―初めてのお留守番―
「…ブラッドぉ…早く帰ってきてよぉ〜〜」
そう呟いたのはなぜか家に一人ぼっちなウサギちゃん。…ウサギちゃんは柔らかな枕を胸に抱きしめ
「寂しいよぉ〜」
と誰にも聞こえない位ちっさな声で言ったのでした。
事の始まりは、三日前。……ブラッドが珍しく電話をどこかと繋ぎ、話していたと思ったら…
「……ベル、俺がいなくても…大丈夫か?」
と真剣な面持ちで聞いてきた。
「――っ!?なんでっ!?なんでブラッド、いなくなっちゃうの?!」
…ベルは一瞬にして瞳に涙を溜め、ブラッドに縋り付いた。すると、ブラッドはとても言いにくそうに目線をベルから外し
「……松茸を…採りにいかないと駄目なんだ……」
「…………まつたけ…?…」
…ぽつんとベルは、やっとのことで、その言葉を口にしたのでした。…そう、どこでも松茸は高級食材であり、それがブラッド以上に知っている者がいない山に生える場合……ブラッドが取りに行くのは当たり前と言えよう。…というのも、ブラッドはベルに会うずっと以前から、自分が住んでいる山はもちろんの事、そうでない山にも出向き、木の実・山菜・果物…薬になる薬草・ハーブ…籠を作る事の出来る蔓などを取りに行き、それを業者や町の店主に売って生活を立てていたのだ。
「松茸を取りに行くのは毎年の事なんだが……馴染みの店主がかなりの量を欲しがっているから、それなりの日数が掛かると思う…」
眉を微かに潜めてべルに言うブラッドは、この家に初めてベルを一人で残していく事に不安がある。それは、ベルも同じ事なのだが…
「…お仕事なんだもんね……僕、大丈夫だよ!!ちゃんと、お留守番してるねっ!!」
と健気にもにこっと微笑みながらブラッドにそう言った。それに、その二日後、ちょっとばかり瞳に涙が溜まってはいたけれど
「気をつけて行って来てねっ!!」
とちょっぴり大人になった(?)ベルちゃんは、ブラッドを送り出す事も出来たのだった。…が…
我慢の限界はもう、そこまで来ていた!というか、見えていたのだ。…だって、ベルのふわふわの耳はしきりに垂れているし、じんわり瞳は潤んでいるしで…そのうち「キュ〜…」っという泣き声まで聞こえてきそうな感じである。そして…
「ブラッドぉ…」
…今日も一人、ブラッドを思い、一日も早く帰ってきてくれるのを願うベルなのでした。