例1の答え

視点が未熟なのです。

小売店の目的は儲けたいということです。
儲けるためにはお客様をつかまなければならないという心理がありますのでそこをつかねばなりません。

「今度○○○という商品のTVCMが始まります。CMが流れてお客様がお店にこられたとき、その商品が並んでいないとせっかく来店してくださったお客様が別の店に流れてしまいます。
いままでの大切な固定客を他店に取られないよう、とりあえず店頭展示商品を準備していただくためご案内におじゃましました。
この商品は△△△といった特徴があり、モニター調査でも大変好評です」

いかがですか?
どこが違うのかと思われましたか?

苦戦するセールスは取り扱ってくださいと、取り扱うということを論点にセールストークを展開していますので、お店側も取り扱うかどうかというポイントで反応するわけです。

ところが、この方の方法の場合は、取り扱うことは当然といったところから論点を展開し、お客様をいかに店に固定化するかどうか、といった点からトークを開始していますので初回仕入れ商品数をどうするかにお店側の意識を導いています。

なにげないことなのですが、この差が大きいのではないかと思えるのです。

 

前にも書きましたが「したたかさ」といえばなにか相手をだます、陥(おとしい)れるといったニュアンスがあり、むしろしたたかでないことのほうが人間として望ましいという感覚が日本人のDNAにあるのかも知れません。

しかし、世界にはいろいろな人種があり、いろいろな考え方もあるわけです。
同時に、日本人の中にもいろいろな考え方を持つ人もおられるのですから、どういう土俵の上で交渉を組み立てることが有利なか、このテクニックっを持つことが大変重要だと思われるのです。

交渉ごとは、こちらの土俵上で行わなければならず、相手の土俵では勝負にならないということを言いたかったのです。

あまりビジネスに興味のない方には適切な例ではなかったかもしれませんが、どのように有利に自分を持っていくか、これはある程度意識しなければならない、きっと相手はわかってくれる、理解してくれるという他力本願的思考方法では、相手ペースでことが進行してしまうということが多いと言いたかったのです。

 

 

 

 

それでは、引き続き、ビジネスのある場面を例にとって話を進めます。

 

例2

ある衣料品の在庫品10万枚をバッタ品価格で買い叩き、それを転売することを生業とする会社の販売担当の方のケースです。

在庫品というのはまさしく売れ残り品ですから、そう簡単には売れません。
値段が勝負です。

しかし、いくら安くても売れないものは売れないと普通の感覚では判断してしまいますので、だれも手を出しません。
が、彼は、そのような商品でもほとんど完売する凄腕です。

彼の考え方は以下の通りです。
買うものがいるとするなら、値段勝負ができ、客寄せにもなる特価販売用の仕入れ部署だろう。
となると、そういう客寄せのために特価商品を求めている部署それも多店舗展開しているスーパーや、衣料品の現金問屋あたりがターゲットになるのではないか。

そう判断した彼は、かたっぱしから、そういった多店舗チェーン展開している企業の特価販売部署に案内を開始し始めました。

狙い通り値段の魅力で多くのバイヤーが商品を見に訪れました。

大量の在庫品であっても、各品番ごとに5枚づつ100店舗に供給するなら、20種類あったとするなら、総量1万枚の販売が出来ることなります。

これなら、10社に売れば完売です。

売れなければ大赤字で会社経営は傾いてしまいます。

彼の真剣勝負が始まりました。

A社の仕入れ担当の係員との折衝の様子です。

A社係員  「値段はとても魅力です。私自身としては取り扱ってみたいのですが、とりあえず上司の許可を得るためにサンプルを持ち帰りたいのですがよろしいですか?」

販売担当  「サンプル提供は、お断りします。あなたが気に入っていなければ、話は別ですが、あなたは取り扱いたいという気持ちがおありなのですから、上司に相談せずあなたがここで決定してください」

A社係員  「数量が数量ですし、また、その商品を仕入れしても良いのかどうか、どうしても上司の許可が必要なのです」

販売担当  「じゃ、この商売はせっかくですがお断りします。商品内容を上司に相談しなければ決められない人と私は商売したくありません」

A社係員  「・・・・・・・・・」

販売担当  「もし、今、ここであなたが決めて下さるなら、10000枚でなくても話には応じますが、、、。 上司に相談するということは責任を上司に押し付けることですし、自分の仕入れ感覚に自信の無い人間のすることですよ」

A社係員  「・・・・・・・・」

販売担当  「商売というものは、自分の判断で行うもので、人の許可をとらなければならない、そんな意思の軟弱な人とは、私は商売する気はありません。どうされますか?」

A社係員  「・・・・・・・・・」

販売担当  「いいですか。商売はある意味真剣勝負です。人の判断で商売してもそれでは、いつまでたっても一人前にはなれないのです。私は半人前の人とは商売できません」

A社係員  「・・・・・・・・・」


その販売担当者はどんどんA社係員を追い込んでいきます。

販売担当  「どうしますか?」

A社係員  「・・・・・・・・・・。わかりました。今ここで決断します。でも私の権限範囲は3000枚が限界ですが、5000枚でチャレンジしてみようかと思います」

販売担当  「よっしゃ、良く言ってくれました。本来は10000枚ですが、5000枚で受けましょう」

この対応について、あなたはどうお感じになられましたか?

別に何も感じない方は、勝負どころの機微にうとい方だと思われます。
したたかさとはなにか、あまり理解出来ておられない可能性があります。

販売担当者にとっては、へたをすると、このA社係員に対し売り損じしてしまう危険性があったわけです。

この販売担当者は何の根拠も無く一か八かの勝負をかけたのでしょうか。
いいえ、彼には勝算とある狙いがあってのことだったのです。

ここで、問題です。
彼の勝算とある狙いとはなんだったのでしょうか?

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