないです。ケーブル長さなど電気的説明も含む詳しい、アレイのSNに関する資料はここを参照ください。

 

1)一般に市販探傷器はダンピングやパルスエネルギーと言う機能があります。これらは送信回路の抵抗とコンデンサーを切り替える機能です(ごく一部の機種ではインダクタンスを切替える機能もあります)。探触子との電気的マッチングを取って、高感度~高分解能へ一個の探触子で波形調整可能です。アレイでは各素子はアレイ探傷器のパルサーレシーバに繋がっていますが、各素子毎に上記の様な調整機能は大規模なアレイ装置以外ありません。従って探触子とアレイ装置の組み合わせで波形が決まってしまう事になります。

2)ビームを振る場合にどの程度振れるのかと言うと、それほど振れません。医療用の探触子など見ると判りますが、通常平面では無く、凸面に小さな振動子が並んでいます。平面にすると、大きく振れないので凸にして振る角度を稼いでいます。説明: 説明: 説明: 説明: hoykir 元々ホイヘンスが各素子からの球面波が出ているという考えを出した後、ポアソンが原理に従うと後退する波があるのに、現実には後退する波は発生しないのは何故かとの疑問がだされました。その後回折現象を説明するため、フレネルが拡張し、より厳密化するため、波動論を元にキルヒホッフが改良をしました。理想の無限小ダイポール音源でも正面に対して、左右は半分の強度の超音波しかでません(Cardioid曲線)。現実は有限ですし、素子が単独で存在する訳ではないので、更に狭くなり、波長程度の素子で±15度程度(50%程度送・受信感度角度)を目安にしたほうが無難です。(注意 ホイヘンスの原理は単に一般的現象を直感的に判り易くすく説明するためのものです。新しい現象の証明には使えません。論理的根拠がある訳ではありません。波動方程式を解くと、音源素からの音は振動方向にのみ伝わっていく事が証明できます。ホイヘンスの原理は元々ある波の波面が知れているとき、一定時間経つと次の波面がどうなるかをコンパスで求める案で、それ自体は正しい方法でした。それを後の学者たちが、間違った用法に使ってしまったのです。キルヒホフは波動方程式から求めたもので正しいですが、媒体中を移動中の波の話で、境界{=振動子と媒質}での現象ではありません。また、難しい話になりますが、アレイでは各素子からの波に重ね合わせの理を適応しますが、これは音源が独立と言う条件が必要ですが、実際のアレイ素子は物質で繋がっていますし、誘電的にもつながっているので、アレイを考える場合に単純に重ね合わせの理を使えません。)


フェーズド・アレイのフォーカス制御での送信音場での考えると、実はフォーカスされていません。フェーズド・アレイで焦点を絞れ、強い音圧が得られるなら、癌などを超音波で焼く装置に応用出来るはずです。色々な人が挑戦しましたが、誰も出来ませんでした。振動子からの音波はニュートンの慣性の法則により、直進しかできません。各素子からの広がり部分が重なって少し強くなる所は出来ますが、平面振動子の3倍程度の音圧です。多くの超音波理論では、音波がベクトルであり、ベクトル計算しなければ成らないのに、数学的に無理があり、スカラー(主に速度ポテンシャル)で計算しており、殆どの計算結果は物理的に間違いと言えます。コンピュータを使ったFDTD法は、ベクトル計算しています。
フェーズ・アレイのフォーカス効果は受信の開口合成の効果です。
なお、電波の場合フェーズド・アレイでフォーカスも可能です。電波は電子が電波=光子を発生させ、電気的に放射点での位相を位相制御し、光子の発生方向を制御できます。光子は相互作用があるのは電荷のみで、その電荷の状態で放出方向が決まります。「光の干渉」と言うのは間違いで、英国などでは高校の物理では2000年頃から、従来の光が波であると言う考えは捨てろと教えています。位相の違う光が重なると消えると言う事はエネルギー保存則が成り立たないと解釈できますが、今だエネルギー保存則が成り立たない事象を観測した例はありません。

 

