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宅配便

 

その車が、町を走っているのを見たとき、私は装甲車だと思いました。それは、大きなワゴン型のトラックで、車体全部の色が黒に近いこげ茶色です。運転手は薄茶色の制服姿です。私の車の横を通っていくと、それだけで威圧されて、軍関係の車だと思ってしまいました。

その車が、ある日、私のアパートの前で停まりました。何事だろうと思って、二階の部屋から見ていると、運転手が降りてきて、私の部屋の方へやってきます。そして、なんと私の部屋をノックするではありませんか。あわてて、階下へかけおりてドアを開けると、小さな荷物を手渡してくれました。あれは、UPSという宅配便の車だったのです。

それ以降、私はその黒っぽい大きなトラックが来るのをとても心待ちにしていました。だって、いつも日本からの荷物を届けてくれるからです。運転手さんが荷物を渡してくれると、あまり英語でしゃべれなかった私はサンキュウというだけでしたが、ある日、受け取りのサインをするように言われました。紙にボールペンで書くのなら簡単なのですが、配達人が取り出したのはポケットコンピューターです。そのデイスプレーの所に専用のペンで書くようにペンをわたしてくれました。つるつるしていて書きにくい上に書いた跡が残らないのです。ちゃんと書けたかとても不安でしたが、オーケーと言って帰りました。後で、チェックした人は変なサインだなあと思ったことでしょう。

 

 

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アメリカで暮らして