KIzUNa
第三話
「あらあら・・・ちょっと刺激が強かったかしらねぇ?」
ルキアは怯える少女を見つめながら嬉しそうに言った。
少女はうつむいたまま、動こうとしない。
ルキアは話を続けた。
「まぁ、受け入れられないのもよくわかるわ。
悪魔なんて空想の生物って思ってたんでしょう?
でもね、本当にいるのよ。
あなたのように弱い人間の心の中に住んでいるのよ」
弱いニンゲン・・・
確かに私はそうだな・・・
だって、耐えれれなかったから。
あんな生活はもうイヤだった・・・
「さてと、そろそろ本題に入りましょうか?
契約の話ね」
ケイヤク?
あああ・・・さっき言ってたなぁ・・・
「契約を交す際、人間の望みを叶えることが決まっているのね。
叶えたい望みの内容は何でもいい。
ただし、その内容によって契約期間が変化するの」
叶えたい望み・・・
契約期間・・・
「例えば、大まかな例として世界征服したいとするね。
この場合、契約期間は1時間かな。
逆に普通に生活したい場合、契約期間は10年ぐらいになるのね」
契約期間が終わった場合、どうなるの?
「その時は死んでもらいます(ニッコリ)
この契約は血の契約なの。
望みを叶えるかわりに叶えた者の命をいただく。
これがルールになってるのね」
そうかぁ・・・
死んじゃうのかぁ・・・
あ・・・私死んだからあんまり意味ないなぁ
あはは・・・
「というわけでぇ〜
何の望みを叶えて欲しい?」
望み・・・
なんだろう・・・?
何がしたいんだろう・・・
どうすれば変われるんだろう・・・
「いじめた人たちに復讐したい??」
復讐??
そんなことしても空しいだけ・・・
人を傷つけることしかできない人たちに
人を思いやることができない人たちに
力で人を抑制することしかできない人たちに
そんなことしても意味がない・・・
彼らと同じ人間にはなりたくない・・・
「それとも、綺麗になって見返してあげたい?」
ううん・・・
そんなのもいらない・・・
外見が変わったからといって
心が変わるわけじゃないから・・・
「さぁ、どうしたい??
時間はたっぷりあるわ。
ゆっくり考えることね」
真剣に考えた。
自分に何が足りないのか。
どうすれば変わることができるのか。
でも、わからない。
答えが出ない。
勇気はあった。
今までも反抗してきた。
嫌なものは嫌だと訴えてきた。
性格も明るかった。
いじめられていても暗い表情はみせたことがなかった。
話も積極的にしていた。
じゃあ、何が足りないのか?
・・・
やはり、答えが出なかった。
ふと、少女は考え方を変えた。
『自分はどうしたいのか?』
その時にはっきりと答えが出た。
すっと立ち上がり、ルキアを見つめる。
気が付くと震えは止まっていた。
「・・・・・・・・・・・・・・さい・・・」
「んっ??もう一度言って」
「私と・・・・・・になってください・・・」
「えっ??聞こえないよっ!!!」
よく聞こえないのかルキアの表情が曇る。
少女は決心し、深呼吸の後、大声で叫んだ。
「私と友達になってッッ!!!!」
友達・・・
今までいえなかった言葉・・・
これが自分の求めている結果だった。
どれだけ明るく振舞っても、
どれだけたくさん話ができても、
彼女には友達がいなかった。
協調性が欠けていたのだ。
両親を失ってから、感情を共にする人がいなかったのだ。
その結果、ずっと一人だった。
学校でも
家でも
どこにいても孤独だった。
明るく振舞っても空しいだけだった。
そのことが少女を苦しめていた。
同時に光が爆発する。
暗黒の世界は消え、真っ白な空間に変わる。
少女とルキアの体は光の中へ消えた。
何が起こったのかわからない。
再び意識が遠くなっていく・・・
ただ、ルキアの唖然とした表情だけが記憶に残っていた。