3)更に問題を複雑にするのはモード変換です。水浸型のアレイで材料(鋼)中の欠陥を狙う場合を考えると、振動子からの超音波は水中に放射され、材料表面まで伝播します。材料表面から内部へは、材料にもよりますが、数%前後しか超音波は伝わりません。大半は反射されます。微細な表面の凸凹でも反射して、振動子に戻ってきます。この為、アレイ探触子は表面不感帯が大きくなります。表面近傍の小さな欠陥を見つける場合は単一振動子に敵いません。単一の振動子の場合、この現象は振動子の端の部分から発生する所謂端部球面波によってのみ起きますので、振動子全体に対しては大きな振幅として受信されません。説明: 説明: 説明: 説明: ArrayBeam説明: 説明: 説明: 説明: 2MHzOneElement
直接接触の場合はこの横波成分が縦波成分より大きい場合が多く、縦波で検査している積りが横波だったりして、注意が必要です。

4)上図で判る様に、材料中に入った超音波は中央では強い縦波ですが、45度付近から横波成分が主になります。固体内ではどんな材料でもモード変換の為に、似たようになります。従って縦波では鋼材料中±45度程度しか振れないし、横波では垂直に近い部分は振れません。フォーカスのアパーチャもこのモード変換で制限され、フォーカスを掛ける場合は±45度より小さい偏向角で使うのが無難です。上図のシミュレーション結果は送信のみです。通常同じセンサーで送信と受信しますので、上記の二乗の差まではいかなくても、大きい部分はより大きく、小さな部分はより小さく観測されます。

 

5)横波で前方方向を狙っても、各素子からは広がって音がでますので、後ろ方向にも超音波が出ていて、そこに偶々コーナがあると擬似欠陥として探傷画面にでます。通常の斜角探触子は、後ろへはごくわずかしか超音波が出ていないので、計測間違いは起きませんが、アレイでは後ろへ強く超音波が発生しますし、フォーカスすると後の在らぬ所で焦点を結び大きな反射源を欠陥と見誤る事があります。アレイも楔を付けて、前方のみを狙う用にしたものもありますが、アレイのサイズが大きく、楔も必然的に大きくなるので、楔内の散乱エコーがなかなか減衰しないのでSNが悪いのが一般的です。(市販の斜角探触子は性能を上げるのに、楔の大きさを成るべく小さくし、そのサイズで音が少し減衰する様な材料を使います。楔内で数回反射すると減衰して熱雑音以下になります。)

6)強い超音波が探触子表面と材料表面間を何度も往復して、所謂ゴーストエコーが発生します。アレイの探触子前面の面積が単一探触子に較べ非常に大きい事に起因し、これが為に単一探触子に比べPRFを上げられず、従来より低速の探傷を余儀なくされる事が多いです。「電子走査だから高速」と言ううたい文句は、現実を無視した宣伝です。これを避けるために、邪道ですがアレイ探触子を少し傾けて配置しています。この場合反射指向性の鋭い大きな欠陥の検出能が下がったり、傾いた欠陥の見逃しの危険性が増えますので、大きさや傾きの異なる色々な形状の欠陥に対する検出確認が必要です。 一部のアレイ装置では、高速化の為、送信は全素子同時に行っていて(最近はこのタイプを開口合成装置と呼んでいます。)、受信のみ合成開口する方法をとっているものがあります。通常は送信と受信それぞれで、位相合成=フォーカスしていますが、この場合、受信のみになるので、その分フォーカス効果=SNが落ちますが、送信時の不要輻射がないので、送信時に位相制御したよりSNがよく成る事もあります。探傷速度(繰り返し周波数)を上げる場合位相制御しない方が殆どの場合SNが良い。

7)一般に機械走査で1~2/Sは可能です。往復動作も毎秒数回~50回程度は技術力のある機械設計者が実現できます。電子スキャンする事によって、機械走査より高速化ができるのは、大きな欠陥検出や板厚測定をするなど、総合感度が余り高くない場合です。精密探傷には単一振動子と高速走査機構の組み合わせが良いでしょう。

