学校は無事何事もなく終了。しかし、問題の時はやってきた。
にゃんにゃんと呼ばれる、決して可愛いとは言えない、あえて言うならば、凶悪的に愛敬のある顔としか言えない、頬や耳に傷を持つここ一帯を纏めるボス猫に誠吾は熱烈に歓迎され、その上、一攫千金、埋蔵金と名づけられた二匹の犬にも嬉しさのあまり興奮されすぎて、プレスされる始末だった。
だが、問題はそこじゃない。猫にも犬にも歓迎されるのは毎度の事。
問題は、千草の部屋に二人でいる、その時に起こったのだ。
「……ちー……」
「ん〜?」
「……………」
誠吾は深く溜め息を吐いた。視線を逸らして。
「早く食べてくれないか……」
「食べてるよ?」
ペロンとまた一舐めして答える千草。その手には練乳入りミルクアイス。誠吾の手にも同じ物があった。けれど誠吾が言いたいのはそんな事ではない。
「そうじゃなくて、バクっと一気に……」
「………なんで?」
はむっと上の方をちょこっと齧ってみせて千草は不思議そうにしてみせる。そして、齧った所から流れる練乳をこれ見よがしに舌で舐め摂ったのである。
もう、お分かりの方もいるだろう。これが千草の良い考えだった。その名も「誠ちゃん挑発大作戦」
「誠ちゃんも食べないと溶けちゃうよ?」
半分ほどになっている誠吾のアイスを見て、そう言う。自分の方は齧らずにいた為に量はあまり減らずに残っていた。
「………誠ちゃん?」
この作戦は結構自信があった。我慢強い誠吾が相手で確信は持てないもののなかなかの好感触だ。…が、何やらさっきから誠吾が目を瞑り、眉を寄せて動かない。
それならば……さらに行動を起こさないと…。と、千草は俄然やる気になって、自分のアイスを口に頬張って棒を一気に引きぬいた。
「……ちー?……」
目を瞑っていた誠吾は、自分に寄ってきていた千草に驚いたが、それ以上に千草の手が自分のフロントのチャックに伸びている事に目を見開く程に驚いた。千草を止めようとして口を開けば、待っていましたとばかりに口付けられた。……触れた甘い味の唇は、さっきまでアイスを咥えていた所為でいつもより冷たかった。
誠吾は柔らかく求めてくる唇や妖しく動く手に欲を刺激され、それでも、千草の事を想ってどうにかこうにか切り抜けようとするのだが……千草がアイスを食べる姿にだんだんと煽られていた上に直接的な刺激。これ以上は本当に我慢も何もかも捨ててしまいそうだと、ちょっとばかり強引ながらも千草の体を引き離した。すると、当然の事ながら千草から非難の声が上がった。
「誠ちゃんっ!」
む〜っとして千草が眉を寄せると、弱ったように誠吾も溜め息を吐きながら眉を寄せる。
「……ちー、まだまだ学校があるだろう?週末だって会えるし……」
我慢しよう?
誠吾は、そう口にしようとした。自分の可愛い恋人を幾ら抱きたくとも。例え、恋人自ら誘ってこようとも。まだまだ、学校の続く平日。きっとというか、確実に自分の想う様、恋人の体を味わってしまう自分の欲望をぶつける事なんて出来ようか?
だからこそ。だからこそ、我慢。
だが、そう続ける前に、千草が言った言葉。それに誠吾の理性と忍耐と欲情の振り子は意識の許容範囲を一気に超えたのだった。
その問題の千草の言葉とは…。
「――絶対っ、嫌っ!…大体、誠ちゃん、結構ムッツリなくせに我慢ばっかじゃん!……俺の事、本当に欲しいって思ってくれるなら、たまには誠ちゃんもやりたい事、俺にしてよ……」
だった…。幾ら、人から頼りにされる好青年とて性への欲求は人並みに。いやいや、ちょっとばかり人並み以上の彼にこの言葉と恋人の潤んだ瞳でのおねだりは効いた。というのも、この二人。告白は誠吾からだったもののファーストキスも初エッチも実の所、千草から仕掛けたものだった。そして、付き合い出してからのエッチも受けの負担を思うあまりに出来る限りセーブしている誠吾を千草が誘うのがほとんどだったのだ。
二人の間にしばらくの沈黙があった後、誠吾は、喉を一度、上下させて呟いた。
「……どうなっても知らないからな……」
掠れた低音。
……いつも聞く、誠吾の囁きよりも熱い事に千草は鼓動を速くしながら、身を震わせたのだった。
次の日。
朝一番に聞こえたのは、深い溜め息。
「……ちーちゃん……幸せそうだね…」
呆れ顔の涼を見上げながらも、御満悦の千草はご機嫌に頷いてこう言った。
「誠ちゃんて思ってたより結構オヤジなんだよ」
と。煮干しを美味しそうに食べながら。
ラブコメチック……?誘い(襲い)受け?どれも中途半端な気が致しますが(泣)突発的に思い浮かんだキャラだったのでこれ以上、思うように書けそうにないのでこれでUP(−.−;)少しでも楽しんで頂けると嬉しいです。最後まで読んでくださってありがとうございました☆