8)目的の方向以外にも超音波が出るために欠点となるのが、粒界の荒い材料に対するSNです。フォーカス機能を使っても単一振動子並みのSNを得ることが現状不可能です。単一振動子とアレイ振動子の波面のシミュレーション例を示します。説明: 説明: 説明: 説明: Array
下図の単一振動子は振動子面からの平面波と振動子両端からのエッジ波が見られますが、アレイの場合各振動子からエッジ波(球面波)が発生します。これらが粒界から反射し、SNを悪くします。(シュミレーションはあくまでシミュレーション=模擬です。真実とは少し離れています。例えば素子間隔が狭く、波長からして一枚の振動子と同様と考えれる場合は1枚の振動子と同様になります。隣り合う素子をほぼ同時に励振した場合と時間を置いて励振した場合では異なるのです。アレイのカタログには各振動子が独立に振動子上図上の様に別々に音が伝搬し、フォーカスする様な図が描かれていますが、実際は異なります。)

9)フォーカスでの受信を考えると、曲面振動子やレンズ付きフォーカス探触子は、反射体からの音が振動子にほぼ垂直に入ってきます。一方アレイでは、傾いて入ってきます。傾いて入ってきた音は振動子の中で屈折し、感度が下がります。大きな角度の場合は横波に変換し、感度なくなります。これが受信でのフォーカス効果が単一フォーカス探触子より劣る理由です。医療用探触子で多くがコンケイブ型と言う各素子は曲面状に並べている理由がここにあります。
単一振動子でもレンズ方式、球面振動子型と非球面振動子型があります。媒質と材料間で屈折するので、レンズや単純球面では綺麗な点収束ができません。その為、振動子面を非球面にすると、ほぼ点収束します。この場合も送信時は、球面、非球面とも収束はボヤケますので、音波のフォーカス性能に大した差はありません。受信時の話です。非球面の方が開口合成の結果より細い焦点になります(右上球面振動子、右下非球面(同位相面)での斜角開口合成)。アレイなど開口合成の遅延時間の計算は、弊社の知る限り基本的に非球面と同じ同位相面の計算をしています。

 

 

 

Wave2000に拠るアレイ探触子のシミュレーション例

シミュレーションソフトWave2000は此方へ

 

一般にアレイ(又は開口合成)のSNの目安は同じ実効振動サイズ(探触子の面積)、周波数帯域、設計焦点深さの場合:

 

フォーカスしないアレイ < 単一平面振動子 < フォーカスしたアレイ < 単一ライン・フォーカス探触子(<ポイント・フォーカス)

 

位相制御してフォーカスすれば、平面振動子より良いが、フォーカス型の探触子より悪いと言うことです。フォーカス探触子にはフォーカス深度がありますので、1,2個の探触子で探傷範囲をカバーできるなら、アレイより単一探触子が有利となります。焦点深度を変えながら探傷したいなら多くの場合アレイ方式の方が有利になります。

 

粒界の荒い材料の場合は、特に広帯域探触子で比べると

 フォーカスしたアレイ < 広帯域単一平面振動子 <  広帯域単一ライン・フォーカス探触子

と最低の結果となることが多いです。

 

アレイは振動子素子間ピッチを小さくしていくと、単一振動子と同じ特性が得られると考えられます。波長の1/10のピッチになると殆ど単一振動子と区別できないはずです。5MHzの場合水中では、このピッチは0.03mmに相当して、現状製品の1/10以下の細かなピッチで、製造実現性はありません。出来たとしても、こんなに小さくすると、隣り合う振動子間の耐圧が低く、位相制御を工夫しないと放電して破損します。また、振動子間、電極間の距離が近いので、一素子を駆動している積りが付近数素子を駆動している事になります。受信時も一素子に入った音が、隣り合う素子に影響します。一素子のアスペクト比(高さ÷幅)が大きく、特定の振動子を励振しても隣に電界が漏れて単独駆動は出来なくなります。従って現状知りうる技術で単一振動子と同じ性能をアレイに求めるのは原理的に不可能です。(全素子を同時励振し、受信時のみ合成開口する方式では送信時の問題は発生しません。)

 

 アレイ装置は一般に表示がB断面です。医療用では、素人にも理解しやすい。医療用の画面は通常12bit程度の白黒濃淡諧調表示になっている。筆者は約40年程度まえに世界で初めてデジタル・カラーB断面装置を開発したが、医療には最近まで多くは使われてこなかった。この理由は、色が先入観を持たせる為です。人の場合は変化が知りたいのであって、その原因や状況は医者が別の手法での検査も含め総合的に判断します。非破壊では色表示する事が多いが果たして問題は無いのか? 前述の様に超音波のビームは偏向角によって感度が異なる。その為、ビームの偏向角で欠陥検出能が変わる事になる。ソフト的にある程度補正は可能であろう。実際の材料中の見つけたい欠陥は球状の場合は少ない。球状の場合は欠陥の反射能力に方向性が無いので、B断面表示は、そこそこ信じられる。アレイ機器メーカーのデモでは大半は横穴欠陥入りの試験片が使われる。色々な角度をもった平板状欠陥を入れた試験片での結果を見ると参考になるだろう。非破壊では多くは割れ状の欠陥を対象にしていて、欠陥への入射角によって感度が変わる。B断面での表示強度と欠陥サイズには、相関が必ずしも無い事に注意すべきである。

 

一部では128素子や256素子のアレイを使って固定入射角且つ1632素子程度をセクタスキャンしならが、リニア走査する複合走査方法がとられている。これは上記欠点利点を認知した上、欠陥サイズの判定をより正確にしようとする良い方法と思われる。

 

内面から

現状アレイで応用が困難なのは、小径パイプの内面からの検査です。曲率の小さな凹面も同様です。アレイの周波数や大きさに対して大きな径のパイプは平面と考えても良いのですが、小径では事情が違います。条件によりますが、200φ以下の場合は注意が必要です。なお、平面状のアレイ探触子で軸方向にアレイを並べた場合は別の話しとなります。内挿用の円弧に振動子が並んだアレイの話です。 パイプ軸方向の探傷はアレイで問題は無いのですが、周方向に振動子を並べた形のアレイは最悪です。垂直探傷や肉厚、残肉測定の場合、アレイの表面不感帯が大きいと言う特性が問題です。通常パイプ内面からの検査が必要なパイプの肉厚が薄いのが一般的です。通常の探触子を並べたマルチチャンネルや探触子を回転させる方法に比べて不利になります。なお、隣り合う素子間の位相差は1/10波長程度に抑えないと良い送信時のビーム制御はできません。この条件に合致しない場合も多くなります。

説明: 説明: 説明: 説明: frominner

上図の様に、リング(円筒)状アレイを使って、パイプ内面から斜角で超音波を入射しようと端の振動子素子は平面に比べ可也傾いていて(上図では30+入射角+α)、殆ど水平ですので、当然その様な方向へは殆ど超音波は出ていません。内面からはフォーカス効果を狙うのが非常に困難です。大径の曲率が波長から考えて平面と同等と考えられる場合以外は内面からのアレイによるチャレンジは止めた方が良いでしょう。平面状アレイを内面に配置する場合は比較的問題は少ないです。

なお、一般的鋼管では平面振動子で入射すると、大体外面にフォーカスされます。従って垂直で外面を狙う場合はアレイを使っても従来法以上の性能は期待できません。説明: 説明: 説明: 説明: Inner1(2B管の内面からの平面振動子でのフォーカス状況)

実用では探触子とパイプ内面が偏芯します。この場合、少し振動子を大きめにしておけば、平面振動子はその影響を殆ど受けません。アレイでは、まるっきり異なる所にビームが行ってしまって使い物になりません。

 

直接接触型アレイ

アレイの応用は、水浸と斜角の遅延材付が多い。垂直の直接接触は少ない。これは良好な耐摩耗性の保護膜を持ったアレイ探触子が作り難い事による。元々医療の市場が多い為、探触子の作り方や構造は医療用アレイを近い。人体=水 に対して良好な探触子はできるが、金属に直接接触する良好な探触子はほとんど出来ていない。弊社でもコンクリート用があるが、保護層もアレイ状に切断するなど可也複雑で高価なものとなっている。垂直の直接接触アレイ探触子は、より表面不感帯が大きく、或いは又、寿命が短と思った方が良い。

更には前述のモード変換の為に水浸アレイよりSNが悪いのが一般です。

 

送信電圧

 市販のアレイ装置の送信電圧は100~250Vと従来の探傷器350~1000Vに較べると低いです。その為、送信超音波音圧は従来に比べ低く、超音波ノイズが多い環境(例えばサンドブラスト装置の近くなど)では音響ノイズを受けてトラブル事があります。位相制御して受信波を合成いるので、単発ノイズは同時受信素子数を多くすると通常の探触子より良好になります。特定のノイズに対して位相が一致して大きなノイズを受けます。

 

ケーブルとその長さ

 アレイは一個の振動子の面積が小さく、電気的インピーダンスが高いです。通常数百~数kΩです。また、振動子の電極間容量も小さく、数~数百pFです。ケーブルは通常多芯の50Ω程度、100pF/m程度の同軸が使われます。それぞれの同軸は外径が0.3mm前後の非常に細いものです。ケーブルが長くなるとまずケーブルの容量が振動子の電極間容量より大きくなって、音圧で発生する電圧が低くなります。ケーブル長が波長程度になってくると振動子に50Ωの負荷抵抗が付いた状態になって、数分の1の信号に分圧されます。標準的長さ(2、3m)を超えるケーブルを使用する場合は注意が必要です。50m程度の延長で感度が30dB下がることも珍しくありません。

 長いケーブルを使わざるを得ず、その為感度が下がって困る場合は、送信電圧を上げるしかありません。アレイ探触子に使われている同軸は通常500V程度のパルスに耐えます。(ケーブルメーカの保証耐圧は1/10の僅か50V程度です)

 

探触子の大きさと同相ノイズ

 アレイ探触子は探触子サイズが大きいですが、特に多チャンネルの場合は200mmを超える長さもあります。大きいと探触子が大きなアンテナとなって、同相ノイズがGNDから入ってくる事があります。

 

 

アレイの応用例

1)大きな対象内の大きな欠陥のサイジング
セクタースキャンで、Bスコープ表示すると、裏面からの割れ欠陥のコーナーと先端チップエコーが観測される場合、欠陥の高さが容易にわかります。TOFDに代わる方法として有効です。

2)色々な傾斜角の割れ欠陥の全体探傷
発生している欠陥の方向がはっきりしていなく、通常の探触子の場合、垂直、45度斜角、60度斜角、70度斜角など各種探触子で何度も探傷しないと不味い場合があります。この場合セクタスキャンで検査すると有利です。リニアとセクタを組み合わせた複合走査も有効です。なお、アレイは擬似欠陥が現れる事が多いので、欠陥が見つかった場合は通常探触子で、再検査する事も検討する必要があります。

3)段取りの敏速化
オンライン装置などで、多品種少量の材料を検査する必要があって、材料毎に探触子のサイズ、入射角、フォーカスなどを変える必要がある場合、ビームを振ったり、フォーカス点を変られるアレイは有効に使えます。

4)大きな板状の積層材料の剥離
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個の探触子で、大きな面積を走査するのは大変です。広い幅を持ったアレイ探触子と簡単な機構で、比較的大きな欠陥を対象に広い面積を検査する場合には有利になることがあります。アレイで無くても従来からマルチ探触子で検査が行われてきましたが、一般にアレイ装置を応用した方が安価になります。板状の端にコーナー部がある対象の場合、コーナー部ではアレイが不利になることが多いです。この部分のみ単品探触子を使うなど配慮必要です。

 

余談:

1)医療でアレイ装置が一般化しているが、例えば目とか血管とか細かな部分や減衰の大きな骨などを検査する医療用探触子は、現在でも単一振動子が使われている。超音波性能上、アレイは単一振動子にかなわないからです。大体の様子を見るには、電子走査のアレイでも、機械式走査の単一振動でも大して変わらない結果です。しかし、医療では電子走査式が一般化しました。その理由は超音波性能では無い。人に探触子を当てる場合に探触子の適切な位置への保持の容易さ、その時の不感帯の短さ、検査対象により近づけるなどの理由からである。多くの臓器は肋骨に守られていて、肋骨の間から内部を狙ったり、腹側から肋骨の下を狙う。その場合アレイ探触子の様に固体の探触子の方が位置決めしやすい。機械走査式探触子は水袋の中で探触子が機械的に走査する方法で、体表面との間が離れているので、位置を確定しにくい。更にアレイの様に、肋骨の下に押し込む事も出来ない。機械式は、観測範囲が制限される。水袋内の反射エコーも邪魔になる。(下図参照)説明: 説明: 説明: 説明: 医療用アレイ

2)単一振動子の探触子でもSNが高いものと低いものがあります。内部構造にもよりますが、同じ探触子内部構造でも振動子に依ってSNが異なります。一般に小さな粒界で出来たい振動子を使うとSNが良くなります。市販の超音波用セラミック振動子の粒界サイズは130μmです。弊社の0-3コンポジットは1μの粒子を使っています。セラミック振動子の最良のSN探触子と同等を実現できます。1-3コンポジット振動子はその柱が20500μです。振動子のみを考えると、同じ振動子面形状では1-3コンポジット振動子はSNの点でセラミック振動子に劣ります。アレイの場合は0.31mm程度のピッチで振動子が並んでいますので、上記の延長上の考えではSNがもっと悪いと言う事になります。(なお、セラミック振動子の場合、低い周波数用は内部粒界が大きいものが使われています。その方がよりQが低く、また振動子内での減衰が大きいので、良い結果となるからです。)

 

平面リニア・アレイ探触子:

平面状振動子素子が直線状に並んだものです。

素子数が少ない場合は、楔を付けて斜角(主に横波)とすることもできます。

素子数の多い場合は通常水浸で使います。

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曲面リニア・アレイ探触子:

曲面の振動子素子が直線状に並んだものです。素子の長手方向を曲面として、複数素子でフォーカスを掛けるとポイントフォーカス又はバイフォーカル的な特性となって、通常の平面状リニアアレイよりSNが上がります。更に素子の幅を大きくするとよりSNが上がります。

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アニユーラアレイ探触子

同心円状のアレイで、中心軸上でフォーカス深さを変える目的でのみ使います。リニアアレイと異なりポイントフォーカスになるので、SNがより向上します。但し、アレイの特性の表面不感帯が大きいので、表面直下まで探傷したい場合は中心素子部分に通常の広帯域単一(フォーカス)振動子を埋め込みます。

説明: 説明: 説明: 説明: アニューラ探触子

一般のフォーカス探触子2~3個でカバーできる場合は、一般探触子を使った方が有利(特にSNで)になることが多いので、使用には検討が必要です。

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二次元(2D)アレイ探触子

原理的には、あらゆる事が出来るアレイですが、性能今一です。ビームをXY二軸方向偏向できます。当然フォーカスもラインフォーカスでもポイントフォーカスでもできます。医療では試験的に使われています。
説明: 説明: 説明: 説明: 2Dアレイ探触子
特定の応用のみに使えます。世界中で研究中ですが、どこも汎用探触子なみ性能に至っていません。素子が小さくインピーダンスが大きいので、通常のアレイ装置との組み合わせでは思った様な性能でません。
探触子の中に電子回路を組み込み性能を上げるなど試作はされていますが、大きさとコストが実用的ではありません。弊社は研究を対象として、各種製造しています。それぞれのアプリケーションで詳細検討が必要です。ご相談ください。

また、フォーカスと偏向を同時にしたい応用なら、アニューラー型の同心円リングを周方向に数個に分割したタイプがより現実的です。

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